機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再   作:グランクラン

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最新話です。


目覚めた禍編
目覚める厄災


 アルミリアはマクギリスの膝で眠っているた。ふと目を覚ますとマクギリスが紙でできた本を読んでいることに気が付いた。

 

「あっ…またそのご本を読んでいたの?」

「ああ、この中に書かれたアグニカ・カイエルの思想に私は救われた。人が人らしく生きられる世界を築くためギャラルホルンを作った英雄。私がファリド家の生れでないことは知っているね?」

「子供の頃にイズナリオ様に引き取られたって前に……」

「当時は卑しい生まれの子供だと蔑まれ幸せなど、どこにも存在していなかった。この世を呪い、自ら命を絶とうと思ったこともある」

「マッキー?」

 

 アルミリアはマクギリスの話をどこか理解できずにいた。

 

「この本を与えてくれた人が私に教えてくれたんだ。おかげで思いとどまれた。アグニカは実現しようとしていた。人が生まれや育ちに関係なく、等しく競い合い望むべきものを手に入れる世界を。素晴らしいと思わないか?」

「ごめんなさい。私にはよくわからない……」

 

 アルミリアを優しく抱くマクギリス。

 

「それは誰にも反対されることもなく、愛する者を愛せる世界のことでもある」

「その世界ではまだ子供だと言って誰も私の事を笑わない?」

「ああ」

「子供の婚約者がいるってマッキーをバカにする人もいない?」

「もちろん」

「私行きたい! そんな世界に!」

「ああ。私が連れて行ってあげるよアルミリア」

 

(その世界への扉をこの手で開ける時が来たんだ……私を救ってくれたイラク様の為にも)

 

 たった一人の野望が静かに渦を巻きはじめていた。

 

 

 鉄華団とフォートレス、テイワズやアリアンロッドなどが謀略を巡らせるなか、それは静かに蘇る時を待っていた。

そして、イラクもまたその場でその時を待ち続けていた。

 

「ハシュマルよ……待っていろ。もうすぐ、目覚めさせてやる。役立って貰うぞ……」

 

 ジャスレイが部下のメンバーと共に話し合っているとき、メンバーの一人が鉄華団の監視報告を上げた。

 

「アーレスを監視していた連中からの報告です。渡りは全てファリド公がつけたらしいです」

「いっちょ前に地固めのつもりか?ガキが政治ごっこに浮かれやがって」

「テイワズの直参がセブンスターズと手を組むなんて」

「名瀬が裏で手ぇ引いてんじゃねぇのか?」

 

 鉄華団の行動が面白くないジャスレイ陣営は鉄華団の持ちかけられた話に対抗しようとしていた。

 

「ジャスレイの叔父貴! これ以上名瀬と鉄華団に好き放題やらせていいんですか!?」

 

 ジャスレイも面白くなさそうな顔をしながらウイスキーに煙草を打ち込む。

 

「いいわけねぇだろうが。なんの為に大枚はたいて、ガキどもを嗅ぎ回らせてると思ってる。こっからが本番よ。セブンスターズとつながりがあんのは何もあいつらだけじゃねぇってことだ。あとは手土産だ。セブンスターズの頭の固ぇ奴らと対等に渡り合うにゃあ、あと一つ……「こいつは」ってぇ情報があれば……」

 

 ジャスレイが謀略を巡らせるが、その情報は全てフォートレスによって監視されていることに彼らは気が付かなかった。

 サブレが仕込んだ盗聴器から情報は全て筒抜けになっている。

 

 

「……それじゃあ、ジャスレイの奴はこっちで気を付けておく」

「任せたぞ、こっちの方まで嗅ぎまわられても困るからな」

 

 そう言うとマクマードはマハラジャの部屋を出て、名瀬と共に廊下を歩いていると、正面からサブレとハッシュが歩いてきた。

 サブレに続くようにハッシュも黙って頭を下げる。

 

