機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再   作:グランクラン

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毎度毎度遅くなり申し訳ありません。一期に該当する部分はもう一話ほど続きます。


鉄華団

 俺とガエリオの戦いに割って入って来たのは真っ赤な細身の機体、まるでその姿は騎士のようにも見える。

 同じときアインが乗っていたグレイズタイプに良く似たグレイズが戦場に割って入ろうとしているのが見えた。

 あれが戦場に割って入れば間違いなく今の昭弘やジョシュアや明楽では太刀打ちが出来ない。

 

「……お前は………マクギリスか?」

「不思議だな。君と話をした事が無いんだけどな」

「何が目的だ? お前は何がしたい?」

「ここは私に任せたまえ。君はあちらを」

 

 どうやらこの男の言う通り今はガエリオにこだわっている場合じゃないらしい。

 

「お前を信じるわけじゃない。俺は……お前を信じない」

 

 それだけを言って俺は目の前に現れた新たなアイン・グレイズへと向かって走っていく、二体同時にしかも恐らく完成型に近い阿頼耶識を付けている人間が操縦しているのだろう。

 

「サブレ……あれも同じかな?」

「多分な。兄さんの方も集中してくれよ。アガレスの力を最大まで高める必要があるみたいだし」

「俺………出来るかな?」

「やるしかない」

 

 俺達の目の前にある新しいグレイズタイプを前にアガレスを動かしていく、完全な阿頼耶識を前に俺達のアガレスで、しかも二体同時に戦えるだろうか?

 戦うしかないと分かっていても、それでも戦うしかない。

 

 

 マクギリスはガエリオの前に立ちふさがる。

 

「彼らには我々の追い求める理想を具現化する手助けをしてもらわなければならない」

「マクギリス……なぜ?意味が分からない……理想?お前は何を……」

 

 ガエリオは絶望的な表情をし、そのまま立ち尽くす。

 マクギリスが自分たちを裏切っていたという絶望、それが今のガエリオには受け入れがたい現実だった。

 

「ギャラルホルンが提唱してきた人体改造は悪であるという理想を真っ向から否定する存在をギャラルホルン自らが生み出した」

「何を……」

「アインは組織の混乱した内情を示す生きた証拠だ。彼の姿は多くの人の目に忌むべき恐怖と映るだろう」

 ガエリオは絶望的な表情に変わる。

 

 アインはもはや正常な状態でいられるような状況ではなく、三日月との戦いの中でももはや正常な判断が下せていない。

 

「これが『阿頼耶識』の完全なる姿。貴様のような半端なものではない。文字通り人とモビルスーツを一つに繋ぐ力。所詮貴様などただの出来損ないにすぎない!」

 

アインの攻撃を何とか回避する三日月だが、その回避も正直に言えば奇跡と言ってもいい回避だった。

 

 同じときガエリオの前に立ちふさがるマクギリス。

 

「その唾棄すべき存在と戦うのは革命の乙女を守りし英雄として名を上げはじめた鉄華団。そして乗り込むのは伝説のガンダムフレーム。同時に行われる代表選で蒔苗が勝利すれば政敵であるアンリとわが義父イズナリオの癒着が明るみになる。世界を外側から監視するという建前も崩れ去りギャラルホルンの歪みは白日の下に晒される。劇的な舞台に似つかわしい劇的な演出だろ?」

 

 ガエリオの絶望はマクギリスに対して怒りへと変わり始める。

 

「マクギリス……お前はギャラルホルンを陥れる手段としてアインを……アインの誇りを! なんてことを! たとえ親友でもそんな非道は許されるはずがない」

 

 ガエリオが叫び攻撃を浴びせようとするが、それより早くマクギリスが連続で攻撃を浴びせる。

 キマリスの体中に切り傷が傷つき、まるで太刀打ちが出来ない。

 

「君という跡取りを失ったボードウィン家はいずれ娘婿である私が継ぐことになる」

 

 マクギリスはキマリスのランスを持ち上げる。

 

「セブンスターズ第一席であるイシュー家の一人娘、カルタも死んだ」

 

 ランスがキマリスの盾を奪った。

 

「ギャラルホルン内部の力関係は一気に乱れるだろう。そこからが私の出番だ」

「う……嘘だ………お前はカルタの命も俺の命も利用しようと………。う……嘘だああああああああああああああぁぁぁぁぁ!マクギリスウウウウゥウウウゥゥゥ!」

 

