機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再   作:グランクラン

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セカンドシーズンへとお話は移っていきます。少しづつですがお付き合いのほどよろしくお願いします。


黙する戦争編
新たな血


 丘の上に建てられた慰霊碑の前でオルガとビスケットが立ち尽くしており、慰霊碑には今までの鉄華団の犠牲者が名を連ねていた。

 目の前に広がるのは桜農場のトウモロコシ畑と、その端の方に見える近代的な建物であるフォートレスの隠れ会社がチラッとだけ見えた。

 オルガとビスケットの後ろでは三日月と呼ばれている黒髪の少年が暇そうに佇んでおり、オルガはそれを見ながらそっとため息を吐き出す。

 

「いよいよ歳星へ出発だ。そこでテイワズと盃を交わしゃあ俺らはいよいよ名瀬の兄貴と肩を並べることになる。テイワズの直系団体だ。この規模の農場だけじゃまだまだ金は足りねぇ。鉄華団に入りてぇって居場所のねぇ奴らもわんさと集まってくる。お前は止めると思ったんだがな」

「言ったら止めたの? 絶対やめなかったよ。俺が地球に行っている間に勝手に決めるんだもん」

「事後報告みたいに言うなよ、完全に伝える前には言ったろ?」

「それを聞いた時には既に時遅しだったけどね」

 

 肩をすかして「やれやれ」みたいな態度を取られるとオルガとしても反論の余地は全く起きなかった。

 三日月はその姿を見て更に大きなあくびを上げる。

 

「そろそろ出発しようか。もう……皆への報告もいいだろ?」

「ああ。でも…お前の親父さんは反対されるかと思ったけどな」

「その辺も込みで利用するつもりなんじゃない? 二年前に釘だけは指しているって言っていたし」

 

 太陽が地平線の向こう側から姿を現し、二人は目を細める。

 

 

 蒔苗がアーブラウ代表となりギャラルホルンの腐敗が暴かれたことで世界は少しづつ変わり始めていた。

 鉄華団は代表指名選挙を巡る戦いで一躍名を上げ、彼らはハーフメタル権利を手土産についにテイワズ直系団体となる。

 その背後に『フォートレス』と呼ばれる反ギャラルホルン組織とのつながりがある事は極秘扱いとされ、ギャラルホルン頼みだったアーブラウの防衛力強化のため正規軍の軍事顧問に任命され、地球支部を開設した。

 混乱する情勢の中でその実績を買われるも、ビスケットの判断で組織はゆっくりと成長を続けていた。

 クーデリアはテイワズと協力し、アーブラウ植民地域のハーフメタルの採掘一次加工及び輸送業務を行う『バーンスタイン商会』を設立し、鉄華団と提携して桜農場の敷地内に孤児院を設立。

 社会的弱者への能動的支援と火星全土の経済的独立のため日々奔走していた。

 その陰で『フォートレス』が次第に火星と木星を中心に勢力を増していく一方で、ギャラルホルンは社会的信用を失い世界の治安はより悪化する結果となった。

 各経済圏は経済圏防衛用のモビルスーツを配備するとギャラルホルンへの反発がさらに増していく結果に落ち着く。

 鉄華団の活躍によって少年兵の有効性が示された結果子供達は戦場へ大量に投入されヒューマンデブリも増加、また戦力としてのモビルスーツの重要性も再確認され、各地で大戦期のモビルスーツの復元と改修が進みモビルスーツの総数は爆発的に伸びている。

 力なき子供達が搾取される世の中はいまだ続く。

 

 

「失礼しま~す」

 

 ハッシュ・ミディと呼ばれている若者が暗い部屋に入ると、そのまま部屋の中を見回す。

 

「予備隊のハッシュ・ミディですけど、獅電の動作テストが始まるって……んだよ。誰もいねぇじゃんか……ったく……」

 

 部屋の中へまた一歩踏み出すと、足元にいた三日月に驚く。

 

「うわっ! ……なんだこの人か」

 

 三日月はジャケットを布団代わりにして眠っており、ハッシュの事にも気が付いていないようだった。

 

「ま~た寝てる。なんだろうなほんと。他の人は鬼神とか悪魔とか言ってるけど、こんなのただの産廃だろ……」

 

