ただベル君をウォズで祝いたかっただけ。

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お久しぶりぶりでございます。
リアルが色々とゴタゴタしててやっと落ち着いてきたのでチマチマと書いてみました。(じゃあテロ牧師の方書けやゴラ)

まあ発想が頭から離れなくて色々妄想が暴走、もとい捗り。一旦整理する意味で書いてみました。
ジオウも終わったことですし、ちょっくらウォズで祝いましょう。(どういう神経だ)


ダンジョンでウォズがベル君を祝うのは間違っているだろうか

 不思議な人に出会った。

 はじまりはダンジョンでの出来事だった。シルさんのお店でロキ・ファミリアの人に自分の無力さをアイズさんの目の前で嗤われ、悔しくてしょうがなくてダンジョンに夜通しで潜った時のことだった。

 恩恵を刻まれたとしてもステータスが低ければ長続きはしない。僕は体力の限界でダンジョンに大の字で倒れた。後先考えず動き続けたせいだろう、身体が動かなかった。完全にエイナさんに怒られる行動だった。それくらいあの日の僕は無我夢中だったんだ。

 だから当然、無理が祟ったというかお釣りが来た。

 一歩も動けない僕、そこにモンスターが何匹かやって来る。絶体絶命という奴だった。このままでは殺されるだろう。たった一人の神様を泣かせてしまう。でもどうしようもない。動けないんだ。

 諦めかけたそんな時だった。

 

「無礼者め。我が()()の休息を邪魔するな」

 

 何が起こったか分からなかった。急にそんな声がしたかと思うとモンスターたちが何かに包まれて次の瞬間には魔石だけになっていた。

 

「やあ、はじめましてだね。我が英雄」

 

 英雄。最初誰のことを言っているのか分からなかった。でもその場所にはその言葉を掛けた人と僕以外の人間はいないから必然的に僕のことを言っていた。

 

「僕の……ことですか?」

「そうさ。君のことだ」

 

 複雑だった。英雄を夢見てはいるけどそんな器ではないのに。何かの間違いじゃないかと思った。

 

「……僕は英雄なんかじゃ……」

「今はそうでなくても、何れそうなる運命なんだよ我が英雄 ベル・クラネル」

「えっ、僕の名前?」

 

 名乗ってはいないはずなのにその人はさも当然というように言った。

 

「知っているとも。この本によればオラリオの冒険者 ベル・クラネルには将来英雄になる未来が待っている」

 

 そう言いながらその人は、手に持っていた『迷宮英雄譚』という本を開いた。

 

「英雄……僕が?」

「そう。申し遅れたね我が英雄私の名はウォズ。君の忠実なる家臣だ」

「家臣?」

 

 なんだかちょっと胡散臭かった。将来英雄になると言われても実感が湧かないし……でも、

 

「本当に……僕は、英雄になれるんですか?」

 

 何故だかひどく自然に僕の中に入ってきて、その事実に戸惑いながらも再び尋ねてしまうと、ウォズさんは当然と言ったように答えた。

 

「ああ。私がその手助けをしよう。共に英雄への道のりをひた走ろうじゃあないか」

 

 そこから先はあまり詳しくは覚えていない。その後ウォズさんは「一先ず今日はこの辺でいいだろう。そろそろ君の主神も心配する頃だ。この回復薬を飲んでホームへと戻るといい」と言って回復薬を渡しくると、まるで最初からそこにいなかったかのように消えてしまった。貰った回復薬を飲むと傷がみるみる塞がって全回復した。ひょっとしてめちゃくちゃ高いヤツだったのかもしれない。その後は教会に戻って神様に泣き付かれてステータスを更新したような気がする。

 でも、ただこれだけは明確に覚えている。

 僕は英雄に、アイズ・ヴァレンシュタインのような冒険者に、あわよくばそのアイズさんに並び立てるような……そんな冒険者に、英雄になれるように……強く、なりたい。

 そう心に誓ったことを。

 

 

 

 

 

【斯くして、彼は英雄になることを固く誓うのでした。これが偉大なる英雄の物語『迷宮英雄譚』その序章となったのです】

 

【そして私と我が英雄 ベル・クラネルとのファーストコンタクト。ここから物語は本格的に回り始めることは皆さんも知っての通りです。

 ではここからは不肖、このウォズが関わった部分をご紹介しましょう】

 

 

 

 

 

 怪物祭

 ベルは主神たるヘスティアとともにシルバーバックの追跡から逃げていた。だがこのままでは逃げ切れないことを悟り、ベルはヘスティアが逃げられる時間を一人稼ごうとする。

 しかし支給品のナイフは折れ、絶体絶命の窮地に陥ってしまう。もはやこれまで……そう思われた時、ベルはヘスティアより一本のナイフを授かる。

 それはヘスティアが土下座と莫大な借金をしてまでヘファイストス神に製作してもらった神のナイフ、ヘスティア・ナイフだった。

 ベルはヘスティア・ナイフと蓄積されたステータスの更新、それらを終えて再びシルバーバックの前に立つ。

 その時だった。

 

「祝え!」

 

 いつの間にかウォズが物陰から出て来た。

 

「えっ誰だい急に!?」

「ウォズさん!?」

「知り合いかいベル君?」

「あ、ああハイまあ……」

 

 そんな会話に気にも留めずウォズは祝福を続ける。

 

「祝え! 炉の女神より神の刃を授かり、解放された恩恵を持って巨獣を打ち倒す白き英雄。その名もベル・クラネル! まさに愛されし英雄譚の1ページである!」

 

 祝福はその場にいたベル本人どころかヘスティア神、さらにはシルバーバックに怯え隠れていた人々の耳へと届き、恐怖も忘れて顔を出して聞き入らせるほどだった。

 