 ガエリオは大きく飛びマクギリスにとびかかる。

 

 

 議長が延期を申し出ようとしていると議会のドアから蒔苗が姿を現した。

 

「騒がしいのう。まるで動物園だ」

「バカな!どうやってここに!?」

「どうやって?わしはここの元代表だぞ。少々外がさわがしかろうとここの造りは貴様よりよく知っておる」

 

 オルガは近くのセーフハウスを借りていた。

 

「団長!アトラさんから連絡が来ました!会議には無事間に合ったそうです。これで仕事は終わりなんですよね?」

「ああ終わる。終わりにする。タカキ……頼みがある」

「頼みって……団長は?」

「ミカを一人にさせとくわけにはいかねぇからな」

「まさかモビルスーツの戦場に!?」

「団長としての俺の仕事だ。見届ける責任があるんだよ。全部をな」

 

 二体の阿頼耶識を扱う化け物がカルタ・イシューの部下なのだと知ったのは戦いが始まってからすぐの事であり、正直明楽や昭弘やジョシュアの方も押され気味なので手伝いにまわりたい。

 一体だけならアガレスの機能で戦えそうだったが、二対一ではそれもできそうになかった。

 そんな中、その内の一体が戦場に割って入ってくる。

 

「やれやれ。年寄りを最前線に引きずり込むとはな……」

「父さん……」

「サブレ、こっちは私がやるからせめて一体位何とかして見せろ」

 

 パイモンと俺達が呼んでいるガンダムフレームの一体、角張ったデザインのガンダムで機体は他の機体より明らかに推力が高い。

 武装は大きなハンマー一つ。

 

「兄さん! 少し頭痛くなるから」

 

 俺は予めそう宣言するとアガレスのシステムの中にある機能を目覚めさせていく、アガレスからある信号が送受信されていく。

 頭痛が強烈にかつ強くなっていくが、その代りアガレス本来の機能へと戻っていくのが目の前にある小さな画面で分かる。

 サブレは操作系列を変更すると、目の前の画面に赤い文字で表示を映す。

 

『ガンダムフレームアガレス……システムウァサゴ始動』

 

 サブレとビスケットの阿頼耶識に負担がかかる。

 

『阿頼耶識の負担を両パイロットに分散することにより五分の間だけ全システムを開放します』

 

 アガレスの目が赤く光り、悪魔の力を開放した。

 

「「これでお前を潰すことができる!」」

 

 

 ガエリオは涙を流しそれでも攻撃の手を休めようとはしなかった。

 

「マクギリス!カルタはお前に恋焦がれていたんだぞ!今際の際もお前の名前を呼んでお前を想って死んでいった!妹だって!お前にならば信頼して任せられると……」

「アルミリアについては安心するといい。彼女の幸せは保証しよう」

 

 もうガエリオには何も言葉が出なかった。

 

「マクギリスウウウウウウウウウウウウゥゥゥ!!」

 

 キマリスの攻撃をマクギリスは受け止める。

 

「そうだガエリオ。私への憎しみを怒りをぶつけてくるといい。友情・愛情・信頼……そんな生ぬるい感情は私には残念ながら届かない。怒りの中で生きていた私には」

 

 マクギリスは容赦のない攻撃をコックピットに浴びせた。

 

「ガエリオ……お前に語った言葉に嘘はない。ギャラルホルンを正しい方向に導くためにはお前とアインが必要だった。そしてお前は私の生涯、ただ一人の友人だったよ。…あとは頼んだぞ、鉄華団」

 

 

「プハァ! やれやれ五分も戦えないとはこれで完全な阿頼耶識とはな……情けない。さて……アガレスの本来の機能たっぷりと見せてもらうぞ」

 

 マハラジャはすっかり戦いを終え、コックピットの中で煙草を吸っていると目の前にソニアが現れた。

 

「コックピットの中で煙草を吸わない」

「へいへい」

 

 アガレスは装甲の一部を解除し、武器を刀に変更する。

 

「こいつ相手にレンチメイスじゃ無理だ」

「カルタ様!見ていてください!あなたの敵をぜひ!」

「敵、敵ってうるさいな」

「お前たちさえいなければ!お前たちさえ現れなければ!!カルタ様を失うことさえなかったのに!!!」

「それが戦うってことだろ!そんな覚悟がない奴に負ける道理は無いし、殺される道理もない!」

「お前たちのようなネズミに何が分かる!!カルタ様は我々のぉ!!!」

「俺達はネズミじゃないんだよ!! この化け物が!」

 

