機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再   作:グランクラン

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マクギリスとガエリオ登場回とバルバトス初戦闘回になります。なんかアガレスが乱入していますが気にしない!気にしない!というわけで第二話へGO!


バルバトスとアガレス

「どうすればいい?オルガ?」

 この言葉と共に投げかけられる鋭い視線。期待をプレッシャーで纏うような視線はいつ見てもオルガの心に怯みを与える。

 オルガはこの期待にいつだって応え続けてきた。その分だけ三日月もどんな無理難題に付き合ってきた。

 今回だって無理難題に付き合ってくれるはず。

「ミカ。お前にしか頼めねぇとっておきの仕事がある」

 

 三日月が下の格納庫までモビルワーカー毎降りると、雪之丞とヤマギと呼ばれる少年がモビルスーツの整備をしており、その端っこの方でクーデリアが座りこんでいる。

 クーデリアは一瞬だけ三日月を見ていると俯いてしまう。

 おそらく周囲から『邪魔』とでも言われたのだろう。

 三日月も一瞬だけ確認すると雪之丞の方へと向かっていく。

 この場においてクーデリアは戦力にならない。それは仕方のない事だし、かといって無理に動けば邪魔になるだけだ。

 場面はモビルワーカーのコックピット部分をモビルスーツに転用する作業へと移行していた。

「転売目的でマルバ(CGSの社長)が秘蔵していたもんでな。コックピット周りは使うようがねぇからごっそり抜かれちまってたんだ。だからこいつを流用する」

 そう雪之丞は説明しながらコックピットの座席にクレーンを取り付ける作業をする最中に三日月にタブレットを手渡すが、三日月はそれを断る。

 三日月は文字が読めない。

「ああ……そうだったな。まっ欲しいのは『阿頼耶識』のインターフェイスの部分だ。大戦時代のモビルスーツはだいたいこのシステムで………」

 阿頼耶識という言葉を聞いたクーデリアが身を乗り出しそうになり、ハッキリとした声で「阿頼耶識?」と発する。

「それは成長期の子供にしか定着しない特殊なナノマシンを使用する危険で人道に反したシステムだと………」

「ナノマシンによって脳に空間認識をつかさどる器官を疑似的に形成し、それを通じて外部の機器……この場合モビルスーツの情報を直接脳で処理できるようにするシステムだ。こんなもんでもなきゃ学もねぇこいつみてぇなのにこんなもん動かせるわけねぇだろ」

「ですが………」

 クーデリアの不満のような声に雪之丞は無視しながら心配そうな表情で三日月に語り掛ける。

「けどな三日月。モビルスーツの情報のフィードバックはモビルワーカーの比じゃねぇ。下手したらおめぇの脳神経は……」

「いいよ。もともと大して使ってないし」

 雪之丞は三日月の言葉に呆れながらも作業を続ける。まるで大したことじゃないように語るその姿にクーデリアは声を張り上げる。

「なんで……そんなに簡単に……?自分の命が大切では無いのですか!?」

「大切に決まってるでしょ。俺の命も、みんなの命も」

 その言葉に絶句してクーデリアはその場に立ち尽くす。

 背中につけた機械をモビルスーツへと接続する。

 三日月は目の前で立ち上げる画面を気に掛ける。

「これなんて読むの?」

「ええ~『GANDAM FRAMETYPE』………ババ…バロ…」

 脳内に叩き込まれるような情報の本流を前に三日月はまるで殴られたような衝撃を受けた。鼻から大量の血を流しながら「バルバトス」と呟いた。

 雪之丞が心配そうにのぞき込むが三日月は「大丈夫」といって立ち上げを続行する。

「しゃあねぇか。行けるってよ!ヤマギ!リフトアップだ!」

 コックピットの中へと入っていく中薄暗い個室のような部屋で三日月の視界とバルバトスの視界を繋げる。

「行くぞ!バルバトス!」

 

 振り下ろされたメイスの一撃でグレイズが沈黙する姿を見ていると、アガレスに妙な仮面が付いているのが見て取れた。

「何をしているんだソニア?」

 ここにいないはずの白銀の髪の女性に対し睨みつけてみるが、微笑み返されるだけで反応が無い。

「偽装装甲を軽くつけてあげたわ。マントを羽織って戦えば正体が割れる心配も無いでしょ?」

「必要を感じないが?」

 モビルスーツ。ガンダムがあるのならギャラルホルンが勝てるとは思えない。

「数が少なければね。でも………」

 指をさす方向を見るとそこにはグレイスが五機ほど現れた。

「おいおい数が多すぎないか?たかが中規模の組織だぞ?」

 ソニアがニヤニヤしながら俺の方を見てくる。

「誰かさんが荒野で暴れ回っていたからねぇ」

 俺の所為か………責任は俺にある。

「ソニア。俺が戦う」

 