「さあ我が英雄よ、存分にその力を振るわれよ」

 

 そして一歩下がり頭を垂れてベルを促す。

 ベルもまたそれを受けて一歩前へ踏み出した。

 

「ベル君……!」

「神様……」

 

 内心心配で仕方ないヘスティア神。しかし彼女は意を決して眷属に伝えるのだった。

 

「大丈夫だ! 君ならできる!」

「……! はい! 行ってきます!」

 

 それを受けて白くまだまだ未熟な英雄は獣へと突喊し、その刃を振るうのだった。

 

【斯くして、ベル・クラネルは見事シルバーバックを打ち倒し、その戦いぶりを賞賛され祝福された。その中には彼の憧れとする剣姫もまた微笑んでいたという】

 

 

 

 ファイアボルト

 ある日ベルはステータスの更新をすると「ファイアボルト」という魔法が発現していた。

 

「えー! 僕に魔法が発現したんですか!?」

「う、うん……どうやらそうみたいだ」

「やっ──」

「祝え!」

「「きゃあああああああああああ!?」」

 

 そしてまたどこから入って来たのかいつの間にウォズが教会に現れ、そのことにベルとヘスティアは二人抱き合って悲鳴をあげる。

 

「祝え! 魔導書を読破し、夢の中で自らと向き合い発現した即効魔法。その名はファイアボルト! 新たな力に目覚めた瞬間である!」

 

「ウォズさん!?」

「君一体どこから入って来たんだい!?」

「やあ我が英雄。そしてその主神 ヘスティア神。新たに発現した魔法、心より盛大に祝福しよう」

「あ、ありがとうございます」

 

 和かなにそう告げるウォズに若干恐怖を抱きながらも礼を述べる。そしてあることに気付く。

 

「えっ魔導書?」

「ああそうさ我が英雄。この本によれば君は豊饒の女主人の店員であるシル・フローヴァより一冊の本を貸してもらっている筈だ」

「確かにシルさんからお客さんが忘れて行った本を貸してもらいましたけど……えっアレが魔導書だったんですか!?」

「その通りだ我が英雄」

 

 聞くところによるとシルによって貸し出された本が実は魔導書であり、それを読んだベルに魔法が発現したらしい。

 

「そ、そうだったんですか。でもやったー! これで僕も魔法が使えるんですね! あ、でもこの本はちゃんと返さないといけませんね」

「いやベル君、残念だけど魔導書一回読んだら効力はそれっきりなんだよ……」

「え」

「しかも魔導書ってのはヘファイストス・ファミリアの一級品装備と同等、もしくはそれ以上の値段にもなるんだ!」

「えぇええええええ!?」

 

 それってめちゃくちゃヤバいってことなんじゃ!? ベルはそう直感した。

 

「ま、まあ過ぎたことはしょうがないじゃないかベル君! そのお客さんも多分忘れてることを忘れてると思うぜ? 多分! 見なかったことにしよう! そうしよう! うん!」

「ヘスティア神の言う通りだ我が英雄。今は新たな力に目覚めたことを祝おうじゃないか!」

「いいのかなぁ……?」

 

 その日は盛大にジャガ丸くんでパーティーを開いた。

 そして夜、部屋が寝静まったことを確認してベルは教会を出ようとする。

 

「新しい力を試したいその気持ち、お察しするよ我が英雄」

「うわぁ!? ごめんなさいぃ!」

 

 教会の入り口で壁に背を預けるウォズに思いっ切りビビるベル。

 

「そんなに怖がられると正直傷つくよ我が英雄」

「あっ……ご、ごめんなさい」

「冗談さ。それよりもダンジョンへ行くのだろう?」

「は、はい……あの、神様には」

「別にバラす気はないよ。むしろ向かって欲しいものさ」

「……それもその本にあることなんですか?」

「ああ。今君は順調に英雄への道を進んでいる」

「そうですか」

「私に構わずダンジョンに向かってくれ。試したくてウズウズしてたんじゃないかい? 限界まで打ち切るといい。もしかしたら素敵な出会いがあるかもしれないよ?」

「で、出会い!? 本当ですか!」

「ああ。私の忠義に誓って嘘偽りなく真実だとも」

「そうなんですか! ありがとうございます! それじゃ早速行ってきま──す!!」

 

 それを聞いたベルはすぐさまダンジョンへと向かって行った。その速さは疾風やらシノビも斯くやと行ったレベルだった。

 その後ダンジョンでファイアボルトを限界まで打ったベルはマインドダウンし、アイズ・ヴァレンシュタインに救出&膝枕のコンボを食らった。あまりの出来事にいつかのように生娘のような悲鳴を上げて、これまた疾風とシノビレベルの速さで戻って来た。

 

「ウォズさ──────ん!!!」

「やあ我が英雄。初の魔法はどうだったかな? ついでに素敵な再会も味わえたようで何よりだ」

「す、すすす素敵な出会いっててて、ア、ア、アアアアアイズさんと」

「そう。この本によればダンジョンでファイアボルトを試し打ちした我が英雄はマインドダウンし剣姫に救出、膝枕されたとある」

「な、なななんで言ってくれなかったんですかぁ!」

「言う前に君が居なくなってしまったからね」

「うっ」

 

 当たり前のような正論にベルは言葉が詰まざるを得なくなった。

 

「それに彼女とは関係を持ってて損はないよ。いやむしろ君の英雄への道に必要だと言ってもいいだろう。それと今君がコンビを組んでる小人族もね」

 

 何かを言おうとしていたらウォズからのまさかの言葉に思考が一気に止まる。

 

