機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再   作:グランクラン

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最近Twitterを始めたのは良いのですが特に語ることがオリジナル小説の事ばかりなのはいかがなものでしょうか?と関係無い話から入りましたが、原作の一話のサブレサイド多めの話になります。このペースで終るのが二年ぐらいかかりそう………(汗)


鉄と血

 クリュセ郊外に位置する枯れ果てた火星の大地、『CGS』と大きく書かれた建物の中で黒髪と特徴的な眉毛をしている少々小柄な少年は参番組の隊長を探してさまよっていた。

 窓が無く金属の壁の生活感があまりない廊下を歩いていると、目的の部屋までやって来た。後ろから追いかけてくる褐色肌の中年の男性が追いかけてくるのを感じ、部屋の中を覗いてみると案の定ブーメランのような前髪が特徴の少年が眠っている。

 全く。

 そんな気持ちを抱きながら、仕方なさそうな表情を浮かべてそばまで寄ると名前を呼び。

「オルガ。オルガ・イツカ?まだ寝てるの」

 オルガ・イツカ。

 そう呼ばれた少年は無反応を示し、黒髪の少年はオルガの顔を覗き込む。しかし、オルガはどこかうなされたように表情を歪ませている。

 何度か揺すって起こすと大きく開かれた瞳から動揺が見て取れる。

「おう。ミカか」

 三日月・オーガス。

 それが黒髪の少年の名前だった。

 体を起こすオルガの動きに連動する様にドアの方から褐色肌の中年の男性が体をのぞき込む。

「三日月いたか?」

 三日月が歩き出す中、オルガも後ろからついて行こうとする。しかし、中年の男性は大きくため息を吐き出す。

「ここは立ち入り禁止だっていつも言ってんだろうが」

 オルガが「おやっさん」と呼ぶ中年の男性こそ『ナディ・雪之丞・カナバッサ』という名のCGSの整備長。

「マルバが呼んでるぞ」

 その言葉を耳にしながら内心「またろくでもない話なんだろ」っという悪態をつく。

 

 CGSの参番組に命じられた任務とは、加勢の革命家『クーデリア・藍那・バーンスタイン』の地球への護衛任務。

 長い金髪とお嬢様らしい立ち振る舞いが特徴で、火星のテレビでは連日彼女の噂でいっぱいだった。

 そんな人間がそこまで大きくもない民間傭兵企業の少年兵に仕事を頼む、隊長のオルガと副官のビスケットは疑念が常に頭を抱えており、食事中もその話題が尽きないでいた。

 実際オルガの正面に居た金髪の癖が強い髪をしている少年『ユージン・セブンスターク』がオルガにつかかっていくことも、濃茶色の髪をした陽気な少年『ノルバ・シノ』が女の事で頭を一杯にさせていることも、喧嘩を止めようと耳を引っ張る三日月の行動もいつもの事だ。

 食事を終えて立ち去っていく長身とガタイの良い黒髪の少年『昭弘・アルトランド』に向けて「すまねぇな」と告げると昭弘は「いつもの事だろ」っと皮肉を聞かせて返す。

 食事をとる為に口をモグモグさせているビスケット、何かを思い出しているような顔になる。

「そういえば。シノ達が昨日見つけたモビルスーツの事だけど」

「そうそう!なぁ?ユージン」

 シノがそう語りかけるが、ユージンは耳を痛そうに抑えるだけで反応が薄い。常に喋っているシノの言葉を簡単にまとめるとこうである。

 昨日の仕事帰りに荒野でモビルスーツの戦闘を目撃したのだという。三機の色の違うモビルスーツがたくさんいた(七、八機ほど)の似たようなモビルスーツをあっという間に潰して見せたそうだ。

「見間違いじゃない?」

「おいおい。ビスケット信じてねぇだろ」

「でもなぁ~モビルスーツがいて生きて帰れる?」

「俺達に気が付いてない風だったぜ」

 ビスケットとシノが言い争いになっているとオルガがスプーンで皿を叩きながら口を割り込ませる。

「どうせ、俺達みたいなやつらは眼中にないってことだろ?」

 モビルスーツから見れば彼らが操るモビルワーカー(よく動く戦車のような兵器)など、その辺の石と変わらないのだろう。

 モビルワーカーではモビルスーツには勝てるはずがない。

 この苛立ちは何なのだろうと思う一方でどうしてもビスケットを見てしまう。

 きっとこの苛立ちは夢が原因だとわかっているが、夢を覚えていないオルガには不安な気持ちの方が強い。

 この先何かが起きるような感覚。

 手に残っている不安な感触がそれがまるで夢ではないと告げているようで、暗い表情を三日月だけが見ていた。

 

