蛇王龍、海賊になる。   作:初音MkIII

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一旦またウォーターセブンに戻って、エニエス・ロビーへと繋ぐお話です。


前回のあらすじ:ルッチのお墓を建てるウラ……


ウォーターセブン⑥

 蛇王海賊団によって正体を暴かれたCP9。

 彼らのリーダー格であるロブ・ルッチは怒れるマデュラによって“恐暴竜”の餌にされ、ギリギリ残った首だけをエニエス・ロビーへと送り届けられた。

 

 あまりにショッキングすぎる光景に、アイスバーグをはじめ多くの人々が体調を崩してしまい、残ったCP9のメンバーたちの処分は翌日に持ち越しとなったのだが──。

 

 尚、マデュラに命じられたのは“天彗龍”ことファルクだけだったのだが、船の材料を求める“閣螳螂”アトラが何故かゴネてしまい、結果的に彼女も共にエニエス・ロビーへと向かっていった。

 巨大な龍の形をした“巣”であるネセトも持っていったため、それを運ぶ羽目になったファルクは、普段の彼からは考えられない程鈍足になり、エニエス・ロビーにたどり着くまでに一日もの時間を要していたりする。

 

 

 

 とりあえずそんなこんなで再び造船所にて。

 

 

「ンマー、本当にいいのか?」

「いや、それはこっちのセリフなのだけど。アイスバーグ氏、あなたの命を狙っていた輩よ? 本当に殺さなくていいの?」

「構わねェよ。既にこいつらの心は折れてる。今更政府の命令になんて従わねェさ。それに、あんな惨い光景を見るのはもうたくさんだ……」

「ふーん……そういうものかしら。コラ、マデュラ。いつまで不貞腐れてるのよ」

「……べつに不貞腐れてないもん!」

「嘘つけ」

 

 

 なんと、ルッチ以外の三人……カク、カリファ、ブルーノは、危うく彼らに暗殺されるところだったアイスバーグによって助命を嘆願され、渋るマデュラに繰り出した必殺の「じゃあ船は作らねェ」という一言によって呆気なく許されたのである。

 

 これには蛇王海賊団の面々どころか、ガレーラカンパニーを含めたウォーターセブン中の人々もびっくり。

 

 

 カクは職長を解任され、下っ端からやり直し。

 カリファは秘書からただの一般市民に。

 ブルーノに至っては店も金も無いという状況ではあるが、それでも命を取られるよりはマシであろう。

 

 

 まぁそれはさておき、アイスバーグは荒れてきた海を一瞥すると、わざとらしく咳払いをした。

 この話はもう終わりだ、と言うことだろう。

 

 

 

「ところで、お前らは知らねえだろうが、今夜はアクア・ラグナっつー高潮がこの島に押し寄せる。いくらなんでも船でエニエス・ロビーに向かうのは無茶だぞ」

「高潮?」

「ああ。造船所までは来ねえはずだが、それでも街が浸かっちまう程のモンだ」

「へえ、そうなのね。だそうだけど、どうするの? マデュラ」

「……それが何か?」

「言うと思った……」

「いやいや、それが何か? じゃねェよ。お前ら、揃いも揃って能力者ばかりだろうが」

 

 

 アクア・ラグナ。

 ウォーターセブンの風物詩とも言える災害で、アイスバーグが言う通り街が浸かってしまうほど大規模な高潮である。

 それを聞いて、「何か問題でも?」とばかりに不思議そうな顔をするマデュラに呆れるアイスバーグと、頭を抱えるラヴィ。

 

 災害そのものと言える“龍”たちを従えるマデュラにとって、天災の一つや二つ、あってないようなものなのである。

 その気になれば天候なんていくらでも変えられるし。

 

 

 まあそんなわけなので。

 

 

「エニエス・ロビー行ってくる」

「ンマー!! 話聞いてたか!?」

「……無駄よアイスバーグ氏。今のコイツに言葉なんて通じやしないわ……。下手に刺激して暴れられたら困るでしょう? 放っておく方が賢明よ」

「おいおい……」

 

「ま、待つのじゃマデュラ! わらわも行く!」

 

 

 アイスバーグの説得も虚しく、マデュラは部下たちを引き連れて船へと戻っていった。

 何故かハンコックも一緒に行動しているが、王下七武海としてそれでいいのだろうか。

 

 最後に残されたラヴィも、優雅に一礼して去っていく。

 アイスバーグたちは、それを「ンマー……」と呟きながら見送るしかできなかった。

 

 

 

 そして、それぞれの船に戻った蛇王海賊団は──。

 

 

 

「そんじゃ、エニエス・ロビーへ。全速前進ー。線路に沿って行けば着くでしょ」

「「了解、船長!」」

「マデュラ、少し話があるのじゃが」

「ん? どしたのハンコック」

 

 

