地の底に星を求めて   作:ヴォイ

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感想来ててウレシイ…(歓喜)
元々オリジナルで書こうとしてて元ネタにより過ぎててアレじゃない?と思い悩んだ末に原作オリジナル、タグにブラボと妙な事になってる変なのですがよろしくお願いします


3.正義の剣士、ブラッディ☆レオ、参上!

 奇妙に赤い月の照らす中、おかしくなった街を進む。そろそろ駅からそこそこ離れて普通の飲食店が並ぶ区画からアレなホテルとかよくわからない謎の店などが並ぶ区画へと入る。断続的に狂った獣が襲いかかってくるのは相変わらずだが数が多かったり、サイズがデカかったり、なにやら“中心”に近づいているような感覚はある。獣だけではなく最初に出会った狼人間のような、元人間と分かるモノも一緒に襲いかかってきたりもする。

 

 全て潰して、潰して、潰して、弾ける血を思う様浴びているが、最初と比べれば随分冷静さが保てるようになってきている。最初のように放心していたら、あっという間に群がられて彼らの餌の仲間入りを果たしていただろう。それを思えば僕はかなり成長しているのだろう。この夜の中で、僅かの時間の間に。それはきっと、決して良いことではない。

 

 奇妙な確信がある。しかし、血に導かれるままに、獲物を探し、殺し、殺し、先へと進んでいく。入り組んだ街路を抜けるとパッと視界が開けた。大きな建物だ。

 

「……バッティングセンター?」

 

 建物に近づいて看板を見てみる。看板の文字はほとんど剥げてしまって非常に分かりづらかったが、バッティングセンターの他に室内プールなど色々入っている総合施設だったらしい。地図を見るにかなり広い敷地だ。こんな所にそんなのがあったとは。ただ、壁は広く錆つき、変色し、広めの駐車場のアスファルトはボロボロで、あちこちから土が覗き、枯れ草が茫々に生えている。すっかり寂れてしまっているようだ。

 

 入り口を探すと、ガラスの自動ドアが全壊し、周囲にはその破片が飛び散っていた。ジャリジャリとガラスを踏みながら中へ入ると、いくつもの狼人間の死体が転がっていた。手足どころか、頭まで獣になっているようなものも多い。そして奥の方からはグチャリ、グチャリと、重い水音が聞こえてくる。何か鈍器のようなもので、死体を潰すような音だ。僕が獣を踏みにじるときと同じような音。

 

 この死体の山を作った獣がこの先にいるのだろう。たぶん、今までのような、適当に蹴散らせるようなモノとは違う。そんな獣が。

 

 死体を踏み越え、血の染みに塗れた受付を抜ける。本来であればブースごとに区切られていたのだろう、バッティングセンターの高い天井、大半が割れるか、消えるかして、頼りない数の明かりだけが照らす広い空間。その中心で黒い塊がうずくまっていた。丸太のような腕を振り上げ、下ろす。これまでの狼人間は肥大化しているとしてもせいぜい通常の人間サイズであったがそれを遥かに超えていた。うずくまっていて分かりづらいが、2メートル半ばはあるのではないか。

 

 そして腕に握るのは光を鈍く反射する細い鉄の棒、金属バットだろうか。巨体に比して小さいため酷くアンバランスに見える、それが振り下ろされる。肉を潰す音が響く。足元にもはやほとんど原型を留めない死体のようなものがあるのに気づいた。他の死体たちと違い、念入りに、念入りに潰されている。どれほど繰り返したのかわからないほどに。

 

「……アァ」

 

 奇妙に歪んだ小さな嗚咽。巨体がこちらに気づき、あるいはとうに気づいていたのだろうか。ゆっくりと首を回しこちらを見据える。狼のような、奇妙な獣の顔。充血した瞳だけが人のようで、しかし、やはり狂い融け、それでもなぜかこれまでの獣と違い理性の欠片を感じさせる、悍ましい視線。大きく息が吸われ、巨体の喉から、人の声のような、獣の咆哮のような歪な轟音が発せられる。

 

 ぐっと足に力を込めたかと思うと、巨体が嘘のように宙を舞う。はるか高くの天井に、それでも頭をぶつけるのではないかというほどに。可笑しくなるほどに長い時間を経て巨体が目の前に落ちる。樹脂製の床材が弾け飛び、それとともに巨獣は再び吠え猛る。戦い、倒さなければ。背を向ければ瞬く間に死体の山の仲間入りを果たすことだろう。

 

 力任せに振り回されたバットを屈んで避け、斜め前へと跳んで背後を取る。空気が破裂する爆音が耳元で響くのを無視し、巨獣の背に杭の右腕を突き立てる。が、浅い手応え。剛毛と分厚い肉に阻まれ、軽い出血に留まる。振り向きながらバックハンドで薙ぎ払われる巨獣の左腕をバックステップで避けながら様子を伺う。こちらに向き直った獣は、乱杭歯が覗く口の端から汚らしい唾液がたらし、再び飛びかかってくる。

 

 最初よりも速い。加減していたとでも言うのか。際どいタイミングでなんとか回避すると、今度は右腕に“爪”を作り、数度獣の背を切り裂いた。やはり硬く、大した傷は付かないが、それでも血は流れ出ている。人間サイズの獣と違い、この巨体を怯ませるのは無理だろう。だからこのまま切り刻む。

 

 右腕のバットの振り下ろし、薙ぎ払い、左腕の背後攻撃、掴みかかり。後ろへ、後ろへ巨体の周囲を回りながら張り付くように。高く飛び上がっての踏み潰しを前方に飛び込みながら転がることで回避、すぐに起き上がり背を晒した獣を刻む。

