機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再   作:グランクラン

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地球戦が始まります。


暁の空の向こう側へ

 怯える双子の幼女達とそれを庇う一人の少女、牢獄に入れられながら孤独におびえる二人を何とか宥めている。2人が泣き騒がないことだけが少女―――――アトラからすればマシな状況で、目の前の男達も今のところ自分達に危害を加える様子もない。

 しかし、もしこの二人の幼女がサブレ―――――死神の関係者だと知れればタダでは済まなかっただろう。そういう意味では不幸中の幸いだった。

 逃げ出すこともできず、怯える時間を過ごすアトラにとってこの状況は最悪の一歩手前で、これ以上の状況をどうしても想像してしまう。

「助けて………三日月」

 祈る事しかできない自分の弱さと共に双子の幼女―――――クッキーとクラッカを抱きしめながら大好きな人の名前を呟く。

「ビスケット………三日月………誰か……!」

 そんな時だった。施設が大きく揺れる衝撃でクッキーとクラッカが悲鳴を上げそうになる。それにすかさず反応したのは見張りをしていた大人達だった。

「叫んだら切り刻むぞ!!ガキ」

 アトラは抱きしめ何とか怯える二人を宥めようとした時だった。ドアが強引に開く音と全身黒ずくめの襲撃者が現れた。

 アサルトライフルと防弾チョッキ、顔や頭も防具やマスク、ゴーグルで隠しており怪しさで言ったらアトラ達を連れてきた男達と決して負けていない。

「こちら救出ターゲットを確保。了解です。エージェントも気を付けて。こちらは敵施設を破壊しながらアクセスできる情報端末を調べます」

 牢獄のカギが開くのと同時に捕まってしまった男達が皮肉を叫びながら退出していく。

 黒ずくめの男達が地図と睨めっこしているのを後ろから見ていたアトラ、地図の構図を見たときこの施設が地下に存在しているという事に気が付いた。

 

 施設が地下にあるという情報とおおよその出入り口をたった一時間で発見したフォートレスの諜報部は大したものだと思う。

 地下から侵入する上で問題は進入路が限られているという点であった。

 襲撃を仕掛けるうえで見つからないように侵入するのは難しい。

「侵入方法は二つだな。正面から攻めるか排水溝から攻めるか」

「え?掘り進んだらダメ?」

 明楽からのまるでなんでしないの?なんていう疑問顔をされるが、馬鹿に対してどういえばいいのか分からない。

「あのな………何日かかると思うんだ?急いでいるって言っていただろ?」

「?言ってた?」

「「言ってた」」

 俺とジョシュアで同音で答えて見せる。

 言ったはずなのだが全く聞いていなかったらしい。

「俺はどうすればいい?」

「三日月・オーガス。君は俺達と一緒にモビルスーツ隊の相手をしてもらう。俺は途中から敵中枢に攻撃しに行くから、君はその隙に一度救出部隊と離脱。そしてそのまま時刻通りに宇宙に上がってもらう。モビルワーカーを救出部隊の離脱ポイントに用意してあるはずだ」

 俺は実際に画面を見せた。

「耐熱性のシールドを装備して大気圏突破の際の摩擦熱を緩和、シャトルもこちらで用意している。人質はこちらで安全な場所まで離脱させる。問題はそのシャトルなんだ」

 三人が疑問を抱きながらこちらを見てくる。

「旧式のシャトルでね、外からの操作が出来ない。操縦はモビルスーツで出来るんだが、起動はシャトルの中に入る必要がある。しかも入ればそのまま宇宙に一直線だ」

 要するに起動者を回収する手筈が無いという事だ。

「それで人質になっている少女………アトラだったかな?彼女に乗り込んでもらおうと思う。そのまま鉄華団に回収してもらうが………これにも問題。彼女はそのまま戦いに巻き込まれるという点だ」

 俺が「要するに」と付け加えようと思ったが、その先は三日月にも分かったらしく、その静かな声で呟く。

「俺が守りながら戦えばいいんでしょ?一度どこかで離しちゃ駄目なわけ?」

「駄目だ。シャトルに操縦機能もない。たとえ操縦できたとしても彼女にそれが出来ると思うか?」

 三日月は首を横に振る。

 それはそうだろう。ただの民間人を戦いに巻き込むだけでも問題なのだ。その上その場で放置しようものならギャラルホルンに捕まってしまう。

「勿論君がギャラルホルンを信用するというのなら俺は自由にすればいいと思う。だが、正直安全は保障できない」

「分かった。俺が守ればいいから」

 現状それしか方法が無い。

「明楽はモビルワーカー隊の護衛。ジョシュアは敵主力隊の相手、途中までは三日月・オーガスと俺と共に戦うが最終的には一人でやってもらう。俺達の目的は人質の救出と回収。俺は敵中枢に攻撃しに行く。以上!一時間後作戦開始!」

