ゲストとしてフランキーを迎え、エニエス・ロビーへと向かう蛇王海賊団。
危うくマデュラが暴走しかけるというハプニングこそあったものの、まさかのフランキー大活躍で事なきを得た彼らは……。
「おーい、副船長。アレが例のアクア・ラグナって奴じゃあねえのかい?」
「む。なるほど、あのウォーターセブンの街を飲み込む程の規模、というのもあながち間違いでは無さそうだな。我らには何の関係も無いが」
「ま、そらな。ところで船長は?」
「部屋で寝ている。着いたら起こして、との事だ」
「そうかいそうかい。ま、いつものこったな」
ウォーターセブンの風物詩、アクア・ラグナという高潮を前に、のんびりとそんな会話をしていた。
しかし、いくら彼らでも船が飲み込まれると溺れてしまうので、しっかりと対処はする。
おお~、と呑気にアクア・ラグナを眺めているクルーたちを集め、揃って「うがっ」と口を大きく開けるフィロアたち。
そして──。
「発射」
「「ガァッ!!」」
人獣型に変身して放たれたモンスター軍団の一斉ブレスにより、アクア・ラグナは呆気なく消し飛んだ。
普通にオーバーキルであり、わざわざ並んで撃たなくても充分だったのだが、万が一があってはいけない。
能力者が非常に多い海賊団なので、こういった水害は地味に厄介なのだ。
「……やっぱりすげェな。災害もなんのそのってか」
「今更じゃな。災害だろうが人間だろうが、こやつらを止められる存在などあるものか」
愛するウォーターセブンを悩ませてきたアクア・ラグナの脅威をよく知るフランキーは、息を吐くように突破する蛇王海賊団のトンデモぶりを、改めて実感した。
そんな彼を見てハンコックが呆れているが、海賊女帝として世界を知る彼女と、所詮一つの島の裏を牛耳るチンピラでしかないフランキーでは、住んでいる世界が違うので仕方がない。
そんなこんなで快適な船旅が続き、ゆらゆらと海を進むことしばらく。
常に真昼が続いているという“不夜島”にして、世界政府の玄関とも呼ばれる司法の島、エニエス・ロビーがその姿を現した。
士気を上げる蛇王海賊団と、静かに島を眺めるフランキー。
マデュラの私室がある方向をチラチラと見ながら髪をいじるハンコック。
「ん? おい、もうすっかり荒れ果ててるじゃねえか」
「む、そうじゃな。天彗龍が暴れ回ったのか?」
「否だ。ファルクは命じられた以上の事はしない。大方、アトラの奴が船の材料を漁っていったのだろう」
「ああ……“閣螳螂”か。なるほどなァ。ホント、何から何までスケールがデケェ海賊団だ……」
静かに闘志を燃やすフランキーだが、肝心のエニエス・ロビーが既にボロボロであり、明らかに荒らされた後であった。
ハンコックもそれを見て首を傾げるが、二人に近付いてきたガロアによって答えが明かされる。
半ば無理やり先行していった“閣螳螂”アトラこそがこの惨状の犯人であり、「宣戦布告」しに行った天彗龍では彼女を止められなかったのだろう、とも。
まるで平原のように何もないエニエス・ロビーを見て、なんとも言えない気持ちになるフランキー。
勝手な事をしたらまたマデュラが怒るのではないか、と心配になるハンコック。
そんな二人を余所に、一人の青年が寝ぼけ眼のマデュラを背負って現れた。
「おーい、ガロアさんよ。船長の奴、全っ然起きやしねえんだけど」
「ネルか。心配いらん、じきに起きる」
“滅尽龍”ネル、懸賞金4億8000万ベリー。
元賞金稼ぎで、天竜人大虐殺事件により跳ね上がったマデュラの懸賞金を狙って戦いを挑むも、呆気なく返り討ちにされたという過去を持つ。
しかし、やたらとタフで回復も異常に早い事に興味を持ったマデュラにスカウトされ、仲間に加わった。
──ガロアとネルがそんなやり取りをしていると、まるでそれを聞いていたかのようなタイミングでマデュラが目を覚ました。
「……んぅ。おはよぉ」
「おはようございます、マデュラ様。御覧の通り、無事エニエス・ロビーに到着しました」
「おはよう、マデュラさん。先行してった“閣螳螂”が派手に暴れちまったみてェだが、いいのか?」
「んー……」
ヨボヨボとネルの背中から降りたマデュラは、目をごしごしと擦って眠気を覚まし、エニエス・ロビーの惨状を確認する。
「……わぁ、建物が何もないや。でも、奥にある司法の塔? アレは残ってるしいいんじゃない」
「あ、いいのか」
「ほっ……」
怒り出す事は無さそうで、ホッと息を吐くフランキーとハンコック。
そんな二人をサラッとスルーし、ネルが問う。
「さて、船長。オーダーは?」
