機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再 作:グランクラン
オルガたちはクリュセの前で臨時作戦本部を作って作戦を練っていると、三日月がクーデリア達のところから戻ってくる。
三日月はクーデリア達が避難しないという事をハッキリと伝えた。
「何? 避難しないだと?」
クーデリア達の決意を素直にオルガに問うと、オルガは説得を諦め作戦に集中することにした。
そんな中、三日月はオルガに作戦内容を聞くことにした。
「ハシュマルの迎撃ポイントは決まったの?」
「ああ。クリュセを狙うなら必ずここを通るはずだ。この谷で奴を迎え撃つ」
すると、後ろから団員がバルバトスを運び込んだと叫んだ。
確かに後ろを見ると運び込まれたバルバトスが置かれていた。
「三日月さん! バルバトスルプスきました!」
三日月はまっすぐバルバトスの方へと歩き出す。
「止めるよ。ここに来る前に」
「頼んだぜ。ミカ」
三日月がバルバトスに乗り込むと、オルガの後ろからメリビットが話しかける。
「団長どうぞ」
メリビットはオルガに上着を渡すと、オルガそれを受け取って羽織り始める。
宇宙港ではマクギリスと石動の目の前に二つのモビルスーツが用意されていた。そのうちの一機はグリムゲルデを改修した機体だった。
「やれやれ……まさかこんな所で使うことになるとはな。ヘルヴィーゲ・リンカー。グリムゲルデを改修した機体だ。今の立場にある私には使うことのかなわない機体。使いこなして見せろ」
その場所より離れたところでヤマギとエーコは宇宙港の作業員と共にテイワズから持ってきたフラウロスを下していた。そんなヤマギたちの目は二機のモビルスーツの方を向いていた。
「なんでこんな民間宇宙港に……」
作業員はヤマギ達の積み荷にも怪しんでいた。
「あんたらの積み荷も十分物騒ですよ。まさか戦争でも始めるんじゃないでしょうね?」
昭弘たち二番隊は先行してハシュマルの様子を確認していた。
「近づきすぎんなよ。リアクターを感知されたら一発だからな」
そんな昭弘とは別に昌弘はハシュマルの速度が遅いことに気が付く。
「でも、意外と遅いな」
「あのおまけの歩調に合わせてんのか?本部にこのデータを送れ。いいぞ。これなら作戦の準備に余裕ができる……」
昭弘がデータを送るように指示を出すと、どこから攻撃されたのか、ハシュマルに攻撃が当たる。
彼等にとって予想外の事態の発生で二番隊に動揺が走ると、ライドが驚きを口にする。
「なっ!?モビルアーマーの進路が!」
ハシュマルの進路が大きく変わりライド達は攻撃先を特定しようとしていた。
そんなハシュマルに攻撃を加えたのはイオクだった。
「くそっ! 一体どこのバカ野郎だよ!」
昭弘達はすぐに状況をオルガたちに伝える。
「見たか! 正義の一撃!」
イオクはこの一撃でモビルアーマーを倒したと確信するが、その攻撃は最悪の結果を招いただけだった。
オルガのもとにメリビットさんが二番隊から仕入れた情報をそのまま伝える。
「モビルアーマーの進路が変わったそうです! 南東から何者かの砲撃を受けその方向に
移動を開始したと!」
オルガは手元の地図を確認すると、ハシュマルの進路方向にある施設を確認する。
「南東だと? まさか……農業プラントがありやがる」
ハシュマルの急な進路変更に二番隊のライドが真っ先に動いた。
「ライド!」
「俺が先回りしてそこの連中を逃がします!」
その間に三日月はバルバトスを起動させ、そのまま立ち上がる。
「進路が変わった?」
そこにようやく追いついたハッシュが獅電に乗り込み、先ほどの進路変更の情報を三日月に伝える。
「らしいです。今は二番隊が対応してますけど……」