 

 モビルスーツの後方より多数のミサイルが敵施設範囲に向かって叩き込まれる。敵施設と聞いた場所には工場のような物が見えてくる。

 工場の屋根を引き飛ばしながらもさらに施設奥からモビルスーツが大量に姿を現す。

「行くぞ!俺達三機で敵主力をひきつける」

 俺達は傾斜を勢いよく下っていくと、敵モビルスーツと正面からぶつかり合う。俺は死神の鎌を振り回し敵モビルスーツを三機同時に撃墜する。

 三日月は敵が振り下ろす斧をメイスで受け止め、弾きながら蹴り飛ばしてメイスを叩き込む。すると、後ろからの攻撃にとっさに反応した三日月は機体を捻りながらメイスを横から叩き込む。

 その後ろではジョシュアがクローで敵を拘束し、仕込みナイフでコックピットを突き刺す。敵がまとわりつこうとする中、ジョシュアは翼の剣で敵の胴体を真っ二つに切り裂く。

 同じ時刻、地下の排水溝より突入部隊が侵入を果たしたとき、更に左寄りからモビルワーカーの突入部隊が突撃を仕掛けようとしていた。

 

 モビルワーカーが施設内の地下出入り口に突入を仕掛けた段階で人質を回収する為に人員を送り込んだが連絡が途絶えた。それを切っ掛けに別の突入部隊が居ることに素早く気が付いたボス『デリカーン』はハンドガンを腰に付けたまま自室を出ていく。

「敵の目的は人質の回収だ。すぐに白兵戦が出来るメンバーをロビーに集めろ」

「なぜロビーなのですか?」

「貴様は馬鹿か!?こちらから牢屋には送り込んだのだろう?なら敵は既に人質の回収に成功したという事だ。あと俺のイーガを用意しろ。あと……シャトルもな」

 モビルスーツ格納庫へと急ぐデリカーンの後ろから疑問声が飛んできた。

「シャトルですか?」

「モビルスーツに装備できるタイプのシャトルがあるだろう?」

 タブレットを操作しながら確認を急ぐ。

「確かにありますが………?」

「こちらにモビルスーツの戦力を寄越したという事はクーデリアの護衛要員は今手薄のはず、ギャラルホルンと戦う事を念頭に入れたら更に戦力は減るはずだ。これで手筈通り。お前達はタイミングを見て離脱しろ。俺は………クーデリアを捕らえる」

 

 火星支部ではコーラルが必要以上の動きが見せていた。そんな中、ノブリスからの新しい情報を元にコーラルは鉄華団を襲撃する手筈を整えていた。

 アインは鉄華団への復讐へと動き始め、マクギリスとガエリオはクーデリアを捕らえて利用しようと動き始める。

 宇宙で別の動きを見せる中、地上戦では別の動きへと移行しようとしていた。

 格納庫一帯では既に戦場になっており、モビルワーカー部隊と宇宙海賊ダーブラが白兵戦を起こしながら人質を安全に離脱させるための戦いが起きていた。

 同時刻。アガレスとバルバトスがモビルスーツ格納庫に突入。

 バルバトスがモビルワーカーの救出と離脱の手伝い。アンドロマリウスが退路の確保を完了させる頃、サブレはようやく違和感を感じ取った。

「こんなにも予定通りいくなんて………何か奇妙だ」

 モビルスーツが通れる道をひたすら進んで行くと大広間のような大部屋に辿り着いた。大量の柱と大量に用意してあるモビルスーツに装備するタイプのシャトル。

「これは………」

 そして、その奥に佇むヴァルキュリア・フレームをベースにしたと思われるモビルスーツ。全身が細く洗練されたフォルムをしており、色合いもそれに応じて灰色と赤で整えられている。

