ベルがアークスなのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
「どうだい、タケに
『おおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!』
雲一つない快晴の昼頃。
神様はバイト仲間とタケミカヅチ様の他、【タケミカヅチ・ファミリア】の人達を
本来だったら、他所の主神や【ファミリア】の人達を安易に
……とまあ、そう言う事があるから迂闊な行為をしないようにとエイナさんから教わった内容だ。尤も、タケミカヅチ様達は、そんな事をする気は毛頭無いのは既に分かっているから心配はない。この方達は純粋に、僕達の
それはそうと、極東式の衣装を身に纏っている主神と眷族達は、凄く緊張した様子だった。特に長い黒髪を結わえてる女性――ヤマト・命さんが暴走寸前と思われるように鼻息が荒く、それを前髪で瞳を隠している女性――千草さんが宥めていた。
最初はお風呂ぐらいで緊張するのはどうかと思った。けど彼等はオラリオに渡ってから、一度もお風呂に入っていなかったそうだ。殆どがオラリオ式のシャワーで済ませているとか。それが今回久々に見る極東式の檜風呂を見れるから、風呂好きの彼等としてはテンションが高くなるのは無理もないかもしれない。
そして現在、僕と神様がタケミカヅチ様達を檜風呂(男湯)へ案内し、お湯が入った広い浴槽と設備を見て物凄く感動している。
「これは正に俺の知っている檜風呂だ! 凄いぞヘスティア!」
「ああ、これが俺達が見た理想の檜風呂か……!」
「おおおおおおおお! 素晴らしい! 檜風呂が私の目の前にぃぃぃぃぃ!」
「み、命、落ち着いて……!」
感動しているタケミカヅチ様と巨漢の男性――桜花さん、ハイテンションになってジャンプしている命さんを必死に宥める千草さん。他の眷族の人達も同様に感動していた。
極東出身者から見れば、ここのお風呂は彼等が知っている物と同じのようだ。これだけ感動したところを見れば、それだけでよく分かる。
「ボクこそ感謝しているよ、タケ。君が教えてくれなければ、この檜風呂の素晴らしさを味わう事が出来なかったからね」
感謝しながらも自慢気に言う神様に、タケミカヅチ様達は羨ましそうな顔をしていた。
「ヘスティア様!」
「おわっ! な、何だい?」
すると、命さんが前に出て早々、神様の前で跪きながら頭を下げて懇願しようとする。
「おい命、お前何を……!」
「大変厚かましいお願いなのは重々承知していますが、後生の頼みです! どうか、どうかこの檜風呂にタケミカヅチ様を入浴させて下さい!」
「へ?」
タケミカヅチ様が止めようとするも、命さんがまるで己の犠牲覚悟で真剣なお願いをしてきた。
神様も神様で、いきなりの事で目が点になっている。他の人達も命さんの行動に何が何だか分からない状態だ。
「勿論、それなりの代価も用意します! タケミカヅチ様を入浴させて頂けるなら、私の全てを支払ってでも――」
「止めないか、命!」
とんでもない事を言いだそうとする命さんに、見てられないとタケミカヅチ様が割って入りながら阻止した。
「申し訳ありません、タケミカヅチ様! 私はどうしても貴方様に入浴して頂きたく……!」
「だからそんな事をする必要は無い! ヘスティアがこの檜風呂を俺達に見せた後、入浴を楽しむよう招いたんだ!」
「………はい?」
タケミカヅチ様が注意した後に理由を言うと、命さんはさっきと打って変わって石みたいに固まった。
「命、やっぱり途中から聞いてなかったな」
「昨日タケミカヅチ様が言ってたよぉ。ヘスティア様が新しい
呆れながら手を頭に当てる桜花さんに、恥ずかしそうに昨日の内容を言う千草さん。
そして――
「~~~~~~~~~!」
物の見事に顔を真っ赤にする命さんだった。
とんだ勘違いと大恥を掻いてしまった事により、【タケミカヅチ・ファミリア】は非常に気まずい雰囲気となっていた。
「さっきは本当にすまなかったな。ウチの命が失礼な事をして」
「いえ、そこまで謝る必要はありませんから」
あの後、暴走寸前となる命さんを止めた僕達は、漸く檜風呂に入浴出来るようになった。
因みに男湯と女湯で別々になっている。当然、男湯には僕、タケミカヅチ様、桜花さんと二人の男性眷族が入浴中。女湯は神様、命さん、千草さんと一人の女性眷族が入浴中。男女別でも檜風呂は一つの室内になっており、隣にある壁は女湯と繋がっている構造だ。
「どうだい命君、久しぶりに入ったお風呂は?」
「か、感激です、ヘスティア様! くぅ~~っ……!?」
その為、隣の女湯から話し声が聞こえる。因みにさっきのは神様と命さんの会話だ。
幸せそうな声を出している命さんに、本当お風呂好きなんだと改めて知った。
だけど彼女だけでなく、タケミカヅチ様や桜花さん達も同じだ。お湯に浸かっている彼等は揃ってリラックスしている。
「ああ~、やっぱり風呂は最高だな~。桜花もそう思わないか?」
「ええ、全くです。身体の疲れが癒されます」
幸福の吐息をつくように思った事を口にするタケミカヅチ様と桜花さん。他の二人も幸せな表情だ。
僕も最初、このお風呂に入った時は本当に癒される気持ちとなっていた。だから彼等がこうなるのは当然だと思っている。
お湯に浸かって数分後、心に余裕が出来たのか、タケミカヅチ様が僕の方へと視線を向けた。