「バルバトス。出るよ」
三日月はそれだけを聞くとそのまま飛び出していく。さすがにハッシュがその行動に驚く。
「えっ!? 団長に連絡しなくていいんですか?」
「ほっとけ。サブレがいない以上、三日月を止められる人間はいねぇよ」
そんな整備を担当している雪之丞の言葉に納得するしか無いハッシュだった。
しかし、そんな中イオクは達成感と共にあった。
「やった……やってやったぞ! これで手向けになるか? お前たちの忠義のおかげであのモビルアーマーに一矢報いることができた……」
そんなイオクの前にジュリエッタが降り立ったのだが、ジュリエッタはそんなイラクに苛立ちをぶつけそうになっていた。
「今の砲撃はあなたですか? イオク様」
やってきたジュリエッタにイオクはいかに自分がすごいことをしたのか説明するのだが、イオクの馬鹿さ加減に眉間にしわを寄せる。
「ジュリエッタ!? どうだ見たか! 奴に報いてやった!」
しかし、ジュリエッタはそんなイオクを見下すような目で見てハッキリと告げた。
「バカですかあなたは。あの距離ではかすり傷もつきません」
「なん……だと……?レギンレイズの最高出力だぞ!」
イオクは言葉を失った。
自信満々で放った一撃だけに動揺は大きかった。
「その程度でなんとかなるならモビルアーマーが最強の兵器などと呼ばれたりしません。何をするんですか?」
イオクはコックピットの中に戻っていく。
「止めるな! 部下達は命を賭して俺にチャンスをくれたのだ。その敵を取れずにおめおめ戻るなどと!」
「いいから!もうあなたはおとなしくしていてください!」
ジュリエッタの怒鳴り声もイオクには通じず、イオクはそのままハシュマルの方に向かって移動を始める。
「ライドを援護すんぞ! ケツをたたいてこっちに注意をひきつけろ!」
明弘の指示にライドが必死で動いていた。
二番隊の決死の攻撃もハシュマルには全く意味を為さず、まっすぐに農業プラントに向かっていく中、三日月も農業プラントに急ぐ。
「ミカ!」
急ぐ三日月の前にオルガから通信がくる。
「聞こえてる」
「今更迎撃ポイントは変えられねぇ。なんとか凌いで奴の進路を引き戻してくれ」
「分かった。サブレは?」
「そっちに向かっているはずだが……」
三日月は「そっか…」と呟きながら内心では「遅いな…」と思い浮かんでいた。
「くそ!完全にこっちを無視してやがる!」
二番隊の決死の攻撃もハシュマルの進路を変更するまでには至らなかった。チャドも文句をつぶやきながら攻撃を加える。
そんな中昭弘もぼやく。
「人間の多い方に向かってるってことか!」
ハシュマルは農業プラントにいる人々を捉えると、口を開け、ビームを放出する準備に入った。
そんなハシュマルと農業プラントの間にライドが割って入る。
しかし、ライドは知らなかったのだ…ビーム兵器を。
「させるかよ! ……へっ!?」
ライドの獅電にビームが直撃すると、ビームはナノラミネートアーマーの性質上、着弾点から周囲に拡散しつつ農業プラントに直撃したがその攻撃にチャドが驚く。
「あれはまさかビーム兵器!?」
昭弘も驚きを隠せずにいる。
「んだそりゃ!? ライドは無事なのか!?」
「大昔の兵器だよ。モビルスーツのナノラミネートアーマーなら大丈夫だと思うが……」
チャドの予想通り、ライドは無事だった。
そう…ライドは。
「な……なんだってんだ? 今の攻撃……えっ?」
ライドが後ろを振り向くと、農業プラントが火の海に包まれていた。
ライドは絶句してしまう。
「そんな……俺……守ろうと………うわぁ~!!」
ライドはプルーマに攻撃を仕掛けるが、プルーマはライドの獅電に群がるように取り囲む。
