機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再   作:グランクラン

53 / 56
今回は少々長めに作ってしまいました。どうか見届けてあげてください。


燃ゆる太陽に照らされて

「イオク・クジャンがタービンズの一斉取り締まりを? 他に動きは?」

 

 マクギリスの元にもイオクの情報が入って来た。

 石動はマクギリスへの報告をする言葉を決して止めない。

 

「出発にあたり本部四番倉庫から何やら持ち出したようですが……」

 

 石動の報告に思い当たったマクギリスはハシュマルとの戦いを思い出す。

 

「四番……覚えているか石動。火星でモビルアーマーを足止めした鉄華団の攻撃、そしてモビルアーマー自身が使った兵器を。あれはダインスレイヴ。ナノラミネートアーマーすら貫く過剰な破壊力から使用・保有の禁止がギャラルホルンの下で条約として結ばれている大型レールガンだ。まあ使用したのは通常弾頭のようだから条約的にはグレーゾーンではあるが……厄祭戦の遺産たるモビルアーマーが現れ、三日月・オーガスとサブレ・グリフォンの操るガンダム・フレームは昔日の悪魔の力を世に示した。その熱狂と恐怖は人々を揺り動かしやがて時代そのものを大きな渦に巻き込んでゆく。今こうして禁じられた旧兵器が持ち出されるのもそういった一つの時代の流れなのかもしれない」

 

 マクギリスは立ち上がると石動はマクギリスに尋ねる。

 

「では……」

「全ての同士達に連絡を。ついに立ち上がるべき刻が来たと」

 

(あの仮面が本当にあの男だとするならば私はすでにラスタル・エリオンに襟首をつかまれていることになる。しかし私の魂までは掴めはしない)

 

 少しずつ運命が動き出そうとして居た。

 

 

「よ~しきたきたきた!ようやくセッティングの当たりが出たっぽいよ」

 

 エーコは新型モビルスーツである『辟邪』の調整を行っていた。

タービンズに帰って来たアジー達は辟邪の調整に追われている。

 

「やっとか。思ったより手のかかる機体だねこの辟邪は」

「だね。癖がないのが癖っていうか。でも鉄華団みたいにパイロットも任務内容も雑多な組織だと結構使いやすい機体に仕上がるかも」

 

 ラフタはふと鉄華団の方に話を向ける。

 

「ふ~ん」

「ん? 何?」

「いえいえ別に」

 

 ふとアジーとラフタが話しているとアミダが後ろから声をかけてきた。

 

「手間を掛けさせるね。帰って来たばかりで悪いね」

 

 そんなアミダにラフタが答える。

 

「いいんです。動いていた方がモヤモヤ考えなくて済むし」

 

 先ほどの会話でアミダは事情を察した。

 

「いろいろあったみたいだね。鉄華団での生活さ」

「ああ~……まあどうなんでしょう……」

 

 はぐらかすアジーにアミダはアジーの頭を撫でる。

 

「分かりやすいね。素直ないい子だよ。あんた達はみんな私の自慢だ」

「姐さん……」

 

 

「そうか。ラフタも他の男に取られる時が来ちまったか」

 

 名瀬はどこか嬉しそうに酒を飲む。アミダはそんな名瀬に問う。

 

「その割に嬉しそうじゃないか」

「ラフタも他の女達も俺にとっちゃ妻ってだけじゃなく娘みたいなもんでもあるからな。それが鉄華団の奴らを選んだなら自分の娘が男を見る目がある女に育ったってことだ。そりゃ嬉しいさ」

「まったく最近のあんたは何かあっちゃ鉄華団、鉄華団って……相変わらずこの安酒を?」

 

 アミダは名瀬の飲んでいる酒に話題を移す。

 

「好きなんだよ。お前と出会った思い出の酒だしな」

「思い出すねぇ確か火星のちっぽけな宇宙港の酒場だった」

 

 二人が語りだすのはタービンズができるまでの物語。

 

 

「私を護衛に?」

 

 その昔、火星にあるちっぽけな宇宙港の酒場で名瀬はアミダに仕事を頼み込んだ。

 

