機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再 作:グランクラン
久しぶりのマルコシアス登場回です。
鉄華団が交戦に入ったころ、ユージンとビスケットはいまだ地球支部との連絡が取れずにいた。
焦っても仕方が無いと分かっていてもブリッジでは焦りからか空気が非常に悪い。
「ああ、相変わらずだ。地球支部とは全然連絡がつかねぇ。ったくアリアドネが使えるようになったってのに、これじゃあ意味ねぇよ」
「サブレの方は何か情報が入ったの?」
「? いや…強いて言うなら大体予想通りらしいな。やっぱり強攻策で行くわけ? 俺はあくまでも目標の捕獲が優先だから作戦は兄さんに任せるよ」
「少しは考えてよぉ…ううん……だったら」
ビスケットが考えついた作戦にサブレは「良いんじゃ無い?」と微笑みながら変えてしてくれた。
ラフタはトレーニングルームで筋トレをしている明弘に話しかけ、明弘は決して筋トレを止めないまま答える。
「熱心だねぇ毎日毎日」
「ったく、それ以上ガチムチんなってどうすんのさ?」
「ほっといてくれ。俺の趣味……だ!」
ラフタは小さくため息を吐き出してから少しだけ微笑む。
「気持ちはわかるけどね。まっそういうの私は嫌いじゃないけど」
明弘がラフタの気持ちに気づくことは無かった。
三日月たちは食堂で飯を食べており、部屋のテレビでは蒔苗の生死に関するニュースが流されており、そのニュースを見ながらアトラがため息を吐き出す。
そんなニュースを見ながらクーデリアはフミタンが入れてくれたコーヒーを片手に憂鬱な顔をしていた。
「心配だね蒔苗のおじいちゃん」
「でも容体はニュースで分かります。チャドさんは生死すら……」
「情報入んないからね」
「地球に着きゃ嫌でもわかるさ。ジタバタすんのはそれからでいい」
三日月のドライな意見にユージンは意識を切り替えさせるような言葉を発する。
すると、ハッシュが食堂に入ってきてサブレの所へと向かって歩いてくる。
「サブレ隊長代行! 獅電のシュミレーション終わりました。次は何をすればいいですか?」
「使った獅電の整備は?」
「それはやりました」
「筋トレは?」
「それもやりました」
「だったら休め」
「俺地球についたらモビルスーツ戦初陣なんですよ!? 今のうちにやれることをやっておきたいじゃないですか! だから……」
「だからこそだ。今休まないと休めないぞ。直前にぶっ倒れたら見捨てるからな」
サブレの意見にぐっと黙り込んで椅子に座るハッシュ。
すると、ユージンが立ち上がり演説をするかのように大きな声を発する。
「サブレの言うとおりだ。いいかお前ら! あれこれねちねち考える暇があったらきっちり寝とけ! 見えない明日で今日をすり減らすんじゃねぇ! たとえ明日が地獄でもそんときゃてめぇらの力でしぶとく生き延びようぜ! それが鉄華団だ!」
ユージンがかっこよく決める中、キッチンでビスケットは食器を洗いながらクスクス笑う。
クーデリアはそんなユージンを見ながら微笑む。
「頼もしいですね副団長」
「オルガの真似をしてるんだよ」
三日月の言葉に押し黙って汗をかいて黙るユージン、それをどう揶揄おうかと悩み近付いていくジョシュア、ビスケットがさらに笑いを堪えきれないように肩をふるわせる。
フウカはチャドのお見舞いに来ており、フウカの目の前に治療器に入っているチャドが意識不明の状態でいた。
「こんにちはチャドさん」
チャドは何とか一命をとりとめてはいたが、しかし意識が取り戻せずにいた。
すると看護師の女性がフウカに話しかけてきた。
「あら。また来たの?」
「あの……チャドさんは……」
「昨日と同じよ。あなた達が前にいた火星とは違って地球式の再生治療は時間がかかるから。勿論その分きれいに治るのだけどね」
看護師の言葉に複雑な表情で返すフウカはそのまま黙って家まで帰って行く。
フウカは家に帰ると、三人で取った写真を確認する。
「いいのかな?私これで……おにいちゃん……元気かな……」
フウカは不安な気持ちを抑えきれなかった。
地球支部ではタカキが戦場で孤立していると報告を受け、皆の中に焦りが広がりながら急いで支度が始っていた。
「タカキが!?」
「敵の陽動をくらってモビルスーツの真ん中に……」
「出せるモビルスーツは全部出せ! とにかくスピード優先だ。急げ!」
すると、一機のモビルスーツが素早く戦場に向かった。
「誰だ!?」
「速ぇ!」
「あれってガランさんのゲイレールか!」
彼らがガランのモビルスーツだとハッキリ分かったのは彼が出かけた後だった。
タカキのモビルワーカーが危機に陥ると、ゲイレールがモビルスーツに攻撃を仕掛け、そして素早く機体をたたく。
「間に合ってよかった。お前を失ったらアーブラウ全軍は総崩れだ」
「……助かりましたガランさん」
「お前にはすまないと思っている。だがここが踏ん張りどころだ。俺たちの勝利は近い。もうすぐ家に帰れるぞ!その為にあと少し俺の無理を聞いてくれ!」
「……はい」
ガランの言葉にそそのかされるタカキ。
(俺は今何をしてるんだ?)