「しかしまぁ、以前俺の【ファミリア】に入ろうとしていたお前が、よもやたった二ヵ月程でオラリオにいる誰もが注目する冒険者になるとはな。しかもついこの前、『Lv.3』にランクアップか。そう考えると、あの時お前の入団を断らなければと後悔しそうになるな」
「タケミカヅチ様、それは……!」
桜花さんが急に顔を顰めながら言おうとするも、タケミカヅチ様が彼にこう言った。
「冗談だ。例えベルの強さを事前に知った所で、俺はどの道断っていたよ。とは言え、失言である事に変わりはないか。度々すまんな、ベル。どうか神の俺に免じて、さっきのは聞かなかった事にしてくれ」
「いえ、お気になさらず。僕もそちらの事情は知っていますから」
あの時は何も知らずに【タケミカヅチ・ファミリア】に入団しようとしていた。けれど、極東ならではの事情がある故に無理だと丁寧に断られたから、僕もそれに納得して諦めている。
「助かる。よし、折角だから、ベルの背中を流そうじゃないか」
「い、いや、別にタケミカヅチ様がなさらなくても……!」
「そう気にするな。極東では、こうやって風呂で裸の付き合いをする際、背中を流すと言う心の触れ合いがあるんだ」
タケミカヅチ様が笑顔でそう言うも、僕としては恐れ多かった。他所の神様にそんな事をしてもらったら、とても居た堪れない気持ちになってしまう。
「俺達に気を遣う必要はないぞ、ベル・クラネル。タケミカヅチ様は一度言ったら曲げない御方だからな」
僕の心情を察した桜花さんの台詞に、二人の男性眷族もうんうんと頷いていた。
この人達がこう言うって事は、そんなに気にする必要はなさそうだ。
………よし、不敬かもしれないけど、ここはお言葉に甘えるとしよう。
「で、ではお願いします、タケミカヅチ様」
「おう、任せろ。誠心誠意を込めて背中を流そう」
使っていたお湯から出るように立ち上がると、タケミカヅチ様もそれに倣い、場所を移動して背中を流す準備を始めた。
すると――
「ベ、ベル殿! タケミカヅチ様に背中を流してもらうなど羨ま、ゴホンッ、いくらなんでも見過ごせません! 私だってされたこと無いと言うのに!」
「ちょ、命、何やってるの!?」
「おいおい命君、そのまま男湯に突入なんてしないでくれ!」
隣の女湯から、命さん達の叫び声が聞こえた。内容からして男湯に突入しようとする命さんを、千草さん達と神様が必死に止めているようだ。
再び暴走状態となっている命さんの行動に、タケミカヅチ様達は眉を顰めている。
「あ~……ベル、どうか命の事は気にしないでくれ」
「本当に何度もすまない、ベル・クラネル。命の奴はタケミカヅチ様の事となると、何故か分からんが凄く過敏に反応する性質でな」
「そ、そう、ですか……」
代表して謝ってくる桜花さんに、僕は何とも言えない表情となってしまう。
さっきから思ってたんだけど、命さんってタケミカヅチ様の事に関してやけに献身的な気がするな。大事な主神様だからか、もしくは……タケミカヅチ様の事を異性として愛しているとか? いや、流石に神様相手にそれはないか。僕は一体何おかしな事を考えているんだか。
~おまけ~
一つ目は昨日に入港したばかりの【カーリー・ファミリア】。主神カーリーの他、闘衣を纏った
二つ目は【イシュタル・ファミリア】。美の神と呼ばれる主神イシュタルの他、『
外部とオラリオの【ファミリア】がこうして顔を合わせているのには当然理由がある。目的はイシュタルの仇敵――【フレイヤ・ファミリア】に戦争を仕掛ける為だった。
フレイヤにバベルの塔の最上階で見下ろされている事で、イシュタルは当初から気に食わなかった。同じ美の神である筈なのに、何故こうも扱いが違うのだと不満を抱いている。その結果、イシュタルは憎い余りフレイヤを引き摺り下ろそうと動き始めた。
しかし、相手は『Lv.7』の【
そして一通りの話を終え、イシュタルが去ろうとする所をカーリーが待ったを掛けた。
「待つのじゃ、イシュタル。妾にはもう一つ訊きたい事がある」
「何だと? アマゾネスの双子以外にも、まだ他に強請るものがあるのか?」
「早とちりするでない。あの
これ以上の手助けは無理だと言おうとするイシュタルに、カーリーは用件を言おうとする。
「オラリオにおる冒険者の雄――ベル・クラネルの居場所を教えて欲しい」
「ベル・クラネル? ……ああ、あの【
「【ロキ・ファミリア】の連中にも話したのじゃが……まぁ良い。もう一度説明しよう」
カーリーは【ロキ・ファミリア】に話した内容を、そのままイシュタルに説明する。そしてベルをテルスキュラに迎える為に捕獲すると言う内容も含めて。
それらを聞いたイシュタルは意外に思いながらも納得した。『Lv.1』である筈なのに、
彼女としてはベルを自分の虜にする予定だったが、フレイヤの悔しがる顔を見れるなら構わないと了承した。但し条件して、最初のアマゾネス姉妹の件が片付いてから情報を教えるという前提だった。カーリーも即座に了承する。
(ククク、ティオナの奴はベル・クラネルを渡さんと言っておったが、彼奴も一緒にテルスキュラへ連れて行けば問題無かろう)
ティオナがベルに恋をしていると知って物凄く驚いたカーリーだったが、それは却って好都合だと思っていた。ベルが傍にいれば何の文句も言わない筈だと確信して。
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