機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再 作:グランクラン
「そう言えばマクマード・バリストンって圏外圏で一番恐ろしい男って言われているんだっけ?」
俺は机の上に広げているガラクタの類をかき集め、溶かし、繋ぎ、組み立てる作業中にふと尋ねる。俺の後ろで俺がクリュセのゴミ捨て場やがらくたショップから購入してきたがらくたを、興味なさそうにいじっている親父こと『マハラジャ・ダースリン』に尋ねる。
親父は「ああそう言われているな」などと心底興味なさそうな声を発しているので、本当に興味が無いのだろう。
この人はこういう人である。
「テイワズってそんなに大きな組織だったんだ」
「まあ所詮はマフィアだ。マフィア故にこうして恐れられているってだけだ。実際はそれなりに気前のいい男だがな」
この人がこういうぐらいだからそうなのだろう。
しかし、親父の興味は俺が作っているモノにあるようで覗き込んでくる。
ちなみに俺達が今いるのはお祖母ちゃん家のリビングスペースである。
「何を作っているんだ?」
「『ハロ』だけど?もうすぐ休暇も終わりだし、その前にクッキーとクラッカにプレゼントしようと思ってね。あの二人意外とハロを気に入ったらしくて」
「ああ、お前が友達欲しさに作ったAI搭載ロボットか」
「虚偽の噂話が混じっているな。歳か?」
「?ああ、そう言うことにしておいてやろう。全く子供だな」
子供だよ。子供でいる間は子供でいるさ。
大人のふりをする子供にはなりたくないしな。
「あ、パーツが足りない。仕方ないな」
なんて言いながら俺は立ち上がりそのまま玄関から出ていくと、モビルスーツやモビルアーマーが農作業をしているという不思議な光景を前になれ親しみを覚え、その奥では二人の妹達がハロを追いかけまわしながら遊んでいる。
あと少ししか居てやれない。
フォートレスの特別メンバーが防衛用の設備をあと少しで完成させようとしており、後ろでは実際にその為の大掛かりな設備が仮完成をみせようとしている。
あれが完成したら俺達はこの辺の防衛の仕事は終わり、ブルワーズを追いかけなければならない。アルベルトが言うにはブルワーズの足取りをようやく掴めそうだというので時間的にもちょうどいいだろう。
俺はバイクにまたがりそのままクリュセへと移動して行く。
家を離れる際一瞬だがアガレスの横顔が見えた気がした。
オルガ達がマクマードと面会し、兄妹の契りを交わすための話し合いをしている最中、昭弘はラフタ相手にしつこく訓練を申し込んでおり、アジーとアトラはキッチンで食事の準備をしている。
そんな最中の出来事、子供の一人が「アトラ、オルガ達にどうしてついていかなかったの?」なんてことを訪ねてきた。
脇で摘まみ食いをしようとしている子供が「女だからだろ。女は弱ぇから連れてったら邪魔になるしな……」と言うとアジーは後ろから頭に拳でしめる。
「でもクーデリアは女だけど一緒に行ったよ」
ご飯を食べ終えた机を拭きながらアミダが絡んでくる。
「男の度量ってのはね愛の量で決まるんだよ。男の中にゃね持っている愛がやたら多い奴がいる。その愛はたとえ多くの女に配分されても普通の男の愛なんかよりずっとでかくて心も体も芯の芯から満足できるのさ。あんたはさ、ザラザラしたもろこしのパンを独占するのととびっきりの極上の肉をみんなで味わうのどっちがいい?」
アトラは『パン?』と疑問声を発し、アミダはそんなアトラに対し驚きの声を上げる。
「あっ……ごめんなさい。肉って本物のお肉ですよね……食べたこと無いですしなんだかかわいそうで……それに女将さんの焼くパンはとても美味しいので」
そんなアトラの答えにアミダは優しい表情を浮かべる。
「あんたいい奥さんになれるよ」
「本当ですか!?」
嬉しそうにはしゃぐアトラをを見ながら小さく―――――、
「男選びさえ間違えなきゃね」と付け加えた。
ギャラルホルン所属のマクギリス・ファリドとガエリオ・ボードウィンはアイン・ダルトンを連れて地球への航路を進んでいた。
マクギリスが裏の情報に詳しい男に探らせているという情報を同じく入手していたのがフォートレスだった。
アインもまたクランク二尉を殺された復讐へと走ろうとし、静かに闘志を燃やしていた。
オルガたちはクーデリアと三日月だけをマクマードの元へと残し、外でマクマードが用意させたお菓子を食べていた。
「なんだろうね?クーデリアさんだけに話って」
ビスケットの問いに名瀬が「恐ろしい人」と言う比喩表現を使いながら口を開く。
「道理の通らんことはしない。一応護衛役もつけたんだろ?」
ビスケットの隣で付いてきていたユージンがドンドン口の中にお菓子を放り込んでいく。
名瀬が「お前らから引き取った諸々」と言いながら電卓をオルガ達三人に見せる。
