機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再   作:グランクラン

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最新話です。


悪魔の輪舞曲

 マクギリス達も移動しながら進路変更の情報を手に入れていた。

 

「予定外の進路変更か。やはり物事はこちらの思惑通りには進まないものだな」

「それにしてはどこか楽しげにも聞こえますが?」

 

 石動はマクギリスの楽しそうな表情になっていると理解してハッキリと指摘する。

 

「そうか? だがやはり気持ちのいいものではないな。予想外の駒の動きは盤面を乱す……」

 

 そんなマクギリス達の前にヴィダールが姿を現す。

 

「エイハブウェーブ! IFFを確認。これはギャラルホルンの機体コード!? しかしあれは……」

「ガンダムフレーム」

 

 マクギリスとヴィダールは出会ってしまった。

 

 三日月がライドの前に守るように立ちふさがる。

 

「三日月さん……俺……余計な事しちまった………」

 

 ライドは農業プラントが甚大なダメージを受けたことに責任を感じていた。

三日月はそんな事とは別にライドの無事を確認する。

 

「ライド動けそう?」

「えっ? あっ……はい俺は全然。けど獅電がもう……」

「分かった。ん? なんだこれ?」

 

 ライドの無事と獅電の戦闘不能を確認したとき、バルバトスに異常が現れた。

正面のハシュマルにバルバトスが過剰に反応し、そのとたん三日月は鼻血を出してしまう。

三日月の状況を知らないハッシュは農業プラントの状況を報告する。

「三日月さん! プラントに生存者はいませんでした。次どうします? ……三日月さん?」

「おかしいな……」

 

 バルバトスは動かなくなった。

 

 

 大きな一撃をアガレスがゼパルに向けて振り下ろすと、イラクはそれをぎりぎりで回避した。

イラクは薙ぎ払うようにふるうとアガレスはそれをしゃがんで回避しそのまま足払いを決める。

ゼパルは態勢を大きく崩されるが、アガレスの振り下ろされる攻撃を足場を崩壊させることで回避する。

 

「なっ!?」

 

 アガレスとゼパルはそのまま下へと落ちていく。

 アガレスもゼパルも上手く着地してお互いに睨み合う。

 

「ここら辺にこんな地下空洞があったなんて……でも、ここって……」

「ゼパルは……あそこか」

 

 正面にはゼパルがアガレス同様に何の問題もなさそうに立ち上がる。

しかし、その瞬間にはサブレとビスケットの視線は周囲にある完全に大破したガンダムフレームとモビルアーマーの姿に釘付けになった。

 

「な……なんだ……これ……」

「モビルアーマー? ガンダムフレーム?」

 

 二人の疑問にイラクが答えた。

 

「安心すると良い……ここら辺のガンダムフレームとモビルアーマーはもう動くことはない。見ればわかるようにエイハブリアクターを抜かれているからな。動くことはない。これが……厄祭の名残だ。ようこそ……厄祭の戦場痕へ」

 

 二人は絶句しつつも戦う姿勢を崩さなかった。

 

 

「ガンダムフレーム……」

「ギャラルホルンのマッチングリストに該当する機体はありません」

 

 石動とマクギリスは目の前に現れた新たなガンダムフレームに困惑していた。

 

「しかし、この固有周波数はギャラルホルン製のリアクターに非常に近い。ラスタルの手の者か?」

 

 沈黙を続けるヴィダールの前に石動はマクギリスを守るように立ちふさがる。

 

「お下がりください准将。そこのモビルスーツ! 所属と階級を答えよ」

 

 石動の問いにヴィダールは答えるそぶりを見せない。

 

「火星で再会するとはな。お前の裏切りの全てが始まったこの土地で。しかし……」

 

 ヴィダールは黙ってマクギリスの方を見る。

すると、ジュリエッタから通信が来た。

 

「ヴィダール。何をしているんですか? こちらはイオク様と合流したのですが……ええい!とっとと合流して下さい!」

「……分かった。そちらに向かう」

 

 ヴィダールは去り際にマクギリスに言葉を発した。

 

「俺にはわからない。自らの愛を叫び散っていったカルタ・イシューと同じ機体に乗るその気持ちが」

 

