機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再   作:グランクラン

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オリジナル展開が続くドルト編ですが、いたるところに原作と同じ展開が混じっています。ではどうぞ!


守り続けてきた弟

 カヌーレ家をはじめとするドルトカンパニーの上層部と俺こと『サブレ・グリフォン』が実はかかわりがあると知っているのは俺の義理の父親である『マハラジャ・ダースリン』以外に数人しかいない。

 俺からすれば今更『カヌーレ家』にお呼ばれしても大して面白くもない。

 あの頃の俺はあと少しでカヌーレ家に殴り込みをかけていた所だったし、実際父さんに止められるまでそのつもりだった。

 車で今更連れていかれても何とも思わないのが事実で、窓の外から見える景色を見ることで少しだけ気持ちを落ち着かせていると、マスクを付けた怪しげな男が一瞬だけ写った。

 最近変な人が多いな。

 

 フミタンの心は揺れていた。

 本来の役目を果たさず、クーデリアを生かし続けていることに困惑を覚えている。

 責任を果たす事、でもなぜ自分が与えられた役目を放棄してクーデリアを守り続けている。

 しかし、時は決して待ってはくれない。

 時を同じくしてドルトカンパニーとの争いに巻き込まれたオルガ達、組合員からの報告でビスケットとアトラが誘拐されたと聞かされた。

 その情報は瞬く間にフミタンとクーデリアに共有されていく。

 オルガからクーデリアの事を任され、それを簡単に受け入れる度にサブレの言葉が脳裏を過る。

(あの少年は何が言いたかったのだろうか?あの少年は何を知っているのだろうか?)

 多くの人の命を巻き込み、今更引き返す道など残されていない争いが起ころうとしていた。

 

 俺はカヌーレ家の執務室に連れていかれ、大きな執務室で一人「待っていて欲しい」なんて言われても大人しく待っているわけが無く。

 監視カメラが無い事を確認しつつ、何か情報が何かどうかだけ確認する。

 しかし、情報なんてあるわけが無く、あるのはカヌーレ家のパソコンがあるだけ。

「ハロ!元気出せ!」

「そういえば付いてきていたんだっけ?」

 いつの間にか俺の足元で転がっていたハロ。

 俺は良い事を思いつき、ハロを持ち上げてハロの口の中から一本のコードを取り出してパソコンと接続させる。

「ハロ!ロード中!!」

「急げって……見つかったら面倒だぞ」

 するとパソコンの画面にはカヌーレ家の計画書が姿を現し、俺はそれをマジマジと見つめる。

 そこには俺の兄が密かにスラム街と取引をしており、それをドルトカンパニー上層部が知っており、ギャラルホルンのアリアンロッド艦隊と取引している事実が記されていた。

 アリアンロッド艦隊にドルトカンパニーのスラム街の組合員を売り飛ばそうとしている事、それを兄が知って阻止従っていたことまでが記されていた。

 それだけではない。

 ドルトカンパニーの上層部は俺の兄以外にも時折ではあるが、スラム街から子供を引き取っており、そうする事でスラム街から上を目指せるのだと教えることで反乱を押さえていたという事実。

 そこまで俺が知っていたことであるが、問題はその下に記載されていた。

 俺の兄サヴァランとクーデリアをまとめて殺す事でドルトの反乱を引き起こそうとしているという事実。

 そして、その下にはリアルタイムで更新されたクーデリアと呼ばれている少女の写真。

 俺はその少女を知っている。

 三日月が救出したがっていたはずのアトラという名の少女だろう。

「クソが!あのバカ兄貴は……誤解して捕まえたのか!?最悪の事態だろ!」

 俺は手に入れたデータをリアルタイムでフォートレス上層部へと送りつけ、ハロをわきに抱えたまま屋敷から脱出するつもりになった。

 

 クーデリアと誤解されているアトラ、アトラはクーデリアを守る為拷問に耐え抜いていた頃、ビスケットとサヴァランは同じ部屋にいた。

「大した娘だな。まだ何も喋っていないそうだ。あの女の計画について何か知っていることがあるなら話せ。ギャラルホルンとの交渉材料にできる」

 俯きサヴァランと視線を合わせないようにしながら呟く。

「クッキーとクラッカは九歳になったんです……二人があんなに大きくなったのは兄さんが俺達を火星に行かせてくれたお陰です」

「あの時は邪魔だったからそうしたまでだ……」

 ビスケットは顔を上げ兄を怒鳴りつける。

「俺はそんな兄さんの背中に憧れて、いつも追いかけていたのに……なんでその兄さんがこんな真似を!」

「お前達の運んできた武器を手にした組合員が暴動でも起こしてみろ。この機会を待っていたギャラルホルンは大義名分を掲げて鎮圧に乗り出すぞ!血を流すのはお前も暮らしていたスラムの住人だ!それでいいのか!?」