その気持ちに応える者が居るわけが無く、ガランの心の内を知らないままひたすら戦場へと突き進んでいく。
「やっと着いた~」
鉄華団はようやくの思いで地球にたどりついた。
窓から見える青い星を前にして様々な意見を口にする面々だが、地球に到着しても中々降りれないでいた。
「これが地球かぁ」
「遅いな。地球を目の前にして何ちんたらしてんだ」
「うん。なんかあったみたいだね」
ビスケットは鉄華団の代表として、シャトルの着陸の許可を出そうとしていた。
しかし、アーブラウ政府からの許可が下りない状況が続いている。
「どうしてですか!? どうしてシャトルの着陸を認めてくれないんですか!」
「現在アーブラウは非常事態宣言を発令中です。すべてのシャトル発着場への着陸許可は出せません」
「ですが、俺たちは鉄華団です。軍事顧問として国境紛争の援軍として……」
「申し訳ありませんが、いかなる例外も認められません」
そういうと通信を切られてしまう。
ユージンはビスケットの方を振り向く。
「どうすんだ団長代行」
「サブレ達三番隊に連絡を……仕方がない、サブレは例のプランで。俺たちは俺たちで降りよう」
サブレが小さく「了解」と言いながら部屋から出て行く。
「アーブラウ宇宙港から報告がありました。ホタルビは軌道ステーションを出港し立ち去ったそうです」
「予定通りだな。これ以上子供が増えられても面倒だ」
「それと追加の連絡です。先ほど大気圏をデブリが突破したとのことで、まあ、戦場から離れていますし、問題ないでしょう。デブリ帯を漂っていた戦艦が落ちたという報告です。しかし、見事なお手並みですね。あの跳ねっ返りどもを手なずけるとは」
「まあ、デブリの方は駐屯部隊に任せるか。しかし、君の言う通り彼らは獣だな。犬と同じで、餌をやってたま~に頭をなでてやれば何も考えず主人の命に従う。特にアストン。あいつは面白い。そうかヒューマンデブリとはああいうものだったのか」
ガランは悪そうな微笑みを浮かべており、その台詞を小さな盗聴器が黙って聞いていた。
「タカキの言っていた今までの戦いと違うって俺達団長以外の奴の命令で戦うの初めてだからそれで……違うか?」
タカキ達は寝ながら話をしていた。
タカキがずっと感じて居た違和感、しかしその違和感もアストンには通じていなかった。
「ありがとう。そうだね、確かにその違和感はあるよね」
「あるのかやっぱり。俺は別に誰の命令でもいいけど。ヒューマンデブリは戦うのが仕事だから」
「なんだよそれ! 昔とは違うんだ! 命令とかじゃない。俺たちは自分の為に戦っていいんだよ! ……時々怖くなるんだ。アストンを見てると、そりゃ鉄華団の仕事はいつだって死と隣り合わせで、今が絶対に死なないなんて言いきれる状況じゃないのもわかってる。けど、死を最初から受け入れるのだけはやめてほしいんだ」
「それは……」
「ガランさんはすごい人だよ。あの人にはこの戦いの全体が見えてる。あの人に従っていればきっと勝てる。あと少しで家に帰れるんだよ。絶対生き延びて一緒に帰ろうアストン」
それに「うん」と返せなかったアストンだった。
マクギリスは自ら戦場へと向かおうとしており、それを部下が止めに入ろうとしている。
「お考え直しください准将!」
マクギリスはグレイズリッターのコックピットにおり、操縦桿を握りしめながら焦りを滲ませる。
「膠着状態のままもう一月だ。これ以上戦局を長引かせると今後に大きな禍根を残す」
「しかし、何も准将自ら……」
「心配するな。無理はしないさ」
戦局を長引かせたくないという想いと共に駆け出していく。
マクギリスの出撃の報告はすぐにガランの耳元に届いた。
「何? マクギリスが出た? そうかしびれを切らしたか。奴の地位も名誉も帳消しになるまで、何年でも遊んでやるつもりだったが……俺のゲイレールとお前たちのシャルフリヒターをすぐに用意しろ。それと! 鉄華団をたたき起こせ!」
全員が出撃体制を整える。
「いいか! これが最後の戦いだ。敵の大将の首を取って勝利の美酒に酔いしれるぞ!」
「これが最後なら隊の指揮なんていらないだろ? 俺が行く」
全員が動き出した事にサブレが気がついた。
「サブレ隊長!予想通り動きました」
サブレは三日月とハッシュと明楽とジョシュアと共に小高い丘の上で、戦場を見下ろしていた。
ハッシュからの報告で戦場の大まかな場所を特定しており、サブレは一緒に降りてきたガンダムの一機である『マルコシアス』の上からハッキリ双眼鏡と盗聴器を通じて話は聞いていた。
