機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再 作:グランクラン
俺とジュリエッタが至近距離で睨み合いながら一旦距離を取り、再び距離を詰めていくのだがそんな時ジュリエッタの後ろから明後日の方向へと銃弾が飛んでいくのが見えた。
一体何処を狙っての攻撃なのか全く理解出来なかったが、その攻撃がジュリエッタと同じアリアンロッド艦隊の機体から来ているのが間違い無い。
補給をまともに受けていないアガレスは正直心許ない状態を維持しており、先ほど補給を終えて飛び出してきたジョシュアは奇声を上げながら飛び回っている。
すると明弘達がアリアンロッド艦隊へと向かって突っ込んでいこうとしていた。
「どうすんだオルガ! おいしいとこ全部持ってかれんぞ! アガレスだってそろそろ補給を受けさせねぇと」
「奴らごとやっちまうか?」
「兄貴は何言ってんの? アリアンロッド相手に勝てるとでも?」
「昌弘の言う通り!」
「ギャラルホルンともめてたんじゃここで勝っても損するよ!」
「でもあいつらは俺らが追い詰めたってのによぉ!」
「その通り。ここでアリアンロッド艦隊相手に喧嘩を仕掛ける事は無い。中に俺達の内通者がいるが、それもカバー出来る範囲に限界がある。俺がアリアンロッド艦隊の機体を抑える。サンドバルは三日月に任せよう」
俺の言葉を聞いていたオルガが少し悩む素振りを見せて言葉を発した。
「ミカとサブレがサンドバルを押さえられりゃあ勝ちは拾える! 頼んだぞミカ、サブレ……」
俺とジュリエッタが戦っている間に狙撃が飛んでくるのだが、これまた適当に討っているのではと思われるほどにどこか彼方へと飛んでいく。
「なんとかしろ。お前の知り合いだろ」
「あんな人知り合いたくもありません」
「じゃあ止めろ」
ジュリエッタの機体から舌打ちが聞こえてきて、ジュリエッタは機体のパイロットに向かって毒舌を掃き散らす。
「イオク様はその辺の適当な雑魚機体を狙っていてください。邪魔です」
「援護してやっているんだぞ!」
「いりません」
イオク? じゃああいつはイオク・クジャンなのか?
て言うか遠距離武装でどうして外せるんだ?
「ジョシュアなんとかしろ」
「え? なんか…避けた方が当たりそうな気が……キモいし」
俺がジュリエッタの機体を後ろから襲いかかっていくと、サンドバルの副官が二人がかりで襲いかかっていく。
邪魔をするなと言う気持ちで俺は副官が放ったワイヤーを掴んで見ると、ジュリエッタの機体が俺を無視して三日月の元へと一直線に走って行く。
俺は「無視するな!」と叫びながら副官の一人をプレゼントしてやる。
「邪魔しないでください!」
「邪魔しないとお前が手柄を取るだろ!」
「お父様からどっちが手柄を立ててもいいと言われています!」
「あのクソ親父……」
「サブレ…落ち着こう」
落ち着いていられるわけがない。
石動がアガレスとレギンレイズの間に入ってきて、俺の機体にその状態で話しかけてきた。
「こちらは抑える」
「アリアンロッドは俺が抑える。あんたは副官の二人を。三日月はサンドバルを……。正直に言えば推進剤や弾薬が少なくなってきた。アリアンロッドは俺がやる!」
「分かった」
すると石動と呼ばれていた男は真っ直ぐにサンドバルの副官へと向かっていき、俺はジュリエッタに向き合うのだが、またこの無駄に銃弾の無駄遣いの攻撃がやって来た。
「ジョシュア! なんとかしろ。あの避けた方が当たりそうな攻撃。鬱陶しいぞ。一々進路が塞がれる」
「ええ! 私…キモい人無理」
「命令だ。早くしろ!」
明楽がどこか楽しそうに「俺がやる」と言うが足の遅い機体で何が出来るんだと一蹴してから俺はジョシュアに改めて命令した。
ジョシュアはめんどくさそうに駆けだしていくのを黙って見守り、ジュリエッタの機体へとレンチメイス改を振り下ろす。