「クーデリアさんをギャラルホルンに差し出して良い理由にはならない!それに……!」

「革命の乙女の身柄を押さえることが出来ればギャラルホルンも満足することが出来るだろう!見せしめの虐殺を回避できるなら理由としては十分だ!」

 ビスケットは自分の話を聞かない兄に涙を流しながら怒鳴りつける。

「彼女はクーデリアさんじゃないんですよ!」

 ビスケットの叫びを前にしてサヴァランは混乱した目つきで視界を泳がせるが、それでも意見を曲げることは無かった。

「いや……彼女はクーデリア・藍那・バーンスタインだ………別人だろうとギャラルホルンを止められるならそれでいい」

「正気ですか……?兄さん……」

「私達には!もはや手段を選んでいる時間はないんだ!」

 

 クーデリアは逃げ出そうとホテルの廊下をこっそりと歩き出し、それに気が付いたフミタンが制止する。

「私が本物だと名乗り出れば……」

「いけませんお嬢様」

 フミタンは強くクーデリアの左腕を掴む。

「今となってはアトラさんが偽者だと分かればその方が危険かもしれません」

「私は大切な家族を……アトラさんや鉄華団の皆さん、それにフミタンを裏切るような真似をしたくないんです!」

 クーデリアのまっすぐな瞳にフミタンの表情が歪む。

「お嬢様はあの頃から何も変わっていませんね。その真直ぐな瞳が私はずっと嫌いでした。何も知らないが故に希望を抱ける。だから現実を知って濁ってしまえばいいと思っていたのに」

「何を言っているの……?」

「ですが変わったのは私の方でした。変わらなければこのような思いを抱かずに済んだのに。どんな行為にも責任は付きまとうものなのですね」

(あの少年が言っていた通りだった。あの見透かしたような少年の言う通りだった)

 クーデリアは何を言われているのか全く理解できず、「お願い分かるように言って」と尋ねるが、それを遮る様に仮面を着けた男が立ちふさがる。

「一度お目にかかりたいと思っていましたよ。クーデリア・藍那・バーンスタイン。君はここで死ぬべき人ではない。すぐにたった方が良い。時期にここは労働者達もよる武装決起で荒れるだろう。その為の武器を鉄華団に運ばせたのは誰だと思う?あなたの支援者であるノブリス・ゴルドンだ。この意味が分からないほど子供でもあるまい。あれはあなたを利用する為に自らの手の者を側に潜り込ませているような男だよ」

「フミタンは私の家族です……!」

「その男の言葉は本当です」

「嘘……嘘よねフミタン……?」

「さようならお嬢様」

 去っていくフミタンを追いかけようとするがそれを仮面を着けた男が遮る。

「革命の乙女たるその身を大切にしたまえ。君は人々の希望になれる」

 