「おう、オルガんとこの奴じゃねぇか。どうしたんだ? こんなところで」

「マクマードさん。いえ、ハーフメタル採掘場で見つけた例の機体が何なのか調べに来たんです。昔アガレスに入っていた資料で見た気がして…」

「ああ、あの時見つけたあれか。また厄介ごとじゃなきゃいいけどな」

 

 ハッシュがサブレの後ろからおずおずと手を上げマクマードに問う。

 

「あの~、なんでテイワズのボスともあろう人がこんな所にいるんすか? ここってあのフォートレスの拠点の一つなんすよね?」

 

 今サブレたちはフォートレスが所有している拠点の一つ、移動型コロニーの『アナグラ』に来ていた。

 

「ああ、マーズ・マセとは取引をしているからな、細けぇ調整をしなきゃいけねぇのさ」

「大変そうですね。父さんが自分で動き回れば済む話なんですけどね…」

「良いさ。別にな」

 

 サブレの言葉を聞きながら名瀬は腕時計を確認する。

 

「オヤジ、そろそろ……」

「おう、だな。それじゃあな。何かわかりゃあ教えてくれ」

 

 そういうとサブレたちとすれ違い、そのまま遠くに消えていく。

サブレはそのままハッシュと共にマハラジャの待つ部屋の前に立ち、部屋のドアが自動で開くと、あまりの煙ったさにとっさに手を覆う。

マハラジャの部屋はたばこの煙が充満しており、副リーダーの男も手を覆って不愉快そうにしていた。

「サブレか、よく来たな。まあ、入れ」

 

 サブレは部屋の中に入ると、マハラジャに手元の端末を渡した。

 

「たしか、通信では送りにくいデータの詳細が知りたいんだったな? どれ」

 

 マハラジャは手元の画像をのぞき込むと、そのまま表情をかすかに変えた。

副リーダーの男もかすかに表情を変え、サブレに問う。

「サブレ、この画像。どうした?」

「鉄華団が所有しているハーフメタルの採掘場で見つけた。今はテイワズの整備場で調査してもらってるよ。名前が分からないからとりあえずモビルワーカーもどきって読んでるけど…。でも前にその資料をアガレスの中から見た気がしてさ…」

「……プルーマだ。これはプルーマという名前だ。まあ、よくもこんなめんどくさいものを見つけ出せるものだな。これは予想以上にめんどくさい事態になるぞ。おい、サブレ、これ以外にモビルスーツよりさらに大掛かりな何かを見付けただろ」

「ああ、見つけたよ。近づいてないけど」

「それでいい。近づくなよ。あと、ギャラルホルンに連絡を入れろ。マクギリスという男でいい、こればかりはギャラルホルンが対応した方がいい」

 

 サブレに端末を投げ返すと、サブレは不愉快そうにし、改めて問う。

 

「で? なんなんだよこれ。どういう存在?」

「モビルアーマー……かつて人類の四分の一を滅ぼした存在だ。プルーマはその付属品にすぎん。ガンダムにとってこいつらはある意味宿敵のような存在だからな」

 

 

オルガやビスケットはユージン達と共に今後のスケジュールの確認を行っていた。

 

「来月にはまた獅電が三機。そのあとには歳星に預けてあったガンダムフレームが届くことになってる。それまでに配置転換訓練の完了ならびに各モビルスーツの稼働状態を90%オーバーにすること、以上が団長からの指示だ。質問は?」

 

 しかし、ユージンの視線はシノたちではなく、隣に立っているビスケットの方を向いていた。

 

「まあ、これぐらいは余裕だね」

「ああ。みんな頑張ってくれてっからなぁ。かなりの優良スケジュールってやつだ」

「もうすぐ給料日ですしね。少し羽を伸ばしてもらって」

 

 シノや昭弘、ユージンとチャドはビスケットの方を見ると一斉につぶやいた。

 

「「「信じらんねぇ……」」」

「そういえばサブレから連絡は?」

「ああ、そういえばまだ……お、噂をすれば」

 