「えっアイズさんが……必要? リリも?」

 

「それってどういう意味ですか?」と聞こうとしたところでウォズは「いずれ分かるさ」と言い残してまた何時ぞやのように忽然と消えてしまった。

 

 その後ベルはリリルカ・アーデの裏切りと救出、そして和解を経てふとしたことをキッカケにアイズ・ヴァレンシュタインと共に早朝に修行することが決まった。修行が決まった時ベルは「このことか〜〜!」と心の中で叫んだそうな。

 

 

 

 VSミノタウロス

「もうアイズ・ヴァレンシュタインに助けられるわけには──」

 

 剣姫を退いて白き少年は前に出る。このままではならないと覚悟を決めたのだ。

 

「──いかないんだ!」

 

 お呼びでない、とそう告げる。

 この日、この刻、少年ははじめて冒険をする。英雄となるための偉業を、その身で打ち立てるために。

 

「…………」

 

 一歩。また一歩とミノタウロスに歩み寄る。手には二本の刃。防具は既に砕け、先程までの戦闘が肉体に悲鳴を上げさせる。しかし退くことは許されない。もはや少年は覚悟をしたのだから。

 

「……ッうおおおおおおおおおおおお!」

 

 二振りの刃が煌めく。身体が跳ねる。雄叫びを上げて少年とミノタウロスが激突する。

 少年は飛んで跳ねて、致命傷は避けながらも直実に攻撃を加えていく。しかし刃はミノタウロスの身体を通さない。

 

 遠巻きでロキ・ファミリアが観戦している。口を揃えて少年の未熟さ故の末路を述べる。

 少年と共にダンジョンへ潜った小人族の少女が懇願する。曰く、なんでもすると。だから助けてくれと。頭から血を流しながらも少年のために縋り付く。その様に、そして戦う少年に見兼ねた者たちは動き出そうとしたとき、その目つきが変わる。

 

 今もなおミノタウロスと戦闘を続ける白き少年。その動きが僅かであるがしかし着実に上がってきている。見間違いなどではない。明らかにLv.1の冒険者の動きではなくなってきている。

 

(これが僕の冒険……)

 

 吹き飛ばされながらも身体を捻り着地して距離を取り、

 

(僕はなりたい……! 英雄になりたい……!)

 

 そしてまた駆け出す。

 

 その姿にロキ・ファミリアは世に伝わる英雄譚を想起させる。

 曰く、英雄に憧れる少年の童話。

 目の前の光景がまさしくそれだった。

 

 少年は雄叫びを上げて立ち向かう。必死に、足掻く。

 その姿に元凶たる美の女神は恍惚に善がり、何て美しい光景だろうと感激する。

 

「そうだ我が英雄! この日この刻こそが君が英雄となる偉業への一歩! その瞬間だ!」

 

 そして幾度と彼の前に現れた謎の男が別方向から現れる。突然の出現に身構えるロキ・ファミリアには気にも留めず少年を見守る。

 

「うおおおおおおああああああああああ!!!」

 

 凌ぐ。凌ぐ。凌ぐ。

 神の刃と己の技で捌き切り、即効魔法を打つ。全力を持って立ち向かうが、しかし未だに刃は通らず決め手に欠けていた。

 ならばと攻撃を避け、片方のナイフが砕けながらも空中で身体を捻り、ナイフをミノタウロスの手首の下に突き刺し、捻る。ミノタウロスは健が切れて持っていたボロボロの大剣を溢れ落とす。少年は咄嗟に放たれた大振りの一撃を避けてその大剣を回収し再度接近して胴を数度斬りつける。吹き出た鮮血が少年の頭を濡らした。

 

「…………」

「…………」

 

 蹌踉るミノタウロスと少年の数秒の間。観戦者たちも固唾を呑む。終わりの刻は……近い。

 

「…………」

「…………」

 

 両者共に動かない。流れる静寂の中、先に動いたのは──

 

 

「グォォォオオオオオ!!!」

「つぇあああああああ!!!」

 

 

 両方だった。

 

「若い……」

「チッ……馬鹿が……!」

「ベル様ぁっ!!」

 

 終わった。死んだ。ミノタウロス相手に正面から立ち向かうことは死を意味する。誰もが訪れる結末に目を背けようとする。

 だが二人だけ。この場でそれを否とする者がいた。

 

「大丈夫」

「そうだ! そのまま行くんだ! 我が英雄!」

 

「あああああああああ!」

 

 少年は大剣をミノタウロスの角に叩きつける。大剣は粉々に砕け、しかしミノタウロスはその衝撃に蹌踉めく。

 その数瞬が勝負を分けた。

 

「フンッッ!」

 

 懐に潜り腹部に神の刃を渾身の力で根深く突き刺す。刃が通った、しかし英雄はまだ止まらない。

 

「ファイアボルト!」

 

 瞬間、ナイフの先から炎が生まれ、ミノタウロスの傷口から炎が上がる。外がダメなら内側からだ。ミノタウロスは堪らず口から血を零す。少年を叩き潰そうと振り被るも、

 

「ファイアボルト!」

 

 再度の炎が内側から火を噴く。逃げ場所を求めてミノタウロスの体が膨張する。

 ミノタウロスは空を掴むように足掻くが、

 

『っ!』

 

 全員が息を呑む。

 

「ファイアボルトォォォォォ!」

 

 力の限り叫んだ魔法はミノタウロスの身体をさらに膨張させる。

 

「グォォォオオオオオ!!!!?」

 

 やがて限界が訪れ炎はミノタウロスの身体を突き破り爆散する。上半身が吹き飛び、完全に死亡するとその下半身は膝をつき、霧散してダンジョンへと還っていった。

 

