機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再 作:グランクラン
三日月達が決着へと向かう最中の出来事、ハンマーヘッドに潜入に成功したオルガ達一同はダンテと呼ばれる赤みがかった髪をした少年兵に電子戦を任せ自らはブリッジへと攻撃を開始していた。
可燃性のガスを周囲にまき散らしながらも確実に目的地へと突き進もうとしていた。
ブリッジではダンテの電子戦の影響を受け始めていた。
「可燃性のガスが艦内に広がってます!」
「隔壁でガスごとガキどもを閉じ込められねぇのか?」
名瀬の問いに周囲のメンバーは「閉じられません」と否定した。名瀬は「なんで?」と問うと彼女たちは「メインフレームに潜り込まれたみたい。こちらの操作をブロックされ続けてます。ああっモニターまで!」と悲鳴を上げる。
肝心のオルガたちは上から艦内が混乱の真っただ中にあると判断し、その隙に一気にブリッジへと向かおうとするが、シノは艦内が女性だらけである事に多少の違和感を抱えていた。
「しかし、さっきから女しか出てこねぇぞ」
オルガの「知るかよ」という言葉とともにブリッジへと目指し動き始め、名瀬達がもたもたしている間にオルガたちはブリッジまでたどり着いた。
「ほう……さすがは死神が推薦した奴らってわけだ」
「俺達がらただのガキじゃねぇって事が分かってもらえましたかね?」
「良いだろうお前らの覚悟見せて貰った。死神との契約でもあるしなお前らとの交渉を始めようじゃねぇか。アミダにつないでくれ。祭りは終わりだ」
それが戦いが終結に向かった流れだった。
名瀬は帰還したアミダを格納庫まで迎えに行き、アミダを手で呼ぶと彼女も名瀬へと近づいていく。
「ご苦労さん。どうだった?」
「楽しいもんじゃないさ、子供とやり合うなんてね。でも、中々見どころのある坊や達だったよ」
名瀬は「だな」とだけ答える最中、アジーがアミダと名瀬に近づいていく。
「すいません姐さん。足引っ張ってしまって」
「油断したねアジー」
言い返せないアジーを決して咎めないアミダ。
同じ時間イサリビの中でもパイロットたちが帰還を果たしていた。
ヤマギはグレイズから昭弘を、タカキはビスケットの相手をしていると雪之丞は申し訳なさそうな表情で三日月を出迎えた。
「悪かったな。調整の出来てねぇ半端な機体で無理させちまってよ」
「おやっさんのせいじゃないよ。で、結局どうなったの?」
「今からオルガがお嬢さんを連れてナシつけに行くってよ。多分ビスケットも行くんじゃねぇか?」
三日月は「そっか」とだけしか言えなかった。
名瀬との交渉は特別な部屋で行われ、ソファにはオルガとクーデリアが、その後ろではユージンとビスケットが立っていた。
「そっちの坊やは良いのかい?あんたはモビルスーツパイロットだったんだろ?」
「え?あ、はい。僕は大丈夫です」
アミダはビスケットへとそう語りかけると、オルガのカップに紅茶を濯ぐ女性を見ながらいい加減気になっていたことを尋ねる。
「この船女性しか見かけないんすけど……」
名瀬は「そりゃそうだ」とだけ言い当然だと言わんばかりにはっきりと告げる。
「ここは俺のハーレムだからな。この船の乗員は全員俺の女ってわけだ」
ビスケットは「全員……」と引き、クーデリアも「奥さんなのですか?」なんて言いながら慄く。
「まあそう言う事だな。後いるのは………子供が五人くらいか」
クーデリアは頬を赤らめながら「5!?」と数を驚き、オルガは「その子供ってのは……」と分かっていながら尋ねる。
「全部俺の子に決まってんだろ。まっどれも腹違いだがな」
アミダは「いい加減くだらないこと言ってないで……仕事だろ?」と忠告すると名瀬は「おっとそうだな」と切り替える。
「お前たちの事は『死神』から聞いてる。クーデリア・藍那・バーンスタインを地球への案内役だったな。お前たち個人はどうするんだ?」
名瀬の鋭い問いにオルガは鋭い目つきを止めないようにはっきりと告げた。
「俺達鉄華団をテイワズの傘下に入れてもらえないでしょうか?」
「まあ、その辺も『死神』から一通り頼まれているしな。うちもできるなら『フォートレス』とはきっちりしていたいしな。いいだろう。オヤジに話を通してやる」
その言葉を人取り聞いたクーデリアが「お父様と交渉……ですか?」と呟く。すると名瀬は「違うって」と否定するとクーデリアの後ろでビスケットが補足する。
「テイワズのボス、マクマード・バリストンさんの事ですね。そうだ……あの…死神ってなんですか?それと……フォートレス…も」
