機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再 作:グランクラン
「さ、サブレさん?」
「て、鉄華団? どうしてここに……」
「本隊か!? どうしてここにいる」
ガランの動揺は激しい物だったが、瞬間的に脳裏が晴れていくのだが、それ以上に本当ならここに居るべきでは無い人間の登場にタカキやアストンが驚いてしまう。
サブレはマクギリスの武器をそっと離し、その瞬間マクギリスから距離を少し取る。
サブレからすれば自分が鉄華団関係者では無いと思われてはいけない。
「いろいろ聞きたいことがあるでしょうが、マクギリス・ファリド……できれば今回の紛争、俺達に任せてもらえませんか?」
「その前に君は鉄華団かな?」
「いいえ。私はその関係者です。鉄華団とは商売上の取引をして居ます」
マクギリスは少し考える素振りを見せてから「分かった。信用しよう」と言って話を聞く体勢を作った。
「念のためにアーブラウとSAUの両方から承認を団長代行がとっています。できれば引いてほしい。ここであなた達と三つ巴になればさらに悲劇が起きる」
マクギリスが考え込むと、ガランがサブレに攻撃を加えようとするのだが、それを今度は三日月が割って入る事で阻止する。
その姿を確認したマクギリスは黙って頷きようやく今回の事態の大凡を把握して見せた。
「分かった。君たちに任せよう。どうやら、君たちはこの紛争の全体が見えているようだ。ここは一旦引きSAUに話を聞きに行くぞ」
マクギリスが撤退しようとしたのを目撃したガランは、同時に鉄華団の関係機が次々と戦場に現れようとしているのをハッキリと目撃した。
不利だと判断したガランは素早く撤退を始めると、今度はそれを三日月が妨害しようと走り出す。
「逃がすわけないだろ……」
「待て三日月! 追わなくていい! 一度引こう……タカキ達の状況を聞く必要があるし、タカキ達は状況が理解出来てない」
三日月はどこか面白くなさそうな顔をするが、黙ってうなずくと、機体を翻す。
「分かった。タカキ、無事?」
「あ、はい」
「アストンは無事か? 間に合ったと判断したが」
「……だいじょうぶです」
「そうか……よかった。ハッシュ! 明楽! ジョシュア! 引くぞ!」
そういうとマクギリスとサブレたちは互いに引き始める。
「ガラン・モッサと連絡が取れないとはどういう状況ですか!?一刻も早く調べてください。火星の連中に関する情報を最優先で……」
ラディーチェは焦るように通信でガランの行方を聞こうとする中、ユージンは隣から話しかけてきた。
ユージンの表情は明らかに怒りを滲ませるものであった。
「俺らがどうかしたのか?」
ラディーチェは冷や汗を流しながら疑惑の一つをそっと訪ねた。
「アーブラウのシャトル発着場への着陸許可は?」
「ああ。おかげでSAU経由で遠回りするはめになった」
どうして鉄華団が降りてこられたのか、それがどうしても分からなかったラディーチェだったが、その一言だけで十分だった。
ラディーチェは少しづつ後ろに下がると、今度は昭弘にぶつかってしまう。
「火星からの通信にも一切答えねぇってのはどういうことだ?お前にはいろいろと聞きたいことがある」
明弘の怒りをぶちまけそうになっている表情を見てそのまま大慌てで遠ざかり自身の机の上にある書類をぶちまけた。
「まあ、サブレたちが先にこっちに降りてきててな、前線の状況は大体把握してるんだ。だからしらを切れるなんておもうなよ」
「ち、違うんです。全部ガラン・モッサの差し金で。わ……私ただ奴に言われたとおりにしていただけで!」
「言い訳ならあいつにしな……今回の一件、あいつはだいぶ怒っているみたいだけどな」
そういうとユージンの見つめる方向をラディーチェも確認すると、いつもより厳しい表情をしたビスケットが部屋の中に入って来た。
ゆっくりラディーチェの前に立ちふさがるのを見つめるのだが、普段温厚なビスケットはそう簡単なことでは怒らないが、怒っているという事が分かるぐらいハッキリと怒りを滲ませている姿を見て怯えたように命乞いを始める。