 三日月に対して失礼なことを言うとそれに反応するように上から声が聞こえた。

 

「そういうのは俺に聞こえないところで言ってねこれからは」

 

 ヤマギと呼ばれている少年はため息を吐き出す。

 

「まあ、仕方ないか。バルバトスもグシオンも今はテイワズで改修中。入ってきたばかりの君はまだ本当の三日月を見てないからね。それよりシノの所で訓練の時間じゃなかったけ?」

「そ、そうでした!」

 

 そういうとハッシュはそのまま走り去っていった。

 

 

「おらぁ~!ペース落ちてんぞ!走れ走れ新入りども!」

 

 多くの新人が訓練の為に敷地内をひたすら走っており、その中にハッシュもいた。シノの後ろからユージンが話しかけてくる。

 

「おいシノ、あんま厳しくすっと一軍のじじい共と変わらねぇぞ」

「分かってるけどよぉ、適当に甘くしてそれで死なれたら目覚めわりぃしよ。嫌われんのは俺だけで十分だからよ。副団長さん!

……あっちはもう模擬戦かよ」

 

 シノたちの目の前ではラフタ達が獅電での模擬戦で直接訓練していた。

 

「ダンテ! 反応遅い!」

「んなこと言われても……」

「ったくダンテの野郎……」

「獅電のイオフレームは百里・百錬をベースにしたテイワズが開発したマスプロダクトタイプですからね」

「さすがに練度が違うか。まあサブレの奴は阿頼耶識なしであの二人に勝っちまうんだから、さすがというしかねぇな」

 

 ダンテはラフタの武器に気を取られて、ラフタからの攻撃をまともに受けてしまう。

 

「もう~勘弁してよね!あんたらが使い物にならないと……」

「うちらが名瀬のところに帰れないんだからね!」

「なんかすまねぇな………今度サブレの所の会社に定期的な訓練をさせておく」

「いえ………その場合だと、サブレ君が暴れだしそうで……、この間も獅電を壊しかけるほどに暴れてたし」

 

 その模擬戦を遠くから見つめていた新人たちは感心し、戦いに夢中になっていた。

 

「はぁ~すっげぇな。あれ初めて乗ってんだろ?」

「あれが阿頼耶識の力か」

「獅電に阿頼耶識はついてねぇよ。あれは厄祭戦時代のシステムで今じゃよく分かんねぇことが多すぎてテイワズの新しいシステムには載せられねぇんだと」

「でも、それモビルスーツ以外でも使えるんでしょ?」

「ちょっと手術するだけでそんな力が手に入るんだもんなぁ」

「な~んで団長と団長補佐は俺らにはしてくれねぇんだろう?」

「お前ら……」

「俺らは何もすき好んで手術を受けたわけじゃねぇ。こんな博打みてぇな手術に頼んなくてもいい、そういう世界をこれからお前らと作っていくんだよ。それにうちの団長補佐は猛烈に反対するからな。手術をするってわかったら何時間説教がくるかわからねぇよ」

「さすがいいこと言うね副団長」

「オルガとビスケットがよぉ……似合わねぇ真似やってんだ。俺もちったぁ役に立たねぇとよ。じゃねぇと、ビスケットから副団長を指名してもらった身としては、情けねぇからな」

「だな」

 

 

「なぁビスケット、ここ数字違わねぇか?」

「うん? えっと……だね」

 

 ビスケットが端末を使って直していると、メリビットさんがそばまで寄ってくる。

 

「団長さん。名瀬さんからQCCSで連絡が入ってま……」

「兄貴が!? あっ……」

 

 オルガはやってしまったという表情になるとそっと横を向く。隣ではビスケットがクスクスと笑っていた。オルガすこし顔を赤らめると席を離れた。

 

「ああ分かった。行くぞビスケット」

 

 ビスケットは返事しつつ一緒に部屋から出ていった。

 

「頑張ってますね団長。最初は机に座ってるのも辛そうだったのに。ビスケット君が良く説教してましたっけ」

「ええ、本当に」

 

 オルガとビスケットが団長室に行くと名瀬からの連絡が入った。

 

