花音 - One second songs - 作:津梨つな
「…できたぁ。」
「………花音。」
「わひゃっ!?」
「……この一週間、黙々と何書いてたの?」
「い、いやっ!?……そ、その、ええと、なんというか」
「見ーせて。」
「う、うーん。あんまりこういうのって、見せないほうがいいかなー、なんて。」
「……………。」
「………???」
「…見せられないようなもの書いてたの?」
「そ、そうじゃないけど……。」
「んん……えいっ。」
「わぁ!?……も、もぉ、いきなり抱きしめるなんて、どういう」
「隙有りぃ!」
「あぁ!?」
「……手紙?…じゃない、か。………小説とか、書くんだ?」
「…うぅ、あんまり見ないでよぉ…。」
「ちょっとまってね?今読んでるから。」
「恥ずかしいし…。」
「………ふむ。…………ふんふん。……ほーん。」
「ふぇぇ…これ、何の時間…?」
「……花音。」
「…なんでしょう…。」
「これさ、名前は出してないけど俺のことでしょ?
…っていうか、高校の時の話ほぼそのまんまじゃん。」
「そ、そーだよっ?だって、一番の思い出なんだもんっ。」
「ふぅん……?…こうして見ると、俺だいぶ嫌なことしてんな。」
「……それに関しては、ノーコメントで。」
「まぁ、紗夜ちゃんの件とかは特に、花音にはこう見えてたんだろうなぁ。」
「う…だ、だって、千聖ちゃんだって最後まで教えてくれなかったし。」
「それはまぁ、俺がお願いしたことだからな。
「俺が花音に振り向いて貰うために色々頑張ってることは言うな」って。」
「で、でも…今は全部知ってるからいいけど、あの時だって一言相談してくれたらよかったのに…。」
「……な。」
「…な、じゃないよぉ!」
「それについては、ほんとごめんとしか言えないけど…。」
「まぁ、確かに最後の一年は凄く変な感じあったよ?彩ちゃんも千聖ちゃんも変によそよそしいし、君の話題出るたびにすごい勢いで話切り替えるし…。」
「うん、その頃にはもう、ね。…まぁ俺らも、花音があそこまで避けると思ってなくてさ。」
「…だって、氷川さんと付き合ってると思ったから…。」
「…ほんと、相談する相手間違えたよなぁ…。」
「それでも、私たち二人だけだったら、それぞれ何も動けないまま、進展も何も無かった気はするけどね…。」
「お互い人を好きになること自体初めてだったもんな。」
「……う、うん…。」
「…………。」
「……………。」
「…な、何か変な雰囲気になっちまったなっ!」
「そ、そうだね…。」
「あ、あれ!?…そういえば、千聖と紗夜ちゃん、来るの明日だったっけ?」
「う、うんっ!氷川さん、…あっ、今は西沢さんだったっけ。…まぁいいや、氷川さんは旦那さんも来るって。」
「西沢…あぁ、そうか。結局あいつら結婚したんだっけ。」
「うん、中学時代からずっと付き合ってたんだもんね…すごいなぁ。」
「まぁな。というか、あの二人が知り合いだったからこそ今のこの状況があるんだけどな?」
「……君と氷川さんが付き合ってないって証明の時に、お世話になったもんね…。」
「ん。……千聖は?そもそも帰国自体久しぶりなんじゃないの?」
「そうみたい…。忙しそうだもんね。」
「確かに勉強はできてたけど…まさか科学者になるとはなぁ…。」
「…うん。私は、彩ちゃんみたいに芸能界とか入るのかなぁって思ってたよ。」
「可愛かったもんなぁ。」
「…………。」
「…ん!?…や、違うぞ。そういう意味じゃなくてね?」
「……ふーん?…散々人をその気にさせておいて、他の女の子とばっかり過ごしてた人ですから?