 荒れ狂う大海原に漕ぎ出し、艦隊は世界政府が誇る“司法の島”エニエス・ロビーを滅するために走る。

 その最中、待ち時間を利用してハンコックが何やら話したいことがあるらしい。

 

 

 友人の頼みとあって、マデュラは船の指揮を一旦副船長のフィロアに任せ、ハンコックを連れて自室へと引っ込んでいく。

 穏やかに見えて怒っているマデュラが爆発しないように、ラヴィもそれについて行った。

 

 

 

「それで、話って?」

「お茶ぐらい出しなさいよ。気が利かない奴ね」

「お。ありがとうラヴィ」

「む。すまぬな、ラヴィ」

「まったく。なんでアタシがメイドみたいな事してんのかしら……」

「メイド服着てみたら? 似合うよきっと」

「うっさいわね」

 

 

 やたらと豪華な一室で、ラヴィを使用人代わりにこき使いながら対面するマデュラとハンコック。

 ちなみに、ハンコックの妹たちは自分たちの船をアクア・ラグナから守るために避難させている。

 

 さて、ハンコックの話とは──。

 

 

 

「アウ!! アウアーウ!!」

「「ん??」」

 

 

 

 ──ハンコックがいざ口を開こうとした、その瞬間。

 微妙に聞き覚えのある声が響いた。

 

 

 

「聞いたぜマデュラさん! 世界政府のクソ野郎どもをぶっ飛ばしに行くんだろ!?」

「……なんじゃこの変なやつは」

「あ、フランキー」

「おお、名前を覚えてくれてるたァ嬉しいねェ!! そう! おれ様こそがウォーターセブンの裏の顔! ンン~~、フランキィィー様だ!!」

「……アンタ、いつの間に?」

「ゾラさんに頼んで乗せてもらってたのよォ!!」

「何やってんのよあのオッサン……」

 

 

 

 大胆にもマデュラの私室のドアを開けて入ってきた大男。

 そう、フランキーである。

 

 彼は麦わらの一味から2億ベリーを奪って買い物に行き、今日帰ってきたばかりなのだ。

 まあ、自宅であるフランキーハウスに戻ってみれば、なんと無惨に吹き飛んでいたりもしたのだが。

 

 

 それを見たフランキーは怒り狂い、麦わらのルフィに報復し返すべく彼を探していたのだが、しかしボロボロの部下……ザンバイたちから「蛇王海賊団がエニエス・ロビーをぶっ壊しに行くらしい」と聞き、麦わらへの報復か、昔からの因縁がある世界政府への“お礼参り”に行くべきか、悩みに悩んだ。

 その末に、ザンバイたちからの後押しもあってこうして世界政府へのお礼参りを選んだ、というわけだ。

 

 

 

 麦わらの一味が、崩壊前のフランキーハウスに飾ってあった「蛇王海賊団の海賊旗(サイン入り)」を見て、フランキー一家が蛇王海賊団の下部組織だと誤解している、という事も知らずに……。

 

 

 

「──とまあそういうわけでな! おれも世界政府には恨みがあるんだ。だから、連れて行っちゃもらえねェか!?」

「いいよ」

「──決して足手まといにゃ……え? 今なんて?」

「ん。だから、来ていいよ。恨みがあるんでしょ?」

「……そうか……そうか!! ありがてェ!! すまねえ、恩に着る!」

 

 

 

 マデュラに不快感を与えないようにズボンを穿いた上で、土下座して頼み込むフランキーだが、あまりにもあっさりと許されたのでポカンとした表情を浮かべた。

 しかし、すぐに状況を理解し、再度勢いよく頭を下げる。

 

 

 そんなわけで。

 フランキーの参戦が決定した。

 ぶっちゃけ居ても意味などないのだが。

 

 

 

「で、ハンコック。話って?」

「お、おお。そうじゃったな」

「何事も無かったかのように話を戻したわね。えっと、フランキーだっけ? アンタ邪魔だからどっか行ってなさい」

「おう、わかったぜ!! いやー、しかし立派な船だなァ!! さぞかし高名な船大工が作ったに違いねェ!」

「え? アンタわかるの?」

「おうよ! こう見えて昔は船大工を……っと、いけねえいけねえ。邪魔になるか。そんじゃマデュラさん! また後でな!」

「はーい」

 

 

 微妙に気になる言葉を残しつつ、フランキーはそそくさと去っていった。

 マデュラの機嫌を損ねないように、と配慮したのだろう。

 ああ見えて彼は大人なのである。

 

 

 ──さて、ハンコックの話とは……。

 

 

 

「単刀直入に言うぞ。マデュラ、我がアマゾン・リリーを、そなたのナワバリに加えて欲しいのじゃ! このまま王下七武海をやっていては、そなたらと戦う羽目になりそうなのでな」

「ん?」

「ちょっとハンコック、どういう事よ?」

「実はな──」

 