 クーデリアは本人の強い希望でスラム街を見てからCGS本部へと向かう手筈に変更していた。しかし、車を運転している黒髪のメイド『フミタン・アドモス』は反対していた。

 細い道をクーデリアを載せた車が走る中、問題は起きた。

 車の前に小さな女の子が飛び出してきた。咄嗟にブレーキを踏むフミタン。しかし、フミタンは少女の目と合ったからだろう。少女の瞳が被害を受けそうになっている者の目では無く、獲物を見付けたような瞳だったからだ。

「大丈夫ですか」

 警戒心の無いクーデリアが飛び出していくと、フミタンがそれを止めた。

「いけませんお嬢様」

 同じように飛び出すが、一歩遅く少女は泣きながらクーデリアに飛びつく、引きはがそうと試みるが少女はそれより早く離れて逃げ出していく。その手に財布を握りしめながら。

 クーデリアはとっさの事で目を丸くさせるだけで、盗まれたとはまるで考えていないようで、フミタンは追いかけようと足をそっちに向けたときだった。少女の右腕をつかんで逃がさないように強い力を込めている茶髪の少年に出会った。

 サブレ・グリフォンは少女とクーデリアを見比べながら立ち尽くしていた。

 

 結果から言おう。偶然だ。

 車の前に少女が飛び出した所は全くの偶然目撃しただけだし、その後のお嬢さんの行動は意外だったが、彼女が革命家で有名なクーデリア・藍那・バーンスタインだと気が付いたことに気をとられ、少女が盗む手を止められなかったのは痛手だっただろう。しかし、その後に少女がこちらに走ってきたことは二つ目の偶然だった。

 結果から見れば、俺は狙ったわけでも無く捕まえることが出来た。

「財布を離せば逃がす」

 そう告げると少女は悔しそうに抵抗を試みる。しかし、俺の握力が強すぎると理解できたのか、諦めたのかは分からないが少女は財布を投げ出して逃げ去っていく。

 近くに控えていたボロ布のホームレスの男性が飛びつこうとするが、俺はそれをハンドガンで威嚇してやる。

 ホームレスは驚きと唖然が混じり合ったような感情を表情に浮かべながら逃げていく。

 この辺は治安が悪いな。

 俺は財布を拾ってお嬢さんに返してやる。

「今度は気を付けなよ。この辺は治安が悪いからな」

 財布を受け取るお嬢さんはどこか辛そうに少女が去っていく方向を見つめていた。

 どうしたのだろう?

「あそこまでしなくてもよいのではありませんか?」

 ムッと少しむかつきを覚える。

「優しさと甘さは別だ。甘さが自分に帰ってくる場合がある。時に厳しくすることも大切なことだよ。それにこれからあんたがやろうとしていることは優しさだけじゃどうしようもないだろ?クーデリア・藍那・バーンスタイン」

 驚きで表情が変わる。

「別に驚くべきことではないだろ?あんただって自分の知名度が低いって思っていたわけじゃないだろ?それにこんなスラム街にドレスを着て現れるような人間はあんたぐらいしか知らないしな。気を付けなよ。あんたを狙っている人間だっているんだし、接する人間を疑うぐらいがちょうどいいと思うよ」

 言い過ぎたかな?

 お嬢さんは項垂れながら立ち去っていき車に乗り込む。黒髪のメイドさんはどこか複雑そうな表情でお嬢さんを見ている。

 ふん。この人は訳有りかな?

「後悔しないようにした方がいいよ」

「?どういう意味ですか?」

「老婆心みたいなものかな。お婆さんじゃないけどさ。人間いつ死のぬか分からないからさ後悔しないほうがいいよ。あんたがあのお嬢さんに何を想い付いているのかは俺は興味が無いしさ。でも、見ていると不安になっていくよ」

「私は……別に」

「アンタはどう思っているのか知らないけど、俺から見ればあんたの気持ちは随分揺れているように見えるけど。まあ、好きなようにすればいいけど」

 そう言いながら俺は反対側の喫茶店へと向かって行くが、車はその場から中々動かなかった。

 俺が喫茶店に入ると一番奥の席で飲んで騒いでいる明楽とジョシュアが一定の方向に視線を向けており、その方向を見ないようにしていたのに否応なしにそっちの方を見てしまう。

