機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再   作:グランクラン

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最新話です。


ヴィダール立つ

「アトラ……話があるんだ」

 

 桜農場の裏でビスケットはアトラを呼び出しそわそわするビスケット、アトラは優しい表情で答える。

 

「何? 話があるって言ってたけど……あっ、そうだ。後でクッキーとクラッカにお土産渡しに行くよね。私もついて行っていいかな?」

「あ……うん………そうじゃなくて! アトラに渡したいものがあるんだ」

 

 そういってビスケットは隠していた小さな小箱を取り出す。

そして、ゆっくり小箱を開けると中から指輪が出てくるとアトラはその指輪に驚くとすぐにビスケットの顔を見た。

ビスケットの顔は真っ赤に染まっており、照れながらもアトラの目をまっすぐに見つめる。

 

「け、結婚してほしいんだ……アトラ」

 

 アトラは頷きビスケットは指輪をアトラの指にはめ込む。

 

「喜んで」

 

この日は記念すべき日になった。

 そしてその話を聞いてニヤニヤしている人間が一人いた…明楽だった。

 

「手こずっていたシステム回りの調整もようやく完了したか」

 

 ラスタルの目の前では新たなガンダムフレームがようやく調整を終え、出撃の時を待ちわびていた。

 その近くで同じように新たなガンダムを見上げるのは仮面を付けた男ヴィダール。

 

「コロニーの鎮圧任務、お前にも出てもらうぞ。ドルトの一件以来コロニーの独立運動は激化の一途だ。経済圏に自衛戦力を持たせたところで、鎮圧もままならん。活動家共に金と武器を流している輩がいる限り……」

 

 ヴィダールに話しかけるラスタルを面白くなさそうにジュリエッタは見ていた。

 その脇ではある人物へと連絡を飛ばしていると、その人物から返信が返ってきた。

『それガエリオらしいな…』

 

 ジュリエッタは内心「なんでそんな話を…」と思ったが、あの弟のような男の事だから父親にでも聞いたのだろうと思ったが、それはそれで気に入らなかった。

 そんなジュリエッタは会話をしていると思われる二人を物陰からそっと見守る。

 

「裏に誰がいようとかまわない。秩序を乱す武装勢力がいる。ギャラルホルンが力を振るうのにそれ以上の理由はないだろう」

「今日はよくしゃべるな」

「浮かれているのかもしれないな。ようやくこいつと共に戦えることに」

 

 ヴィダールの出撃の時も着実に近づいていた。

 

 

 鉄華団本部にはランドマン・ロディが三機戻ってきていた。雪之丞とデルマはその近くで話し合っていた。

 

「これ誰が乗るか決まってるんですか?」

「戻って来た三機のうち一機はチャドが乗るってよ。他はまだ聞いてねぇがな」

「なら俺に使わせてください」

 

 デルマは自ら乗ることを名乗り出る。

 それに驚きを隠せない雪之丞だったが、デルマの覚悟は堅かった。

 

「はっ? 元はおまえさんがいたブルワーズから引き揚げたマン・ロディだ。ろくな思い出がねぇだろ?」

「俺達ヒューマンデブリにとってこいつは棺桶も同然だったけど、地球でアストンが乗ってたんなら俺も……」

 

 すると後ろからダンテが現れる。

 

「お前ならそういうだろうって昭弘が話をつけてるぜ。もう一機は俺が乗る。元ヒューマンデブリの意地見せてやろうぜ」

 

 

「ああ~やってもやっても終わんねぇ~。なんだこの整備地獄」

「俺は楽しい」

「変態野郎。俺はもう勘弁」

 ザックはモビルスーツの上でだれているとユージンの姿が見えてくる。途端に焦ったザックはデインにあたる。

 

「おらっデイン! 音上げてんなよ! お前もさっさと手動かせ!」

「おい! おととい搬入した獅電の調整は終ったのか?」

「今バリバリやってるとこっす!」

「明日にはテイワズからまた届くからな」

「げっ! まだ増やすんですか?」

 

 そんなユージンの前には白い獅電がその場に置かれていた。そんなユージンの方にシノが近づいてくる。

 

「副団長。農場に行ってた奴らが戻ってきたってよ……こいつがオルガ専用獅電か?」

「そういやぁさっき聞いたんすけど……ビスケットさんとアトラさん……結婚したらしいですね」

「「はっ!?」」

 ザックの何気ない言葉に反応したシノとユージンは言葉を完全に失った。

 そして、訓練場ではハッシュとチャドがモビルスーツを使った訓練に明け暮れていた。そしてそれを遠くからアジーとラフタは眺めていた。

 