 オルガたちの目の前にある大きな画面にサブレの姿が映る。

 

「オルガ。今すぐギャラルホルンに連絡をいれた方が良い。俺もダッシュで戻る」

 

 サブレが急いでいる事は良く分かり、何となく焦っているのも理解出来た。

 

「どうしたの? サブレ」

「ハーフメタル採掘場で見つけたもの、絶対に近づくなって父さんから。それとギャラルホルンにすぐに連絡を入れてくれってさ。あれは厄祭戦の時に人類を滅ぼそうとした兵器だそうだ。あれが目覚めたらクリュセは終わりだってさ」

「「「はぁ!?」」」

 

 その後マクギリスが火星に向かうという方向で話し合いが決定した。

 

 

「若様。本家より通信です。若様宛にこのようなメールが届いたと」

 

 イオクはそのメールの中身をすぐさまにラスタルに届けた。

 

「ファリド公が火星に? その情報はどこから?」

「JPTトラストという父の代につながりがあった商社からです。他にもいろいろと資料が送られてきましたが……」

 

 そういってラスタルは手元に届いた画像を見ると、ラスタルは驚きが隠せなかった。

 驚いているラスタルを見て逆にその表情に驚くジュリエッタと仮面越しに黙って話を聞いているヴィダール。

 

「ん? なぜこんなものが……」

「ご存じなのですか?」

「プルーマ……モビルアーマーと共に運用されていた無人ユニットだろう。かつて厄祭戦を引き起こした機動兵器だ」

「厄祭戦を!?」

 

 イオクがその情報にびっくりすると、ジュリエッタは見下すような目でイオクを見る。

 

「何を驚いているのですか。ギャラルホルンの兵士たるもの知っていて当然の知識ですが」

「も、もちろん知っているさ!」

「アグニカ・カイエルと我らセブンスターズの始祖達によりすべてのモビルアーマーは滅ぼされ、厄祭戦は終った。その残骸が火星にまだ残っていたとはな」

 

 その話を聞いてヴィダールは推測で話を広げる。

 

「奴が動くということは、もしかすると火星にモビルアーマーの本体があるのかもしれない。仮にそうだとすればファリド公の狙いは七星勲章。厄祭戦でモビルアーマー倒した勇者にだけ与えられる最高の称号。セブンスターズの席次は七星勲章の数で決まったと言われている」

「なるほど、物知りですね」

「一席のイシュー家は当主不在。もしファリド公が七星勲章を手に入れれば三百年ぶりに席次が変わる可能性が出てくる」

「三百年目の七星勲章と戦後体制の破壊……それが奴のいう変革か」

「そんなこと断じてゆるしてはなりません!マクギリス追跡の任、ぜひこの私に!」

 

 張り切るイオクがマクギリスの追跡の任についた。

 

 

「何?イオク・クジャンがマクギリスの追跡についた?」

 

 マハラジャはアナグラで酒を飲んでいると、副リーダーが報告を上げた。

 

「ええ、マクギリスがモビルアーマーの調査に乗り出した途端の行動、どうやらジャスレイのつながっていた先はイオク・クジャンだったようですね」

「ラスタルめ……衰えたな。クジャン家のバカにやらせたらろくなことにならん」

「どうします?」

「最悪モビルアーマーが目覚めるという事態になる恐れがあるな」

「それと並行して……ゼパルが火星に姿を現したという情報も……」

「ゼパルか……厄祭の亡霊が何かを起こすつもりか? しかし、都合がいいというのも事実……ことが荒立つのであれば、終息したのち、俺たちも動くぞ。ちょうどいい。あの豚をいい加減始末する時だ」

「……了解です」

 

 マハラジャもまた動こうとしていた。

 

 

「待たせてすまなかったオルガ団長」

「こちらこそわざわざ来てくれて感謝している」

 

 オルガとマクギリスが握手を交わし後ろにいるメンバーにも目が行く。

 

「地球以来だな、三日月・オーガス。それに、ビスケット・グリフォン君」

「うん」

「お久しぶりです」

 