 ヴィダールが去る中、マクギリスは全てを察した。

 

「待て!」

「いい。捨て置け」

 

 その声は震えていた。

 

 

 グシオンライフルでプルーマに攻撃しつつもプルーマからの反撃にあう。

グシオンはプルーマを蹴り上げ、プルーマに狙撃した。

 

「ライドはどうなった!?」

 

 昭弘の疑問にチャドが答えた。

 

「三日月達が向かったって連絡は来たがどうもトラブってるみたいだ」

「仕方ねぇ……俺が囮になる!」

 

 昭弘は自ら囮になるために高く飛び砲撃しようとハシュマルの方を見た瞬間目の前の顔面に赤い文字が出現しそのとたん、昭弘は鼻血を噴出させる。

コントロールを失ったグシオンをチャドのランドマン・ロディが回収しようとダッシュで駆け寄る。

 

「昭弘!」

 

 滑り込みながらうまくキャッチするチャド。

 

「昭弘! おいどうした!? 返事しろよ昭弘!」

 

 昭弘に声をかけるが反応しない昭弘。チャドは昌弘に昭弘を任せる。

 

「昌弘! 昭弘を任せる。俺はモビルアーマーを引き付ける!」

「了解!」

 

 昌弘は昭弘をつれその場を後にすると、チャドはハンマーチョッパーを力一杯投げつけハシュマルの視線を自分の方に向けさせる。

 

「そうだ! こっちにきやがれ!」

 ハシュマルはチャドのランドマン・ロディにビームを放つとビームはランドマン・ロディのナノラミネートアーマーに着弾し拡散していく。

 

「熱ぃ! これがビームってやつか。けどやっと化け物に振り向いてもらえた!」

 

 チャドは機体をひるがえし、そのままハシュマルを引き付ける。

 

 

 メリビットは作戦本部でオルガに先ほどの状況を報告する。

 

「二番隊から報告が来ました。モビルスーツの作戦ルートへの誘導に成功したそうです。ただしグシオンが機能停止。バルバトスも不調のため現在待機状態だそうです」

「サブレとビスケットはどうしたんすか?」

「それが渓谷を移動中に行方が分からなくなったそうです。明楽君とジョシュアさんの報告によると赤いガンダム・フレームと交戦後に通信が切れているそうです」

「仕方ねぇ……まずはモビルアーマーだ。昭弘とミカ、サブレにビスケットがいねぇんじゃさすがに戦力が足りねぇ。明楽とジョシュアが到着するまでなんとかしねぇと。一番隊を出すぞ。ラフタさんとアジーさんにも出てもらう。それとマクギリスにも連絡を取ってくれ。ユージンにも爆破準備を急ぐように伝えてくれ」

 

 オルガはメリビットから雪之丞の方へ視線を向ける。

 

「悪ぃがミカ達を見てきてくれねぇか」

「任せろ。詳しいことが分かったら連絡する」

 

 そういうと雪之丞はバルバトスの方へ移動を開始した時、オルガの元にソニアから連絡がやって来た。

 

「団長さんかしら? もしかしてバルバトスとグシオンに不具合が生じたんじゃ無い?」

 

 

 「ここで……厄祭戦が?」

 

 ビスケットはイラクの言葉に驚きを隠せなかった。

イラクは不敵な微笑みを浮かべる。

 

「別に驚くようなことは無かろう? 厄祭戦は木星圏でも行われていたんだからな。火星が特別なわけがない。まあ、厄祭戦ののちに我々の手によってほとんどのエイハブリアクターは取り除いたがな……。我々がエイハブリアクターの製造方法を独占したのはこれ以上のモビルアーマーを作らせないためでもあった」

 

 イラクの言い様にサブレはいら立ちを隠せなかった。

 

「で? そんな厄祭戦を終わらせた英雄様が、三百年の月日を経てなお何をしたい!?」

 

 イラクはまっすぐアガレスの方を見つめる。

 

「………君達が気にしていても仕方の無い事さ。強いて言うなら今回の戦いにおける私の最低限の目的は達成しているんだ」

「「?」」

「強いて言うなら人選だよ」

「人選? それって…」

「そんな事より本気を出したらどうだ? モビルアーマーを倒すならアガレスが全力を出す必要があると思うが?」

 