「ビ、ビスケット・グリフォン団長代行! そ、そうだ! ガラン・モッサの居場所になら心当たりがあります!」
「あなたはガラン・モッサと共謀し今回の紛争を仕掛けましたね。あなたの身柄はアーブラウとSAUが引き取るということで双方が合意してくれました。両陣営は今回の事件に決着をつけるつもりです」
すると、ザックが部屋に急いで入ってきた。
「団長代行! 副団長! ラフタさんから通信です」
ユージンが黙り込んだまま睨み付けているビスケットに変わって「繋げ」と告げるとザックとは急いで繋げ始める。
ザックはすぐに通信をつないで見せると通信機からラフタの声がハッキリと聞こえてきた。
「つながりました!」
「一旦戦闘の方は収まったよ。まあ、ほとんどサブレと三日月が何とかしたけど」
「そりゃよかった」
「それがあんまりよくもないんだよね。この一か月で鉄華団にもだいぶ犠牲者が出てる」
「そうか、分かった一度引いてくれ」
昭弘が襟首を締め上げ、ラディーチェを問いただす。
「そのガランって野郎はどこにいる?」
「もし戦場にいないのであれば国境を越えたSAU領内にいくつか身を隠すための場所が……」
「なんでてめぇが知ってんだ? 俺たちをはめようってんじゃねぇだろうな?」
「ガランは平気で人を欺く男です。対等な交渉をするために色々調べておいて私のデスクに……」
昌弘がデスクの中からその情報が入ったデータを見つけてそのままそれをビスケットへと手渡す。
その資料には確かにガランの隠れ家に関する資料が描かれていた。
「分かりました。ですが、だからと言ってあなたの処遇が良くなるわけではありません。あなたにはきっちりと罪を償ってもらいます」
「そ、そんな!」
「あと、マクマードさんからの伝言です。「お前を切る」だそうです。テイワズからの援助も見込めないと思っていてください。ユージン」
「おう! ほら! 行くぞ!」
ユージンがほかの団員と共にラディーチェを引きずって連れていく。
昌弘がビスケットの方を見ながらそっと訪ねる。
「ビスケットさん。どうしますか?」
「俺も出るよ……昭弘、出撃準備だ」
(マクギリスの首は取れなかったが……まっあとはラスタルがうまくやるだろう。こっちはマハラジャを調べなければな……あいつが生きているのなら少しばかり厄介だからな)
「ここでの仕事はもう終わりだ。傭兵は傭兵らしく次の戦場へ向かうとしよう」
しかし、そんな中傭兵の一人が「襲撃が来た」と連絡を入れてきた。
「どこの部隊だ!?」
「詮索はあとだ! 戦闘用意! ここは放棄する。持ちきれない物資は破棄してかまわん!」
(こんな所で……さすがに笑えんぞ)
ガランが投げたコップがつぶれると、ガランはそんなコップには目もくれずモビルスーツに飛び乗った。
戦場に出ると既に混戦状態になっており、ガランは最悪の状況を想定し味方を切るために策を打つ。
「数が多いな……囲まれる前にバラけるぞ! 合流地点で会おう!」
ガランが去るとき、三日月とハッシュ、明楽、ジョシュアは二人で敵のモビルスーツと会敵していた。
「来ました」
「俺が先行するから適当についてきて。無理はしなくていいから」
「そうそう。お坊ちゃんはそこで大人しくしているのよ」
(俺だって……)
バルバトスが走り、そのまま次々とモビルスーツを殲滅していく中、ラフタやアジーや昭弘たちもまた同じように怒りを抱えながら淡々と殲滅を続けていく。
時を同じくして先にガランだけが目的の場所にたどり着く。
「まだ俺だけか? ったく……また兵隊を集めなきゃならんか。すまんなラスタル。次の仕事を始めるのは少し先になりそうだ。しかし、なんで居場所が……まさかマハラジャが生きて……」
そんなとき、木々の奥からアガレスが単身姿を現した。
「そうかラディーチェか……少し小物と侮りすぎたか」
鉄華団のモビルスーツが現れたところでようやくガランも事態を把握した。
そのころ、ハッシュはモビルスーツに慣れておらず、苦戦を強いられていた。
(こんなはずじゃ……怖ぇ……怖ぇ……怖ぇ!)