「頼みたい。ちょっとでかくてやばいヤマがあってな」

「いいのかい? 私が女だって分かったとたん引く奴も多いんだけどね」

「変わったことを言うなぁ。女と男ならそりゃ女を選ぶだろ?」

「ふふっ。あんた見方が変わってるよ」

 

 一匹オオカミの運び屋だった名瀬は傭兵だったアミダに仕事を依頼してきた。

名瀬は少しずつアミダに惚れていった。

名瀬はコンビを組まないかと迫ったが答えはNOだった。

「これ以上は無理だ。次はペインナッツ商会との護衛任務がある」

「ああ……あの女だけの輸送会社か」

 

 長期航路の輸送業務はいろんな事情から逃げ出した女達の行きつく場所だった。

安値で買い叩かれ男でも裸足で逃げ出すような危険な仕事ばかりを受けるはめになる。

アミダはそんな女達の船を進んで護衛していた。

そんなアミダに名瀬は問う。

 

「なぁ。俺にできることはねぇか?」

 

 そうして名瀬とアミダが作ったのがタービンズだった。

裏社会に搾取される女達を名義上妻にすることで救い出し、乗組員にすることで職も与える。

女達の安全を守るため、後ろ盾を作るために名瀬はテイワズの傘下に入る道を選んだ。

それから名瀬はアミダと係わった女の輸送業者達をまとめ上げてネットワーク化し、地球と木星の間を網羅する大輸送網を作り上げタービンズは構成員五万人の巨大組織に成長した。

その動きはマクマードにも認められて名瀬はテイワズで上り詰めていった。

そのころからジャスレイは名瀬を煙たく思っており、アミダが喧嘩しようとするのを名瀬が食い止める。

 

「まだむくれてんのか?」

「なんであの時止めたんだよ?」

「あいつらの言ってることはなんも間違ってねぇ。俺はお前らのおかげで成り上がったんだ。女は太陽なのさ。太陽がいつも輝いていなくちゃ男は萎びちまう」

 

 そうしてタービンズはできた。

 

 

「まあ女のおかげっていうのは今思えばちょっとだけニュアンスが違うかもしれねぇな。前にオルガに言ったことがある」

 

『まあでも血が混ざってつながって……か、そういうのは仲間っていうんじゃないぜ。家族だ』

 

 二年前オルガに告げた言葉を思い出す。

 

「あいつ家族って言葉聞いたら豆鉄砲くらったみてぇにきょとんとしてよ」

 

 なつかしそうに語る名瀬にアミダが答える。

 

「知らなかったんだね…家族ってもんを……」

 

 アミダとそんな話をしていると警報音と共に女性の声が響き渡る。

 

「緊急連絡です! うちの輸送班と各地の事務所にギャラルホルンの強制捜査が入りました!」

 

 事態は最悪の方向へとタービンズを連れて行こうとしていた。

 

 

 マクマードのところに顔を出した三日月たちにマクマードは上機嫌だったが、三日月はそんなことなど知るよしもなく、菓子を食べていた。

 

「いや~よく顔を出してくれたな三日月よ。モビルアーマーとやらの一件聞いたぞ。厄祭戦時代の化け物を潰すたぁおめぇらやっぱり面白れぇなぁ」

 

 上機嫌なマクマードに対しハッシュはアトラに耳打ちする。

 

「もっと怖ぇんかと思ってましたけど、ただの爺さんですね」

「三日月気に入られてるみたい」

 

 するとマクマードの前に部下が姿を現す。

 

「おやじ。その……ギャラルホルンの手入れの件で」

 

 上機嫌だったマクマードの表情ががらっと変わった。

 

「……なるほど。マハラジャが言っていたのはこのことだったか」

 

 マクマードは立ち上がる。

 

「幹部連中を集めろ」

 

 

 マハラジャを前にオルガが食って掛かる。

 

「あんたが裏から根回ししてどうにかなんねぇのかよ!?」

 

 マハラジャは首を横に振る。

 