「チャド張り切ってんね」

「地球じゃ悔しい思いもしたからね。それはあの新入りも同じか」

「農場から戻ってきてすぐに訓練なんてね。まっおかげで物になってきたか」

「この調子だと獅電の慣熟訓練ももうすぐ終わりそうだね……」

「ああ。ようやくお役御免だ」

「うん……」

 

 帰れるはずなのにどこかうれしそうじゃないラフタはある男の事を思い浮かべていた。

 メリビットと雪之丞は格納庫で地球から回収した備品の確認を行っていた。

 

「これが地球支部から回収した備品のリストになります」

 

 メリビットはどこか心配そうな表情を浮かべる。

 そんな彼女に雪之丞は声をかけた。

 

「一体どこまで戦力を増やすのかしら」

「まあファミリアっていうのを立ち上げちまったら、火星の治安はファミリアが何とかしなくちゃいけねぇからな」

「悪魔の名前を持ったモビルスーツが鉄華団に集まっている。なんだか嫌な予感がして……」

 

 雪之丞は優しく頭を撫でる。

 

「考えすぎだ」

「ふふっ……もう」

 

 

「整備長!」

 

 テイワズの整備長のもとにエーコとヤマギが近づいてくる。

 

「ルプスとフルシティの調子はどうだい?」

「二機ともいいみたいです。その名前ではあまり呼ばれませんけど……」

「これどうでした?こっちでもいろいろ試したけど結局よく分かんなくって」

 

 整備長たちの目の前には白いガンダムフレームが鎮座しており、鉄華団ではわからないということでテイワズに預かってもらっていた。

 それでもマハラジャ達にでも頼めば分かるだろうと思われたが、残念な事にオルガは金を取られることを嫌がって断っていた。

 

「モビルスーツのフレームは三百年程度では劣化しないよ。リアクターの寿命はもっと長い。それでどうにもならなかったのはリアクターがスリープ状態だったからだろう。いま立ち上げ作業をしているところだ。そうそう一緒に送られてきたモビルワーカーもどきなんだが、テイワズのデータべースにもこれといった情報がなくてねぇ」

 

 するとようやくガンダムフレームのリアクターが起動した。

 

「エイハブ・ウェーブの固有周波数が取れたぞ、これがこいつの名前か」

「ガンダムフラウロス……」

 

 

「オルガ達鉄華団はマクギリス・ファリドからの話は断ったそうです。ですが、これからも少なくとも手は結んでいくということで落ち着いたと」

 

 名瀬はマクマードとテイワズの幹部メンバーの前で地球支部でのやり取りの一部を話して聞かせた。そんな話にジャスレイがいの一番にかみつく。

 

「要はメンツの問題よ。鉄華団はおやじの情けで飼ってやってる弱小組織だ。そいつがおやじに相談なくギャラルホルンと取引をした。なあ名瀬よ。物事には順序っつぅもんがある。そいつを踏まえずにガキらに好き放題やらせて親に恥かかせるつもりか?ああっ!?」

「まあ、いいじゃねぇか。結果として断ったんだ」

「この先この件で親父に迷惑をかけるようなことがあれば鉄華団は切ってくれて構わない。オルガはそういう覚悟です」

「そんなガキはどうでもいい。てめぇはどうすんのよ?」

「その時は……俺が腹を切ります」

「……チッ。おやじ。俺は俺でテイワズの為に動きますよ」

「ああ。どう転んでもいいよう打てる手は打っておいてくれ。いままで通りな」

 

 そこで話は終るとジャスレイはそのまま部屋を出ていく。中庭に出たところでアミダと遭遇した。

 

「何かいい事でもあったのかい? 悪い顔してさ」

「絡んでくるとは珍しいじゃねぇか。名瀬に愛想を尽かして俺に飼われる気にでもなったか?」

「まさか。冗談でもやめとくれ」

「女とガキを使ってのし上がる軟派野郎のどこがいい?」

「女を女としか見てないあんたにはわかんないだろうね。名瀬は私らを使ってるんじゃない。居場所になってくれてるんだよ」

「そりゃいかにも女が言いそうなことだな」

「タービンズにいる子はみんなあんたみたいな男に使われてた連中さ。危険な運びの仕事を割に合わない安い金でやらされてね。そういう子を名瀬が自分の器量で抱き込んでできたのがタービンズさ。あんたの器じゃその違いが分かんないだろうけどね」

