機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再 作:グランクラン
「すまなかった。途中で足止めを……」
ヴィダールは何とかジュリエッタと合流していたが、ヴィダールはジュリエッタに嘘をついていた。
最もジュリエッタはそんな事気にしてすらいなかった。
「もういいです。それよりイオク様をお願いします」
ジュリエッタの言葉にイオクは強く反応する。
その瞳は感動で一杯になっており、これから出撃しようとするジュリエッタに自らの感情を向けた。
「そうか! 敵を取ってくれるというのか! お前は……お前というやつは……」
イオクの言葉を無視してヴィダールとジュリエッタは会話を続ける。
「行くなら早くした方がいい。鉄華団とファリド公に先を越される」
「私の誇りを預けるぞ!」
そんなイオクの叫びにジュリエッタは叫ぶ。
「イオク様うるさい!」
ジュリエッタはそのまま走り去っていく中、遠くからイラクがイオクの姿を見ていた。
イラクは悪そうな微笑みをしており、もう一人ヴィダールの方を見ながら小さく呟く。
「今は放置しておくか…イオク・クジャン…君は私にとっても最後のパズルのピースなのさ…そしてガエリオ…フン。あの時死んでおけば楽だったのにな」
フラウロスは戦場に向け移動する中コックピットの中ではシノとヤマギがすし詰め状態になっていた。
「ったく団長も無茶言ってくれるぜ」
シノの言葉にヤマギも同意する。
「ほんとだよ。俺までコックピットに引きずり込むなんて」
「新しい装備の操作方法がいまいちわかんねぇんだから仕方ねぇだろ。時間もねぇし説明書代わりだ」
「もう……」
ヤマギは不満そうな言葉をはきながらも足は嬉しそうにバタついていた。
「にしてもほんとにこいつでできんのかよ?」
「うん。モビルアーマーとプルーマの分断はフラウロスのキャノンなら可能だよ」
「だったらモビルアーマーを直接やっちまえば……」
「残念だけど近づくことができない状態でナノラミネートアーマーに対して致命傷を与えるのは難しいね」
ヤマギは目の前の端末を操作しながら簡単に否定したがシノはイマイチ理解は出来なかったが、「ヤマギがそう言うのならそうなのだろう」と思い込むことにした。
団員の一人がハシュマルの通過を確認した。
「来たぞ~!」
「こちら第二監視ポイント。モビルアーマーの通過を確認!」
団員の連絡を受けたラフタとアジーは不安ながらも目標地点で待機していた。
「ほんとうに今度こそ大丈夫なんだよね?」
「ああ。信じるしかない。あいつらの力を借りるのも癪だけど仕方ないね」
作戦ポイントではマクギリス達が待機していた。メリビットの目の前にある端末でハシュマルの到着時間をカウントする。
「モビルアーマーの到着まであと10」
「全員聞こえたな?ここで奴を仕留めるぞ。なんとしてもだ!」
「来ました!」
しかし、ラフタ達の目の前に現れたハシュマルとプルーマは密集していて分断は無理そうだった。
「あいつあんな固まって! これじゃ分断できないよ!」
「幅が狭くなった分プルーマが密集したんだ」
「何とか分断してください!」
「やるだけやってみるけどさ!」
「数が多すぎる!」
メリビットの指示にラフタとアジーは答えながらもまるで意味をなさない。フラウロスは目標地点に到着した。
「おいおいどうすんだ団長! ポイントには着いたがよぉこっからじゃ目標はみえねぇんだぞ!」
すると、シノの目の前に流星号が姿を現した。
「俺が行きます!」
ライドは流星号を駆け急ぐ中シノは機体に注目した。
「んん~……ありゃあ……俺の流星号じゃねぇか!」
「ついてこいや! 鳥野郎!」
ライドはハシュマルの前に移動する。
「こっちも行くよシノ!」
「おう!」
フラウロスの姿が大きく変わり始めると、そのまま二つのキャノンをリアクターに接続させる。
まるで四つ足走行の動物へと変貌していくフラウロス。
「これがバルバトスやグシオンにはない変形機構。二基のリアクターの出力を集中させた……電磁投射砲の威力ならいつでも行けるよ!」
「唸れ! ギャラクシーキャノン発射!!」
シノの叫び声と共に両肩のキャノンから弾が放出されると反動がフラウロスにやってくる。弾は渓谷を貫通し、ハシュマルとプルーマを分断する。
「見たかおまえら! これが四代目流星号だ! あとは頼んだぜ!」
ハシュマルの前に数機のモビルスーツが立ちふさがる。マクギリスはフラウロスの攻撃に疑問を抱いた。
「新たなガンダムフレームか。しかしあの威力……」
「来ます!」
石動の目の前にライドが吹き飛ばされる。ジュリエッタはそのとたんに攻撃を加える。
