花音 - One second songs - 作:津梨つな
新年度。私は高校3年生。…周りに合わせるように、受験に追われる身になっていました。
冬休みが明けてからこっち、どうにも作り笑いすらできなくなってしまった私は、彼を避けるように過ごしていたんですが…。…進級に際して、私たちは"クラス"というルールに引き裂かれてしまいました。
果たしてそれはよかったのか否か…。幸いにも、彩ちゃんと千聖ちゃんは同じクラスになれたので、クラスで完全に一人ぼっちにはならずに済みましたが。
「…………はぁ。」
「か、花音ちゃん!…まだ個人面談のやつ出してないって、先生が言ってたよ??」
「………。」
「花音…ちゃん??」
「ふぇっ!?…あ、あぁ!彩ちゃん…なあに?」
「………あの人のこと、気になるの?」
「…うん。まぁ…気にならない、とは言えないかなぁ…。えへへ。」
もう私は病気なのかもしれない。少しでも何もしてない時間が出来ると、ずっとあの人のことばかり考えてしまうんです。…決していいことじゃなく、脳内が支配されているっていっても間違いじゃない程に。
彩ちゃんも千聖ちゃんも、気を遣って色々気に掛けてくれているみたいで、それもなんだか申し訳なく。
「…どこで間違っちゃったんだろう。」
「どこもなにも、全部あいつでしょ。」
「千聖ちゃんっ!そんな言い方…!!」
「なに?何かおかしいこと言った?」
千聖ちゃん。口ではこう言っているけども、わざわざ彼のいるクラスに出向いて情報を持ってきてくれる優しい子。…そう、彼女がこんなふうに彼のことを悪く言うのも理由があるんです。
あれはそう、新学級に馴染めるか不安だった、3年生になってすぐの頃だったかな。
「花音っ!!」
「??千聖…ちゃん?どうしたの?」
「どうしたのじゃないわよ…!あの人のこと、もう、どうでもよくなっちゃったの!?」
「ええと……全然話が掴めないんだけど…。」
「……何も知らないのね…。貴方達、連絡とかとってないの?」
「…たまに電話とか、するけど……。」
一体何があったんでしょう。…一体何があって、千聖ちゃんはこんなに…。
「あの人、今凄い人とお付き合いしてるらしいの。」
「えっ……。」
いつからかはわからない。あの初詣の日に、既にそうなってしまっていたのかも分からなければ、今だって確かに付き合っているという確証もない。…飽く迄、目撃情報や噂レベルの話だけど、と千聖ちゃんは付け足しましたが…。
それでも確かに、それは私との関係に決定的な
…それから暫くの間は、正直あまり覚えていません。千聖ちゃんから聞いた話だと、その場で失神した私は早退させられ、数日安静にと学校を休んだと…。
お陰で、今学校にいる間もこうして物思いに耽ってしまう毎日なんです。
因みにお相手のすごい人っていうのは―――
今じゃすっかり校内でも噂が広がっちゃって…。「無表情以外を見たことがない」「氷の風紀委員長」で有名な
――そう、それが、私の想い人を独占し続ける
勿論、本人たちも公表していませんし、私も直接聞いたわけではありません。それでも、無表情の人に笑顔を与えるほどですから…相変わらず、あなたの魅力は留まる事を知らないんですね…。
…私が入り込める余地なんて、どこにも、無いよ。
「………で、でもさ、花音ちゃん?まだ、噂だけだって可能性もあるわけだし…!」
「………うん、ありがとう。」
「どうかしらね。…花音、傷つきたくないのなら、最悪のことを想定しておくくらいの心構えの方がいいんじゃないの?
あまり楽観的なのもどうかと思うけど。」
「………うん、…ありがとう…」
わかってる。わかってるよ千聖ちゃん。…そんなこと、とっくにわかってるし、…あの初詣の日、逃げてしまった弱い私が、…いや、お願い事なんかしている時点で、もう手遅れだったのかもしれない。
でも、あの人もあの人だよ。確かに平気なフリ、というか…頑張って取り繕うように笑ってはいたけどもさ。気づいて欲しくないって言ってる気持ちも本当は…気づいて欲しかったんだから…。そんなこと考えたところで全ては後の祭り。
結局は行動を起こした"彼"か"氷川さん"の掴んだ結果というか…。あぁもう、また考え込んじゃってる。彼のことで考え込んじゃうとまた…涙が…。
「!?か、花音ちゃん!?…もうっ、千聖ちゃんは言い方がきつすぎるよっ!!」
「事実でしょ。…花音、保健室行く?」
「……………いい。」
「……いい、ってあなた…」
「もう、いいから……そのうち、きっと大丈夫に、なるからっ……だから、放って…おいて…千聖ちゃん…」
悩んだふりをしていた。でも全部、全部とっくにわかっていた。
わかっていて、千聖ちゃんたち二人には迷惑をかけちゃっていた。…甘えてたんです、きっと。
だからこの涙は。この行き場のない哀しみは。…全ては私自身の行動の結果。逃げ続けていたことへの、ツケが回ってきたんです。だから拭わない。
この止まらない涙と一緒に、彼への想いも流れてしまえばいいのに。
『………もしもし?』
「もしもし。」
『……ど、どうしたんだ?いきなり電話なんて。』
「いきなりで不都合でもあった?」
『…いや?別に……。それよりさ、最近あんまり話せてないよな。』
「クラスちがうんだから…仕方ないよ…。」
『そうかもしれないけど…ほら、花音はその、俺の一番のと、友達なんだからさ…。』
「あのさ。」
『えっ…?』
「…もう、やめよう。」
『………なにを?』
「…私、君の友達?にはなりたくないみたいなんだ。」
『花音…何言って…』
「ごめんね。………氷川さんと、仲良くね。」
『えっ?なんでそれを知って……』
「ばいばい………私は、君のこと、………ぅっ」
『か、花音?…ちょっとま』
「さよなら…っ!」
だいすき。…書くとたった四文字の言葉なのに、口にするってとても難しいことなんですね。だってそれは、凄く重い、束縛の言葉。
私は今自分の手でこのあやふやな関係に終わりを齎しました。…これで、よかったんですよ。
全6話に変更しました。