機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再   作:グランクラン

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ジャスレイ回ですね。お楽しみに。


落とし前

 鉄華団に合流したビスケット達はブリッジに集まっていたオルガと一緒にマハラジャとマクマードと通信していた。

 

「さて……今現在ジャスレイは完全に孤立している。イオクは現在謹慎処分中だ。その上ラスタルはイオクの行動によって逮捕されてアリアンロッド艦隊は完全に沈黙。ジャスレイがこれを知っているのかは知らんが」

「テイワズもジャスレイを完全に切っている」

 

 マクマードとマーズ・マセが互いに現在の状況を説明すると、ビスケットが二人をまっすぐ見つめると、簡単に頭を下げる。

 

「ありがとうございます。でも……いいんですか?ジャスレイはテイワズのナンバー2だったんじゃ……」

 

 マクマードはただ目を閉じ、はっきり告げる。

 

「……家族を殺すような人間を仲間とは思わん」

 

 マクマードのはっきりとした言葉にオルガが力強く応える。

 

「分かってます……今までありがとうございました!」

「……」

 

 マクマードは何も言わず通信を切る。

 マクマードは通信を切ると、自身の机の引き出しから鉄華団の盃を取り出すと、その場で割ってしまう。

微笑みながらベランダに出る。

その行動には一切の躊躇いなどありはしなかった。

 

「面白い育ち方をしたじゃねぇか……なぁ………名瀬よ」

 

 オルガ達はマハラジャとの通信が切れると、オルガが艦長席から立ちあがると、ユージンはこぶしを力強く叩き、気持ちを吐き出す。

 

「さて……ジャスレイのクソ野郎をぶっ殺しに行こうぜ! 名瀬さんの敵……」

「待って! 敵討ちとか復讐とかそういう感情で戦うのだけはやめようよ……」

 ユージンはビスケットのそんな言葉にビスケットの襟首をガシッとつかみ怒鳴る。

 

「お前は悔しくねぇのかよ!」

「俺だって悔しいよ! でも……だからってそんな言葉で戦ったらもう引き返せなくなる。そんな前のめりな組織がこれから真っ当な結果になるとは思えない。だから……」

「分かってるけどよ……」

 

 ユージンはビスケットを離し、小声で悔しさをにじませる。

そんな中みんなも黙ってしまい、しかしサブレだけが口を開く。

 

「父さんが昔言っていたけど……『復讐で戦う人間はもう真っ当な生き方はできないし、たとえ達成できたとしてもまともな結末にはたどり着けない。復讐は復讐を呼ぶだけだ』っと。……アイン・ダルトンって男をみんなは覚えてる?」

 

 サブレが問いかけた名前にほとんどのメンバーが首をかしげるが、三日月とビスケットが覚えていた。

 

「あの時のパイロット?」

「三日月と兄さんは覚えていたか……。あの時の男は俺達鉄華団への復讐で戦っていたと父さんが言っていた。あれが復讐に走った男の末路だ。人間を捨て……結果としてああなった。畏怖の対象になり、世界から疎まれた。みんなはそうなりたいわけ?」

「僕はご免だね」

「私も」

 

 明楽とジョシュアは揃ってそんな言葉をハッキリと告げた。

 オルガが黙るみんなに声を上げて士気を上げる。

 

「俺達は復讐の為には戦わない。俺たちはテイワズからの最後の仕事をきっちり果たす。ジャスレイを討ちに行くぞ!」

 

 強い決意を秘めた鉄華団はまっすぐ突き進んでいく。

 

「ユーゴー1、2、3番機被弾。前線を離脱!」

「これにより我が方の戦力更に15%低下」

 

 開戦し少ししか経っていないにも関わらずすでにジャスレイは追い詰められていた。

冷汗が流れるジャスレイ。

 

「くっ! 調子に乗りやがって……宇宙ネズミどもが! それにアガレスを出さねぇだと!? 指揮官機を出さなくても勝てるってか!!」

 

 グシオンも流星号も雷電号も確実に敵を仕留めていく、そんな中三日月のバルバトスはまるで違う動きを見せる。

右こぶしで敵のコックピットを容赦なく潰す。

しかし、アガレスだけは戦艦内でいまだ調整を続けていた。

 

「しかし……まさかいまだに兄さんがアガレスのバックパックの調整を終えてなかったなんてな……信じらんないバルバトスルプスレクスでさえ完成してたのに……この数日間何をどうしていたら放置出るんだか」

 