 

 苦し紛れの咆哮。悍ましい、人の、獣の、叫び声。物理的な圧を伴うようなそれを無視して飛び込み、さらに刻む。

 

 血が流れる。少しずつ飛び散る。返り血を浴びるほどに思考が冴え渡っていくようだった。目の前、まさに紙一重をバットが通る。巨獣の蛮用に耐えきれず、捩れくれた木のように曲がっている。一瞬で通り過ぎたはずのそれが細部までよく見えた。前へと踏み出し、引き裂く。太い首を伸ばして噛みつこうとしてくるがバカ正直に目の前に留まっているはずもない。既に背後へ抜けている。そしてさらに連撃を加えていく。

 

 巨獣の動きは少しずつ巧妙になっていく。こちらを適当に叩き潰せる羽虫でないと認めたのだろうか。力を抜いた速い振り、逆に力を溜めて振り下ろす遅い攻撃。フェイントを織り交ぜた乱打は、獣そのものであればできない技だろう。だがそれも全て見えている。早く振るならば硬化させた左腕で弾き、遅い攻撃は無視して背後に回る。

 

 どれほど時間が過ぎただろうか。

 

 全身が巨獣の血に塗れている。獣もまた全身から血を流し、元から黒い体毛を赤黒く染めている。力を込めた全力の攻撃。破れかぶれとしか言いようがないそれを余裕を持って避け、左腕に力を込める。鉄のように、槌のように、爪の間から血が溢れ、左拳を覆い固める。

 

 全力で叩きつけた。

 

「ガァッ!?」

 

 大きくよろけ尻餅をついた獣の懐に飛び込み、今度は右腕。手刀を血の杭に。勢いよく突き、貫く。

 

 巨獣の背まで右腕が抜け、大量の血が吹き出した。ヤクザキックを叩きつけ、傷口を大きく抉りながら右腕を引き抜く。さらに勢いよく、噴水のようなが溢れ、全身に浴びた。吹き飛んだ獣は力なく倒れ、体に開いた大穴から滾々と血が流れ、大きな血溜まりを作る。それを他人事のように眺めながら、僕は強い酩酊感に襲われていた。最初に血を浴びたときと同じほど、いや、それをはるかに超える強烈な快感だ。さらにそれとともに、何かが流れ込んでくる。

 

 小学生の頃、父親と一緒にバッティングセンターへ。自分はあまり打てなかったけれど、父は何度も快音をあげ、何度か行ったうちの一度だけだったけれどホームランの的に当てていた。商品のお菓子を一緒に食べた。僕は父が大好きで、とても尊敬していた。

 

 中学生の頃にバッティングセンターは潰れてしまったけれど、部活の仲間と一緒に野球をするほうが楽しくなっていた。高校生になっても部活は続ける。練習はもっとキツくなったし、やめたいと思うことも増えた。でも、たまに友人たちと一緒に練習帰りにラーメンを食べるのだ。人生最高の味。これだけでまだまだやれると、そう思っていた。結局、部活よりも“遊び”の方が楽しくなって……? 

 

「なんだ、これ」

 

 僕はこんなことは知らない。父親はこんな顔ではなかったし、野球なんてまともにやったこともない。学校と部活と四六時中一緒にいた友人たち、そんなものはいない。どうしようなく親しく感じる少年たち、そんな顔は知らない。

 

 唐突に理解する。血は意思を宿し、その遺志の媒介となるのだ。いや、血こそがその存在の本質であり、獣の血を浴びる、血を得るということはつまりその全存在を

 

「ぁガッ!?」

 

 鈍い衝撃。全く死に体であったはずの獣がよろよろと起き上がり、爛々と輝く融けた瞳に、殺意と憎悪を滾らせてこちらを睨みつけていた。しかしそれも一瞬のこと。投げつけられたバットが地に落ちカラカラと音を立てて転がる。呆けていた僕の目の前には巨獣の乱杭歯と黄ばんだ粘液に覆われた口腔、その奥の深い闇がポッカリと口を開けていた。喰い殺されるときは、案外とあっさりなのだな。走馬灯のように時間が加速する中、思えたのはそんな呑気な感想だけだった。

 

「待てぇーッ!!!」

 

 パンッパンッパンッ、乾いた音が連続する。

 

「ギィッ!」

 

 駆け込んできた人影が獣に向けて、片手に持った大型の拳銃から弾丸を撃ち放ったのだ。横っ面に直撃し、血飛沫が爆ぜた。怯んだ獣は獣は跳び退ると、じりじりと下がったかと思うと、建物の屋根に開いた穴から飛び出していった。

 

「……逃げた?」

 

 薄暗がりの中で光る瞳の残影が消えるとともに、僕もすっかり気が抜けて座り込んでしまう。あの傷で、よくもまあ動けるものだ。感心するほど。

 

「むむ、また逃してしまったか……まぁいいや。やぁキミ、ボクが来たからにはもう安心だよ!」

 

 手品のように持っていた銃を消し去った先程の人影、少年……いや、少女だろうか。昔の少女漫画でフランス革命とかしてそうな格好の彼女が僕に手を差し伸べて、白い歯を光らせニッと笑った。

 

「ボクは正義の剣士、ブラッディ・レオ! ヨロシクね!」

 

 見た目にそぐわぬ力強さで僕を引っ張り上げた少女に対して、僕は曖昧な笑顔を返すことしかできなかった。何いってんだこいつ。




パイセンこと獣憑きくんですが獣で先輩とかこれもう間違いねえな?最初はもっと例のアレでパイセンでしたが色々マイルドになってます。野球要素は3デブの切り込み隊長こと守り人の長が持ってきました(謎)。
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