 サブレは表情を暗くさせ、まっすぐゼパルの方を向く。

アガレスの目の色が赤になろうとしたとき、サブレは目力を強くし、そのとたんにアガレスの目が赤から青に変わる。

アガレスの動きが変わり、ゼパルを吹き飛ばして通路の奥へと姿を消した。

 

「それでいい…さてさて今日の夕方にでも例の映像がテレビで流れるはずだ」

 

 

 ジュリエッタは何とかイオクを見つけ出し、説得しようとしていた。

 

「よろしいですねイオク様。ヴィダールと合流次第移動します。そちらの機体はまだ動けますか?」

 

 ジュリエッタの行動に勘違いをしたイオクはさらに調子に乗る。

 

「恩に着るぞジュリエッタ……そこまでこの身を案じてくれるとは……」

「はい?」

 

 意味の分からないジュリエッタは首をかしげる。

 ジュリエッタからすれば「この人は何を言っているのだろう」と思わざるおえない。

 

「しかし! やはり私は行かねばならぬ。そうでなくては部下達に合わせる顔がないのだ!」

「バ……バカを言わないでください! 私はあなたを逃がすために」

 

 そんなジュリエッタの言葉でも止まらないイオクは再び機体の中に入っていくき、動き出すとわかったジュリエッタは飛び移る。

 

「あっ !やばっ!」

「部下たちの流した涙はもはや私の血肉となっている! 命の尊さを人の心を知らぬモビルア—マーに分からせてやらねば!」

 

 イオクの訳の分からない言葉に唖然とするジュリエッタの目の前で飛び去っていく。

 

「さらば!」

「ああもう! お守りをしている場合ではないのに! 早く来てくださいヴィダール!」

 

 ジュリエッタも機体に乗り込みその場を移動する。

 内心苛立ちが抑えられなかった。

 

 

 雪之丞はザックと共にグシオンとバルバトスのところにまでたどり着いていた。

 

「どうだザック! 昭弘の様子は」

「駄目っす。まだ意識が戻りません」

 

 ザックはいまだ意識が戻らない昭弘の前でグシオンのシステムチェックに追われていた。

三日月はバルバトスの前で雪之丞に状況を簡単に説明した。

 

「あの鳥を見てからバルバトスが言うこと聞かなくなった」

 

 すると原因が分かったザックが近くに寄って来ると説明した。

 

「ちょっといいっすか。多分原因はこの二つのリミッターじゃないっすかねぇ。こいつを見てください。バルバトスとグシオンのシステムログです。阿頼耶識からパイロットにフィードバックされる情報量に過度な制限が掛かったみたいなんすよ。逆に機体自体は出力制限は解放されてます。分かりやすく言うと出力全開にしたい機体側と、パイロットを保護するシステムがぶつかり合ってる状態なんす。それでどっちの機体も動きが悪くなってるんだと思います」

 

 ザックの説明に驚く雪之丞は疑問をぶつける。

 

「おめぇどこでそんな知識を……」

「鉄華団入る前学校でこの手の勉強してたんすよ。こう見えても俺~割と優秀な子で~」

 

 ハッシュはザックにどうにかするようにと告げる。

 

「んじゃなんとかしろよ!これからモビルアーマーとやんなきゃなんねぇんだからよ」

 

 そこにソニアがやって来た。

 

「やっても良いけど。旧式タイプの阿頼耶識システムは危険でしょうね。新型タイプはシステムを新しくしてあるからリミッター解除をある程度任意でパイロットの負担になりすぎない範囲で行えるけど…」

「こっちのタイプは難しいと?」

「そうね。それをしたら…」

 

 ソニアの言葉に雪之丞が暗い表情をするしかなかった。

 

 

 雪之丞から連絡を受けたオルガが受けた結果はバルバトスとグシオンが出せないということだった。

 

「無理に出してたとえ動けたとしても下手すりゃエドモントンの二の舞だ」

 

 オルガ達が話していたころラフタ達はハシュマルを食い止めている最中だった。

 