「どうだ調子は? オルガ」

「まあぼちぼちです」

「何言ってんだ。お前はハーフメタルってシノギをテイワズにもたらした英雄だぜ。まあそれを疎ましく思うやつもいるだろうが……まあそりゃ俺も同じだ。お互いぽっと出は疎まれるもんさ」

「まあ気を付けますよ。ビスケットに説教されたくありませんからね」

「まあビスケット、お前がちゃんと手綱を握っとけよ。オルガの奴はお前がいねぇとすぐに暴走するからな」

「はい。そこはちゃんとしてます」

「まあ、気をつけろよ。バルバトスとグシオンが大幅改修してるってテイワズ内でちょっとした噂だ」

「ええ、気を付けておきます」

 

 通信を切ると、オルガは時計にふと目がいく。

 

「そろそろ出発の時間じゃねぇか?」

「え?あ、そうだね。そろそろ行ってくるよ」

「気をつけろよ」

 

 ビスケットは部屋から出ていった。

 

 

「いや~私も鼻が高い。あの『ノアキスの七月会議』にまだ無名だったあなたを登壇させた甲斐があったというものです。革命の乙女クーデリア・藍那・バーンスタイン」

「その節はお世話になりましたギョウジャンさん」

 

 バーンスタイン商会のもとにギョウジャンという男が訪ねてきていた。

 

「来月クリュセで再びこのアリウム・ギョウジャンが主催する大きな集会を開くのですが、ぜひそこで再び一言……」

「申し訳ありませんが、今は公式の場での発言は控えたいと考えています」

「ふむ……なるほど。『今は』ですか。そういえば月末にアーブラウ以外の植民地の方々を招いてハーフメタル採掘現場の視察を行うそうですねぇ」

 

 ギョウジャンの言葉にクーデリアと隣で話を聞いていたフミタンが反応した。

 

「その話どこで……」

「その視察私もクリュセの思想家の代表としてお手伝いしましょう」

「はい?」

「あなたの思想は元々私の影響を強く受けていた。その私が隣に立てば必ずお力になれるでしょう」

 

 クーデリアを勧誘しようとする中、秘書の女性がドアを開ける。

 

「失礼します。社長そろそろ次の予定の時間ですが」

「失礼だな。まだ私が……」

「ありがとうククビータさん。ギョウジャンさん。今のお話はお断りします。私の今の活動に特定の思想は必要ありません。今は口だけで動ける時代ではないのです」

 

 ギョウジャンは黙ってバーンスタイン商会から出ていった。

 

「あの男の率いる活動家団体テラ・リベリオニスは今や風前の灯ですからねぇ。有名人の社長の名前を使ってもう一度いい思いをしたいんでしょう。全くなんて小さな男だ」

「ですがお嬢様」

「ええ、彼は視察の件を知っていました。侮っていい相手ではありません」

 

 そして、車に乗っていたギョウジャンは運転手と話をしていた。

 

「どうでした?反応は」

「話にならん」

「では………」

「あの男に連絡を取れ」

 

 そしてクーデリアもある人物たちに連絡を取ろうとしていた。

 

「鉄華団に連絡を取ってください」

 

 

「……こっちは任せろ。お前は休みが終わり次第こっちに合流してくれ」

「分かった」

「で?オルガ何?」

 

 三日月が部屋に入ると、オルガは通信機でビスケットと会話をしていた。

 

「ミカには悪いが明日一番でおやっさんとバルバトスを受取りに行ってもらう」

「分かった」

「普通「なんで?」とか……」

「仕事でしょ?」

 

 通信機の奥でビスケットの「クスクス」という笑い声が聞こえてくる。

 その奥からはマハラジャとサブレの声と同時に双子や兄であるサヴァランの声までもが聞えてきて、それを聞いているだけでオルガは少しだけ心が穏やかになれた。

 あの兄弟が幸せそうにしているなら、それだけでなんとなくだがオルガまで幸せに感じてしまう。

 

「二週間後お嬢さんの案件だ。少しきな臭くてな。まあそれでも間に合うかは微妙だが……」

「間に合わせるよ。それがオルガの命令ならね」

「ああ、頼むぜミカ、ビスケット」

 