別に今更、どうでもいいんですけどぉ。」
「…ごめんなさい。でもホントに千聖に対してはそういうのないんだ。あいつ怖いし苦手だ。」
「……苦手ってのは初めて聞いたけど。」
「だってさ、あの頃、紗夜ちゃんと一緒になって俺に色々教え込んできたけどさ。
…花音に告白する方法とか、傷つけない扱い方とか、女の子と付き合うってことがどういうことかとかさ…
事あるごとに「そんなだからお前はダメだ」とか「そのままじゃ花音を傷つけてしまう」とか「お前みたいなチキン野郎は女の子を幸せにできない」とかさ…」
「えっ、そんなに言われてたの?」
「あぁ、あれはまさに
「……そっちもそっちで大変だったんだね。」
「女の子一人付き合うのにあんなに大変な思いしなきゃいけないんだしな…俺は死ぬまで花音一筋で行くよ。」
「…それは、あの過程が面倒だから…てこと?」
「……そう穿った考え方をするのは変わらないなお前は…。
そうじゃなくて、ずっと花音しか見えてこなかったし、他の子のことなんか考えたこともなかったんだ。…初めて話しかけたあの日から。」
「………そっちこそ、そういう恥ずかしいことさらっと言えるの、変わってないよね。」
「だって……本当だからさ…。」
「…ま、毎回嬉しいけど恥ずかしくなっちゃって、うわーってなっちゃうんだから。…ほんと、これだけはずっと慣れないよぅ…。」
「そんなに恥ずかしい??」
「照れるもん…。」
「……可愛いじゃん。」
「ふぇっ!?…ふ、ふぇぇ……ありがとぉ…。」
「……ん。…あれ?そういえば、そもそも何で小説なんか…。」
「…ええと、…明日、初めての結婚記念日でしょ?」
「あぁ。」
「だから、その前に、ね?あなたと一緒になるきっかけになった、あの頃の思い出をまとめてみようと思って…。
あっ、でもね?最初は日記みたいにしようと思ったんだよっ?…でもほら…書き始めると段々…」
「……楽しくなってきちゃったの?」
「……うん。手が止まらなくなっちゃって…。」
「そっか…。まぁ、後ろからずっと見てる分には楽しめたからいいかな。」
「ふぇっ?…み、見てたの?」
「うん。「うぅん…うーん…」って、ずーっと考え込んでるところとか、最高に可愛かったよ。」
「も、もぉ!またそういうこと言う…」
「はははは!!……あの頃は色々嫌な思いもさせちゃったけど、今一緒にいられて凄く幸せなんだ。
ずっと、死ぬまでずっと…花音の傍から離れないからな。」
「……う、ん。………ずっと?」
「あぁ。…永遠って言葉は、使わないほうがいいんだもんな?」
「そ、そういうつもりじゃないんだけど…。ただ、お互いよく知らないのに軽々しく使う言葉じゃないなぁって…。」
「………明日はあいつら来ちゃうし、今日二人だけで先にお祝いしないか?」
「…もう、すぐ話逸らすぅ……。今日?」
「うん。…嫌か?」
「…ううん。私は、君と一緒に過ごせるならなんでも幸せだから。嫌なんてことは何もないよ。」
「まじ?」
「うんっ。…何処か行く?おうちでお祝いする?」
「やったぜ。……そうだなぁ。俺も花音が居てくれたら場所はどこでもいいんだよなぁ…。」
「えへへ…じゃあ、おうちでミニパーティみたいにしよっか?」
「おぉ、いいね。…花音ちゃんの手料理かぁ!」
「もぉ、いつも食べてるでしょ??……じゃあ今日も、君の好きな料理いっぱい作ってあげる、ね?」
「まじか!よっしゃぁぁあ!!」
「ふふっ、喜びすぎだよ。…可愛いね。」
これにて本当に完結です。
お読みいただき、ありがとうございました。
花音ちゃんと、花音ちゃん好きの皆様に幸あれ。