「ユージン達の準備はまだ!?」

「予定よりもずっと進行が速くてこれ以上は抑えられない!」

 

 予定よりも進行が速いハシュマルにラフタ達はユージンに作戦の前倒しを提案する。

 

「ユージンやれるか!?」

 

 通信機越しにオルガがユージンに問う。

 

「もうかよくっそ! やるしかねぇだろ。巻け巻け! ガンガン巻いていけ! 奴さんが来やがるぞ!」

「あとちょっと! なんとかなる! する!」

「ああ! この調子なら……」

 

 突然ラフタとアジーの目の前でハシュマルに攻撃が当たりハシュマルとプルーマの移動速度が上がる。

 

モビルアーマーが細けぇのと一緒に加速した。

 驚くダンテにユージンも驚愕する。

 

「はぁ!? なんでだよ!?」

「ごめんユージン! 抜かれた!」

 

 ラフタの目の前でハシュマルは抜いていき、そのままの速度で移動していく。

一人の団員が一機のモビルスーツを確認した。

 

「くっ! 準備は!?」

「まだですよ!」

「なんだあいつ。あいつが撃ったのか?」

「あれはギャラルホルン?」

 

 ユージンの視線の先にはイオクのレギンレイズがレールキャノンの限界が続く限り撃っていた。

 

「バレルが逝ったか……限界を超えた最後の一撃。感じたか? それが私を信じ散っていった者たちの痛みだ! もはやここまで。だが悔いはない! クジャン家の誇りを抱いて華々しく散ろう」

 

 イオクは目を閉じ覚悟するとジュリエッタが姿を現した。

 

「いえ。バカは死んでも治らないのであれば……無駄なので生きてください」

 

 イオクのいた場所を高速で移動すると、ポイントを通過してしまう。

 

「目標……ポイントを通過しました」

「それにしてもあのギャラルホルンのアホが……どうなってんだあいつら!」

 

 ユージンの憤りに対しオルガはユージンに次の行動の指示をだす。

 

「次の手を考える。お前らは本部に戻って補給してくれ」

 

(ビスケット……サブレ……どこにいるんだ?)

 

 オルガはいまだに連絡の取れないアガレスの心配をしていた。

少ししたのち三日月と雪之丞はバルバトスを連れてオルガのところまで来ていた。

 

「どうすんの? 俺出ようか?」

 

 あくまでも出撃しようとする三日月に対し、オルガはあくまで反対する。

 

「たまには横でおとなしく見てろ。シノに連絡を取ってくれ」

 

 そんなオルガの言葉に三日月はムッと表情を変える。

 

「フラウロスを使う」

 

 オルガの言葉にメリビットが反応する。

 

「でもガンダムフレームをモビルアーマーに近づけるのは危険だと……」

「いやありゃあこういう時にゃうってつけの機体だ」

 

 雪之丞が賛成すると三日月が再び口をはさむ。

 

「分断した後は?」

「今ある戦力でモビルアーマーで叩く」

「それであいつをやれるの?」

「さっきマクギリスに連絡を入れた。あいつらが何とかしてくれる」

 

 オルガの発言に雪之丞が口をはさんだ。

 

「それでいいのか?今回の仕事は鉄華団にとっちゃあちらさんに力を見せつけとく場だったんじゃねぇのか?」

「仕方ねぇだろ。クリュセを見捨てるわけにはいかねぇよ……あそこにはビスケット達の妹もいるんだ」

「俺が出るよ」

 

 三日月の発言にオルガは反対する。

 

「横で見てろっつったろ。本体と細けぇのを分断できりゃあ今回の作戦は十分に成功なんだ。メンツの問題だけでわざわざ危険な目にあうことはねぇ。それになテイワズからもらった俺の獅電を本部から運んでる。いざとなりゃ……」

「それはだめだ」

 

 オルガの言葉に三日月は強く否定する。

 珍しく意見がぶつかり合った。

 

 悪魔達は様々な思いを馳せて戦いは更に激しさを増していく。

 




ハシュマルを狩るために多くの者達が動いていく中、最後は悪魔が刈り取るため目を輝かせて立ち向かう。犠牲を背負いただ…前へ…

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再第二部第十七話『悪魔と天使』

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