 勝敗は決した。

 

 少年は勝利した。

 

 気絶してもなおも立つその姿が何よりの証拠だった。そして戦利品とでも言うようにミノタウロスの角が傍に落ちる。

 小人族の少女がすぐさま駆け寄る。少年は未だ立ったまま気絶しながらその服は破れて背中のステータスが露わになっていた。

 凶狼が九魔姫にステータスの読み上げを促すことに一悶着あったがやがて近づく。

 

「……」

「なにやってんだ早く教えろ!」

 

 沈黙する九魔姫に催促すると彼女は冷静に告げる。

 

「……アビリティオールS」

 

 その事実にロキ・ファミリアは驚愕した。

 

「彼の名前は?」

 

 勇者は唯一の知り合いであろう剣姫に少年の名を尋ね、剣姫がその名を口にしようとした時だった。

 

「素晴らしい! さすがは我が英雄だ! ミノタウロスを倒すだけでなくアビリティの最大値を引き出すとは!」

 

 突如としてミノタウロスとの戦いの場に現れた男が大声で叫ぶ。

 

「そういえばミノタウロスのことで忘れてたけどこの人……誰?」

「アイズ、彼も知り合いかい?」

「いやこの人は知らない」

「おいテメェ何者だ」

 

 しかし眼中にないのか謎の男は勝手に祝福する。

 

「祝え! 美の女神の試練を踏破し、冒険を終えて更なる位階へと駆け上がった未来の英雄。その名はベル・クラネル! まさに偉業を成し遂げた瞬間である!」

 

「聞けよゴラ!」

「なんか勝手に祝い始めたわね……」

「いーなー私もお祝いして欲しいなー」

「とりあえず、あの少年の名前がベル・クラネルってことが分かったくらいかな……」

 

 謎の男のテンション若干引き気味になっていると、アイズは男に尋ねる。

 

「あの、あなたは何者ですか?」

 

 祝福したことに満足して気を良くしたのか、謎の男はやっと人の質問に答える。

 

「やあ、君が剣姫 アイズ・ヴァレンシュタインだね? 我が英雄の師、これからも彼を宜しく頼むよ」

「! なんでそれを……? それに英雄って……」

 

 驚愕する剣姫に対し男は飄々として答える。

 

「知っているとも彼に関わる人物、英雄となるための重要な因子、出来事、その全てをね」

「あなたは一体……」

 

 何者か、まるで先を見透かすように男は答えた。

 

「私の名はウォズ。将来英雄となる運命にある少年 ベル・クラネルの忠実なる家臣にして預言者さ」

 

 これがベルの偉業の瞬間。そして預言者とロキ・ファミリアの邂逅であった

 

 

 

 Lv.2への昇格

 ベルはギルドの受付嬢のエイナ・チュールと会話していた。

 

「ベル君、なにか良いことでもあった?」

「え、なんで分かったんですか?」

「顔に出てるわよ?」

「あ、えへへ……実は」

 

 自分がLv.2になったこと話そうとした瞬間だった。

 

「祝え!」

「きゃあっ!?」

「出た!」

 

 やはりこの男が現れる。

 

「祝え! 偉業を成し遂げ帰還し、昨日とは違う己となった事実を! 即ちLv.2! まずは一つ、正式に昇格を果たした瞬間である!」

 

「ぼ、冒険者……の方ですか? っていうかベル君の……お友達?」

「エ、エイナさんこの人は」

「はじめましてエイナ・チュール。私の名はウォズ。我が英雄の担当アドバイザーであるあなたに最大限の感謝を」

「あぁ……はい?」

「あなたが駆け出しの頃の我が英雄へ基礎を教授しなければ我が英雄は英雄足り得なかった。改めてよくやってくれました」

「え、えーと……」

「エイナさんごめんなさい! また後で!」

 

 そう言ってベルはウォズを引き摺ってギルドを後にした。ウォズは未だに「祝え!」と言ってやまない。

 

「……なんだったの?」

 

 窓口にはエイナだけが残った。

 

 

 

 クロッゾとの交流

 ベルは防具の製作者であるヴェルフ・クロッゾと出会い、専属契約を結んだ。そして彼とパーティーを組みダンジョンに潜った後のことだった。

 

「魔剣を打ちしクロッゾの子孫に出会ったようだね我が英雄」

「ウォズさん」

 

 帰り道に壁に背を垂れて本を開いているウォズと出会った。

 

「なぜ彼が魔剣を打たないのかが気になっているのかな?」

「それは……」

 

 図星、と言った顔だった。

 

「この本によれば彼は──」

「いえ、言わなくて大丈夫です」

 

 ウォズが説明しようとするとベルはそれを遮る。

 

「……いいのかい?」

「魔剣を打たないには何か彼なりの理由があると思うんです。それで本人から話してくれるまで聞く気はありません。それに……」

「それに?」

 

 何かを含むように切るベルにウォズは聞き返す。

 

「それに僕は魔剣が欲しくて彼と契約したわけじゃない。彼が作った武器や防具が好きだから契約したんです」

 

 曇りなき眼でベルはそう答えた。

 

「君が君にして英雄たる資質、か……」

「えっ?」

「いや、君らしいと思ったまでさ」

 

 そう言い残してウォズはまたその場から消え去った。

 

 

 

 

 

 ベルたちは探してヘスティアたちはダンジョンに潜っていた。

 

「いい加減説明してくれないかヘルメス。君がベル君を助けようとするその理由を」

 

 そしてその道中でヘスティアはこの場にてもう一人の神であるヘルメスに問う。

 

「おいおい言ったじゃないか。親友を助けるのは当然」

「そういうのはもういい」

「っと」

 