 刀を持っていないほうの手で攻撃をそらし、刀で左の腕を切り落とした。敵は足で蹴りつけようとするが、それをぎりぎりで回避する。そして、そのまま足を切り落とすと、そのまま刀で右腕を切り落とす。

 

「なぜだ!?なぜ倒れない!私はここまで落ちたのに……なぜ」

「俺が人間だからだ」

 

 アガレスは刀を振り下ろし刀をコックピットを切り裂いた。アガレスの目が赤から緑に戻ると二人への負担の一気に軽くなる。

 

「ソニア! マルコシアス!」

「サブレ何をするつもり?」

「もうアガレスが当分動けない。なら俺はこのままマルコシアスで行く!」

 

 ソニアはまるでサブレが言う事が理解できていたように目の前にマルコシアスを持ってくる。

 そのままマルコシアスに乗り込んだ状態でバスタードソードを抜いて大軍へと突っ込んでいく。

 

「ジョシュアと明楽と昭弘はモビルワーカー隊の援護!」

「はぁ? 何で先輩にそんな事を言われなくちゃいけないんですか?」

「早く行け。今………俺は最大に機嫌が悪いんだ!」

 

 そう言ってマルコシアスは一気に大軍へと斬りかかっていく。

 

 

 「罪深き子供。クランク二尉はお前たちと戦うつもりなどなかった」

 

 バルバトスのコックピットの中で三日月は現在の状況を大人しく冷静に考察していた。

 

(スラスターのガスは残り僅か。ガトリングの残弾も……どっちにしろこれじゃ殺しきれない)

 

「あのおっさんは自分で死にたがってたよ」

「やはり貴様は出来損ない! 清廉なる正しい人道を理解しようとしない野蛮な獣! なのに! あろうことかその救いの手を掛け冷たい墓標の下に引きずり込んだ」

 

 アインの攻撃が胸を軽く傷つけ、斧を振り下ろしそれを刀で受け止める。

 

「単純な速度……じゃなく反応速度か。これが阿頼耶識の差ってわけか」

「もう貴様は救えない。その身にこびりついた罪の穢れは決して救えはしない。貴様もあの女もお前の仲間も決して! 貴様の……貴様らの死をもって罪を祓う!」

「罪? 救う? それを決めるのはお前じゃないんだよ。おいバルバトス……いいから寄越せ、お前の全部」

 

 バルバトスの反応が著しく上昇した。

 

「な……なんだ? 今の反応は……」

「まだだ、もっと……もっと………もっとよこせ、バルバトス!」

 三日月は右目と鼻から血を大量に出し始めていた。

 

 

「蒔苗先生所信表明をお願いします。後は先生だけで………」

「その時間をもらえるなら今わしよりも話がしたい者がいるんだが。お前さんがため込んどるもの吐き出してこい」

「クーデリアさん。クーデリアさんならできるよきっと」

 

 アトラがそっと背中を押してくれるとクーデリアは覚悟を決める。単身壇上に上がる。

 

「私はクーデリア・藍那・バーンスタイン。火星から前代表である蒔苗氏との交渉のためにやってきました」

「議会に関係のないものが何を……」

 

 アンリが叫ぶが、アンリ以外の議員は誰も止めず、クーデリアの演説に聞き入っていた。

 

「ここに来るまでの間私は幾度となくギャラルホルンからの妨害を受けました。そして、今まさに私の仲間たちがその妨害と戦っています!」

 

 そして議会の外ではタカキが残りのLCS用のドローンを打ち上げていた。

 

「団長聞こえますか? LCS用のドローンをアドモスさんと一緒に打ち上げました! これでみんなに連絡できるはずです!」

「よくやった! お前ら聞こえるか!? 蒔苗とクーデリアは議事堂へ送り届けた。俺たちの仕事は成功したんだ。だから……こっから先、誰も死ぬな! もう死ぬんじゃねぇぞ! こっから先に死んだ奴らは団長命令違反で俺がもういっぺん殺す! だからいいか! なんとしてでも這ってでもそれでも死んでも生きやがれ!」

「オルガ! そっちは無事?」

「ビスケットか? そっちは無事なんだな!?」

「大丈夫だよ! でもアガレスは戦えそうにないんだ。ごめん。でも今昭弘達がモビルワーカー隊の援護に向かったからもう犠牲が出ることは無いと思うよ」

「いい! あとは任せろ!」

 