 アトラとビスケットが同じ部屋に閉じ込められいて、何も出来ない時間を過ごしていると大きな爆発音と衝撃が建物中に響き渡る。

 外からは多数の銃撃音が響き渡り、窓の外から閃光手榴弾などの光までが見える。

「何かあったのかな?」

「分かんない。でも………アトラは俺の後ろに隠れてて」

 ビスケットはアトラを守る為に盾になっていると、部屋のカギを強引に壊し侵入してくる一人の少年。

 黒髪の少年明楽は「居たよ!」と大きな声を挙げる。

「サブレ先輩に頼まれて助けに来ました!大丈夫です?」

 二人の手錠を外し、ジョシュアが見張りの男性をいたぶっている姿からアトラとビスケットは視線を外す。

「こっちですよ」

 明楽からの案内を受けながら進んで行く道の先、ようやくの想いで外に出ると後ろからサヴァランが追いかけてくる。

 さすがの明楽とジョシュアですら睨みつけるが、サヴァランは必死になって縋りつくように追いかけてくる。

「頼むその娘を連れてこっちに来てくれ!もうこれしかないんだ!」

 しかし、明楽達は引き渡すつもりは無かったが、全員にとって予想外の人物が現れた。

 カヌーレ家当主のアルガ・カヌーレが汚い路地裏から黒いスーツを着ており、周りにボディーガードを引き連れながら現れた。

 サヴァランも表情を引きつらせ、カヌーレ家当主はサヴァランの前に立つと思いっ切り蹴飛ばした。

「たく………使えん奴だ。結局スラムの人間は成長したところでスラムの人間という事だな。その上誤解して連れてくるとは………まあいい。この女を使えば本物のクーデリア・藍那・バーンスタインが姿を現すだろう」

 倒れるサヴァランを足で踏みつける大柄のボディーガード、ビスケットはとっさに走り出し兄を助けようとするがそのビスケットを殴り飛ばすもう一人のボディーガード。

 カヌーレ家当主はビスケットを踏みつけながら見下す。

「全く。お前達兄弟には手間をかけさせてくれる。特にお前達の弟は面倒だったぞ。幼いながらに我々が両親を殺したと勘付いた時は流石に焦ったものだ」

 ビスケットとサヴァランの目が大きく開き、驚きと混乱を混ぜ込んだような目でカヌーレ家当主を見つめる。

「な………!?何を?」

「フン。情けない兄貴だな。まさかお前達を守る為にお前の弟がどんな苦労をしていたかも知らずに。あのガキがここにいると面倒なんでな。全く。しかし、お前は……もう使えんな。サヴァランを殺せ」

 ビスケットは必死になって抵抗しようとするその姿にカヌーレ家当主が怒りを滲ませ、アトラがビスケット助けに行こうと駆けだそうとするが、明楽がそれを許さない。

「お前が先が良いのかな?どうせ犯罪をするような組織の手先だ。ギャラルホルンに差し出しても同じだろう。我々の秘密を知った可能性が高いお前を生かす理由は無いな」

 そう言いながらハンドガンの銃口をビスケットの頭めがけて照準を付け、引き金を引こうとするが、それを必死で抵抗するサヴァラン。

 サヴァランの鼻先を蹴り飛ばし、怒りのままにビスケットの腹と顔面に蹴りを何度も叩きつける。

 明楽とジョシュアは人質を取られているような状況下で迂闊に動けない状態が続いていた。

 情けなさがそうさせるのか、二人の兄弟の脳裏にサブレの姿がよぎった。

 家族を陰で守り続けてきたたった一人の弟。

 ビスケットが小さな声で「サブレ」と呟くと、その声に「もっと大きな声で聴きたいな」とまるで他人後のような声が近くから聞こえた。

 拳銃の発砲音と同時にボディーガードの二人が頭から血を流して倒れ、カヌーレ家当主の頭が思いっきり吹っ飛ぶ 

 周囲は何が起きたのか、どうして吹っ飛んだのかを理解できずにいると先ほどまでカヌーレ家当主が居た所にサブレがハンドガンを握りしめて立っていた。

「気安く触るな。俺の両親を殺し、兄妹まで手にかけようとするお前を神が許そうが俺が許さない」

 サブレは怒りを表情で感じさせ、逃げようとするカヌーレ家当主の両足にハンドガンで打ち付ける。

 悲鳴を上げ転がり回るカヌーレ家当主は建物の中から姿を現したギャラルホルンに助けを求める。

「サブレ。こっちの片付けは終ったから殺すなら殺せ」

 ギャラルホルンの残酷な言葉を前に表情を引きつらせるカヌーレ家当主、サブレは足蹴にしながらハンドガンの銃口をまっすぐ向ける。

「止めろ!やめろぉ!!」

「金の力で何とかして見せろよ。そうやって今まで虐げてきただろ?」

 サブレはハンドガンを引く指に力を籠め、乾いた発砲音と共にカヌーレ家の頭から大量の血が周囲に散らばる。

 ドルトの反乱はいよいよ止まる事なくひたすら突き進もうとしていた。

 




サブレ達はドルトの反乱の裏に隠れたノブリス・ゴルドンの手先を始末する為動き出し、クーデリア・藍那・バーンスタインを捜すためにドルト3で動き回るオルガ達。すれ違い続ける両者は交わることなくドルトの反乱に巻き込まれていく。
次回機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 第十九話『すれ違いゆく者』
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