「俺は自分の女をモビルスーツに乗せるようなバカじゃねぇからな」

「ほ~らやっぱりわかってない」

 

 アミダが話していると後ろから名瀬が姿を現した。

 

「悪い待たせたな」

「あんたを待つのも私にとっては楽しみの一つさ」

 

 ジャスレイを軽く睨みつけながらアミダに問う。

 

「オルガは?」

「おとなしく待ってるよ」

 

 部屋に入るとオルガは深々と頭を下げる。

 その隣でビスケットも同じように頭を下げた。

 

「すんません!」

「な~に謝ってんだ。おやじがマーズ・マセと話して決めたことにお前が乗っかっただけだろ」

「そうですが、兄貴に迷惑を……」

 

 名瀬は勢いよくデコピンを決める。

 痛そうに額を押さえるオルガとそれを心配するビスケット。

 

「これまでも散々かけてきただろうが、今更殊勝になるんじゃねぇ」

「ここからは背中にも気を付けないとね」

「前に言っていたジャスレイって男ですね」

「ああ、テイワズの幹部連中の考えは一つじゃねぇ。何か仕掛けてくると思っておいた方がいい。ああ、そうだ……ビスケットほれ、結婚祝いだ」

「あ、ありがとうございます」

「そうだ。サブレはどうしたんだ? 付いてきたって聞いたぜ?」

「そ、それが…トイレって出て行ったきり…」

 

 時を同じくしサブレは帽子を深めに被って黒いスーツを着た状態で廊下を歩いており、目の前から現れたジャスレイとわざと衝突する。

 するとジャスレイは胸ポケットからスマフォを落としてしまい、サブレは下手に出るような態度で「済みません」と技とスマフォを拾いジャスレイに渡す。

 ジャスレイは舌打ちをしながら「気をつけろ!」と怒鳴りつけて去って行き、サブレはもう一度「申し訳ありません」と謝りながらにやついていた。

 サブレがコッソリとスマフォに取り付けた発信器と盗聴器が付いていると分からずにジャスレイはもう一度スマフォをいじり始めた。

 

 

「ようチャド。地球に居る間に随分腕を上げたじゃねぇか」

「おやっさんの整備のおかげだよ。ランドマン・ロディすげぇよかった」

「生言いやがって。まっこれからまたよろしくな」

 

 雪之丞はチャドの肩を軽く叩くとそのまま行ってしまう。チャドは雪之丞の雰囲気に違和感を感じていた。

 デクスターは農場の運営の引き継ぎ作業をバーンスタイン商会に預けていた。

 

「これで農場の運営引き継ぎにかんする契約は完了ですね。すべてをお任せする形になってしまい申し訳ありません」

「でも、残念です。あそこでここの子達とかかわるのは社長にとって大切な時間でしたから」

「ファミリアが立ち上げられるまでの我慢ですから」

 

 時を同じくしアトラとクーデリア、三日月とサブレとビスケットハッシュはご飯を食べたりしながらたわいのない会話をしていた。

 サブレからすれば本来なら適当な場所で食事を取るはずだったが、ビスケットからどうしてもと言われて参加していた。

 

「大変だね手続きとかって。私だったら頭こんがらがっちゃう」

「三日月さん! サブレさん! おかわり持ってきましょうか?」

「いいよ」

「いらない」

「でも……」

 

 二人の素っ気ない態度に疑問を覚えたアトラ。

 

「戻ってきてから三人ともなんだかずっと一緒にいるね。地球で何かあったの?」

「俺、三日月さんとサブレさんについていくって決めたんで」

「迷惑なんだけど」

「そういうなって」

「気にしないでください」

「随分なつかれましたね」

 

 ハッシュが三日月に懐いている姿に微笑ましさを感じたクーデリアに迷惑そうな顔をしてご飯を食べる三日月。

 

「ほんと迷惑」

「農場は三日月の夢でしたよね? なら……いえ。分かりました。あなたの夢は私が責任を持ってお預かりします」

「よろしく……」

「じゃあ、三日月はちゃんと返してもらわないとね」

「ハッシュ、飲み物」

「はい! 今すぐ!」

「サ、サブレはこき使うことに全く抵抗がないよね」

「使える者は使わないとな」

 

 たわいのない話をしているとチャドが部屋の中に入ってくる。

 

「なあなあ、おやっさんどうかしたのか?」

「どうかって何が?」

「臭くねぇんだよ」

 

 ビスケットの問いにチャドが驚きを交え問うと全員が答える。

 