 右腕に刀と左腕にガトリングを搭載した小型シールド、背中に長距離攻撃用の兵器を搭載している。

 サブレはその姿に身に覚えがあった。

 サブレ達を裏切り、サブレの後輩を手に掛けた裏切り者の組織のリーダーが乗り込んでいた。サブレにとって宿敵。

「あんた………あんたを殺す!!」

「お前は………そうか。今回の仕事の邪魔をする連中が居るとは思ったが、お前……あの時のガキだな?成長したものだ。もう一仕事する前に軽く揉んでやる」

 サブレがイーガへと向かって鎌を振り下ろし、イーガは刀を振り下ろす。

 金属と金属がぶつかり合う音が響く中、三日月はクッキーとクラッカとアトラを連れて施設を離脱していた。

「貴様!!クーデリア・藍那・バーンスタインを襲撃する為だけにあの子達をさらったのか!?」

「その通りだ。あの子達が我々の施設にいるとわかればギャラルホルンだろうが何だろうが戦力をそこそこ送り出さなければなるまい?我々はもとよりギャラルホルンに対してある程度のパイプがある。あの程度であればあそこは襲ってこんよ。なら、鉄華団からすれば俺達から戦力を取り戻すのに戦力を使うしかない。しかし、このタイミングを逃せばクーデリアを火星から逃がすことも出来ないだろう?」

 それについては正解だった。

 このタイミングを逃せばクーデリアを逃がすための時間は無くなると言ってもいい。時間を掛け過ぎればギャラルホルンからの追撃を招く可能性が高い。

 だからこそクーデリアの打ち上げと三日月の打ち上げのタイミングの誤差をほぼほぼゼロにする必要があった。その為の電撃作戦。クーデリアを火星から逃がす片手間で人質を無事救出する手筈。

 この男はそれすら読んでいた。

 アガレスとイーガが再び後ろに跳躍し、イーガは素早くアガレスとの間の距離を縮める。刀の方が攻撃速度は上、攻撃範囲では鎌の方が上だが、この場合はサブレの方が若干不利と言えるだろう。

 攻撃を捌きながら後ろに下がっていく。

 イーガは攻撃速度を極端に上げている手前、防御力が低いという欠点がある。その欠点をシールドで補っている。

 サブレは時計を確認すると今頃三日月はシャトルまで辿り着いている頃だった。

「ならギャラルホルンが襲撃した後、戦力の低下を招いた段階でクーデリアを襲う。それに………クーデリアを捕らえればノブリスを交渉の席に呼び出すことが出来るだろう?」

 盾で攻撃を弾きつつ二度斬りつけアガレスの装甲に擦れた痕が残る。

「ノブリスとはいえ海賊相手に真正面から戦争が出来るわけでは無い。そこで………殺す!あいつさえいなくなれば火星での商売で邪魔者はいなくなるわけだ」

「ふざけんな。ノブリスを殺すのは俺達だ」

「火星は俺達からすればヒューマンデブリの養殖場のような場所だ。スラム街からガキをさらっても誰も言わない。君は知っているかな?年間でどれだけの子供がスラムで生まれ、捨てられているか?」

 サブレは答えない。正直神経を研ぎ澄ませないと勝てない。

「万を超えると言われている。そしてそれと同じぐらいの数の子供が飢えで死ぬか、少年兵や売春に走ると言われている。我々が商売に使ってやっても何も困るまい」

「困るよ………未来ある子供達の将来をあんたもまた奪っている!」

「この社会情勢がある限り子供が救われる未来なんて存在しない。ギャラルホルンだけじゃないんだよ。ギャラルホルンを支えるスポンサーも、それに従う経済圏にも問題はある。しかし、最大の問題は目の前に存在するはずの問題に対し目を背ける事さ。ギャラルホルンは目の前の問題から逃げているだけなんだよ」

 問題の先送りをサブレに語って見せたのはフォートレスの首領であり父親代わりである『マハラジャ・ダースリン』だった。

『今のギャラルホルンは足元にある問題より自分達の利益だけを考えている。それ故に火星支部の独断を見抜くことが出来ない。いや、たとえ知ったとしても不正を不正として文句を言うだけの士官が一体どれだけいるか。恐らくまともな士官は両手があれば足りる。それだけ今のギャラルホルンは問題を抱えすぎている』

 三百年という平和が怠惰を生み、七つの名家がセブンスターズという権力の元変わらずにいられたばかりに怠惰は愚かさに変わった。

 そんな愚かさは火星や木星などを犯罪者の巣窟に変えてしまったことは否めない。

 それもギャラルホルンが下にいる人を見ることも無く、地球以外の人を宇宙人だと拒絶するばかりの行動だ。そして、そんなギャラルホルンが恐ろしく何も言えない経済圏も犯罪の横行を見逃すことしかできなかった。