 こと大事な話で毅然としているのは、やはり神である証拠だった。

 

「……頼まれたんだ。とある人物からベル君の様子を見て来て欲しい、ってね」

「とある人物?」

 

 ヘスティアは思わず足を止めた。

 

「けど、こんなところまで足を運んだのは頼まれたからだけじゃない。俺自身ベル君に興味があったからさ」

 

 ヘルメスも足を止めてヘスティアに振り返って答える。

 

「俺はこの目で確かめ、見極めたいんだ。ヘスティア」

 

 彼はヘスティアの目を見つめて答えた。

 

「彼が時代を担うにたる器であるのかをね」

「それについては問題ないよヘルメス神。我が英雄は必ずや英雄に相応しい存在へと大成するとも」

 

『っ!?』

 

 突如パーティーにない声が響き全員が警戒する。ヘスティアを除いて。

 

「ウォズ君!」

「やあヘスティア神。我が英雄を探してダンジョンに潜るとは眷属思いで何よりだ。もっとも、この本にはあなたがダンジョンまで来ることは書いてあったがね」

 

 言いながらウォズはパーティーの面々の上がり続ける警戒を余所にヘスティアにズカズカと近寄ってくる。

 

「ヘスティア、彼は?」

 

 その中でヘルメスは落ち着いて何者かをヘスティアに尋ねる。

 

「あー……なんて言ったらいいのか……彼は……」

「申し遅れたヘルメス神、パーティーの方々。私は未来の英雄 ベル・クラネルの忠実な家臣にして預言者 ウォズと申す者です。以後、お見知り置きを」

「嘘は……言ってないみたいだね」

「当然。我が英雄に誓って、そして神の前で嘘などとんでもない」

「……なんか胡散臭くないかい?」

「「それは ヘルメス様もでしょう/君もだろ」」

 

 自身の眷属と神友に突っ込まれるヘルメスだった。

 

 

【おっと、私としたことが。関係のない場面を紹介しても仕方ありませんでしたね。早急に次の場面に移るとしましょう】

 

 

 

 

 

 リヴィラの街

 ベルたちは転がり込むように第18階層に到達しそこで意識を失う。そして次に目が覚めた時にはロキ・ファミリアに保護される。彼らの世話となり一先ず平穏な時を過ごすことになったベルたち。そこへさらに捜索に来たヘスティアたちと合流し、第18階層は賑やかとなる。

 翌日、アイズたちと共にベルたちはリヴィラの街へと繰り出し案内を受ける。その後女性陣たちの水浴びをヘルメスと覗くことになり一悶着あったが語るまでもないだろう。その途中でベルは捜索隊の一人として同行したリュー・リオンの水浴びを覗いてしまい、その後なし崩し的に墓参りに同行し、リューの過去の一端を知る。

 

 ロキ・ファミリアと別れ、自分たちも動き出そうとした時、ヘスティアが拐われてしまう。

 それは18階層に到達したベルに、焦りと嫉妬を抱いていたところをヘルメスに唆されてモルド・ラトローが仕掛けた罠だった。ヘスティアを人質としたモルドはヘルメスから受け取った漆黒兜により透明となりベルを一方的にいたぶる。

 その様を遠方よりヘルメスとアスフィ・アル・アンドロメダは観戦していた。

 

「全く悪趣味ですね。ベル・クラネルに恨みでもあるんですか?」

「うーん、むしろ俺なりの愛かな? ベル君は人間の綺麗じゃない部分を知らなさすぎる。悪趣味でもなんでも知って欲しかったのさ。彼に人の一面を……ま、娯楽が入ってること否定しないよ」

 

 ヘルメスは目を細めたかと思うとまた呆気からんと言った。

 

「もしここで彼の牙が折れてしまえば?」

 

 その問いにヘルメスは笑って答える。

 

「器じゃなかったってことかな」

 

 即ちこれは試練ということなのだろう。

 そしてその今現在繰り広げられている試練に変化が訪れる。

 

「おや? 彼らも気づいたようだ。全くどの子も眩しいなぁ」

 

 邪に塗れた決闘に気づいた仲間たちがベルを救うために到着する。その光景をヘルメスは眩しいと評した。

 

「それで、君は行かなくていいのかい? 今絶賛君の英雄がピンチだと思うんだけど?」

 

 そう言ってヘルメスは自分たちと同じく手を出さずに見守る預言者に問いかけた。

 

「その必要はないよヘルメス神。なぜならこの決闘で我が英雄が地に堕ちることはないからだ」

「ふーん、それは預言かい?」

「ああ、決定事項だ。それどころかこの後の出来事であなたは確信に至ることだろう」

「それはそれは。なんとも楽しみなことじゃないか」

 

 ウォズとヘルメスが会話している間、状況はすでに動いていた。透明化は直ぐに対応されモルドは漆黒兜を破壊される。なおも足掻くがその直後に救出され神威を解放したヘスティアが現れる。その様にモルドは怖気づき、逃げ出した。

 

「おっと、ヘスティアが神威を解放したか。今日の余興はお終いかな?」

 

 主神が興した騒動の終焉を見届け、アスフィはホッと一息吐く。

 

「いや、ここからさヘルメス神。言っただろう? この後の出来事であなたは確信に至る、と」

 

 一件落着、と思われた騒動は突如として第18階層全土に響く大揺れによって引き戻される。

 天井より地に堕ちる巨大な人型、それは漆黒のゴライアスだった。

 先程ヘスティアが解放した神威、それを感じ取ったダンジョンが神抹殺のために18階層に直接出現させたのだ。

 