「この金額でよけりゃ請求をよこしてくれ」
なんて言いながら電卓に書かれている金額に三人は目を引ん剝く思いを抱く。
「玉石混交だったがな。中でもグレイズのリアクターは高く売れた。今エイハブ・リアクターを新規で製造できるのはギャラルホルンだけだからな」
「何から何までその……恩に着ます。えっとあ……兄貴」
「まだその呼び名は早いぜ」
照れながらも「兄貴」と呼ぶオルガに名瀬は提案する。
「歳星は金さえありゃ楽しめる場所だ。少しは息抜きさせてやれ」
「そういうのいつもかみさん達にやってるんですか?」
家族を知らないオルガの素朴な質問をしながら、「いやえっと……」と言いよどむ。
「家族サービスってやつなのかと……」
「女ってのは適度にガスを抜いてやらないと爆発すっからなぁ。家長としては当然の務めってやつだ」
オルガが小さな声で「家長として……」と呟きながら立ち上がりユージンとビスケットに提案する。
「よし!こいつの売り上げで今夜はパァ~っといくか!」
ユージンは「マジでか!?」と驚きながらも喜びを全身で表現し、ビスケットは「待ってよオルガ」と制止するが「こうなったら無理だな」とよく理解しているビスケットは素早く諦めた。
クーデリアはドア前に三日月を護衛役としておきながら煙草の煙を部屋中にまき散らしているマクマードと対話していた。
「あんたが火星独立運動家のお嬢さんか。時の人と会えて光栄だ。火星経済の再生策として地球側が取りまとめていた火星のハーフメタル資源の規制解除を要求。火星での独自流通を実現するため地球くんだりまで出向く。そいつで間違いないな?うちで仕入れた情報じゃ現アーブラウ首長である蒔苗は本気でそいつを通そうとしているらしい」
クーデリア嬉しそうな表情をしながら「本当ですか!?」と尋ねるが、マクマードは多少深刻そうな表情を浮かべる。
「下手をすりゃ戦争になるな。新たな利益を得ようと様々な組織が暗躍する。それこそどんなあくどい手を使っても。しかもこいつは長引く。利権を勝ち取ってもその後の各組織間で亀裂が残るからなぁ」
「どうして……私はただ…」
クーデリア深刻そうな表情にマクマードが提案を受ける。
「テイワズを指名しちゃくれないか。お嬢さんがじきじきに指名した業者って大義名分を得られれば当座の問題に関しちゃこっちでなんとかしてやれる。まっ避けようもねぇ事もあるかもしれねぇが」
「それは……もう少し考える時間を頂けますでしょうか……」
マクマードを見る視線を三日月へと向けるクーデリア、三日月はクーデリアに「これはあんたが決める事だよ」と突きつける。
「どっちにしろこれからも人は死ぬんだ。今までの事で分かってるだろ。これは多分俺が最初に人を殺した時と同じ、クーデリアのこれからの全部を決めるような決断だ。だからこれはクーデリアが自分で決めなくちゃいけないんだ」
三日月の言葉にマクマードは「なるほど」と頷く。
「確かにそいつは一大事だ。いいだろう。しかし、俺はもう老いぼれだ」
「ありがとうございます。では今日はこれで」
スカートの裾を持ち上げて去ろうとするクーデリア、三日月立ち去ろうと振り返ったところでマクマードは「若い衆。名前は?」と尋ねる。
「三日月・オーガス」
「モビルスーツ乗りの奴か。よしお前のモビルスーツうちで見てやろう」
マクマードの提案に三日月は「はぁ?」と返した。
「うちの職人は腕がいいぞ。じじいの気まぐれだ。取り上げやしねぇよ」
酒を飲み過ぎたオルガを抱えて帰って来た。三日月はビスケットにマクマードとクーデリアの会話を全部打ち明けた。
「クーデリアさんは実質テイワズ預かりになるってことか」
「反対した方がよかったかな?」
「どうして?」
「こんな大事な事オルガに聞かずに決めて……」
「組織間の戦争なんてことになったら、うちじゃ手に負えないってことはオルガにだって分かっているはずだよ。いや、本当は今までだってうまくいったからいいけど、本当は俺達の手に負えないことばかりだった」
「でも、オルガの意地のお陰で俺達も夢が見れてる」
「だね。まあオルガにはもう少し俺達を頼ってほしんだけどね」
翌日、盃を交わすためにそれぞれが着替えている最中、シノだけは別行動をしていた。
外で空気を吸っている昭弘の側に近づいていくビスケットは「昭弘はこういうの性に合わないから出ないって言うかと思った」と言う。
「家族の晴れ舞台だからな……」
同じときクーデリアはアトラに手伝ってもらいながらドレスを着ていたが、アトラはクーデリアの顔色が悪い事を指摘する。
「三日月はずっとこんな気持ちを味わっていたのですね……いえ、ずっとお前に同じような指摘を受けました。あの少年はこうなると予想していたのでしょうか?」
かつてサブレが彼女に告げた言葉。それを気が付いた時、クーデリアは彼の言葉を思い出した。