「くそっ! くそっくそっくそっくそっくそっ! なんなんだよお前! なんで今更出てくるんだよ! ずっと埋まってろよ! バカ野郎!」
あっという間にプルーマは獅電を取り囲み、プルーマの大群の中に獅電は沈んでいく。
ライドの目の前のモニターにプルーマの姿しか映らないと、ライドは絶望に包まれてしまう。
しかし、突然プルーマ達がライドから引きはがされる。
「な……なんだこれ!?」
そんなライドの前の前にバルバトスが立ちふさがった。
「生きてる?」
「三日月さん!」
アガレスも進路変更を聞き、農業プラントへと進路を変更するが、サブレはアガレスの移動を止める。
明楽とジョシュアも足を一旦止めてしまうが、サブレはそんな二人に「先に行け」と指示を出し見送る。
改めて二人が消えたところでサブレはある一点を見つめる。
「どうしたの?」
「……いい加減限界だ………出て来い! 宇宙港から俺たちを付けてきてるだろ! イラク!!」
サブレの怒鳴り声と共にゼパルが姿を現す。ビスケットはさすがに驚く。
「いつの間に……」
「つけてたんだ。ビスケット兄さんを……」
イラクはにやりと笑い、サブレは不機嫌そうに睨む。
「賢いガキは嫌いだな……」
「何なんだ!? 何が目的なんだ!」
そんなサブレの問いにイラクは軽く笑いながら答えた。
「さてね…まあモビルアーマーを起動させてでもしたいことの8割は達成出来たから良いんだがね。個人的に確かめたいことがあるんだよ。その為にもお前は少しの間邪魔だ」
「だからここで邪魔をしようと?」
「君達は阿頼耶識というシステムを誤解しているようだからハッキリと言っておくが、このシステムは元々機体の適正の高い人間の脳を機体のメモリー内に保存し、肉体をカードリッジ代わりに使うというシステムだ。この体は私にとって直ぐに交換の利く物体に過ぎないんだ」
「それと邪魔がどういう意味があるんですか?」
「フフフ…私はね自分の計画を復活させるのに必要な人材を探していたんだ。まさかオーガス家が生きていたとはね。彼は君達と同じ鉄血のオルフェンズのオリジナルナンバーだからね」
「乗っ取った人間は……どうなるんですか?」
ビスケットの問いにイラクは悪い表情を浮かべる。
「消えるさ……自我は約一か月を懸けて完全に消えてしまう」
「それより何なんだ? オリジナルナンバーって」
「ん? 最初の十人の事だ。現在のセブンスターズは全て変えに過ぎない。そう…彼等は本来誰一人本当の意味で鉄血のオルフェンズのメンバーとは言えないのさ。イシュー家ですらな」
「おかしいだろ! イシュー家はお前じゃ無いのか?」
「どうして私が汚れた血を内側に入れなくてはいけない。私はね金に興味なんて無いんだよ。分かるかな? 自分がイシュー家だと思って生きてきたあの馬鹿女なんてな…私は端っから親類だとすら思って居ない。強いて言うなら鉄血のオルフェンズの補欠メンバーでそのまま生き残っているのはイシュー家とファリド家以外だよ」
「そうか…これでハッキリとした。お前は俺の敵か!」
「そうだな…さあ! 見せてくれ! アガレスの能力をどこまで引き上げることが出来るようになったのか!?」
サブレはアガレスの武器を構え、そのまま交戦の意思を見せる。
サブレとビスケットはアガレスのシステムを覚醒させ、同時にブースターを最大まで吹かせて吹き飛ぶように飛んでいきながら右腕に装備してレンチメイス改を振り下ろす。
悪魔達は不協和音を響かせながら戦いは激しさを増していく。
何を目的にしているのか分からないまま暴れ回るイラク、衝突する悪魔達は戦場という舞台の上で踊り続けていく。
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再第二部第十六話『悪魔の輪舞曲』