「これは……!」

「ダンジョンが怒っている自分たちを閉じ込めた俺たちに。……ウラノス祈祷はどうした。こんな話は聞いてないぞ」

 

 突如として出現した脅威にヘルメスは帽子を被り直す。

 

「さあ! ここからが正念場だ我が英雄! 今こそ、新たな偉業を打ち立てし刻!」

 

 預言者は新たなる英雄の試練を歓迎した。

 

 

 

 VS漆黒のゴライアス 1

 漆黒のゴライアスの出現。それと同時に第18階層の入口は塞がれた。もはや討伐する他に道はなかった。リヴィラの街、そして第18階層に居る者たちは全ての武器と全ての冒険者を総動員して漆黒のゴライアス討伐に挑んだ。

 そしてその中にベルたちはいた。

 彼らは勇敢にも戦った。寄せ集め故に連携もない、しかし自分たちにできることをやり続け善戦していた。

 

 しかし漆黒のゴライアスは普通の階層主とは違う。その動きは素早く、防御力も通常のゴライアスをはるかに上回り、また魔力を消費することで受けたダメージを回復する治癒能力を備え、ベルが英雄願望で吹き飛ばした頭も再生した。

 

 そしてその時が訪れる。

 

「うわぁっ!」

 

 ゴライアスの攻撃で空中に投げ出されたベルを豪腕が襲いかかる。

 

「ぬおおおおおおおおお!」

 

 間一髪、カシマ・桜花が盾を持って割って入り即死は免れたが二人諸共吹き飛ばされてしまう。

 これにより二人は気絶、生きてはいるが戦線離脱を余儀なくされる。そんな状態のベルにヘスティアはその頬を撫でる。

 

「……行ってくれエルフ君」

「…………」

「少しでも時間を長く稼いでくれ。ベル君は絶対に起きる。起きてあのモンスターを倒す」

「神 ヘスティア……」

 

 撫でるその手は震えていた。

 

「君だって見ただろう! ベル君ならやれるんだ! ベル君ならあのモンスターを倒せる……!」

「……分かりました」

 

 空元気に見えた神の微笑みを受けて、リューもまた微笑み返して戦線に戻った。

 

 ヘスティアとリリが呼び掛ける。目を覚ましてくれ、と。

 

「みんな戦っているんだ……あんな恐ろしい相手に向かって……! 君ならできる……! 君しかいないんだ……みんなを助けられるのは……! 立つんだベル君! ベル君っ! ベル君っっ!!」

 

 握った手は……まだ動かなかった。

 

 

 ベルは未だ微睡みの中、声だけが聞こえて目覚められずにいた。

 

(神様……分かっているんです……! 聞こえているんです……!)

 

 なのに。

 

(なのに……体が……! どうしても! 体が動かない……ッ!)

 

 頭では分かっているのに体が言うことを聞かない。

 

(動け! 動け! 動けよッッ!)

 

 まるで糸の切れた人形のよう。

 

(戦わなきゃならないんだ! 神様のために! みんなのために!)

 

「ベル君っ……! ベル君っ!」

「ベル様ぁ!」

 

 必死に呼び掛ける二人。その背後からヘルメスが現れる。

 

「もし英雄と呼ばれる資格があるとするならば」

 

 続くように反対方向から開いた本を片手にウォズも現れる。

 

「剣を執った者ではなく、盾を翳した者でもなく、癒しを齎した者でもない」

 

 まるで詠うかのように二つの声が重なる。

 

「「己を賭した者こそが英雄と呼ばれる」」

 

 そして第三の声がベルの記憶に蘇る。

 

『仲間を守れ、女を救え、己を賭けろ。折れても構わん。挫けても良い。大いに泣け。勝者は常に敗者の中にいる』

 

 そう。

 あの日、腕に抱かれながら語られた英雄の資質。

 

「願いを貫き」

「思いを叫ぶ」

 

(さすれば)

 

『それが』

 

「「一番」」

 

 

「「『(格好の良い男の子だ!!!!)』」」

 

 

 握った手が──握り返した。

 

 

 

 VS漆黒のゴライアス 2

 英雄となる少年が歩き出す。

 

(あの人に……恥じないように……)

 

 剣姫が残したウダイオスの黒剣を持って。

 

(何よりも……大切な仲間たちを救うために……!)

 

 傍に従者を伴って。

 

「我が英雄。露払いと注意は私が引こう」

 

 そして漆黒のゴライアスの前に立つ。

 

「……うん」

 

 従者にそう答えて、少年は力を込める。

 情景を燃やす。

 願いを吠える。

 

 漆黒のゴライアスはそれを見て雄叫び上げる。それを聞いてモンスターたちが集まってくる。

 

「行かせるかよォ!」

 

 冒険者たちもまたそれを防ぐために死力を尽くす。

 

「我が英雄の邪魔はさせない」

《ビヨンドライバー!》

 

 ウォズはどこからか緑と黒のバックルを取り出すと腰に装着しベルトが巻かれる。

 そして時計のような物を取り出しスイッチを押す。

 

《ウォズ!》

 

 時計はそう発するとベルトに取り付けられる。

 

《アクション!》

 

 軽快な音声が鳴り響くとウォズの背後に謎の画面が現れる。

 

「変身」

 

 そう呟いてベルトのハンドルを前に倒す。

 

《投影! フューチャータイム!》

 

 その音声の通り、時計が投影されウォズの体が光に包まれる。

 

《スゴイ! ジダイ! ミライ! 仮面ライダーウォズ! ウォズ!》

 

 そうして現れたのは銀色と黄緑の人物。顔には文字の様なものが刻まれていた。

 