 雪之丞たちは戦場から離れていった。

 

「あいつは指揮官としてこの命令を出したかったんだ。ず~っとな「死ぬな生きろ」なんて言葉にしちまえばあっさりしたもんだ。けどよあいつにゃ言えなかった」

 

 

 バルバトスの一撃がアインを吹き飛ばす。

 

「こいつ急に動きが……」

 

 時を同じくしてクーデリアの演説も続いていた。

 

「火星と地球の歪んだ関係を少しでも正そうと始めたこの旅で私は世界中に広がる大きな歪みを知りました。そして歪みを正そうと訪れたこの地でもまたその歪みに飲み込まれようとしている。しかし、ここにいるあなた方は今まさにその歪みと対峙し、それを正す力を持っているはずです。選んでください誇れる選択を。希望となる未来を!」

 

 クーデリアの演説が終わるころ三日月の戦いも終局に向かおうとしていた。アインはバルバトスの顔面に拳をたたきつけ、足で蹴りつけた。

 

「ネズミの悪あがきもこれで終わりだー!」

 

 アインが斧を振り下ろそうとする中オルガの声が戦場に響いた。

 

「何やってんだミカアアアアァァ!!」

 

 バルバトスの追加装甲をパージし、身軽になった姿で攻撃を回避し、刀を振り下して、斧を持った腕を切り落とす。

 

「モビルスーツの装甲をフレーム毎!?」

「サブレの言ったとおりだ……叩くんじゃなくて………斬る!」

「この……化け物が~!」

 

 再び拳をたたきつけようとするがそれを再び刀で斬り捨てる。

 

「お前にだけは言われたくないよ」

「クランク二尉! ボードウィン特務三佐!私は私の正し……」

 

 三日月は刀でコックピットを貫く。

 

「うるさいなぁ…オルガの声が…聞こえないだろ…。」

 

 同時に停戦信号が打ち上げられた。

 

 

 代表選は蒔苗の当選によって締めくくられた。アンリは怒りのままかつらをたたきつける。

 

「これで終わったのでしょうか?」

「うん。きっとクーデリアさんかっこよかったよ」

「私もそう思います」

 

 フミタンがそばまでくると、今までため込んでいたものをクーデリアはフミタンの胸の中で流した。

 三日月の元までたどり着いたオルガ。

 

「ねぇオルガ。ここがそうなの?俺たちの本当の居場所?」

「いいや。ここじゃねぇさ」

「そうか……でも、綺麗だね」

 

 オルガと三日月の目の前には真っ赤な夕日が落ちていった。

 

 

「マクギリスめ…」

 

 マクギリスの事を忌々しいと思わせるほどの表情を浮かべ、議会の一室に立てこもっていた。

 イズナリオは鉄華団に敗北し、周囲に自分を助ける人間が居ない以上彼はここで大人しくしているしかなかった。

 そんな時の事。部屋の中に一人の金髪の女性が姿を現した。

 ギャラルホルンの制服を着たジュリエッタ。

 

「ようやく迎えに来たか……まさかラスタルの部下が来るとはな…!?」

 

 そしてジュリエッタと共に部屋に入っていくマハラジャ、その姿にイズナリオは恐怖の表情へと変貌する。

 

「俺の仕事を果たさなければならないからな。この機会を逃せば貴様がどこへ逃亡するか分かったものではない。さすがにギャラルホルン本部に乗り込むわけにもいかんしな。まあ、俺なりのけじめだ」

「ま、待て!手を組もう!お前と私が手を組めばギャラルホルンを乗っ取ることもきっと夢ではない!そうだろう?それともラスタルへの復讐が目的か?だったらそれも手伝おう!どうだ?」

「勘違いをするな………お前を殺しに来ただけなのにどうしてお前と手を組まなくてはいけない。お前達……周囲に誰もいない事を確認しろよ」

 

 部屋の向こう側からも複数の人間の声が聞えてきた。

 

「や、止めろ……」

「あの世でかつての同胞に謝罪をして来い」

 

 一発の発砲でイズナリオは静かに天に召された。

 

 

 この日……鉄華団の名前は一躍有名になった。

 




鉄華団が戦いを終えた翌日、怪我人の治療などで多くの団員が暇になっていた。そんな中オルガやビスケットは鉄華団の未来に悩みを持っていた。同じときサブレはグリフォン家の未来に不安を抱いていた。
次回機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再第二十九話『未だ見ぬ未来へ』
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