「しかし、まさかデブリにまぎれて先に戦場に降りてくれなんて注文されるとは思わなかったよ…サブレ先輩がおかしな了承をするから!」
「でも、おかげで間に合った」
「間に合ったんだから良いじゃ無い。私は暴れ回れるからOKだし…先輩。行きましょ」
サブレはコックピットに座り込んで息を吐き出し小さく呟く。
「行くぞ」
開戦と共にマクギリスの操るモビルスーツは次々とアーブラウ側のモビルスーツを迎撃していく。
次々と進撃していくマクギリスに部下がお世辞を述べる。
「ここは片付いたか」
「准将お見事です」
「世辞はいい、もう少し敵の戦力を削るぞ、急造のアーブラウ防衛軍だ。モビルスーツが無限にあるわけではない。すぐに底をつく。これ以上混乱を長引かせては、月の蛇を笑わせることになる」
マクギリス達を遠くからガラン達がジッと見つめていた。
しかし、そんな中ガランはあくまでも冷静に立ち振る舞っており、遠目にマクギリスを発見した。
「あれか、偵察隊の言っていた指揮官機」
「あいつをやればこの訳の分からない戦いは終わる……」
「そうだ。ここでの勝利を死んでいった連中への手向けにするぞ」
「あいつをやれば……」
タカキの意識がマクギリスに向くなか、アストンがそんなタカキを落ち着かせようと必死になる。
「タカキ、いつもどおりで平気だ。俺が前でお前が後ろ。いつもどおりやればきっとうまくいく。一緒にフウカのところに帰るんだろ?」
「そうだねアストン。一緒に帰ろう」
「ああ、約束だ」
タカキとアストンが約束をする中、実はその会話をサブレたちは傍受しつつ、後ろからこっそりとガランの隙を伺っていた。
「この先にアーブラウ防衛軍の前線の拠点があるんだったな、そこを叩けば見えない戦局もだいぶ分かりやすくなるだろう」
しかし、そんなマクギリスの前にガランが機体を走らせる。
まっすぐにマクギリスを捉えると、そのまま武器を振り下ろそうとするが、マクギリスの部下がそれを邪魔する。
「大将がのこのこと出てくるとは戦法の基本がなっておらんぞ!」
「敵影五! 准将はお下がりください!」
「私の心配はいい! 本部に救援を要請しろ! 作戦本部……」
「聞こえるか! 敵の強襲を受けた。至急応援を!」
しかし、一歩先を読んでいたガランによって救援は抑えられていた。
「救援なんぞ期待しても無駄。そっちは別動隊をやっているからな! ガキどもこっちは押さえる! お前たちは肩付きをやれ!」
そういうとガランは部下のモビルスーツを押さえ、その隙に孤立したマクギリスにアストンたちが攻撃を加えた。しかし、攻撃の仕方からすぐにマクギリスには鉄華団だと判断できた。
「阿頼耶識の動き……鉄華団か。防衛軍のようにはいかないか………鉄華団のパイロット。これは団長からの指示なのか? オルガ・イツカの指示なのかを聞かせてもらいたい。君達は誰の指示で戦っている」
そんなマクギリスの言葉にタカキが動揺を隠せずにいる。
その言葉の意味を知りたいと思っていたのはタカキ自身だったからだ。
「誰のって……」
「敵の言葉だ。耳を貸すなタカキ。こいつをやれば戦いは終わるんだ」
戦いを終わらせる事だけを考えようとするタカキとアストン。
そんなアストンの言葉に意識を切り替えるタカキ。
「そうだ……あんたをやればアストンと一緒に帰れるんだ!」
「タカキ!」
「いつもどおりやればうまくいく。分かってるよアストン!」
しかし、そんな言葉とは裏腹にタカキが前へと走っていく。
「いつもは俺が前だろ……! 一度下がれタカキ! そいつは一人じゃ無理だ!」
しかし、そんな言葉に耳も貸さないタカキは完全に冷静さを失い、そのまま攻撃を加えようとするが、それをマクギリスは剣でうまくさばく。
「離れろタカキ! くそっこれじゃ狙いが……」
マクギリスの機体の拳がタカキのモビルスーツに直撃し、その隙に武器を持ち替える。
「命懸けだよ……私もな!」
マクギリスが剣を振り下ろそうとする中、アストンが間に割って張ろうとするが、それよりも素早くサブレのマルコシアスが間に割って入る。
タカキのモビルスーツを突き飛ばし、アストンのモビルスーツを左手で止めつつ、マクギリスの攻撃を右手で受け止めて見せた。
「俺も守るのに必死だよ……」
悪魔が舞い降りた。
ガランを追撃しようとするサブレ達、罠を念入りに仕掛けて戦いに挑むサブレ達はガランを捕獲できるだろうか?
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再第二部第九話『友よ』