「ガルスの奴に言えば何か打開案があるかもしれんが、得策とはいえん。今下手に動けばこちらの作戦に支障が出る」

「くそ!」

 

 オルガがうろたえる中、マハラジャはサブレを連れて部屋を出る。

 

 

「今回の相手はギャラルホルンだけじゃない。うちの秘密航路や看板も出てない事務所にまで手が入ってるっことは……」

 

 名瀬はハンマーヘッドと共に姿をくらませており、アミダの言葉に名瀬が同意する。

 

「ああ。見事に内側から刺されたな」

「やっぱりジャスレイかい?」

「考えたくないがおやじって線もある。なんにせよ腹括んなきゃならねぇ時が来たみたいだな」

 

 ハンマーヘッドの通信にオルガが割って入る。

 

「兄貴! ハンマーヘッドの予定航路をくれ。今から俺らで……」

 

 応援に行こうとするオルガに名瀬は冷たく突き放す。

 

「お前は来るな。今や俺達は違法組織だ。俺達との繋がりが取り沙汰されりゃ鉄華団はどうなる? それにお前はこれからテイワズの未来すらかかった戦いがあるんだ。この絵を描いた奴はお前たちが手を出してくることまで見越してるはずだ。だとすりゃ突っ走れば連中の思うツボ。とにかくこいつはテイワズの内輪もめの結果だ。お前らにゃ関係のねぇ話なんだよ」

 

 名瀬の言葉にオルガは食って掛かった。

 

「俺達だってテイワズの一員だ! 関係ないことはねぇでしょう。いやだいたいあってもなくてもかまわねぇ。兄貴を救うためなら俺は……」

 

 それでも名瀬は突き放す。

 

「じゃあ言わせてもらう。お前とは兄弟の盃を交わした。だがな俺はお前の家族じゃねぇ。見失うなよオルガ。お前がいの一番に守らなきゃならねぇものを。それ以外は全部後回しにしろ。家族を幸せにするってのは並大抵の覚悟じゃできねぇことなんだ。分かったら前を向け。鉄華団を……家族を守る。それだけを考えろ。いいな? オルガ・イツカ」

「兄貴……」

 

 これ以上は何もいえなかった。

 

 

 ノブリスが部屋でアイスを食べていると、ドアをノックする音が聞こえてくる。

 

「なんだ?」

 

 黙って部屋に入って来た人物を視認すると、ノブリスはアイスを落とし、窓際まで後ずさる。

「マ、マハラジャ・ダースリン!?」

 

 マハラジャは不敵に微笑むと少しづつ歩いて行くとノブリスは近くの電話を取る。

 

「何をしている! 誰かこんか!!」

「誰も来ないぞ? お前以外はすでに始末したしな」

 

 ノブリスの焦りはさらに増していき、ノブリスはギャラルホルンに連絡を入れようとするが、外への連絡が付かない。

 

「ちなみにここから外への通信は切ってあるぞ」

「く、来るな!」

 

 ノブリスは震える手で銃を取ると、さらに窓の方へ後ずさるのを見届けたマハラジャは手で合図を送る。

 

「あまり窓際に近寄らん方がいいぞ……って言っても遅いか」

 

 何処からか撃ち込まれた銃弾は窓を突き破り、ノブリスの頭を貫通するとノブリスは頭から大量の血を吹き出しその場に倒れた。

 

「まあ、お前を殺して資産を分割する準備をするのに二年もかかるとは思わなかったが……」

 

 すると、マーズ・マセの端末に連絡が入り、通信しながらオイルを部屋中に撒き、マッチに火をつけるとドアを閉め出ていきながら部屋に火をつけた。

サブレは反対側のビルにいると大きくため息を吐いた。

「なんで俺がこんなことをしなくちゃいけないんだよ。自分でしろよな…」

「サブレ。急いでジュリエッタの回収に行け。これは命令だ」

 

 ノブリスの事務所は火災で全て潰れてしまい、生存者のいないまま捜査は打ち切られた。

 時を同じくしサブレは急いでジュリエッタ回収の為動き出していた。

 