「祝え! 過去と未来を読み解き、正しき歴史を記す預言者。その名も仮面ライダーウォズ! 新たなる歴史の1ページである!」

「……それ自分にもやるんだ」

 

 ここに英雄を手助けしてきた預言者が戦士として変身した。

 

「では我が英雄、安心して力を溜めるといい」

《ジカンデスピア! ヤリスギ!》

「ウォズも気をつけて!」

「フフ、ここに来て呼び捨てとは信頼の証かな? ならば応えねばなるまい!」

 

 そこからは圧倒的だった。

 並み居るモンスターたちを一撃で撃破していき一匹もベルに近寄らせなかった。

 

「ウォズ殿!?」

「その姿は……」

「やあ命君、リュー君。私も加勢しよう」

 

 変身した姿に驚く二人に、ウォズはいつものようなミステリアスな雰囲気を漂わせて加勢を申し出る。

 

「あなた戦えるの?」

「愚問だよアスフィ君。相応の働きを期待してくれ」

 

 アスフィの疑問に答えながらウォズは紫の時計を取り出すとスイッチを押した。

 

《シノビ!》

 

 そしてまた変身した時と同じようにベルトにセットする。

 

「ウォズ殿? 何をしておられるのですか? というか何処から声が? 面妖な……」

「これは使い勝手が良くてね」

《アクション!》

 

 命の問いに答えているんだかいないんだか微妙な返しをしながらウォズはハンドルを倒す。

 

《投影! フューチャータイム!》

 

 そして今度は紫の光がウォズを包み込む。

 

《誰じゃ? 俺じゃ? 忍者! フューチャーリングシノビ! シノビ!》

 

 現れたのは銀色と紫色のアーマーを装着し、マフラーを棚引かせた忍者のような姿だった。

 

「ウォズ殿……! そのお姿はまるで!?」

「フフフ、シノビの力をお見せしよう」

《カマシスギ!》

「フッ!」

 

 ウォズは持っていた槍を操作し鎌に変形させると近づいて来ていたモンスターたちを切り裂く。そして直後その姿が幾人にも増え、分身した。

 

『まずは周りのモンスターから片付けよう』

《カマシスギ! フィニッシュタイム!》

 

 分身たちは鎌の上部のパネルをタッチした後左右に何回も指をスライドさせる。

 

《一撃カマーン!》

 

 その音声が響くと鎌の刃にエネルギーが集中し緑のオーラを纏う。

 

『ハアッ!』

 

 そして無数の分身たちは、他の冒険者たちが相手をしているモンスターたちに目にも留まらぬ速さで突撃し切り裂いていく。

 やがてモンスターたちは切り裂かれた個体から爆散しその数をみるみる減らしていった。

 

「す、凄え……!」

「速ぇ……!」

 

 その活躍ぶりに冒険者たちはただ呆然とするしかなかった。

 

「驚くのはまだ早い。なぜならこれから我が英雄が漆黒のゴライアスを打ち倒すからだ!」

 

 そう大仰な仕草で語るウォズの視線と手先にはふつふつと力を蓄力(チャージ)するベルがいた。

 瞬間、鐘の音が第18階層に響く。殆どの者がさらに聴き入り、見守っていた。

 

限定解除(リミットオフ)……!」

 

 誰かがその姿にそう呟いた。

 

 そして漆黒のゴライアスもまたそれに気づき行動に移る。だがそうはさせまいと時間を稼ぐ。

 

「フッ!」

「ハアッ!」

 

 ウォズとリューが高速戦闘で注意を引く。さらにリューはその間に詠唱する。

 

「では私も、とっておきを出すしかないですね!」

 

 アスフィは飛翔靴(タラリア)を解放して参戦する。

 

「ルミノス・ウィンド!」

 

 そこに詠唱を終えたリューは緑風を纏った無数の大光玉を広範囲に放つ魔法 ルミノス・ウィンドを発動し、漆黒のゴライアスにダメージ与えていく。

 

「オ"オ"ォ"ォ"ォ"オ"オ"オ"オ"オ"!!」

 

「っ! ……!」

「きゃあっ!?」

「うああああ!!」

 

 しかし振り回される豪腕にウォズは変わり身で難を逃れるがリューとアスフィは吹き飛ばされてしまう。

 

「天より降り、地を統べよ 神武闘征! フツノミタマ!」

 

 間髪入れず命のフツノミタマが漆黒のゴライアスを捉え、重力結界に閉じ込める。

 

「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!」

 

「くぅっ! や、破られますっ!」

「お前らどけえええええええ!!」

 

 漆黒のゴライアスが重力の檻を無理矢理破ったところで自らの意地を捨て、仲間を助けるために魔剣を担いだヴェルフが吶喊する。

 

「煌月ぃぃぃ!!!」

 

 巨大な爆発が漆黒のゴライアスを包み込む。

 

(そうだ……ただの意地だ……すまねえ…………!)

 

 そして魔剣は跡形もなく砕け散る。その砕けた破片を見つめ、心内に謝罪しながら落ちていくヴェルフを、復帰したアスフィがすぐさま回収する。

 

「グゥ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"!!」

 

 しかし漆黒のゴライアスはまだ動く。そこに複数に分身したウォズが鎌を構えて懐に切り込む。

 

「しばらく鈍くなってもらおう!!」

《ビヨンドザタイム! 忍法 時間縛りの術!》

『ハアッ!』

 

 分身たちが鎌を突き刺す。すると漆黒のゴライアスはその動きが鈍くなった。

 

 そして最後の鐘の音が鳴る。時は──満ちた。

 

「今だ! 我が英雄!」

 

 ベルは溜めた力を解放するとその全身が白く、眩く輝いた。

 

「……!」

 

 ウダイオスの黒剣もまた白く輝き、ベルは漆黒のゴライアスへと吶喊する。

 

「おお……! 我が英雄、ソレこそが!」

 

 ウォズはその場を離脱しながらもその姿に感嘆して言葉を紡ぐ。

 

「圧倒的な力の不条理に対して!」

 

 そしてヘスティアもその光景を前にして同じく紡ぐ。

 

「そのたった一つのちっぽけな力で逆らう……!」

 

「即ち!」

 

 そう即ち──

 

 

「グア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!」

 

「うおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

 ──英雄の一撃! 