 それ故に、ギャラルホルンは『反ギャラルホルン組織 フォートレス』の結成に気が付かず、組織が少しづつ強くなっていく経緯を知ることが出来なかった。

「フォートレス。俺たちなりに調べてみたんだがな。結成は意外と古く………実は三百年も昔だと言われている。ギャラルホルンとほぼ同時期に結成され、それ以降反ギャラルホルンとしての地下活動に専念。しかし、ここ数年で活動範囲を急に拡大。それも………お前が現れてからだ…………お前は誰だ?」

 サブレが入ってからフォートレスは本格的な活動へと移行した。ここ数年は闇組織(海賊や秘密結社など)相手に取り締まりと捕獲、拡大の為の事業などを中心に行い、水面下では各組織にスパイを送り込み且つエージェントの規模を拡大している。

 三百年かけて地下活動を本格的な活動へと少しづつ移行しているフォートレス。

「俺達としては別にいいんだがな。今回の仕事の邪魔をされては困る。お前の相手は別にしてやる。だから………今は大人しくしていろ」

 イーガがアガレスの体を蹴り飛ばして柱を二本ほど吹き飛ばしそのまま瓦礫にまみれてしまうアガレス。そんな隙を活用し、イーガはシャトルを装備して大型シールドを装備してシャフトを利用して上まで消えていく。

「逃がすか………お前は殺すって決めたんだ!!」

 アガレスもシャトルの一つを装備して上へと消えていく。

 

 鉄華団のシャトルが空へと上がる頃、三日月はシャトルで上へと上がる為の準備に入っていた。急いでシャトルの準備をしながら三日月はアトラにノーマルスーツを装着するための手伝いをしていた。

「ごめんアトラ。巻き込んで」

「ううん。私………三日月の手伝い出来て嬉しいよ」

 クッキーとクラッカは桜に抱かれながら今は疲れ寝ている。きっと起きれば勝手にいなくなった事を怒るだろう。だが、きっと理解してくれるはずだと三日月は自分に言い聞かせる。

「帰ってきたら謝るよ桜ちゃん」

「気を付けて帰ってくるんだよ」

 三日月がバルバトスのコックピットに、アトラはシャトルのコックピットに乗り込むとソニアが両者の前に現れる。

『二人共準備は良いかしら?アトラちゃん。君は目の前のレバーを下ろすだけでいいわ。ただ、少し力を籠める必要があるからね。レバーを下ろしたら席で大人しくするのよ。三日月君。ブースターに火が点いたら一気に上まで機体を持ち上げてくれるわ。でも、気を付けてね。シールドが弾かれるとアトラちゃんはともかく、君は摩擦熱による温度上昇で蒸し焼きよ」

「アトラは?」

『彼女はバルバトスが守ってくれるから大丈夫よ。急いで、先ほど鉄華団のシャトルが打ちあがったという報告が上がったわ』

 オルガは時間通り作戦に移った。

「俺達も行こう。アトラ」

「うん。任せて」

 アトラは多少体重を乗せながらレバーを下ろすと、機体が大きく揺れる。機体全体にGがかかると機体が一気に大気圏を突破していく。

 三日月はシールドを吹き飛ばさないように神経を研ぎ澄ましている。

 そして、時は三十分ほど遅れて二機のシャトルが打ちあがった。

 それを追いかける大量の機体もまたサブレを追いかけようとしていた。

 戦場は宇宙へと移行しようとしていた。

 

 シャトルの目の前にいるモビルスーツを前にオルガは試練の時を向かえていた。

「どうするんだよオルガ!」

 トドは結局最後まで裏切って見せた。

 彼はギャラルホルンにオルガたちを売り飛ばした。

 万事休すかと思われた瞬間、砲撃がモビルスーツとシャトルの間を通り過ぎた。

「ミカ!!」

 バルバトスがシャトルの追加ブースターを切り離してそのままメイスを振り下ろした。

 




オルガの救援に三日月が駆け付けた。グレイズに乗って戦う昭弘。しかし、ギャラルホルンの監査官マクギリスとガエリオが立ちふさがる。そんな中、鉄華団の撤退ルートにダーブラの主力隊が待ち構えていた。サブレが単身戦う中、ビスケットは自分が出来ることを探し出す。そして……戦うことを選びだす。
次回機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別再第七話『宿命の戦場』
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