「ですが!」

 

 クーデリアがマクマードに食い気味に立ち上がるが、マクマードは意見を変えない。

 

「タービンズはギャラルホルンから違法組織と認定された。手助けなどしようもんなら巻き添えくらって潰されるのがオチだ。お前らにはこの後の作戦があるんだぞ、お前らの行動にテイワズの未来がかかってるんだぞ。オルガ・イツカにもそう言っとけ!」

 

 決して譲らないマクマードに三日月が代わりに答える。

 

「分かった。言っとく」

 

 三日月の淡白な答えにクーデリアがショックを受ける。

マクマードも三日月があっさり引き下がる姿に疑問を持つ。

 

「やけにあっさり引き下がるじゃねぇか」

「目を見れば分かるよ。あんたはてこでも動かない」

 

 三日月たちが屋敷から出ていくと、マクマードは名瀬と通信で話をする。

 

「所帯がでかくなればあちこちに綻びが出るのは必然よ。それがギャラルホルンだろうがテイワズだろうが……で、どうしてほしい」

 

 マクマードが名瀬に尋ねる。

 

「おやじ。盃を返させてくれ。タービンズを解散する。そのうえでダメな息子の最後の頼み……」

「女どもの面倒を見ろってんだろ? 俺の直轄組織に入れるよう手配してやる」

 

 名瀬は深く頭を下げる。

 

「恩に着ます」

「今までお前のわがままをどんだけ聞いてきたと思ってんだ」

「これが最後です」

 

 名瀬は最後だと決め決意を固める。

 

 

 オルガは壁を思いっきり叩く。

 

「くそっ! 名瀬の兄貴がハメられたことは分かってんのにおやじは知らぬ存ぜぬを決め込みやがった!」

 

 イライラするオルガをメリビットが諫める。

 

「団長。今動けばタービンズ同様鉄華団も違法組織と認定されます。名瀬さんもそれがよく分かっているから団長に動くなと命じたのでしょう」

「分かってるよんなこたぁ! でも俺は兄貴を……」

 

 それでも助けたいオルガだが、それでもメリビットが引き留める。

 

「鉄華団を潰す気ですか?」

「それでも……なんとかしてぇと思っちゃいけねぇのかよ俺は……」

 

 団長室にシノと昭弘が入ってくる。

 

「らしくねぇなぁオルガ」

「タービンズはどこにいる?」

 

 シノや昭弘はタービンズの現居場所を尋ねるとメリビットが答える。

 

「アリアドネの航路外にある中継基地です」

「俺の流星隊と昭弘の筋肉隊で脱出した非戦闘員を保護しに行く」

 

 シノの言葉に昭弘が反応した。

 

「おいシノ筋肉隊ってのはなんだ?」

「二番隊なんてださい名前じゃあかっこつかねぇだろ」

 

 二人が言い争いをしていると、メリビットが口をはさむ。

 

「二人ともわかってるの!? 今鉄華団が動くということは……」

「直接やり合わなきゃいいんだろ?」

「民間人を助けるだけだ」

「俺の流星号と昭弘のグシオン、ライドの雷電号が先行する。流星号と雷電号はロケットブースター付きのクタンで運ぶ。グシオンには新型の追加ブースターパックを装備。もうヤマギ達に作業を進めさせてる。俺達が中継基地付近でモビルスーツの運用テストを行っている途中避難してきたタービンズの非戦闘員を救うってシナリオだ。それなら名瀬の兄貴に背いたことにはならねぇだろ?」

 

 シノと昭弘にオルガが頭を下げる。

 

「シノ……昭弘……兄貴を頼む!」

 

 

 ハンマーヘッドは中継基地での撤退作業が着実に進んでいき、名瀬はブリッジにいるメンバーに告げる。

 

「もうここは俺だけでいい。お前らも早く輸送船に行け」

 

 名瀬の言葉にエーコが驚く。

 

「俺だけって……ダーリン一人でハンマーヘッドを動かす気?」

「いざって時に敵艦隊への囮として使うだけだよ」

 