 

 

 横薙ぎに振るわれた英雄の一撃は第18階層を白く染め上げる。

 そして光が収まるとベルの持つ黒剣は粉々に霧散する。

 

「っ!」

 

 しかし漆黒のゴライアスはその上半身が消し飛んでもなお再生しようとしていた。

 

「あの一撃でさえも……!」

「巫山戯ろ……!」

 

 絶望の二文字が全員の心に伸し掛かってくる。

 

「「まだだ!!」」

 

 だがその場で三人だけ、いや正確には二人と一柱は別だった。

 

「なんら問題はない! その程度で我が英雄が止められるわけがない! 止まるはずがない! なぜなら!」

 

 一人は預言者。

 

「なぜなら!」

 

 一柱はヘスティア神。

 

 そしてもう一人は──

 

「僕のベル・クラネルは!」

「我が英雄は!」

 

「……!」

 

 ──未来の英雄 ベル・クラネル

 

 ベルはクレーターの壁面を駆け抜ける、

 

「もっと速く!」

 

 そして腰のヘスティアナイフを引き抜き、

 

「もっと強く!」

 

 漆黒のゴライアスの真上へと、

 

「もっと高く飛べるんだ!」

「もっと高く飛べるのだ!」

 

「せえぇぇやああああああああああああ!」

 

 核に刃を突き刺し、捻る。

 

 漆黒のゴライアスは霧散し砕け散る。その衝撃は第18階層全土に伝わり、核は吹き飛んび結晶となってダイヤモンドダストのように辺りに降り積もる。

 尻を着くベルの横には巨大な魔石が鎮座していた。

 

 漆黒のゴライアス 討伐。

 

 その事実に第18階層の彼方此方で歓声が上がり、喜びを分かち合う。

 

「やるじゃねえか……未完の少年(リトル・ルーキー)……」

 

 漆黒のゴライアスにトドメを刺し、ファミリアに抱き付かれるベルを見てモルドは認めざるを得ず、そしてその顔は晴れやかだった。

 

 

「ああ! ああ! 見たぞ! このヘルメスがしかと見たぞ!」

 

 討伐を見届けたヘルメスは一柱、歓喜に打ち震える。

 

「素質がない? 馬鹿を言うなゼウス! あなたの孫は、置き土産は本物だ! あなたのファミリアが残したラストヒーローだ!」

 

 第18階層の天井に向かって、いや或いはその遥か上にある天に向かってか、

 

「動くぞ! 時代が動く! 必ずやこの目で見届けよう! この場所で、このオラリオの地で起こる! 歴史に刻まれる大事を! 英雄たちの行く末を! その生と死を!」

 

 ヘルメスは声高らかに宣言した。

 

「親愛なる彼らが紡ぐ、眷属の物語──ファミリア・ミィスを!」

 

 そう言って天に突き出された掌は、何かを掴むように固く握り締められた。

 

 そしてまた一人、祝福する者がいた。

 

「祝え!」

 

 大勢の冒険者がベルを讃える中、預言者はその全員へ耳に届くように叫ぶ。

 

「漆黒の巨人を打ち倒し! 今は未完なれど、いずれ英雄となる運命に辿り着くことを約束された偉大なりし冒険者!」

 

 その手に『迷宮英雄譚』を開き、指し示し、誇示するように言葉を紡ぎ、

 

「その名はベル・クラネル!」

 

 その視線、指先に仕える主人を据えて、

 

「また一つ、偉業を成し遂げた瞬間である!」

 

 預言者は声高らかに祝福した。

 

 

 

【斯くして、ベル・クラネルは見事漆黒のゴライアスを討伐し、その後も仲間と共に英雄の道を志し、ひた走るのでした】

 

【如何でしたか? 我が英雄の英雄譚、その一部は?】

 

【我が英雄はこの後、太陽神にその身を狙われたり、ファミリアは憧れのホームを手に入れたり、とある狐人を巡ってまたトラブルに見舞われたりなど……おっと、私としたことがうっかり喋り過ぎてしまいましたね】

 

《クイズ!》

 

【さて、皆さん】

 

《アクション! 投影! フューチャータイム!》

 

【名残惜しいですがそろそろお別れの時間がやって参りました】

 

《ファッション! パッション! クエスチョン! フューチャーリングクイズ! クイズ!》

 

【では問題】

【今後も我が英雄の英雄譚は私、ウォズによって語られる機会がある。◯か? ×か?】

 

【答えは……フフ、何れ分かることでしょう】




ンなん×一択でしょ。
続きませんよ。脳の処理やらダンまちアニメしか見てないのに書き切れるわけないでしょ。←クソ野郎

というわけで同じようなやら似たような設定やらで詳しい人誰か書いて(割とマジで)←他力本願のクズ

つかウォズで祝って。とりあえず祝っとけば問題ないです。(せやろか?)
もしかしたら2期終わったら書く「かも」(←ここ重要)しれないです。可能性は低いです。劇場版とかよく知らない。見てない。←愚図

テロ牧師はもうちょっとかかるかもしれないです。←エタる奴の台詞

ではでは。


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9/7 ちょこちょこっと修正


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