「ファリド公に手柄は譲りません!」
「あれはアリアンロッドの!」
「やらせるわけにはいかんな」
「はっ!」
石動とマクギリスはジュリエッタに負けじと機体を走らせる。しかし、ハシュマルには何一つ通用しない。石動とジュリエッタはそのまま壁に蹴り飛ばされる。
「くっ! これほどとは……」
マクギリスの驚愕を待たず、ハシュマルはマクギリスの機体を吹き飛ばす。メリビットはオルガにマクギリス達の状況を報告する。
「モビルアーマーに防衛線を突破されました!」
「チャド!」
「こっちもいっぱいいっぱいですよ!」
チャド達はプルーマの相手に精一杯でハシュマルの相手などできるはずもなかった。オルガは途端に走り出す。
「団長!?」
マクギリスは改めてモビルアーマーの強さを確認していた。
「これが厄祭戦で人類を絶滅の窮地に追いやったモビルアーマーの本性か!」
ライドに攻撃を加えようとする中、ハシュマルの動きが完全に止まった。
その理由は壁を勢いよく破って現れたアガレスにある。
「あ……あれは」
ジュリエッタの視線の先に現れたアガレスはそのまま奥へとハシュマルを連れていく。ハシュマルを追うようにバルバトスも降り立つ。
「なぜ彼が……」
マクギリスが驚く中バルバトスはそのままハシュマルを追いかけていき、それについていくように明楽とジョシュアも同じように駆けて追いかけている。
「石動行くぞ! 我々も追う!」
「はっ!」
「私も……追わねば」
ジュリエッタも追いかけていく中、大きな空間にアガレスはハシュマルを待ち受ける。遅れてバルバトスとアンドロマリウスとフェネクスも追いかけていく。
「おいバルバトス。あれはお前の得物なんだろ? 余計な鎖は外してやるから見せてみろよ……お前の力を」
「先輩……私達の手柄を奪わないでくださいよ…新しい阿頼耶識だからこそ出来る限界突破試させてください」
「此所で殺す…絶対に!!」
バルバトスの目が赤く強く光ると、三日月の右目が赤く充血する。そして、アガレスは目をさらに青くさせる。
フェネクスは全身からナノマシンを噴出していき、アンドロマリウスは両腕から熱を放ちながら目の前に現れた獲物に照準を向けた。
「アガレス! お前は機械で俺は人間だ! お前が機械なら俺達のいうことを聞け!! 俺は人間だ!!!」
バルバトスとアガレスとアンドロマリウスとフェネクスはハシュマルと対峙する。
マクギリスと石動とジュリエッタはようやく戦いの場にたどり着く、バルバトスとアガレスがハシュマルを挟み込むような形で立ちふさがる。
フェネクスは空中に浮かんでいき、アンドロマリウスはハシュマルは背中に回り込んでおり尻尾の方向をジッと見つめていた。
バルバトスは目を赤く、アガレスは目を青くする。石動とマクギリスは援護するために前に出ようとする。
しかしそれを三日月は冷たく引き離すだけだった。
「援護する。石動お前は左から……」
「いらない。邪魔」
マクギリスの援護を邪魔と一蹴すると、バルバトスとアガレスはとてつもない動きで一気にハシュマルとの距離を詰める、アガレスはテイルブレードの攻撃を紙一重で回避し、レンチメイス改を腕にたたきつけ、いったん距離を取る。
アンドロマリウスは後ろからハシュマルに殴りつけようとするのだが、ハシュマルは後ろから襲い掛ってくる攻撃を尻尾で迎撃を試みてくる。
それに対して明楽はアンドロマリウスの右腕で尻尾を強く掴んで引っ張ろうとする。
フェネクスは明楽が尻尾を完全に抑えたときにハシュマルの背中に張り付いてナノマシンを流し込んでいく。
動きが悪くなる中ハシュマルはフェネクスを弾き飛ばして動きに自由が得られた。
バルバトスはソードメイスで攻撃を仕掛け、石動を盾にするように攻撃を回避する。
ジュリエッタたちは二人の動きについていくことすらできない中でバルバトスはハシュマルの上に乗り攻撃を仕掛けるのをハシュマルはテイルブレードのワイヤーで吹き飛ばす。
その姿を見たビスケットは負荷に苦しみながら叫ぶ。
「み、三日月!」
「大丈夫。それよりそっちはまだ動ける?」
「ああ、行ける。このまま仕留めるぞ」
「うん。明楽とジョシュアも大丈夫?」
「まだ行けるけど…この尻尾を抑えるだけで必死なんだけど…!!」
「私も今のでフェネクスのナノマシンが結構消耗しました…」
しかし、アガレスとバルバトスが動きを一瞬止めていた隙にハシュマルは近くのモビルアーマーの武装をあさりそのまま自分の武装として装備する。
背中には巨大なタンクのようなものが装備されていた。