 サブレはアガレスのコックピットでふてくされていると、ビスケットは端末をいじりながら申し訳なさそうな表情をする。

 

「だって……難しいんだよ……これ」

「言い訳になるかよ。ジュリエッタだって調整を終えて今日テストの為にって来ているのにさ…アガレスの初陣はもはや出番無いかもな」

 

 アガレスは新しいバックパックを背負っており、それはまるで翼のようにすら見える。

サブレの元にヤマギがやってくる。

「ファンネルって言うらしいですよ。これ……正式名称は……」

 

 ヤマギが言う前にサブレが喋ってしまう。

 

「『ソードファンネル』だろ? アガレスの後部座席にある全方位索敵はいわゆる死角が無い。たとえ隠れていたとしても分かってしまうほどだ。だからこそファンネルのような無線式の兵器が搭載できたってわけだ」

 

 二人が話していると雪之丞とソニアも話に混ざってくる。

 

「それだけの兵器だ。ファンネルのコントロールと全方位索敵で阿頼耶識が人間に伝えられる限界だ。だからこそアガレスは意図的にリミッター解除を搭載しなかった。疑似リミッターはあくまでマーズ・マセが搭載したものだ。アガレスがリミッターを解除なんてしたらパイロットの脳が焼ききれちまう。ま……あえて言うなら搭載できなかっただな。そういう意味ではアガレスは他のガンダムフレームとは違ぇな。ま……このファンネルもフォートレスが回収し修理してテイワズに渡されたって話だ」

「その通りよ。復活させるのに凄い時間掛かったんだからね。発見時は古ぼけて全然使えないし、厄祭戦当時の技術は現代では復元が難しいのよ」

 

 四人が話している間にビスケットはようやく作業を終えた。

 

 

 ジュリエッタはマルコシアスのコックピットで操縦桿を握り直すと目の前にいるユーゴーに対して大太刀を振り下ろす。

 マルコシアスは元々サブレが個人用にとOSまでも全部改造していたが、ジュリエッタが扱いやすいようにとソニアが急いで再改造と武装選びまでもを済ませていた。

 

「どうして私がサブレの機体を…」

「嫌なら降りたら良いじゃん! 僕に譲ってよ!」

「嫌。絶対に嫌です」

 

 ジュリエッタと明楽が遊んでいる間にジョシュアは両手に持っているソードで敵モビルスーツを真っ二つにしてしまう。

 ジュリエッタも負けじと大太刀で二機のモビルスーツへと切りかかるが、そのモビルスーツは奇妙な動き方で攻撃を回避する。

 

「阿頼耶識ですか…と言う事は」

「ヒューマンデブリだね。良くもまあこんなに用意したものだね」

「どうせ子供のことを兵器程度にしか考えていないからよ。その子供に殺される屈辱を教えてあげましょうか…フフフ」

「あ。嫌な癖が始った」

 

 

「新たにユーゴー8、9番機が大破!」

「戦力更に低下。第一次防衛線突破されます!」

「くっ! あの機体修理が終わってやがったのか!」

 

 ジャスレイの目の前で暴れるバルバトスにジャスレイは焦り始める。

 

「あの野郎……予定の時間はとっくに過ぎてんだぞ」

 

 イオクが来ないことに苛立つジャスレイ。

 

「俺はテイワズのトップに立つって算段だってのに……これだから坊ちゃんは! クソ親父は!!」

 

 バルバトスがガトリングで牽制し、そのまま百里の頭部を捕まえる。

 

「捕まえた!」

 

 そのまま百里を潰し、百錬に大型メイスを叩きつける。

テールブレードが縦横無尽に動き回り百里のコックピットに突き刺さる。

するとイサリビに動きが見えた。アガレスが見えた瞬間全員の目が一瞬だけだがそちらに向くと、サブレとビスケットの前にオルガが通信で顔を出す。

 

「前線は任せるぞ」

「分かってるよオルガ……」

 

 サブレは目の前に広がる戦場に目が向く。

 

「ガンダムアガレスフルイーター! サブレ・グリフォン、ビスケット・グリフォン! 出る!!」

 

 アガレスが射出されると、アガレスは腰につけた二本の剣を引き抜く。

右の剣でユーゴーの頭部ごとコックピットを切り裂く。

ビスケットは目をつむると、デブリに隠れたモビルスーツなど、数機を見つけ、ビスケットはファンネルの操縦に集中する。

 

「行って! ファンネル!」

 

 六枚のファンネルがアガレスから離れると敵モビルスーツに向けてかける。

百錬が二機デブリに隠れると突然隣の百錬のコックピットにファンネルが突き刺さった。

 