「そういえばメリビットさんと付き合ってから変わったよね」

「だな。前まで臭いで鼻が曲がりそうだったのに……人間付き合うと変わるってことか……兄さんみたいに」

「どういう意味?」

「えっ、ええ~~!?」

 

 チャドの驚きが建物中に聞こえた。

 昭弘と昌弘とライドは部屋の外でいまだトレーニングを行っていた。

 

「あまり無理するな、飯も食わずにトレーニングなんて」

「今日の飯、俺の嫌いな豆のシチューだし……それに……今は無理でも無茶でもします。年少組の奴らを引っ張っていくのはこれからは俺だから。地球に残ったタカキには負けらんないんです!」

「だったら余計にちゃんと食ったほうがいいじゃない?兄貴みたいになってからじゃ遅いよ」

「おい昌弘」

 

 三人が話し込んでいるとチャドが走って来た。

 

「昭弘! 聞いたかよ? おやっさんとメリビットさんが付き合ってるって!」

「知らなかったんすか?」

「ああ。お前が地球に行ってる間だったか……」

「なんだ? みんな知ってんのか? なんで教えてくれねぇんだよ!」

「そんなことで驚いてどうするんすか。ビスケットさんとアトラさんなんて結婚したのに、なあ……ライド」

「そうそう」

 

 すると昭弘も驚きの表情に変わった。

 

「あ、あの二人……結婚したのか?」

「兄貴も?」

 

 昌弘が引く番だった。

 

「昭弘さんも?」

 

 ライドも引いた。

 

「え……ええ~~!?」

 

 再びチャドの悲鳴に近い声がこだました。

 

 

「制裁を受けろ!」

 

 イオクの攻撃は明後日の方へ行き、敵のモビルスーツは避けるまでもなく突き進む。

 

「避けたか……なかなかやるな!」

 

 敵からの攻撃をイオクはちゃんと回避する。

 

「この俺と互角とは!」

 

 イオクと敵モビルスーツとの間にジュリエッタが割って入ってくる。

 

「邪魔をするなジュリエッタ!」

「邪魔なのはイオク様です。下がっていてください」

「イオク様はお下がりください!」

 

 イオクの部下が複数人でイオクを守りながら戦っている。すると、アリアンロッド艦隊の船から一つの機体が姿を現した。

 

「あの機体は……味方の登録コード? あれが……」

 

 ジュリエッタの前にヴィダールが姿を現した。

 

「さあ、お前の待ち望んでいた戦場だ」

「機体名がヴィダール? 自身と同じ……自らをモビルスーツと一つにし本来の自分を捨て去ろうというのですか? 復讐のために」

 

 ヴィダールは三機のモビルスーツからの攻撃をきれいに回避して見せると、そのまま近づきレイピア的外見のバーストサーベルであっという間に仕留める。

さらに増援が二機現れるとバーストサーベルの刃をパージし、攻撃を回避し、足を変形して仕込んでいたナイフでさらに仕留めた。

そして、刃を入れ替えると、そのままバーストサーベルをモビルスーツに突き刺す。

 

「綺麗……でも、サブレの戦いは……」

 

 ジュリエッタは素直な感想を抱きながらも、それでもサブレの戦いを忘れられずにいた。

 敵のモビルスーツはヴィダールに照準を合わせられず、ライフルとバーストサーベルを併用して着実に数を減らしていく。

左右から艦隊のミサイルによる挟撃がくるが、ヴィダールはライフルでそれらを一掃すると今度は艦隊を沈めてしまう。気が付けばすべての敵を片づけてしまった。

 

「あなたの強さははったりではありませんでしたね」

「ありがとう」

「復讐とは本来黒く汚らわしい感情のはずです。ですが、あなたの太刀筋はとても復讐を起因としているとは思えませんでした。強くてとても美しい」

「ああそうか。忘れていた。今はただこいつと戦うのが楽しかった」

「本当に変わった人です」

「そうか? で、どうかな? 黒い彼と比べて」

「……貴方より強いと思いますよ。貴方と違って人らしいですし」

「そうか……人らしいか。私や彼の戦いとは別なのだろうな」

 

 ヴィダール達が帰投している姿をゼパルがこっそりと見つめていることには彼らは気が付かなかった。

 

「イオク・クジャンか……」

 




火星で見つかった厄災は静かに目覚めの時を待つ、様々な思惑をはらんで今動き出そうとしていた。

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再第二部第十三話『目覚める厄災』
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