 オルガたちの車が採掘場に向かって移動しているころ、イオク達が出撃していた。

 

「それにしてもなんで三百年も前のもんが発見されなかったんだ?」

「もしかして、ハーフメタルの特性のせいですか?」

「ええ、我々はそう考えています」

「ハーフメタルはエイハブ・リアクターの干渉を受けない反面その反応自体が検知されにくい」

「やっぱりモビルスーツをもってきておいた方がいいかな?」

「いや、やめておいた方がいい。モビルスーツの存在が奴を起動させる可能性がある。モビルスーツとは元々モビルアーマーを倒すことのみを目的として作られた兵器なのだ。つまり奴にとって宿敵というわけだ」

「だが所詮はただの機械だ。乗る奴がいないなら危険はないはずだろ」

「いや、モビルアーマーはパイロットを必要としない。自分で考え自動で戦う」

「なんですか……それって自動殺戮兵器じゃないですか」

「その通りだ、だからこそ奴らはなんのためらいもなく街を破壊し、人を殺戮することができる」

 

 マクギリス達が採掘場に到着すると上空よりイオク達が降りてきた。

 しかめ面をして見上げるマクギリス。

 

「ギャラルホルン? おいあれはあんたらの仲間なのか?」

「いや……あれは……」

「ふっ…… 動くなマクギリス・ファリド」

 

 イオクがマクギリスに向けて声を発すると、三日月とビスケットはその機体に見覚えがあった。

 

「あれは……あの時の」

「うん、あの時のモビルスーツだ」

「クジャン公! 私になんの用だ?」

「貴公に謀反の気ありと情報を受けてこうして火星まで追ってきたのだ。貴公がモビルアーマーを倒して七星勲章を手にしセブンスターズ主席の座を狙っていることはわかっている」

「七星勲章? なるほど。そんな誤解をしていたのか」

「誤解ではない! モビルアーマーの存在を隠蔽し、ファリド家単独で行動を起こしたことが何よりの証。マクギリス・ファリド貴公を拘束する!」

 

 イオクがマクギリスを拘束しようと機体を動かそうすると、オルガはチャドに指示を出す。

 

「チャド! 本部のユージンに連絡、モビルスーツを回させろ!」

「ダメです。ここからだとLCSが使えません!」

 

 そのころユージンの方でも歳星からの報告が上がっていた。

 

「いや~起動と同時に急に暴れだしてさぁ。なんとか抑えたがこっちも結構被害が出て通信機能もようやく回復したところだよ。団長さんの連絡通りやばいよあれ。そっちも気を付けてね」

 

 そして、そのころマクギリス達の方でもイオクが余計な火種を付けようとしていた。

 

「マクギリス・ファリド。覚悟!」

 

 イオクが一歩機体を前に進めると、マクギリスが反応した。

 

「よせイオク! それ以上モビルスーツを近づけるんじゃない!」

「ダメだ! あれ以上近づけたら!」

「問答無用!」

 

 しかし、マクギリスが止める暇もなく、それは起動した。

三百年の時を経て、目覚めたそれは機体を起こし、口からビームを繰り出したその姿に三日月の右側が反応した。

 

(アレハ……ハシュマル………ダ)

 

 三日月の脳裏にそんな言葉が浮かんだ。

 そして、そんな状況をゼパルに乗っていたイラクは遠くから眺めていた。

 近くに彼が呼んだ記者のカメラがイオクが起動させた決定的な瞬間を捕らえさせて。

 

「おはよう……ハシュマル。そして、ありがとう……イオク・クジャン。お前がバカで本当に良かった」

 

 事態は最悪の形で進もうとしていた。

 




目覚めた厄祭は人類を滅ぼすため動きはじめる。立ち向かうのは鉄華団とギャラルホルン、マハラジャ率いるフォートレスも本格的に動き出す中、様々な思惑が交差する。

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再第二部第十四話『厄祭の亡霊』
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