すると三日月の援護のために石動が間に入っていく。
「守るってことはあれがそうか」
「私が二人を押さえる……君はサンドバル本人を」
「分かった。宜しく」
三日月が恐ろしい速度でサンドバルへと向かっていき、メイスソードを振り下ろし更に追い打ちをかけていくのだが、問題はそのやり過ぎな攻撃だろう。
そのうち敵を殺しかねない。
「サブレ!このままだと相手の首領を三日月が!」
「まったく……世話ばかりを掛ける! ジョシュア!」
「はいはい! お任せあれ!」
ジョシュアがイオクの機体をワイヤーで絡めて連れてくると俺はそのままジュリエッタの機体ごと一緒に絡め取ってしまう。
そのままその場をジョシュアに任せて俺は三日月の攻撃阻止のために機体を走らせる。
正直スラスターの燃料が少し心許ない気がするが、そう言ってもいられない。
全力で三日月の攻撃を阻止する。
「ストップだ。やり過ぎだ」
「あれ? ああ……助かったよ。殺さないようにって難しくて」
「今度からそれを教えないとな」
するとユーゴーの中からサンドバルが出てくると、降伏の合図を出すのだがその表情はどこか忌々しい表情をしている。
「くっ……悪魔め………」
「夜明けの地平線団に告ぐ。サンドバル・ロイターの身柄は預かった。速やかに武装解除に応じ降伏を受け入れよ」
三日月がサンドバルを拘束し、イサリビに向かっていく中、俺はレギンレイズに近づいていく。
そして、そのまま拘束していたワイヤーを解除するとジュリエッタは鼻を鳴らしてどこかへと去って行った。
これでまた俺の評価が下がった気がする。
捕まえたサンドバルはその仲間と共にイサリビの格納庫におり、サブレとビスケットは機体から出て行くと丁度オルガとサンドバルが会話をしていた。
「これで終わりではないぞ! 成り上がりのガキどもが。お前たちを目障りに思っているのは俺達だけではない。それを忘れるな!」
サンドバルが大きな声で叫ぶ中オルガは冷静に返す。
「構わねぇよ。そいつらにはあんたと同じ末路をたどってもらうだけだ。石動んとこへ連れていけ。仕事は終わりだ。火星に帰るぞ」
まあサンドバルの捨て台詞を吐こうとする口を排除するために俺は横からドロップキックをお見舞いし、最後にジョシュアがヒールでサンドバルの顔面を受け止める。
その後地面に突っ伏したサンドバルを踏み越える明楽と三日月。
「そういう台詞は勝ってから言って欲しいね…? 父さんから電話? もしもし?」
『おう。終わったか? 終わった頃だろうと思って電話したんだが?』
「どこかに監視カメラでも仕掛けているのか?」
『こんなの予想の範囲内だ。それより早めに帰ってこい。次の仕事だ』
「おやおや…俺達の扱いが酷い気がしますが? 少しぐらい休暇があっても良いのでは?」
『ついで仕事だ。早めに帰ってこい』
どうやら俺達に休暇は無いらしい。
「まさか夜明けの地平線団を壊滅にまで追い込むとはな」
「ギャラルホルンの介入あっての勝利だろうよ」
「頭の首を取ったのはあいつらだ。事実を言ってんだ」
「何の金も生まれない仕事してくれちゃって。賠償金すら取れやしねぇ」
ジャスレイが名瀬に噛みついてくる。
「いいじゃねぇか。航路の安全が確保されたんだ。鉄華団の働きには報いてやらねぇとな」
マクマードは名瀬に一つの端末を見せるとそこには火星の地図データが映っていた。
「親父それは……」
「うちが火星で進めている新規のハーフメタル採掘場だ」
「例のクリュセの領内でも最大の規模になるっていう……」
「こいつの管理運営を鉄華団に預けようと思う」
マクマードの言葉に口を挟んでいくジャスレイ、納得がいかないという顔をしている辺り鉄華団が手柄を上げたこと自体嫌なのだろう。
「ちょっと待てよ親父! そいつはテイワズ本体のシノギにすべきでかいヤマでしょ!」