バルバトスとアガレスは壁に埋まった自分の武器を引き抜こうとするのをハシュマルはビームでソードメイスを壊し、背中から高速で出てきた弾で埋まった武器を壁ごと破壊された。
その攻撃にマクギリスは驚く。
「あ、あれは……ダインスレイブ!!」
バルバトスは四つん這いで動きながらもハシュマルのパーツをもぎ取る。
アガレスは近くにあった大型ランスを取り出し、突き刺そうとするが、ハシュマルはそれをテイルブレードでガードする。
ハシュマルはテールブレードにくっ付いているアンドロマリウスをなんとか引き離したが、その瞬間アンドロマリウスは右腕を犠牲にしつつもハシュマル下側から攻撃を加えた。
ハシュマルは腕でバルバトスを殴りつける。ジュリエッタを含め、三人は唖然としていた。
「何なんだこれは……」
「動きが……見えない」
三日月はこれでも足りないと叫ぶ。
「使ってやるからもっとよこせ……こんなもんかよお前の力は」
マクギリスでさえ驚愕していた。
「これが……厄祭戦を終わらせた力……か」
背中に乗っていたバルバトスをハシュマルはテイルブレードで吹き飛ばしアガレスを足で蹴り飛ばした。
バルバトスのコックピットの近くにテイルブレードの攻撃がやって来た。
「あっ………あっぶねぇ……なぁ!」
バルバトスを殴りつけるハシュマルはそのままテイルブレードをジュリエッタの方に向けた。
ジュリエッタのコックピットにあたろうとした攻撃をサブレはアガレスを使って庇う。アガレスの左腕をもぎ取るように突き刺さる。
「ど……どうして?なんで私を……」
「俺の近くに居ろよ…守り切れんから」
そういうとアガレスは再びランスを取り、突き進むような体勢になる。
三日月は石動が持っていた大剣を奪う。
アンドロマリウスは残った左腕で突っ込んでいこうとし、そこにフェネクスが上空でナノマシンを振り回して一瞬だけだがハシュマルの動きを止めてアンドロマリウスは左拳を叩き込む。
動きが多少ぎこちなくなるがテイルブレードで明楽を吹っ飛ばすと、明楽はなんとか受け身を取るが機体のあちらこちらから悲鳴が上がっていく。
フェネクスすらもテイルブレードで軽く飛ばしてからアガレスを睨み付ける。
「俺達がテイルブレードをひきつける、三日月はそのままあいつをやれ!」
「分かったそっちは任せる」
両機はほぼ同時に走り出し、サブレは三日月に向けられたテイルブレードの攻撃をランスで受け止め、そのまま三日月は駆け抜ける。
しかし、テイルブレードの攻撃はアガレスの右腕をもぎ取り、そのまま三日月の方に向く。
「さ、させるか!!」
両腕を失ったアガレスは機体を走らせ、テイルブレードの攻撃をそらし、その隙にバルバトスはハシュマルの頭部に攻撃を決める。
そらされた攻撃は辛うじてコックピット直撃だけは阻止した。
しかし、両機とも戦えるような状態ではなく、バルバトスも、アガレスも崩れ落ちたハシュマルに寄りかかるように倒れた。
ギャラルホルン本部ではセブンスターズによる会議が開かれていた。マクギリスによる報告が行われていた。
「報告書にある通り私が火星に向かった目的はあくまでもモビルアーマーの視察でした。ですがそれを邪推したクジャン公の介入がモビルアーマーを目覚めさせてしまった。我がファリド家が現地の組織と協力しモビルアーマーを撃破したことで事なきをえましたが、一歩間違えれば市街地は蹂躙され火星は大惨事となっていたことでしょう」
そんなマクギリスの言葉にイオクが喰ってかかる。
「黙れ!全て貴公が仕組んだことではないか!!」
「私が?なんのために?」
「七星勲章!!」
「そんなものに興味はない」
「しらを切っても無駄だ!そうですよね?エリオン公……えっ?」
しかし、ラスタルはそんなイオクの言動に賛成せず、出てきた言葉はマクギリスを称賛する言葉だった。
「モビルアーマーの鎮圧お見事であったファリド公」
「そんな!ラスタル様何を……」
イオクはショックで黙り込んで座り込むと会議室に一人のギャラルホルン士官が入り込む。
セブンスターズの面々から「何事だ!?」と怒鳴り声が上がるが、士官は焦った様子で一つの映像を見せてくれた。
そこにはイオク・クジャンがハシュマルを目覚めさせた瞬間が写されており、それが堂々とニュースで流されていたのだ。
セブンスターズは全員ラスタルですら同様で開いた口が塞がらなかったが、それは同時にギャラルホルンに大きな動揺を与えた。
セブンスターズに広がる動揺とラスタルとイオクに出された謹慎処分、そんな中イラクの思惑は多くの人を巻き込んで動き出す。
次回機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再第二部第十八話『家族のカタチ』