 黒髪の少年が動揺している姿を上官であるクランク二尉が死者への弔いの表情を浮かべる。

「そ………そんな……オーリス隊長が。ここにモビルスーツがあるなんて情報は無かったのに」

 確かに事前情報ではそんな情報は無かったが、この数日前ほどから奇妙なモビルスーツを扱う集団が確認されていたためか、異様に多いモビルスーツが実戦に投入されていた。

 後続のモビルスーツ部隊合計五機ほどが現場に現れると、クランクは心の中でそんなに必要なのかという疑問と葛藤していたが、それもさらなる予想外の侵入者によって払拭することになる。

 全身を黒い装甲とそれを隠すようなマント。頭部には見慣れないマスクのような何かが装備されている。

「クランク二尉!あれは!?」

「ここ最近目撃されていた未確認モビルスーツなのか!?こんな所で…アイン!我々は白い奴をやるぞ!」

 同時にバルバトスに乗っている三日月に『sound only』の言葉と共に声が聞えてくる。

「手伝おう。あの五機が近づいて来たのはこちらの責任だ」

「勝手にすれば」

 若い声と共にレンチメイスが振り下ろされる音が聞こえてくる。三日月の視界の片隅の少し離れた所で戦う姿が見える。

 一人で五機を相手にしている姿を見る。

 まるで五機のグレイズでも相手にならない姿を見るとさすがの三日月でも自分でも勝てないという感想を得た。

 クランクのグレイズがショートアックスを構えながらバルバトスへと突っ込んでいく姿を見ながら三日月は素早くバルバトスの位置を変える。三日月の視線には撤退していくギャラルホルンのモビルワーカー隊の姿が見える。

 そのモビルワーカー隊に向かって突っ込んでいき、蹴散らしながら制止する。

 アインの向ける銃口にその姿を捉える。クランクの制止する声がアインにも同じようにその存在に気づく。

「撤退中の我が軍のモビルワーカー隊!貴様!モビルワーカーを狙うとはなんと卑劣な!」

 その言葉を聞いていた三日月とサブレはほぼ同時に声を発する。

「「どの口が言うんだ」」

 アガレスがグレイズのショートアックスの攻撃を華麗に回避しながらレンチメイスを振り下ろす。五機いたはずのグレイズの内二機は既に撃沈されており、他の三機も実力の差に本来の性能を発揮できていない。

 その闘いにサブレはいささか疑問を感じていた。

「奇妙だな。一人の女性を狙うにしては異様にしつこい。何を焦っている?」

 バルバトスがメイスを投げ飛ばして一気に接近する姿を見ながらも思考を諦めない。

「そうか………監査官が来るのか。それで……その前に殺してノブリスから依頼金を受け取るつもりなんだな」

 取っ組み合いになるクランクのグレイズが語り掛ける言葉。

「そんな旧時代のモビルスーツでこのギャラルホルンのグレイズの相手が出来るとでも……?」

「もう一人死んだみたいだけど?」

 応じる言葉はあまりにも幼く、聞いただけでそれが子供だとわかってしまう。

「その声!貴様まさか……子供か?」

「そうだよ。あんたらが殺しまくったのも……これからあんたらを殺すのも……」

 ライフルでの威嚇射撃にとっさに後方に飛ぶことで回避するが、スラスターの燃料が切れたようだ。

「ガス欠?」

 その姿はアガレスからでも見て取れた。アガレスはレンチメイスでグレイズを持ち上げながら吹き飛ばし、持っていたショートアックスを奪ってコックピット目掛けて投げる。

 ショートアックスの刃はコックピットに深く突き刺さり、アガレスは身を翻してバルバトスの方へと目指す。

 アインは砂煙を上げるバルバトスに向けてライフルの照準を向ける。

「無駄だ!この距離なら照準は……」

 しかし、それが油断を呼んだのだろう。下から駆けてくるバルバトスにとっさの反応が出来ない。

「下だ!」

 その叫び声でやっと下からやってくる攻撃に反応するが、メイスの方が一歩速い。しかし、クランクはとっさに攻撃の軌道を逸らすことに成功し、直撃だけは回避する。

 アインのグレイズを担いで撤退を決めたクランク。

「アイン無事か?」

「は……はい。しかし………」

「良し。このまま撤退する」

「向こうはスラスターが不調だ。残っていたモビルワーカー隊も安全圏まで離脱できた。それに………我々以外のモビルスーツ隊は全滅だ。これ以上戦っても勝ち目がない」

 しかし、三日月はまだ戦おうと一歩前にバルバトスの足を踏み出させるが、鼻血の量は半端ではなく意識を失いそうになる中、倒れそうになる機体をアガレスが支えた。

「あんた………誰?」

 