 すると一人の女性がブリッジ内で叫ぶ。

 

「基地周辺のレーザー通信S7がロスト。S4.S8もです。まっすぐこっちへ向かってくる……」

 

 

「目標の小惑星を肉眼で補足」

 

 オペレーターが目標を捉えたと報告を上げるとイオクは艦長席に座って待機する。

 

「よ~しモビルスーツ隊を発進させよ! ダインスレイブ隊は艦隊後方で待機!」

 

 大量のモビルスーツを展開させるイオクにジュリエッタは呆れたような顔をする。

 

「小物相手にこれほどの戦力を投入するのですか?」

「どんな相手であろうが全力を尽くす。クジャン家の家訓だよ」

「ご立派で」

 

(いつまで付き合わなくてはいけないんでしょうか?)

 

 

「アリアンロッドが来たって?」

「私達が牽制に出る!」

 

 ラフタとアジーがブリッジから出て出撃し、牽制に行こうとするがそれを名瀬が止める。

 

「奴らの相手は俺がする。アリアンロッドが来るまで多少の時間がある。お前らが安全圏まで離脱したのを見届けたら俺も尻尾を巻くさ」

 

 名瀬がそういうと今度はアミダだけが付いていこうとする。

 

「とはいえあんた一人じゃ危なっかしすぎてみてらんないよ。私が護衛につく。ラフタ、アジー。あんたらは家族を守るんだ。モビルスーツは足は速いが携帯火器じゃ船の装甲は抜けない。慌てずに避難できるよう誘導してあげな」

 

 アジーはそんなアミダと名瀬の意図を知りながらも反論できない自分に歯噛みするしかなかった。

 二人がそのまま出撃し、辟邪で船の後方につこうとする中、アジーがラフタに言葉を向ける。

 

「輸送船の後方につくよ……ラフタ?」

 

 答えないラフタにアジーが心配するが、ラフタが涙を拭き前を向く。

 

「大丈夫……私が家族を守る。絶対に守って見せるから!」

 

 名瀬は遠ざかっていく船を見つめるなか上着を脱ぎ、操縦席につく。

 

「いい子だ。そのまま進め。まっすぐに。出るぞ。アミダ」

 

 アミダはそのままハンマーヘッドの前に出る。

 

「しかし女ってのはなんでこう男の嘘が見抜けるかねぇ。男も男さ。すぐ分かる嘘をつく」

「ならなんで女は男に騙される?」

「そりゃ本気で惚れてないからさ。あんた一人で罪を背負うつもりだろ? けどあんた一人じゃモビルスーツに囲まれてタコ殴りに合うのがオチさ。露払いは私がする」

「何もかもお見通しか。惚れられてるねぇ俺は」

 

 ハンマーヘッドと共に前に進んでいく。最後の戦いへと向けて。

 

 

「打って出るとはな。その行為には敬意を表しよう。モビルスーツ隊を前に出せ!」

「モビルスーツ隊から通信。敵強襲艦の信号弾を確認。停戦要請です!」

 

 オペレーターがモビルスーツ隊からの連絡を告げる。

 

「ふん!モビルスーツ隊からそのような報告があったようだが誰が敵艦からの停戦信号を確認したものはいるか!?」

「……いえ!誰も見ておりません!」

「ふふっ……つまりそういうことだ!」

 

(お父様から一連の会話を録音しておけと言われましたけど……こういうことでしたか)

 

「ダインスレイブ隊を艦隊前面に展開。扇状の陣形をとらせろ! ダインスレイブ隊、放て!」

 

 ダインスレイブ隊が放つ弾頭はアジー達が護衛してた輸送船に直撃する。

 

「攻撃!? どこから!?」

「なんてこと……輸送船が!」

 

 どこから飛んできた攻撃か全くわからないアジー達は驚きを隠せない。

名瀬は輸送船に向けられた攻撃から輸送船を守るためにさらに前に出る。

 

「輸送船とはいえ船のナノラミネートアーマーを軽々と……まさか例の兵器を使ったのか? ったくコケにしてくれるぜ。お前ら相手の射程外まで逃げろ!」

 