 円形のテーブルに五人の大男が大騒ぎをしており、薄茶色と黒目のジャケットを着こんでいて、服の背中に『CGS』と太字で書かれている。

 見るからに傲慢そうな大人たちで、大きな声で「あのクソガキ」とか「可愛げがないよな」とか叫んでまわっている。

 不機嫌度合いが上限を超えようとしているのに気が付いてほしい。

 明楽がこちらをチラ見しては恐怖をハンバーガーにかじりつくことでごまかし、ジョシュアは俺が暴れだす時を今か今かと待ちかねている。

 君はそこまでしてまでも暴れて欲しいのかね。

 いいよ。お兄さん暴れちゃうよ。

 俺はドリンクバーへと移動している風を装いそのまま近くまで寄ると俺は椅子の一つを蹴っ飛ばす。

 転げまわる男を冷たい目で見下してみる。他四名が怒りの表情を浮かべ、その内の刈り上げているリーダー格の男が俺の襟もとを強くつかんで持ち上げる。

「ガキがぁ!舐めてんのか?」

「スンませぇん」

 おっちゃらけて返す。まあ、謝るつもりも無いし。

「ぶっ殺すぞ!ガキはガキらしく大人の言う事を聞いてりゃいいんだよ!」

 今の言い方に完全にブチ切れる。多少やり返せればすっきりさせようとか思っていたが、こんな言い方をされたらやり返したくなる。

「子供を盾にしかできない役立たずはホームレスと一緒でしょ?それで金をもらうんだから子供にお礼を言うべきでしょ?」

 額に分かりやすい血管を浮かべ怒りレベルが限界突破の勢いを見せようとする大人げない大人四名に対し、後ろでやる気満々のジョシュア。

 君は楽しそうですね。

「もう一回行ってみろや」

「安っぽい挑発だね。ホームレスさん。子供を盾にして恥ずかしくないんですか?」

 右拳を強く固めて今にも殴りかかろうとするが、それより早く俺は左足で相手の股間を蹴り上げた。

「はう!?」

 情けない言葉と共に地面に付す大男を乗り越えて二人がまず殴りかかっていくが、俺はそれを軽くさばいて見せる。

 右側の男の顎目掛けてアッパーを決めつつもう一人に回し蹴りを決める。

 ジョシュアが喧嘩が始まったと近づいてくると大きな胸元見せつけながら接近する。

 紐ビキニの上に薄手のジャケットにホットパンツという全裸とさほど変わらない格好なのだが、残りの男は近づいて来たジョシュアの胸元に視線を移し、どう遊ぶかで脳内がいっぱいになっている。

「なあなあ。俺達オジサンと遊ばない?」

 ああ。そういう事は駄目だって。絶対酷い目に合うに決まっているんだから。

 なんて思っていると案の定である。胸元に手を伸ばす男の体を片手で一本背負いを決めて見せる。驚いたもう一方の男性を足払いで転げさせると掌にヒールをめり込ませる。

 あれは痛い。

「これで終わり?」

 ジョシュアは心から残念そうな声を出す。

 多少はすっきりしたので良いとしよう。そう思い明楽の方を見ると、明楽は小柄な体にどうやって入ったのか不思議に思うぐらいテーブルに大量の皿が積み重なっていた。

 少しはこっちに興味を示しなさい。

 

 問題が起きたのは俺達がホテルに戻ってきてからだった。十階建てのホテルに七階の部屋を予約したのだが、室内が荒らされていた。

 土足の跡があちらこちらに付いており、鍵穴が壊されていた。机などの引き出しが開けられていて、ベットの下からサポートAIである『ハロ』が丸っこい体を転がしながら現れる。

「侵入者!無念ダ!侵入者!無念ダ!」

 緑色の体をあちらこちらにぶつけては反射して明後日の方向へとぶつかっていく。俺はそれを拾い上げ抱きしめる。

「何があった?」

「侵入者。CGS!」

 あの時の大男か。

 喫茶店で暴れ回った時の……短絡的な思考をしているな。ああいう大人は長生きできそうにないな。

 まあ、咎めるまでもないけれど。

「物盗マレタ!ICチップ!」

 そう言われてベットの下に隠しておいた荷物に手を伸ばす。ほぼ空になっているリュックサックの中を探っていると確かに物は完全に消えていた。

「あのクソホームレスもどきめ。ぶっ殺してやる」

 俺はハロを部屋に置いた状態で勢いよく部屋を出ていった。

 