武器を弾かれ、戦うことのできないハッシュは恐怖のあまり目をつぶってしまう。しかし、そんな中バルバトスはハッシュの乗るモビルスーツを吹き飛ばす。
「え? そっちを吹っ飛ばすんだ…」
「邪魔」
「私でもそっちを吹っ飛ばすと思う…邪魔だもん」
そういいつつそのまま前線に去っていく姿にハッシュはかつての兄貴分の姿を重ねた。
「俺は!」
このままでは終われないハッシュはまた立ち上がろうとしていた。
そのころサブレとガランも戦いを始めていた。
サブレのレンチメイス改をガランのゲイレールに叩き込むと、ガランはそれを何とか受け止めて見せたが、サブレはゲイレールの足元を蹴りで払って見せる。
ゲイレールは一度体制を崩し、そのままレンチメイスで後ろに軽く吹き飛ばされる。
「この戦い方……どこかで」
「ここで終わるような男じゃないんだろ? 立ち上がって見せてくれよ」
「小童め! よくほざく」
ゲイレールが武器を振り下ろすが、サブレはそれを後ろに軽く下がることで回避する。
サブレはそのまま右拳をたたき込み、そのまま連撃を加えていきレンチメイス改で左腕をつかみ、隠しパイルバンカーを打ち込む。
「この戦い方! 思い出したぞ!! マハラジャ!!」
サブレの戦い方にガランはマハラジャの姿を重ねたが、しかし、一瞬の隙を突きサブレはゲイレールを押し倒しレンチメイスを振り上げてそのまま吹っ飛ばす。
「マハラジャ………やはり……お前は……」
頭から血を流しつつガランは勝利を諦めた。
サブレにはガランを殺そうとする素振りが無いとガラン自身はハッキリと分かったからこそここで勝利を諦めて自決する事がラスタルに出来る唯一の道だと判断した。
そう……そこまでは読めたのだ。
ガランは自爆装置に手を掛けて自爆させようとした所で、ビスケットはそれより素早く地面に向かってランチャーを打ち付けると、地面から四本のワイヤー付きのランスがゲイレールに突き刺さり高圧電流がアッという間にゲイレールを襲う。
ガランの悲鳴が近くに居たサブレの耳元にまで届いたが、そんな事で表情が変わるサブレでは無い。
「安心しろよ……ある意味死だよ……心の死が待っているさ。良かったな。これで考えないで済む。沢山人を不幸にしたんだ…今度はお前が不幸になる番だ」
そう言ってガランが生きているとハッキリと確認したところでサブレは殺気のような鋭い気配を感じ取った。
真っ赤なガンダム・フレームが現場に現れて大剣をアガレスへと振り下ろす。
「っ!? 貴様…いつの間に」
「さあ…どれぐらい強くなったんだ? それを教えてくれ!」
ゼパルの目が赤く光りとたん動きが素早く、かつ予想不能な変則的な動き方に変わる。
素早く不気味な動かし方はサブレ自身エドモントンの戦いで良く見たものだった。
そんな状況で三日月のバルバトスが現場に割って入ってきた。
上空ではジョシュアの機体が飛び回って仲間達に情報をリークしている。
三日月のソードメイスを回避し、三日月を土台にして後ろのアガレスに大剣を振り下ろした。
三日月はソードメイスを下から振り上げようとするが、それはゼパルが受け止める。
その状態でアガレスはレンチメイス改を力一杯振り下ろすが、その攻撃とバルバトスの攻撃を受け止めつつイラクはそっと微笑んだ。
「良いねぇ……ふうん。なるほど…少し試してみたかっただけだし…これ以上騒いだら困るしな…上手く行って良かった。これでも君たちを応援して居たんだよ。その男は私も困らされていたからね」
「白々しい事を……何がしたいんだ?」
「さてね…近いうちに分かるさ…」
そう言ってぜパルは大きく跳躍して現場から逃げていく。
アストンと共にタカキは最低限の事情を聴かされたのち、いったん帰宅することになり、タカキとアストンはフウカの待つ家へと帰って来た。
フウカはタカキとアストンが無事なことを確認すると軽く涙を浮かべ二人に抱き着く。
「お帰り!」
「ヒゲのおじ様が?そんな……どうして?おじ様は誰よりも強くて優しくて……」
動揺を隠せないジュリエッタにラスタルは諭す。
「ジュリエッタ! 彼の死を嘆くのはやめろ」
「ラスタル様……?」
ジュリエッタは大粒の涙を流し、嘆いていた。
「彼はどこにも存在しない。私の活動に裏で協力するため彼は家も所属も本当の名前すら捨て戦いの中で生き、そして死んだ。存在しない男の死を悲しめばそこまで尽くしてくれた彼の思いを踏みにじることになる」
「……はい」
ジュリエッタは涙を拭き前を向いて部屋から出て行く。
少し歩いたところである士官が歩み寄ってきた。
「お芝居も疲れるだろ?」
「ええ。悲しくないわけじゃ有りませんよ。これでもギャラルホルンに入るに当たって少しは面倒を見て貰った訳ですし、それに生きていることだって知っています」
「なら何が悲しい?」
「人として死んでしまう事…死人のように一生抜け殻のような人生を送る事への哀れみです」
そう言って二人は移動していく。
ラスタルは一人星空を眺めながらそっと呟いた。
「友よ…」
彼は知らない。
静かに貶められていると言う事に…。
タカキとアストンが選んだ道が例え違う場所だとしても、きっと心は同じ場所を向いていると信じ彼らは道を違える。そして、今一つの道が動きはじめる。
次回機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再第二部第十話『幸せを求めて』