 輸送船が逃げるために船を移動させるのを確認したイオクはダインスレイブ隊に次弾を装填させる。

 

「逃がすわけないだろ。ダインスレイヴ隊次弾装填急げ!」

 

 アミダが次弾を装填するのを確認すると名瀬に告げる。

 

「第二射が来る。スモークを!」

 

 ハンマーヘッドがスモークを放つがダインスレイヴ隊には意味がなく、射出された弾頭が再び輸送船にあたる。

イオクを心配する部下の一人が尋ねる。

 

「イオク様。ブリッジを戦闘態勢に移行させなくてよろしいのですか?」

 

 そんな心配など知る由もないイオクは自信満々に答える。

 

「ああ、よろしいとも。奴らに王者の貫禄というものを見せつけてやろうではないか」

 

 ジュリエッタはため息を吐き出撃しようとする。

 

「イオク様。ジュリアで出ます」

「結構。行ってくれ。活躍の機会はもうないだろうがな」

 

 身を振り返りそのまま機体に乗り込むジュリエッタは新型機で出撃する。

 

 

「支えるよラフタ」

「あれは! ハンマーヘッドが……ダーリン!」

 

 ハンマーヘッドがそのままスモークの先に突っ込んでいくのをラフタ達が見届ける。

 

「弾幕張るよ!」

「釣られるな。他のみんなもだよ!」

 

 アジーとラフタが機体を走らせるとギャラルホルンのモビルスーツが散開する。

 

「脱出艇を庇う気か。散開して撃破せよ!」

「敵の数が多い。このままじゃ……」

 

 敵の数の多さにタービンズのメンバーが泣き言を言うとラフタがそのままモビルスーツをゼロ距離射撃で撃墜する。

 

「タービンズに泣き言なんて!」

 

 名瀬はラフタ達が苦戦しているのを確認すると、アミダに救援に向かうようにと告げる。

 

「アミダ! ラフタ達の救援に行ってくれ!」

「分かった!」

 

 そういってひるがえすとアミダの前にジュリエッタがぶつかってくる。

 

「この出力……アリアンロッドの新型?」

「一合で分かる。強い相手と!」

 

 アミダとジュリエッタがぶつかり合う中、またランチが一隻落ちてしまう。

 

「船が!」

「今は逃げることだけを考えて!」

「あいつらランチを標的にしてる!」

「これがギャラルホルンのやり方か!!」

 

 ギャラルホルンの非道なやり方にラフタは怒りを覚えかける。

 

「よくもー!!」

 

 ライフルから弾を放とうとするが、弾切れを起こす。

 

「弾切れ!? もう?」

 

 弾切れした辟邪にギャラルホルンのモビルスーツが近づいてくる。ラフタの目の前で武器を振り下ろそうとするモビルスーツにグシオンの一撃が入る。

 

「昭弘! どうしてここに……」

「理由が必要か? 行け。俺たちが時間を稼ぐ!」

 

 昭弘がラフタを守っている間にシノとライドも到着した。ライドの一撃がモビルスーツに叩き付けられる。

 

「やるようになった!」

「師匠の教えの賜物ですよ!」

「こっちはいい。家族を守れ!」

 

 昭弘がラフタに守るようにと告げる。

 

「けど!」

「俺に背中を預けろ!」

「……昭弘! 今度会ったらギュ~ってしてやるから覚えとけよ!」

「なんで絞められなきゃなんねぇんだ……」

 

 勘違いしている昭弘を尻目にラフタが去っていくと、ギャラルホルンのモビルスーツの一機をガンダムマルコシアスが薙ぎ払い、そしてそのままハンマーヘッドに向けて走っていく。

 

「さっきのモビルスーツってサブレ?」

「なんでここに?」

 

 シノとライドが驚きを隠せずにいると、そのままアミダの方に向かっていく。

 名瀬はどこか嬉しそうな表情になる。

 