「ど、どこから!?」

 

 急いでその場から離れると上からアガレスが剣でコックピットを切り刻む。

 するとジュリエッタが近付いてきた。

 

「いい出来だな。『レンチソード』。二本の剣を自由に組み合わせてレンチメイスにも大剣にもできる。もちろん銃にもできる!」

「やっと調整が終わったのですか?」

「ああ。兄さんが随分待たせてくれた。将来将官クラスの人は準備も遅い」

「あの話はまだ受けると決めた訳じゃ…」

 

 アガレスの二本のレンチソードが銃に変わるとそのまま敵モビルスーツ群を牽制し、避ける敵モビルスーツにファンネルは容赦のない攻撃を浴びせる。

 後ろにいた昌弘はビスケットから譲り受けた獅電に乗りながら見とれていた。

ラフタが昌弘に近づき怒鳴りつける。

 

「ちょっと昌弘!あんた見とれてなくていいから戦いなさい!」

「す、すいません!」

 

 ハッシュもまたビスケットから譲り受けた機体に苦戦しながら戦っていると、三日月が援護に入る。

 

「すいません三日月さん」

「無理しなくていいから。その機体難しいでしょ?」

「はい、でも、ビスケットさんから譲り受けた機体です。それにあれだけ厳しく訓練を受けました! ものにして見せます! だから三日月さんは先に補給しに戻ってください」

「分かった。ここは任せるよ」

 

 三日月は一旦引くと、一部モビルスーツも同じように補給の為に戻っていく。

 

「百里2番機大破。百錬4、5、6、7、8番大破」

「くっ!カスが。どんだけ高ぇ金払ったと……おい! 坊ちゃんはまだなのかよ!?」

 

 ジャスレイは部下に怒鳴りつける。

 

「それが今また問い合わせたんですが全くつながらないんですよ……」

「まさかケツまくりやがったのか? あのどヘタレが!」

「どうします叔父貴……」

「デブリだ! ヒューマンデブリどもを全部出せ!」

 

 ジャスレイの指示でヒューマンデブリが次々と出撃する。

ハッシュの目の前のロディフレームに銃の照準を向けるが当たらない。

 

「もらった! ……この動き……阿頼耶識!?」

 

 ハッシュの獅電にロディが食いつくと、シノの流星号がロディを吹き飛ばす。

 

「シノさん……」

「深追いするんじゃねぇ! その機体壊したら俺らが怒られんだろ」

 

 しかし、その話がサブレの通信機に繋がってしまう。

 

「壊したら戦闘が終わった後に追い回すぞ……全員! その機体兄さん用に改造費が掛かっているんだからな!」

「「「なんで俺たちも!!」」」

 

 全員が不満を漏らす。ラフタの辟邪と昌弘の獅電も弾切れを起こす。

 

「もう弾切れ!?」

「ラフタ! 昌弘と一緒に引けここは大丈夫だ! 俺に任せろ!」

 

 昭弘に促されてラフタは昌弘と一緒に引いていく。

 

 そのころジャスレイは追い詰められていく様に汗が止まらない。

 そんなジャスレイに部下達はそっと話し掛ける。

 

「やばいぜ叔父貴……奴ら皆殺しにする気だ……」

「命あっての物種だ。ここは詫びを入れてでも……」

 

 部下のそんな言葉にジャスレイは怒鳴って返す。

 

「たわけことをぬかすんじゃねぇ! ガキに頭なんざ下げ……」

 

 そんなジャスレイに部下達は後ろからそっと提案する。

 

「だったらマクマードのおやじとナシつけてくださいよ!」

「メンツにこだわってる場合じゃねぇぜ叔父貴」

 

 部下の提案に乗るしかないジャスレイはマクマードに繋げる。

 

「お……おやじ」

 

 ジャスレイは情けない声を出す。

 

「どうした? 情けねぇ声出しやがって」

「それが……鉄華団の奴らがカチコミをかけてきやがった。頼むおやじ。あんたから奴らに話を……」

「分かってんだぜ。鉄華団をやったあとは俺も用済み。全部の責任をおっかぶせてギャラルホルンに俺を売るつもりだってことはな」

 

 マクマードの言葉に焦ってしまうジャスレイは何とかごまかそうとする。

 

「な……なんのことだかさっぱりだぜおやじ……」

「クジャン家の御曹司はこねぇぞ。それに……おめぇはもうテイワズじゃねぇ」

 