 

 

 まぁそういうわけである。

 海軍が蛇王海賊団を警戒し、臨戦態勢を取っているという事実は、あっさりと知られてしまった。

 

 

 それを聞いたマデュラは……。

 

 

 

「…………」

「マ、マデュラ?」

「……やばい。ハンコック、逃げなさい!! 死ぬわよッ!!」

「え?? どういうこ──!?」

 

 

 

 

 みるみるうちに殺気が部屋に満ちていき、無駄に豪華な装飾の数々が、ピシリ、ピシリと割れていく。

 

 

 

 ラヴィは慌ててハンコックを連れて退散し、甲板で叫ぶ。

 

 

 

「総員、すぐにこの船から離れなさい!! マデュラがキレるわッ!!」

「「いいいい!?」」

「な、なんでじゃ!? わらわ、何かしたか!?」

「安心しなさい、アンタは何も悪くないから!」

 

 

 

 一見穏やかだったマデュラだが、ルッチのせいで一度激怒しているという事を忘れてはいけない。

 爆発寸前の状態になり、逆に冷静になっていたというだけなのだ。

 ちょっとしたきっかけがあれば、すぐにキレる。

 

 

 

「……そう、そうなんだ。私はただ皆と一緒に遊んでるだけなのに……海軍はそれを邪魔しようって言うんだね……」

 

 

 

 ビシビシビシ、と、船中に亀裂が広がっていく。

 慌てて艦隊の船へと飛び移り、離れていく蛇王海賊団のクルーたち。

 

 

「ラヴィ!! なんであやつは怒ったんじゃ!?」

「海軍が徒党を組んで向かってくると考えたからよ! アイツ、“遊び”を邪魔されるのが大嫌いなの!」

「無茶苦茶すぎぬか!?」

「そういう奴なのよ!! 副船長、居る!?」

「無論。凍らせるか?」

「ええ、そうね……そうし……あれ?」

 

 

 既にスタンバイしていたフィロアに声をかけ、海を凍らせてもらってから変身しようとしたラヴィだが、マデュラの殺気が収まっていっている事に気付き、首を傾げる。

 

 

「……なんで?? いつものあの子ならもうキレて変身してる頃なのに」

「た、助かったのか……?」

「……マデュラに何があったんだ……?」

「こっちが聞きたいわよ……」

 

 

 

 ラヴィはフィロアと目を合わせて共に頷き、マデュラの私室に戻ってみた。

 すると──。

 

 

 

「見ろ、ケンタウロスだぜ!」

「あはは、逆だー」

「「…………」」

「うはは! 苦情は受け付けねえよ!」

 

 

 

 ──なんと、フランキーが変形……いや、“変体”してマデュラをあやしていた。

 まさかのフランキー大活躍である。

 

 

「ん? おう、“大巌竜”に“熾凍龍”! てめェらの船長の機嫌ぐらいてめェらでなおしやがれ! “世界最悪”が聞いて呆れるぜ!?」

「……や、やるわねアンタ……」

「ただの変態ではなかったのか……」

「ねー、フランキー! 他にはないのー?」

「ん、そうだなァ。おれァ自分で自分を改造したサイボーグなんだが、背中には手が届かなくてよ! 背中は生身なんだ!」

「なはは、面白ーい!」

 

 

 

 ウォーターセブンの裏の顔、フランキー。

 数多の無法者たちを舎弟にしてきた面倒見の良さは、伊達ではない。

 

 

 これを見たラヴィとフィロアは決意した。

 フランキーの言う通り、船長の機嫌ぐらいすぐになおせるようになろう、と。

 

 

 というかそうしないと世界が滅びる。

 

 

 

 そして、何とか陣形を立て直した蛇王海賊団の艦隊は、再びエニエス・ロビーへと向かう。

 フランキーのおかげでマデュラは満面の笑みを浮かべており、道中で問題が起きる事は無さそうである──。

 

 

 

「お前ら、よく今まで航海を続けていられたな……?」

「うぐ、返す言葉もない……」

「マデュラの奴も、さすがに仲間を殺しはしないからね。適度に暴れさせて定期的にストレスを発散させてきたのよ。その度に島がいくつか消えたけど」

「おいおい……」

 

 

 尚、ラヴィたちは船長を全く制御できていない現状をフランキーに呆れられるという屈辱に見舞われた。

 世界最悪の海賊団と言っても、現実はこんなものなのである。

 

 四皇の一角であるビッグ・マム海賊団も、船長が暴れ出すと誰も止められないのだから、似たようなものだったりするが……。




そんな感じで、結成一年という蛇王海賊団の“若さ”を描写してみました。
麦わらの一味も、ルフィを制御できてないので似たようなものな気がします。


というか書いてるうちに何故かマデュラがキレかけてました(:3_ヽ)_
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