「鉄華団は身を削って仕事を果たした。その分の報酬はあってもいいだろうよ」
「でも奴らは新参でしょうが!」
「名を上げた今だ。鉄華団の旗を揚げたプラントを狙うバカもいねぇだろう。余計な手間が省けていいじゃねぇか」
ジャスレイはどこか納得のいかないような表情をした。
そんなジャスレイを無視してマクマードは名瀬の方を向く。
「決まりだ。名瀬お前から話をしてやれ」
「あいつらも喜ぶと思います。早く知らせてやりたいんで今日のところは失礼します」
名瀬には嫌な予感がしていたし、その予感が当たらないでくれれば良いと思うだけ。
すると名瀬が屋敷から出てくると待っていたアミダが名瀬へと近づいていく。
「浮かない顔して。鉄華団の仕事に何かケチでもつけられたかい?」
「そっちは問題ねぇよ。むしろ順調すぎんのが問題かもなぁ」
「なるほど……こっから先はあんたと同じ。身内に足を引っ張られるわけだ」
「オルガの奴はその辺の駆け引きがうまくねぇからな」
「ビスケットに伝えるしかないね。あとは兄貴のあんたが面倒見るしかないね」
「力押しじゃどうにもならねぇこともある。それを乗り越えなきゃあいつらは何か手に入れる度にそれ以上の敵を増やしていくことになる」
名瀬は浮かない顔を浮かべた。
一連の会話をマハラジャは盗聴器越しに黙って聞いていた。
三日月とサブレのもとにハッシュが現れると頼みごとをする為に頭を下げてきた。
「少しいいですか? 俺もモビルスーツに乗りたいんです。三日月さんとサブレさんから団長に頼んでくれませんか?」
ハッシュの言葉にユージンが口を挟もうとするのをシノが口を挟んできた。
「はぁ!?」
「まあまあ。面白そうじゃねぇの」
サブレは飲み物を飲みながら改めて訪ねてみた。
「どうしてだ?」
「モビルスーツの操縦に関しちゃ三日月さんとサブレさんが一番でしょ。だから……」
サブレの心の中で「そうじゃないんだけど」と思いながら訂正する。
「そうじゃなくて乗ってどうすんの?」
「三日月さんより強くなります」
「いいんじゃない」
即答の三日月にため息を吐き出したサブレ。
「分かった。俺からオルガに伝えておく。多分俺達預かりになるから覚悟しておけよ。ジョシュア。明楽。アッシュの教育一旦お前達に任せるぞ」
楽しそうな顔をするジョシュアと面倒臭そうな顔をする明楽、サブレは「頼むぞ」と微笑んでもう一度命令すると、その言葉にユージンが口を挟んだ
「おい! 三日月! サブレ!」
ユージンが止めようとするのをシノが再び止める。
「三日月とサブレが面倒見んならいいんじゃねぇの。あいつら小規模過ぎるしさ」
「ったく……どうなっても知らねぇぞ」
「何の話?」
「ビ……ビスケット」
ビスケットへのユージンとシノによる説明に数時間かかったと言う事は言うまでも無い。
オルガ達鉄華団はギュウジャンの元へと訪れており、ギョウジャンは何とかノブリスと連絡を取ろうとしていた。
「クーデリアさんが命を狙われたと聞いて是非とも急ぎでノブリスさんと今後のご相談をですね……」
「何度もご連絡いただいて申し訳ありませんが……」
そういって連絡が途切れるとギュウジャンは改めてオルガ達と向き合わなくてはいけなくなっていた。
「なんとしてもノブリスを通してクーデリアに我々が……無実であることを伝えなければ……何をしているかわからん連中だ。早くしなければ……」
焦り続けるギョウジャンの部屋のソファに座り込むオルガ、その隣ではビスケットが頭を丁寧に下げながら入っていく。
後に続くように三日月が入っていく
「邪魔するぜ」
「お邪魔します」
「なっ……何なんだ君たちは!?」
「アリウム・ギョウジャン。あんたに話があって来た」
「それで英名轟く鉄華団の団長が今日は突然どのようなご用件で?」
