機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再   作:グランクラン

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最近は私生活が忙しすぎて中々書く機会が少なく、オリジナル小説の方が忙しいのですがお付き合いしていただきありがとうございます。必ず完結させますので最後までお付き合いのほどよろしくお願いします。


エドモントン編
暗躍と復讐


 ガエリオは俯きながらカルタの死を耐え忍んでいたが、正直に言えばカルタの遺体はもう本人なのかを判断することすら難しいほどの肉塊になり果てていた。

 即死だろうと判断され、痛みを感じる間もなく殺されたと聞いたガエリオは怒りを胸の内に抱擁し、マクギリスから説得される形でアイン・ダルトンに阿頼耶識の手術を施す事になった。

 いや、彼も気が付いていたのかもしれない。

 自らの復讐心がガエリオに非情な行動を心がけようとしていたことに、鉄華団の行方が分からない現在、ガエリオは耐えることしかできなかった。

 でも、彼は知らない。

 自らもフォートレスのターゲットに入っていることに。

 

 

 船がアラスカの港に辿り着く頃には寒さでおかしくなりそうになっており、ビスケットはニット帽にダウンジャケットを鉄華団のジャケットの上から来ている。

 隣では同じ格好で寒そうにしている三日月、オルガは防寒ジャケットを上から羽織っている。

 

 そんな彼らの前では同じように防寒ジャケットを着ているマハラジャがモビルワーカーの購入金額のチェックをしている。

 その後目の前でニコニコしている恰幅の良い男性から渡されたタブレットをオルガへと渡す。

 そこにはオルガやビスケットが見たことが無い金額が掛かれていた。

 

「お金はもうアルベルト様からもらっておりますので、大丈夫でございます。これからも我々の商会を」

「ああ、贔屓にさせてもらう。あと済まないがこのモビルワーカーを列車内に積み込んで欲しい。できれば明日の朝にでも出発するつもりだ」

「お代はこちらで持たせ貰いますので安心してください」

「いや、こういう時はちゃんとしたい。お金は支払う」

 

 大人のやり取りをしているのを目の前で見守っていると、終わったばかりのマハラジャオルガに近づいていく。

 

「この金額はこの仕事が終わった後に、我々の仕事をしつつ返してもらう。利子無しで構わん。その代りこのモビルワーカーは全部お前さん達にやるから好きに使え。出発は明日の朝だ」

「そんな時刻で大丈夫っすか? 早めに行った方が良いんじゃ?」

「向こうは理由があって下手に戦力を割くことができない上、最低限でもバッチリ配置している。セブンスターズを相手にするというのはそう言う事だ。持久戦になる上、こういう場合はしっかり準備をすることが大切だ。たくさん怪我人も死人も出るぞ。今のうちに包帯などの消耗品を購入しておけ、こういう時に人数がいる鉄華団が有利だ」

 

 オルガはビスケットと視線を合わせた。

 

「こっちの足元を見ているところが少々気に食わないけど、言う通りだな。ビスケット、他の奴等に買い出しを命じておいてくれ。俺はその間に作戦の詳細を詰めておくから」

「了解。三日月はどうする?」

「………寒いから中入りたい」

 

 

 その後ビスケットはアトラと一緒に食料の買い出し、特に市場へと買い出しにきている中、アトラに気になったことを尋ねたビスケット。

 

「アトラから見てサブレってどんなイメージ?」

「え? う~ん大人びているようなイメージかな? でも、時折冷たいイメージがあるかな? 時々だけど怖い時がある」

「そっか………、昔っからああいうところはあったんだけど、一緒に戦っていた時、アガレスを通じてサブレの冷たいイメージが流れ込んできたときがあったから」

「? どんな感じのイメージ?」

「復讐かな? 深い怒り見たいなイメージがあるんだよね」

 

 アトラは魚介類を探っている手を一旦止めて考え込む。

 

「でもね。私はそういう復讐とかよく分からないけど、そういう冷めきったイメージはないんだ。なんていうか、明楽君と話しているときとか時折楽しそうにしているし、人って多面性を持っているじゃない? ビスケットだってそういう複雑な一面を持っているし」

「まあね」

「サブレしか知らない事って多いと思うよ。それだって家族の事もビスケット達は知らなかったでしょ?」

 

 サブレはビスケットやサヴァラン達より早く両親の死の真相に気が付いていた。

 

「なんていうのかな、物事の一番近い近い場所にいるってイメージなんだよね。どうしても気になるならビスケットが思い切って聞いてみたらどう?」

 

 