 時を同じくして格納庫ではきな臭くなっていく空気に昭弘達二番隊が動き出そうとしていた。

 

「了解」

「お嬢さんの護衛が俺たちの次の仕事ってわけだ」

「うわっ! お姫様と一緒!?」

「いいか? これがお前らの初陣になる。とりあえずモビルワーカー隊として昭弘の二番隊に入ってもらう」

「ああ。いいか……」

 

 昭弘が声かけをしようとするとそれをライドが横からかっさらった。

 

「いいか!訓練じゃねぇんだぞ。しっかり気ぃ入れろよ!俺ら二番隊は甘くねぇぞ!」

 

 昭弘は何とも言えない様な顔をしていた。

 その横で昌弘がため息を吐いているとは誰も思わなかった。

 

 

 護衛任務は何も起こらないまま一週間が過ぎようとしていた。すると、昭弘がすぐにモビルワーカーで駆け寄ってくる。

 焦った様子の昭弘が周囲に声を上げて指示を出す。

 

「お前ら!早く持ち場につけ!団長から連絡が来た!来るんだよ敵が!」

 

 クーデリアは空気が変わった現場を前にオルガの元へと向かっていった。

 

「ビスケットからの連絡だ。『夜明けの地平線団』が三日前に火星に降り立ったって情報だ。そいつがあんたの言っていたテラ・リベリオニスの依頼を受けたらしい。くそっ……もうきやがった」

「あの……三日月は?」

「ちょっと出張中でな。こっちに向かってるはずだが。何心配いらねぇさ。俺たちは……鉄華団だ」

 

 前線では新人たちがモビルワーカーで応戦していた。

 モビルワーカー同士の戦いはほぼ互角の勝負を見せようとしていた。

 

「ザック!俺たちも前にでるぞ!こんなところにいたんじゃ手柄もたてらんねぇ!」

 

 しかし、そんなモビルワーカー隊の前にモビルスーツが立ちふさがる。

 

「モビルスーツ……モビルスーツだ!」

「モビルワーカー隊は後退!モビルスーツ隊はこのまま突撃!」

「出て来いよ悪魔とやら。虚名を暴きお頭への土産にしてやるよ」

 

 モビルワーカーの一機がやられていく。

 

「くそっ!俺はこんなところで……」

 

 すると、鉄華団もモビルスーツを出撃させる。

 

「待たせたなてめぇら!」

「遅ぇんだよ!とっとと働け!」

「ったりめぇだ!鉄華団実働一番隊!いや、流星隊!いっくぜ~!」

 

 シノの元気のいい声と同時にビスケットがフォートレスから購入した新型の『ネクストステージ機』に乗って姿を現し、ごっつい装甲にロングライフルとミサイルポットという重装備を持って現場に現れた。

 

「大丈夫かよビスケット。そいつ初陣だろ?」

「だからって後ろで見ているわけには行かないよ。こいつのテストも兼ねているんだから…」

 

 ビスケットのロングライフルの銃弾が敵モビルスーツのコックピットに着弾し、相手を沈黙させ、シノたちの戦いも激しさを増していく中オルガの近くにクーデリアが近づいて来た。

 

「団長。視察団の避難終わりました」

「あんたも避難しろよ」

「その言葉そのままお返しします」

「……まああんたならそういうだろうとビスケットが予想してたがな。安心しな、俺たちの居場所は俺たちで守っていく」

 

 上空ではサブレが乗るアガレスと三日月の乗るバルバトスが降下していた。

 雪之丞の乗る機体から切り離した三日月はサブレと共に敵上空から思いっ切り衝撃と共に降り立った。

 

「お待たせ、ビスケット。遅れてごめん」

「お帰り三日月。サブレもご苦労様」

 

 アガレスはバルバトスと違い落ち着きながら着地、敵集団を一撃で落ち着かせてしまう。

 

「良く帰ってきたな二人共…」

 




鉄華団へと喧嘩を売った夜明けの地平線団へと戦いへ。フォートレスはその陰で夜明けの地平線団を撲滅する為に動き出し始めていた。

次回機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再第二部第二話『嫉心の渦中』
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