 そうはっきり言い切って、マクマードは通信を切ってしまう。

 

「待ってくれおやじ! ……ざっけんじゃねぇ! 俺はテイワズのナンバー2ジャスレイ・ドノミコルスだぞ……あのタヌキおやじ、俺のおかげで今までどんだけ甘い汁が啜れたと思ってんだ!」

 

 部下の一人が焦るジャスレイに尋ねる。

 

「叔父貴……どうするんですか?」

「どいつもこいつも人の話もまともに聞けねぇ奴らが雁首そろえてよぉ! 脳みその代わりに藁でも詰めてんじゃねのか!? 戦闘狂の人食いネズミ共が……てめぇらなんざ人間じゃねぇ。二束三文の命よ。そんなもんに……人間様の俺がやられるなんざ道理が通らねぇだろうが!! うあぁ!!」

 

 ジャスレイが叫び声をあげる中、ガンダムフレームが中心になって暴れ回る。もうジャスレイの負けは確定しているようなものだった。

 

「お……叔父貴」

「どうしたら……」

「はぁ……鉄華団につなげ」

 

 ジャスレイの命令通りにオルガに繋げると、オルガは冷たく接する。

 

「よう。調子はどうだ? ジャスレイ」

「ぐっ! ガ……いやオルガ・イツカ。お前らの力はよ~く分かった。でどうよ? ここらで手打ちと行かねぇか? もちろんただとは言わねぇ。お前だってただ俺を殺したってなんの得もねぇだろ? ここはお互いの利益のため……」

「何の話だ? 俺はおやじの命令でお前を討ちに来ただけだ。お前がテイワズを裏切るのが悪いんだろ? それに命乞いをするなら相手が違うだろ。ミカ、サブレ、ビスケット。道を作ってやれ!」

「ジュリエッタ。手伝ってくれ」

「はいはい」

 

 バルバトスとアガレスとマルコシアスがイサリビから黄金のジャスレイ号までの敵モビルスーツを倒す。

辟邪の前にまっすぐの道ができると、昭弘が後ろから話かける。

 

「行け……ラフタ!」

「………ありがとうみんな!」

 

 ラフタはジャスレイに向けてまっすぐ突き進んでく。

ジャスレイの目の前にラフタの辟邪がたどり着いた。

 

「ラ、ラフタか!? 名瀬の事は謝る! だから命だけは……」

「あんたを殺したってダーリンも姐さんも戻ってこない。だけど……」

「や、やめ……」

 

 ラフタは容赦のない銃撃をジャスレイ号のブリッジに浴びせる。ラフタは涙を流すと昭弘のグシオンが優しくラフタの辟邪を抱きしめる。

 

「昭弘……!」

「良くやったよ…お前は…」

「うわぁ!!!!」

 

 戦いは静かに終結した。

 

 

「我々はついに立ち上がった。革命の時が来たのだ同志達よ! 新しい風を起こしギャラルホルンに蔓延した腐敗を吹き飛ばす! 我々が一人一人の力でこの欺瞞に満ちた世界を変革する時がきたのだ! 平和と秩序の番人であるギャラルホルン。それはセブンスターズの面々が特権を享受するための都合のよい戯れ言にすぎなかった。地球で起きたアーブラウとSAUの国境紛争。それをコントロールしていたとされるガラン・モッサなる傭兵がラスタル・エリオンとつながっていたことが我々の内偵により明らかになった。イオク・クジャンは一民間組織であるタービンズを違法組織に仕立て上げ強制捜査、違法兵器であるダインスレイヴを自らが使用し多数の非戦闘員の虐殺! 政治抗争に腐敗し民間人を虐殺してなお……。平和と秩序の番人であるギャラルホルン。それはセブンスターズの面々が特権を享受するための都合のよい戯言に過ぎなかった。目を覚ませ! 共に立ち上がろうではないか同志達よ!」

 

 世界に放送している宣言を聞いているクーデリア達の後ろで社長室のドアを誰かが叩く。ククビータがドアを開けると、マハラジャが姿を現す。

 

「さあ……行こうか……革命の乙女」

「………はい」

 

 クーデリアも同じように進み始める。

 今静かに革命の時が始ろうとしていた。

 

 これより始るは後に『第二次厄祭戦』と呼ばれる戦いだった。

 




今歴史が動こうとしていた。マハラジャの罠がラスタルをギャラルホルンを追い詰めていく…今歴史が動こうとしていた。
次回機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再第二部第二十二話『開戦の刻』
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