 胡散臭さは初めから分かっていたし、罠は罠で掻い潜ると決めていた。しかし、ギャラルホルンが動くとは読めきれなかった。

 ギャラルホルン。

 地球に拠点を置く最大規模の軍事組織。と言われているが実際はCGSと根っこを同じにする民間傭兵企業だ。

 しかし、絶大な権力と武力をもって支配権を拡大し続ける彼らを一部の経済圏のトップや一般市民なんかは鬱陶しがるようになった。

 そんなギャラルホルンから攻撃を受けたという事実を前にして一軍と呼ばれる大人たちはすぐさまに逃げ出した。

 しかし、参番組の隊長であるオルガはなんとなくこの状況が読めていた。

 もちろんその備えはしていたつもりだった。

 逃げ出したことへの動揺が部隊全体に広がる。

 オルガにはこのまま逃がすつもりは無かった。

「オルガ!悪い方の読みが当たったよ。一軍は今社長と一緒に裏口から全速で戦闘域を離脱中」

 ビスケットが通信機を持ちながら姿を現すとそんな言葉をオルガに向ける。

「おいおいどうすんだよ!俺らこのままじゃ犬死かよ!」

 ユージンの言葉が更に部隊全員に伝わってしまう。しかし、オルガはこのままで終わらせるつもりも無かった。

「いや。違うな。それじゃ筋が通らねぇ。なぁ?ビスケット」

「だね」

 打ち上げられる信号弾を前にしてギャラルホルンのモビルワーカー隊の進路が急激に変更する。

 しかし、そんなオルガの作戦も三機のモビルスーツの前に沈黙することになる。

 

 双眼鏡でのぞき込む明楽の表情はさえない。それも仕方がないだろう本来であればベットの中に入っている時間だし、目の前で起きている状況はあまり気持ちのいい戦いではないからだ。

 ギャラルホルン製のモビルスーツ『グレイズ』深緑の色合いと頭部がハンマーのように前方に出ている。

 ショートアックスとシールドを装備したモビルスーツを前にCGSのモビルワーカーは戦いにならない戦いを繰り広げていた。

 あれではただの殲滅だろう。

 しかも一機のモビルスーツが一方的な戦いをしており、また今一機のモビルワーカーが空を舞った。

 明楽が耐え切れず立ち上がる。それを左腕で押さえる。

「気持ちは分かる。しかし、お前のモビルスーツだと目立つ。それにここにはアガレスしかない」

「でも!あんなの戦いじゃない!」

 興奮する明楽を俺はあくまでも冷静を装いながら語り掛けてみる。ジョシュアは本を読みながら興味なさそうにしている所が見える。しかし、その手が小さく震えている。

 マントを羽織ったアガレスのアイカメラと俺の視線が合ったような気がする。

 分かっているよ。俺達は戦えない。

 粘っているモビルワーカーの一つに斧を持ち上げようとするが、地面が破壊されるような砂煙と衝撃が俺の方にもよく分かる。

 見ている瞳が大きく開かれるのがよく分かり、アガレスの目が突然姿を現したモビルスーツを捕らえる。

 二本のアンテナにガンダム特有のツインアイカメラ。ガンダムフレームが所々むき出しになっており、特に肩には装甲が付いていない。

「勝てるんですか?」

「さあ?」

 俺は他人事のように答えて見せる。

 

「彼は勝てるのですか?」

 部屋から連れ出したクーデリアは不安そうな面持ちでビスケットを見ていた。それに対してビスケットは消えていったガンダムを見ながら多少見上げて答える。

「さあ?」

 無責任にも聞こえる言葉、クーデリアは驚きを示す。

 その時サブレも同じことを言っていた。

 

「僕達はただ負けないように抗う事しかできない」

 

「彼らに出来ることは負けないように抗う事だけさ」

 

 俺の背筋を流れる汗の正体が突然現れたガンダムにあるのか、それとも全く別の何かなのか?俺にはそれすら分からなかった。




襲い掛かってくるギャラルホルンを前にオルガは三日月にある作戦のかなめを託す。サブレ達が見守る中戦う両勢力。そんな中、監査官として『マクギリス・ファリド』と武官の『ガエリオ・ボードウィン』が現地入りしようとしていた。
次回機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再第二話『バルバトスとアガレス』
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