『優しさと甘さは別だ。甘さが自分に帰ってくる場合がある。時に厳しくすることも大切なことだよ。それにこれからあんたがやろうとしていることは優しさだけじゃどうしようもないだろ?クーデリア・藍那・バーンスタイン』
『あんたを狙っている人間だっているんだし、接する人間を疑うぐらいがちょうどいいと思うよ』
サブレは確かにそう告げた。
しかし、今更立ち止まることは出来ないクーデリアはオルガと共にマクマードへと話を付けに行く。
「じゃあ、護衛はこっちで受けるがハーフメタルに関しては仕事が終えるまで考えさせてほしいっと?」
「はい。ある少年から言われました。「優しさだけじゃどうしようもないもない」「疑うぐらいがちょうどいい」と。もう少し私は見てみたいのです。この世界を、その上でキチンと私の手で結論を出したいのです。この手は既に真っ赤に染まっています。これは鉄華団の血です。今私が立ち止まることは彼らに対する裏切りです。私は彼らを歩きながら自分でこの世界を見てみたいのです」
「それでいいのか?鉄華団は?」
「護衛の仕事自体はテイワズの下で引き続き任せてもらえるんですよね?」
「ああ、だがお前の頭としてのメンツは潰れちまうんじゃねぇのか?」
「鉄華団は俺が……いえ、俺らが皆で作る家です。俺のメンツなんて関係ないです。これから何があっても俺らが変わる事はない。俺ら一人一人が鉄華団のことを考えていく、守っていく」
クーデリアとオルガの決意をマクマードは受け入れながら彼らを見送った。
サブレはごみ処理場の中を漁りながら必要なパーツを探し出していた。
するとゴミの中に羽の折れた飛行機のおもちゃを見つけ出しついて手を伸ばしてしまう。
「懐かしいな」
しかし、右翼の部分が折れており、サブレは手持ちの工具でうまくつなげてしまった所で、「これ……いらないな」なんて口に出す。
既に家に大量に飛行機のガラクタが置いてあるのに、これ以上置いてどうするのだと言い聞かせる。
部屋に持ち帰るとジュリエッタが返ってきた際に文句を言われかねないので捨てて帰るしかないと置こうとしたときだった。足元からの視線に気が付くと、五、六歳ぐらいの男の子が物欲しそうな視線を向けていた。
捨てても持っていくだけだろうと思いサブレはおもちゃの飛行機をその少年にくれたやる事にした。
「ありがとう」
少年は感謝の言葉を口にしてそのまま足早に去っていく、
初めてプレゼントをもらった時の事を思い出し、サブレはその場で立ち尽くしてしまった。
初めてマハラジャ邸宅にやって来た時、サブレはマハラジャに「プレゼントは何がいい?」と言いながらショッピングモールに連れまわされたことを覚えている。
しかし、親からプレゼントをもらった事の無いサブレにはどれを選ばいいのか分からず、結果から言えば何も選べなかった。
そんな中目に入ったのが飛行機のラジコンだった。
サブレにはラジコンを操作したことが無い。
もっと言えばサブレは壊れたラジコンの飛行機を持ってはいたため、ラジコン自体は触れたことがある。
しかし、ラジコンを操作したことが無いサブレは珍しい物を見る目をしていた。
次の日自分の部屋にプレゼント用に包装された箱を見付けた。
丁寧に箱を開けると中には飛行機のラジコンが入っていた。
始めてもらったプレゼント。
今でも大切に棚の上に飾っており、今でも大切な思い出の品である。
それからと言うものサブレは色々な物を作って来た。
初めてプレゼントをもらった時の思い出は決して色あせない。
二人の妹にも同じ思いをしてほしいという気持ちからサブレはプレゼントを贈ろうとしていた。
そして、出発当日。
クッキーとクラッカは俺達が出ていくと聞き悲しそうな表情をして見送っていた。
「そんな悲しそうな表情をするな。また帰ってくるからな」
二人は黙って頷く、俺の足元ではハロがウロウロしている。
ここしかないと言うタイミングで俺は小さな包装されたプレゼント箱を二人にプレゼントした。
「開けてみ」
二人は急いで包装を破り捨て、中から取り出した物を見ると興奮したように声を上げた。
「「ハロだ!」」
「二人のハロ。クッキーはピンクでクラッカはオレンジだ。大事に育てるんだぞ」
「「うん!」」
二人は楽しそうにはしゃぎ、その足元では新しいハロが転がっている。
俺のハロもまるで妹を見るような感じで珍しく黙っている。
気持ちを引き締め振り返る。
鉄華団は三日月と別れて際に地球への航路を目指して突き進む中、昭弘は過去を思い出していた。タカキという少年は妹の為にと張り切る彼らの前に宇宙海賊ブルワーズが襲い掛かる。時を同じくしてサブレは明楽の母親から昔話を聞かされる。
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再第十三話『明日からの手紙』