 オルガ・イツカの前の前に立つ黒髪の少年に見える人物こそが黒いモビルスーツのパイロットなのだが、いまいち信頼できない。

「要するにあんた達は自分達が荒野で戦ったからギャラルホルンが戦力を増強したっていうんだな?」

「そうだ。そのうえで交渉がある」

「聞こう」

「君達の組織の大人が奪った『ICチップ』を返してほしい」

 黒髪の少年が示す道具はビスケットがあっという間に見つけ出し、持ってくる。しかし、同時に良くない表情を浮かべる。

「オルガ。一軍が呼んでる」

「済まないな。こっちも忙しくてね。これでいいか?」

「ああ。すまない。こちらが迷惑をかけた。」

「いや。元々こちらの問題だ。むしろ助かった」

 黒髪の少年は少しだけ考えたようなそぶりを見せながら立ち去る。

 コックピットの中に入り込みその場を移動しながら黒髪のカツラを脱ぎ、メイクを濡れ布巾で落とす。

「兄さんにも見つからなかったし、一件落着かな?」

 

 ギャラルホルンのビスコー級クルーザーである『ヴィルム』で火星に向かう者達こそ、ギャラルホルンの監査官だった。

 監査官であるマクギリス・ファリドは整った顔立ちごと視線を後方で退屈そうにしているガエリオ・ボードウィンの方に向ける。

「辺境任務は退屈か?ガエリオ」

「まさか。監査部付の武官として仕事はきっちりやるさ。マクギリス特務三佐殿」

 ガエリオはキザッぽい顔つきをマクギリスに向ける。

「今の地球圏の経済は火星の経済を組み敷いた上に成り立っている火星支部には我ら世界秩序の番人たるギャラルホルンの一員として襟を正してもらわねば」

 マクギリスは前髪をいじりながら真剣なまなざしで語り、ガエリオは同情するような表情を作りながら返す。

「支部の連中には同情する」

「火星は今、全土で独立の機運が高まっているらしい。案外人の同情をしている暇はないかもしれんぞ」

 まさに今、火星支部は作戦の失敗によって頭を抱えていた。

 

「何!?失敗しただと!?」

 コーラルと呼ばれる火星支部を任されている男性は頭を抱えながら作戦失敗の報告を聞いていた。

 通信機を前にクランクは正確な報告を上げた。

「指揮官であるオーリス・ステンジャが死亡。三割の兵とグレイズ六機を失いやむを得ず撤退を……」

「ふざけるな!」

 机を強く叩きつけながら悔しそうに表情を崩すコーラル。

(なんてことだ……火星独立運動の旗頭だったクーデリア・藍那・バーンスタインが我々の襲撃により華々しく戦死を遂げる。ヒロインを失った火星は今まで以上の混乱に陥り地球への憎しみを強くする。そういう手筈だったのに!このままではノブリスからの資金援助はおじゃん。しかもモビルスーツを六機も失ったとなれば………このままでは!?)

「ファリド特務三佐がこっちに着くのはいつだ?」

「はっ。二日後には」

 コーラルは近くにいる士官に尋ねるとそのままクランクへと命令する。

「いいか!それまでになんとしてでもクーデリアを捕らえろ。そして戦闘の証拠は全て消せ!相手ごと全て!」

「相手は……子供でした。その上……もう一方は行方不明でして、証拠も全部消されているのです………これではまるで…」

「口答えをするな!」

「子供を!少年兵を相手に戦うことなどできません!」

「甘いことを抜かすな相手が子だろうと関係ない!一人残らず排除しろ!これは命令だ!