名瀬は「どこまで話したものか……」なんて呟きながら『ギャラルホルン』について鉄華団に尋ねる。すると、ユージンが「軍隊だろ?よく分かってねぇけど」なんて呟くのを聞いたクーデリアが自分が知る限りの知識を口にする。
「三百年前厄祭戦を終わらせたその後も強大な軍事力を背景に戦争が起きないよう四つの経済圏を外部から監視する組織、それがギャラルホルンです」
「そいつを各経済圏が重荷に感じ始めている。最近のギャラルホルンは自分達の利益追求に走っているからなぁ。で、そんな時にこのお嬢さんが現れた。『ノアキスの七月会議』のクーデリア。火星独立をまとめた時代のヒロイン。一地方の独立運動家がギャラルホルンを飛び越えて独自に地球経済圏のトップと会談する。もし、それが実現したら一大事だ。それこそギャラルホルンの支配体制を揺るがしかねねぇほどのな。そして、それを軍事力的な意味合いで可能な組織は今や一つしかない。それが『フォートレス』だ」
ユージンは「よく分かんねぇけど……すげぇ人と組織だってのは分かった」とよく理解していない表情をしている。
「それで死神がそこのエージェントの固有名だな。エージェントクラスだと単機でその辺の組織なら壊滅できるほどの実力を持ち、フォートレスの中でも重要な仕事を任され、直接ボスへと接触できる数少ない人物でもある。『死神』とくれば有名なのは『金星事変』だな」
名瀬の告げる事件の名前にあまり聞きなじみのない鉄華団のメンバーに対し、名瀬は真剣な面持ちで話しかけた。
「一年前に金星のコロニーで起きた違法組織の壊滅事件だ。それをたった単機のモビルスーツが起こし、ギャラルホルンに知られることなく撤退したのは有名な事件だ」
金星で起きたある事件。
それは違法組織が金星のコロニーを使って資金のやりくりをしているという話を聞いたフォートレスがそれの撲滅を含めた一大事件。
それを鉄華団のメンバーが知らなくても仕方がない。
ギャラルホルンへの情報はあえて封鎖され、一般にも公表されることはあまりなかった。実際のニュースではガスによる爆発事故として発表され、事実を歪められた。
しかし真実はたった一機のモビルスーツがニ十機のモビルスーツを壊滅させ、その反動でコロニーが崩壊してしまったのは裏社会ではもはや有名な事件でもあった。
ある意味裏社会で『フォートレス』を恐れるには十分な事件で、この裏でいくつかの組織をフォートレスは揉みつぶした。
『フォートレスを怒らせるな。怒らせると潰されるぞ』
そんな合言葉が裏社会でよく耳にするようになった事件。
裏社会でもテイワズのような商売を縄張りにしている者達は噂ばかりだと信じる者は少ないが、マクマードは「あいつらならやりかねない」とし、テイワズ傘下の組織にフォートレスとの直接対決をさせないようにしていた。
オルガと三日月が話をしている時、三日月は「役に立てなかった」と自らを厳しくしている姿をオルガは少しだけ恐怖を感じずにはいられない。
オルガはここ最近三日月が『何か』に対し嫉妬に近い感情を抱いていると感じており、まともに話せていない。
『誰か』を意識して戦い、毎日を『誰か』への対策へと走っている。
そんな話をしていた直後オルガは何故に金策に走る為に話し合いに向かっていた。
話が無事終わり、オルガ達鉄華団は金のめどを立てたとき、名瀬に『ある人物』からの預かりモノを託された。
アトラとクーデリアが名瀬の子供達と逢っている頃、ビスケットは一人隠れるようにサブレからのメッセージを聞いていた。
「これを聞いているってことは名瀬・タービンとの交渉を無事終えたという事だと判断する。これはあくまでも無事終わり、名瀬・タービンを納得させたときだけ渡すようにと伝えてある」
「こういうことは……ちゃんと話してほしかったな」
「俺が出来ることはこれで全部だ。最もこれは俺の仕事でもある。忠告もしておくが俺達の仕事の邪魔をするならいくら兄さん達でも容赦をしない。それだけは分かっていてくれ。その上で先に告げておく。ここから先は死地だ。いつ死ぬのかも分からない場所だ。引き返すならここで最後だと思ってくれ。怖いのなら引き返してくれ」
サブレからの沈黙が続く。
そうしているとこれが録画映像ではないことにビスケットは気が付いてしまった。
そう、これは今実際に通信している。どうやって通信しているのかは分からなかったが、確実にこれは通信をしている。
「気が付いたか……まあ、合格ラインだな。これはアリアドネをウチが使いながら連絡を飛ばしている。この機械なら俺達と好きなだけ連絡が取れるわけだ」
「………アリアドネを使用しているってどういう意味?」