 サブレがどんなことを考え、どんな風に悩んでいるのかをビスケットは必要以上に気にしていたのかも知れなかった。

 サブレから感じた途轍もない寒気。

 

 格納庫に入り温かい空気に服の中が熱くなってきたビスケットはマフラーとニット帽を外す。

 するとアガレスを見上げているサブレを見つけ出した。

 

「買い出しご苦労さん。さっきシノ達も帰ってきて一通りの買い物は終ったってさ。作戦もおおよそ決まったみたいだし、あとは向こうにつくだけだ。取り敢えず俺達としてはマクギリスが連れてくるであろうガエリオを利用する算段だ」

「どういう事?」

「議会に目的の人物を当選させようとすれば相手の目的は何だと思う?」

「? 当選するまでの時間稼ぎ?」

「そうだ。それさえすれば俺達を相当するなんてその後に本部から応援を頼めばいいんだ。その間に自分はとんずらすればいいんだからな。だからこそ蒔苗氏を島に押し付けていたわけだし、しかし、カルタ・イシューの独断専行で蒔苗は自由の身になった。その上、まだ本人は気が付いていないだろうが、マクギリスの所為で俺達の行方すら掴めていない。ならどうするか」

「………えっと。あ、防衛に尽力する? それも持久戦に徹する為に戦力の出し惜しみはしない」

「そう言う事だ。そこでガエリオ・ボードウィンなんだ。俺達に個人的な恨みを持っており、いざとなったらその未熟さ故に戦力を出し惜しみなく前面に押し出してくれる人間。そこをこちらは利用する。まあ、それまで蒔苗氏の協力者が時間を稼げるかが肝だけど。それより何か話があったんじゃないのか?」

 

 ビスケットは言い出しにくそうにしていると、サブレの目をまっすぐに見つめて問いかけた。

 

「サブレはカルタって人に恨みがあったの? アガレスを通じて伝わってきた感情はものすごい黒い感情だったから」

 

 サブレはアガレスの方へと再び視線を落としまるで昔話を語りだすかのように語り始める。

 

「その昔『鉄血のオルフェンズ』と呼ばれていた者達がいた。彼らは悪魔と呼ばれるmobileスーツに乗り、災いとなっていた存在に挑んでいた。しかし、戦いが終盤になると世界の支配権を握っていた者達は自分達に断罪の手が伸びるのを恐れた。だから『鉄血のオルフェンズ』の中に裏切り者を作り出した。権利を与える事でな。それが………ギャラルホルンとセブンスターズの始まりだ」

「え?」

「そして、当時の組織のトップを張っていたのが俺達の祖先。俺達の祖先は世界を変えようとしていた。等しく平等何て都合のいい話なのかもしれない。でも、この世界からオルフェンズを無くそうと努力しようとしていた。でも、それは彼らの裏切りによって邪魔されてしまった。この世界は始めっからおかしいんだよ。笑うだろ? 自らの行いを正義だと言っている彼らに始めっから正義何て存在しないんだ」

「そ、それは……、でも証拠何て!」

「あるんだ。それは彼らがどうしても見つけたくない存在。それがアガレスなんだ。このアガレスは三百年前を正しい記録として記憶し続けている。こいつは彼らを裁くことができる機体。そして、フォートレスは三百年間待っていたんだ。現れるのを…裏切り者に断罪の裁きを与え、裏切り者を世界から迫害できる存在を」

 

 笑っているサブレの瞳の奥は決して笑っていない。

 どこか悲しそうにも見えるその瞳。

 

「虐げられてきた人達は多いんだ。彼らの家族や遺族は許さない。いつだって復讐心を燃やしており、それがフォートレスの暗躍へと繋がっている。期待だってあるし、俺がやらなくちゃいけないだろ?」

「サ、サブレがする事じゃないよ」

「でも、アガレスが俺達一族しかにしか扱えない以上は俺達がするしかないだろ? それに兄さんだって他人事じゃないぞ。父さんはもう兄さんを巻き込む気満々なんだ。そのうち分かるさ。それに………兄さんが感じた怒りは多分…俺の心が感じたアガレスの怒りじゃないのか?」

「え? アガレスの怒り?」

「ああ、アガレスが兄さんに見せている怒り。機械だからって感情が無いとも言えないだろ? 三百年も動き続けている機械だぞ? 怒りだったあるのかもしれないだろ?」

 

 

「へぇ……そんな話にな。でもどうなんだろうな。信憑性は無いと思うぜ」

 

 オルガは背中に車両の壁に付けながらもたれかかり、ビスケットは窓から真っ暗な夜空を眺めている。

 