絶対に失敗は許されんぞ!」

 一方的に切られる通信を前にクランクは歯ぎしりしながら黙っていることしかできなかった。

(子供………相手てに殺すことは…できん。ましてや……アインに子供殺しの罪を着せるなぞ……)

 

 ビスケットが双子の妹であるクッキーとクラッカを相手にしている頃、ようやく三日月が目を覚ましていた。

「おめぇが気ぃ失ってる状態じゃこいつとのリンクが切れなかったんだよ。それと、黒い奴は撤退したぞ」

「そっか………何人しんだの?」

「参番組は四十二人。一軍は六十八人だ。おめぇは……おめぇとこいつはよくやったよ」

 雪之丞に片付けを任せてその場から立ち去る過程で三日月は幼い表情をした少女アトラと出会った。

 アトラの視線が咄嗟に三日月の血の方へと向く。

「あれ?アトラ?ああ、配達か」

「あの……三日月。あのね………平気?」

 平気に見えないことは分かっていたし、渡したい物があったはずなのに立ち去ろうとする三日月を止められなかった。

「うん。ありがとうアトラ。今ちょっと急いでるからあとでね」

「あっ……うん!」

 せっかく作ったブレスレットを握りしめる。

(馬鹿だな私………平気じゃないの分かってたのに)

 

 ノアキス七月会議のクーデリア・藍那・バーンスタイン。

 彼女は後悔していた。

 少年兵の実態をよく知らなかった彼女は今少年兵の現実と、自分の甘さの結果を身に染みて理解していた。

 あの時の少年が言っていた言葉が正しかったのかもしれない。

(彼らは……私のせいで……)

 クーデリアの側によるフミタンの怪我を尋ねるが彼女は「かすり傷」だと言ってきかない。

 父親から帰ってこいという言葉を聞いても大人しくうなずけない。

「今回の地球行きは秘密裏に行われるはずでした。ですがギャラルホルンの攻撃は間違いなく私を狙ってのもの。そしていつもは私の活動に反対しているお父様が今回に限って………考えたくありませんが……それを確かめてからでないと戻れません」

「分かりました。ですが、ここに残る意味も無いでしょう」

「それは……」

 葛藤するクーデリアの目の前に荷物を取りに来た三日月が「まだいたんだ」と冷たく声をかける。

「三日月あの……先ほどは守っていただきありがとうございました」

「そう言うのはいいよ」

「でも私のせいで大勢の方が……」

「マジでやめて」

 向けられる視線はスラム街で出会った少年の目とは違い冷たいが、どこか似ているようにも見える。

「たかがあんた一人のせいであいつらが死んだなんて……俺の仲間をバカにしないで」

 その言葉がショックで………どうしても立ち直れなかった。

 

 一軍と呼ばれる大人たちに今回の作戦の腹いせに殴られたオルガ達はクーデターを決めた。

 このまま一軍に任せていても未来がないと判断しての行動である。

 まだマルバ・アーケイの方がましだった。

 このままでは殺される。それがオルガの意思を固めた。

 他の仲間達であるビスケットとユージン、シノと昭弘もまた同じようにここ以外に居場所が無いのも事実。

 特に否定する理由が無い。

 三日月にクーデターの話を持ち掛けに行くと三日月は近づいて来たオルガに微笑み返す。

「ははっ色男になってんね」

「死んじまった仲間に最後の別れをしなくていいのか?」

「んん~いいよ。昔オルガが言ってた。死んだ奴には死んだ後でいつでも会えるんだから今生きている奴をが死なないように精一杯出来ることをやれって」

「そんなこともあったかな?……なぁミカ。やってもらいてぇ事がある」

 そう言ってオルガは黙ってハンドガンを渡すががミカは詳しく聞かずにハンドガンを受け取る。最後まで聞かずに受け取る姿に「話を聞く前に受け取るか?」っと訪ねるが三日月はさも当然のように答える。

「これから聞く。でもどっちにしろオルガが決めたことならやるよ俺」

 視線を逸らしながら「サンキューな」っと照れくさそうに答えるだけだった。

 

 クランクは一人で立ち向かう覚悟を決めていた。アインがいくら言っても聞かないクランクは兵士としての汚名を着せたくないのだと告げる。

(戦いたくはない。しかし戦わずには済まされないのなら……)

 クランクが困難に立ち向かおうとする中、ガエリオ・ボードウィンとマクギリス・ファリドが火星支部に到着していた。




CGSを乗っ取ろうと動くオルガ達、クランクもまた戦いへと向かうが同時にある覚悟を胸に抱く。マクギリスとガエリオは火星支部で探りを入れる中、サブレもまたオルガ達の戦いを見届ける。
次回機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再第三話『散華』
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