「そのままだ。アリアドネを管理しているのは実質ギャラルホルンじゃない、俺達だ。俺達が時間を掛けながら確実にアリアドネを支配していった。三百年かけてな。だから、ギャラルホルンは俺達に自由に覗かれているのと同じなんだ。だから兄さん達がどこにいるのかもおおよそ検討を付けている」
「金星事変もサブレが起こしていたの?」
「俺が起こしたなんて言われ方をすると語弊があるが俺が起こしたわけじゃない。あれは突入部隊が失敗してしまい、俺が尻拭いをさせられた結果だ。まあ、コロニーを壊滅させたのは悪かったと思っているが、こっちだって死ぬ思いだったんだからイーブンだろ」
サブレは外面の奥でコーヒーを入れながらもう一度席に着く。すると、サブレがいる場所が祖母の家だという事に気が付き、同時に外からは『ハロー!』と言う機械の音とクッキーとクラッカの遊ぶ声が聞えてきた。
「俺の事よりそっちの心配をしたらどうなんだ?多分兄さん達が思っているほど簡単な状況じゃないはずだ。気を抜けばやられるのは変わらないんだぞ」
「心配だよ………オルガはオルガで焦っているみたいに生き急ぐし、三日月は三日月で……」
サブレはビスケットの話を聞きながら膝をつき黙って話を聞いている。
「サブレだってそうだ。皆………危険な事をするし、もう少し安全な方法だってあるはずだし………それだけでいいと思うのに」
「それで何かが変わるなら俺だってそうするさ。でも、自分で動かなきゃ世界は変わらない。それは分かっているはずだろ?俺達は両親にすがるだけで何かが変わったのか?」
「変わってほしいと思うよ………でも怖いんだよ!!サブレにはわかんないよ!三日月だって!オルガだって!俺は………皆に死んでほしくない」
サブレはビスケットの怒鳴り声を黙って涼しげに聞きながら心の中で「ストレスたまっているな」と他人事のように考えていた。
ビスケットはここ最近命懸けの戦いが続き、そのど真ん中で戦っているためかストレスが非常に溜まっている。
「死んでほしくないから戦うんじゃないのか?」
「え?」
「そうだろ?死んでほしくないから戦うんだ。時にそれがストイックに見えるかもしれないし、守りたいから生き急いでいるように見えるかもしれないけれど、それはそれだけ仲間達の事を大事にしているって証拠だろ。兄さんの事だって大事に思っている証拠だ。それを疑ったりするのはさすがにどうかと思うけどな。それに……本当に間違っている事なら兄さんが止めればいいだけの話だ」
「俺の……話なんて…」
「それこそ怒鳴って止めればいいだけだろ?俺に怒鳴れて他にできない理屈がよく分からないし。それに………本当に大切なら怒鳴って止めるだろ?本当に真剣に『仲間』の事を考えているのなら………な」
仲間という言葉にビスケット自身はオルガや三日月達を思い出す。
オルガが頑張るのは仲間達がいるからだとわかってはいる。
『頼ってほしい』
そんな言葉を吐けないのは自分だって同じじゃないか。
「俺達の組織じゃ兄さん達のような組織をある人達になぞらえてこう呼ぶんだ……『鉄血のオルフェンズ』とね。血が鉄のように固まって絆になる。そうやって家族のような絆が出来ていく」
「………?『鉄血のオルフェンズ』?」
「俺達一族の祖先でもあるらしいよ。かつてのガンダムパイロットの集団の呼称でもあるらしく、裏切りによって崩壊した集団らしいんだよね。俺達はその生き残りってわけだ。オルフェンズはそのまま『孤児たち』だな。そういう意味じゃ兄さん達に相応しい名前だと思うけれど?」
「そんなカッコイイものじゃないよ」
「かっこいいかどうかなんて決められるものじゃないだろ?でも、そういう人たちは泥臭く生き、みっともなく生き残り、死んでいった仲間達の分まで信じたんだろ?それでも、彼らは『オルフェンズ』を捨てられなかったんだし。だからこそ、家族を知る人間が必要だと俺は思うけれど。兄さんのように……ちゃんとブレーキを踏むことが出来る人間がな」
ビスケットは涙を流しながらサブレに「ありがとう」と呟いた。
「俺達は死神だ。兄さんだって死神の片割れなんだからな。俺は……それだけ伝えたかった。たとえこの先戦っても俺はそれだけは忘れない。俺達は双子で……」
「俺達は死神なんだよね」
テイワズの本拠地歳星へたどり着いた鉄華団はタービンズと兄弟の盃を交わす。その間にサブレ達の元にブルワーズの情報がやってくるのを機に休暇を終えて仕事に戻る事になる。寂しがるクッキーとクラッカ相手に寂しくないようにサブレはハロを作ってやることにする。
次回機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再第十二話『おくりもの』