「まあね。でも、虐げられている人なんて地球にもいるんだね。なんとなくだけど、地球に暮らしている人は不自由なく暮らしているんだってイメージだったから」

「まあ、それも俺達の勝手なイメージなんだろうけどな。遠すぎて分かんねぇよ」

「だね。でも、虐げられている人ってどこにでもいるんだね」

 

 オルガは腕を組みながら少しだけ思案顔を作り出し、ビスケットは顔をオルガの方へと向ける。

 

「オルガは地球に来て何かしたい事ってある?」

「え? どうだろうな? そういやぁ考えたことも無かった。ビスケットはあんのか? ここにきてやりたい事」

「やりたい事じゃないけど。見たい物ならあるよ。だからこそこうして窓を眺めているんだもん。オーロラが見たいんだよね」

「オーロラ?」

「うん。虹色のカーテンみたいな現象が起きてすごく綺麗なんだって」

「へぇ……なら俺も見てみたいな」

 

 ビスケットは窓の方へと振り返るとため息を漏らしてしまった。

 オルガも一緒に見ようと窓から覗き込むと、虹色のカーテンのように見える現象が窓一杯に写されている。

 

「見れたな」

「うん………」

「なあ、ビスケット。俺な多分地球の奴らが気に食わなかったんだと思うんだ。いや、多分幸せな奴らがだろうな。皆俺達を下に見て俺達に無理矢理命令していつか俺達を食い物にするんだろうなって。テイワズに入って上にのし上がっていけばいつか俺達が馬鹿にした奴らに仕返しできるって信じてた」

「知ってる」

「でも、始めてんだよ。俺達をまっすぐに見てくれる人に出会えたのは。対等じゃなく、まるで駄々をこねるガキを叱るみたいにさ。俺達……ああいう人に始めっから出会えていたららもっと違う道があったんだと思うか?」

「多分ね。でも、終わったことだろ? 俺達はこれからできるって証明しないと。それに、オルガは火星を独立させたいんだろ? 誇れるような場所にしたいんだろ?」

「まあな。俺にできるのかな?」

 

 珍しく落ち込み気味のオルガの背中を誰かが叩いた。

 

「? 三日月?」

「らしくないな。オルガらしくない。オルガだったらやってやるっていつだって前を向いているよ」

「そうだよ。俺達で支えるんだよ」

 

 三日月から続くように現れるサブレ。

 

「今更臆病にでもなった? やりたい事があってその為の道が目の前にあるんだろ? だったら今更尻込みするな」

「そうだよ。一人で背負わないで欲しいな」

「俺達だってここにいる。オルガを支える為に皆がいる」

 

 オルガはニヒルに笑いながら「だな」と呟いた。

 

 

 太陽が上がっていくとエドモントンが目の前に近づいていき、オルガ達の目の前に近づいていく中、格納庫ではモビルスーツが出撃準備に追われていた。

 ビスケットは頭に脳波受信装置を付けながら、アガレスから送り込まれてくる情報を処理する。

 すると、サブレの言う通りアガレスの奥に怒りに似た記録があるのに気が付いた。

 それはかつての一族の怒りなのかもしれなかった。

 

「兄さん情報処理はそっちに任せるぞ。俺は戦う方に集中する。前回と違って今回は戦う事になる。できれば討ち取られたくないんだ。アガレスは疑似リアクターを上から備え付けて固有周波数を誤魔化している。捕まれば一巻の終わりだ。それこそ、フォートレスとギャラルホルンの全面戦争になりかねない」

「そうなれば世界の終わり?」

「そうなるな。技術衰退で終ればいいが、最悪地球が火星や木星圏の支配下なんて事になりかねない」

「それだけは何とか回避しないとね」

 

 アガレスの目の前に明るい太陽の光と、更に奥に見える見慣れぬ大地が見えた。

 

『オルガだ。作戦を伝える。まずはモビルスーツ隊が活動拠点である駅周辺を確保。その後、モビルスーツ隊は後方からやってくる敵モビルスーツ隊を引きつけ、モビルワーカーはその間にエドモントンへと進行する』

 

「作戦通りにいくよ。三日月とサブレでまずは血路を切り開く。作戦開始!」

 

 アガレスとバルバトスがレンチメイスを装備して、一気に血路を切り開くために列車から飛び降りた。

 




エドモントン一帯の攻防戦は激しさを増していく。平行線をたどる中血路を見出した鉄華団。そして、今誘いに乗ってガエリオはアインと共に最前線へ。怒りと憎しみを抱えた戦いは更に激しさを増していく。裏切りと誤解が生んだ戦いが今始まる。

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再第二十七話『悪魔と呼ばれた者達と希望と恨まれた者達』
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