「オルガの奴……何もすんなっつったのに……」

「見えるよ。あんたのにやけ面がね」

「よそ見なんて!」

「ジュリエッタ! 撤退だ! 戻ってこいだそうだ!」

「な、何故!?」

「言うとおりにしろ! この一件でもう状況は決定的になる…彼等の犠牲を持って世界は動く…」

「で、では…お父様は彼等を犠牲に!?」

「ジュリエッタ! 犠牲にしているのはギャラルホルンだ…! 優先事項を考えろ。今ならスモークに紛れて回収できる…今以外に回収する事は出来ない」

 

 サブレはジュリエッタのみを回収しアミダにジュリエッタが乗っていたモビルスーツを盾として渡す。

 

「行きなよ…後は頼んだからね」

 

 アミダの言葉にサブレは黙って頷いてそのまま現場から離脱していく。

 名瀬はスモークから飛び出ると、降伏信号を発する。

 

「敵強襲艦、スモークから出ました」

「信号弾確認。降伏信号です!」

「聞けない相談だな。ラスタル様の隣に立つためには非情を貫き通す覚悟が必要とされる。全艦! 敵強襲艦を砲撃せよ!」

 

 イオクの攻撃でハンマーヘッドのあちらこちらから火の手が上がる。

名瀬は額を強くぶつけ、頭から血が流れる。

アミダは降伏を認めないアリアンロッドに突っ込んでいく。

 

「降伏すら認めないか……なら相手の頭を潰すだけだ!」

 

(名瀬……私らがいなきゃあんたは咲くことすらできない。だったら私は……)

 

 突っ込んでくるアミダにイオクは戸惑いを隠せずにいた。

 

「敵モビルスーツなおも本艦に向かって接近中!」

「まさか特攻する気か?ダインスレイヴ隊!」

「ジュリエッタ機の固有周波数が射線上に反応があります」

「あの機体ならかわせる! 放て!」

 

 アミダはジュリエッタのモビルスーツを盾代わりにして突っ込んでいく。

 放たれるダインスレイヴの一撃にアミダのモビルスーツはボロボロになっていくが、それでもアミダのモビルスーツはギリギリで耐え抜いた。

 

「やっ……やった……やったぞ~!」

 

 アミダは最後の力を振り絞る。

 

(名瀬……見せてやるよ。とびっきりの輝きを)

 

 アミダの最後の攻撃がイオクのブリッジにぶつかる。アミダの機体が爆散するのを見届けてサブレはそのまま現場から離脱していく。

 

「見えたぜアミダ」

 

(一人じゃ逝かせねぇ。そうだろ? アミダ。女は太陽なのさ。太陽がいつも輝いてなくちゃ男って花はしなびれちまう。いつも笑っていてくれよアミダ。強く激しく華やかに笑っていてくれ。そうすりゃ俺はどんな時だって顔を上げることができる。お前って太陽に照らされりゃあ俺は……)

 

 ハンマーヘッドに次々とダインスレイヴの攻撃が決まる。

イオクは怯えながら艦長席の後ろに隠れる。

艦橋に攻撃が決まると名瀬は笑いながら命を落とすが、しかし、イオクへの攻撃は直前でそれ、隣の船に命中し2隻とも落ちていく。

タービンズの全員が、ラフタが、アジーが涙を流す中、昭弘は悔しそうに拳を操縦席にたたきつける。

シノとライドもやるせない気持ちになる。

クーデリアとアトラはそれぞれの愛する人の胸で泣き、三日月はどこか遠くを見つめる。

ビスケットもどこか悔しそうな表情になる。

オルガも「兄貴……」とつぶやきながら涙を流す。

 

 そんな中サブレはジュリエッタを抱きしめながら撤退していく中、ジュリエッタとサブレの中にあるのは悔しさと怒りだけだった。

 




涙は彼等に何をもたらすのだろうか。怒りと憎しみを抱きながらも明弘とラフタは別れの道を進もうとする中、昌弘の言葉が運命を切り開いていきながら二人の運命を変えていく。

次回機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再第二部第二十話『それぞれの愛』
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。