「バーンスタイン商会のハーフメタル採掘場を襲った件、クーデリア・藍那・バーンスタインの命を狙った件、それと夜明けの地平線団を使って俺達に喧嘩を売った件についてです」
「この落とし前。あんたどうつけるつもりだ?」
ギョウジャンが必死になって言い訳をしていると、それが三日月の一声でぴたりと止まる。
「あんた何言ってんの?」
「まあ君のような子供にはまだわからないかもしれ……」
「俺は落とし前をつけに来た。最初にそう言ったよな」
オルガが足を机に乗せると、ビスケットはギョウジャンに提案を出す。
「ギョウジャンさん。こちらは今回の損害賠償をきっちり払っていただければ文句はありません。ですが、あなたがこのまま言い訳をするのであればこちらもそれなりの手を使わせていただきます。料金についてはこちらになります」
ギョウジャンは端末に書かれた料金を見ると端末を投げつける。
「は……払えるかこんなもの!」
「払えねぇ場合どうなるかわかってんだろうな?」
ビスケットは小さくため息を吐く。
「それは……わ……分かった、待ってくれ、今金は用意する」
「お願いします」
ギョウジャンは電話を掛けると、何とかギャラルホルンに通報しようとしていた。
「ギャラルホルンに通報はしたな?到着はまだか?」
「そ………それがあいつらその件にはかかわらないって言ってる。鉄華団はギャラルホルンとつながってるんじゃ……」
電話越しに聞こえてきた部下の言葉を聞いて焦っていくギョウジャンにオルガは急かし始める。
「おい。金はまとまりそうなのか?」
「い……今その話をしてるんだ………。だったら何とか私たちだけで始末を……おいどうした?」
ギュウジャンが電話越しにもう一度部下に話しかけると電話の向こう側から知らない声が聞こえてきた。
「お前らだけでなんの始末をつけるって?」
「おい。しっかり見張れよ」
「は……はい」
外も中も鉄華団の団員の手によって制圧されており、もはやギョウジャンに打つ手はなかった。
ビスケットはあきらめるように首を横に振る。
「やっぱりこうなるのか……」
「今回の件ではうちには死人も出てる。払う金もねぇなら今すぐ向こうに行ってあいつらに詫びてこい」
「そ……それは……待っ…」
三日月が銃を取りそのままパンパンパンパンと四発発砲する。床に血が広がるとオルガはそのままビスケットとともに立ち上がる。
全員が外に出ると、昭弘と三日月と昌弘は黙ってビスケットから離れる。すると、ビスケットはたまったストレスを吐き出した。
「穏便にって言ったじゃないか! どうしてこうなるんだ!」
「仕方ないだろ! このままじゃ死んじまった奴らが浮かばれねぇだろ!」
「だからって! 大体オルガは強引すぎるんだ! そんなんだから半年前の作戦であんな失敗を!」
「お前だって一年前で失敗してるじゃねぇか! お前は慎重すぎるんだよ!」
三人は同時にため息を吐く。
「始まりましたね。ビスケットさんと団長の喧嘩。今じゃ恒例行事だけど」
「どうするんだ? あれ始まると一時間はかかるぜ」
三日月が「さあ…」と言いながら興味なさそうにしていると、近くを歩いてきたサブレが見え三人は期待のこもった目で見つめる。
サブレは「はいはい」と言いながらビスケットの後ろに回ると先を擽りながら沈黙させた。
その状態で全体に「邪魔だろ? 撤収。撤収。後処理はウチに任せro」と言い聞かせながらビスケットに「邪魔。兄さん」と言いながら入っていく。
「……すごいな」
「昌弘……憧れてるのか?」
鉄華団に近づいていくマクギリスだが、そんな話とは別にマハラジャはサブレ達にある人物の捕獲という仕事を任せようとしていた。これからを占う重要な戦いの始まりへと…。
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再第二部第六話『裏の顔と赤い顔』