「アトラとファルクを回収して、CP9の長官さんを皆で探してきて。あと、映像電伝虫で撮ろうか。レイリーに頼んでシャボンディ諸島で放映する予定だから」
「了解! 鬼ごっこだな!」
「承知しました。モンスターズを総動員して捜索にあたります。冥王への連絡は?」
「予めしてあるから、もうあっちは準備できてると思うよー」
「ハッ!! では、行ってまいります」
スパンダムが聞けば間違いなく悲鳴を上げるだろう、地獄の鬼ごっこが始まった瞬間である。
部下であるルッチが殺された以上、その上司であるスパンダムもそうなる可能性が非常に高いし。
「CP9……道中で聞いたが、アイスバーグの野郎を殺そうとしやがった奴ららしいな」
「世界政府が密かに保有する諜報機関じゃな。存在するはずの無い九番目のサイファーポール、とかいう」
「そうそう。たしか、今の長官さんは“スパンダム”っていう名前だってジエンが言ってたよ」
「ああ!? スパンダムゥ!?」
「ん? フランキー、知ってるの?」
「知ってるも何も、おれの恩人を……トムさんを連れていきやがった野郎だ!! クソが……アイツ、まだ諦めてなかったのか!!」
「…………へえ、そう」
スパンダムにとって更に不幸なことに、過去に因縁があるフランキーが、アイスバーグと同様マデュラに気に入られてしまい、死亡率が格段に跳ね上がってしまった。
まあ、彼の自業自得と言えばそこまでなのだが。
「こうしちゃいられねえ!! マデュラさん、スパンダの野郎だけはおれがこの手でとっ捕まえてェ!」
「……ん、煮るなり焼くなりお好きなように。居るとしたらたぶんあの塔じゃない?」
「おう、すまねェ!! 行ってくるぜ!」
敵の正体を知るや否や、フランキーは船を飛び出して行った。
エニエス・ロビーはそこそこ広いので、歩きだとモンスター軍団にはまず追いつけないだろうが、まぁファルクあたりが気を利かせてくれるだろう。
四龍王を含め、蛇王海賊団の大半が島に侵入していったため、極端に人気が少なくなった船上。
とりあえず、暇なマデュラはクック先生を呼んだ。
「おーい、先生ー」
「呼んだかい?」
「ぬおっ!? そなた、どこから!?」
「あ、びっくりさせたかな? ごめんね、ハンコックちゃん」
「ハンコックちゃん……」
どこからともなく現れたクックに驚くハンコック。
彼は基本的に前線には出向かないため、こういう時はだいたい船のどこかに居るのである。
まあそれはさておき。
「ねえねえ、先生」
「はいはい。なんだい、マデュラちゃん」
「あのおっきな扉? アレなに?」
「ああ、向こうに見えているアレじゃな」
「アレはね、“正義の門”さ。エニエス・ロビー、インペルダウン、海軍本部……世界政府の三大機関にそれぞれ一つずつあって、アレを開閉する事で政府は海流をコントロールしているんだ」
「ああ、なんかそんな話を聞いた事あるかも」
「うん、前に話したからね」
「そうだっけ」
どうやら、マデュラはエニエス・ロビーの背後にそびえる巨大な“正義の門”に興味を示したらしい。
しかし、クックが言う通り、アレに関してマデュラは何度も同じ事を聞いていたりする。
これだからラヴィに鳥頭と言われてしまうのだ。
「アレを壊したら、世界政府は困る? あ、映像電伝虫つけておこ」
「そうだね。とても困ると思うよ。やるかい?」
「サラッととんでもない事言いおるな、そなたら」
致し方なくツッコミに回るハンコック。
マデュラもクックもどちらかと言うとボケ役なのだ。
そして──。
「えーと、テステス。ねえねえ、聞こえてる?」
『こちらレイリー。聞こえているよ。そっちは今、エニエス・ロビーか? 見事に破壊されているが』
「うん。えっとね、私のお気に入りに手を出してくれたCP9の長官を捕まえたら、あの“正義の門”とかいうヤツをぶっ壊そうと思うの」
『……ハハハ、そうなれば政府も黙っていないだろうな。戦争でも起こすつもりか?』
「それもいいなぁ。あ、せっかくだし政府の“三大機関”ってやつ、全部潰しちゃおうかな。インペルダウンは確か凪の帯にあるみたいだし、久しぶりに里帰りもできそう」
『……本気か? 言われた通り、こちらで映像を映し出しているが、既に凄まじい反響だぞ。当然、海軍も君の動きを確認しているだろう』
「ハンコック曰く、とっくに私の邪魔をしようと集まってるみたいだし、どうでもいいよ」
『ふむ、そうか』
エニエス・ロビーの様子をシャボンディ諸島にて映像電伝虫を流しつつ、軽く語るマデュラ。
レイリーが言う通りこれを察知している海軍は、その実ものすごく頭を抱えていたりする。
何故ならば、王下七武海への加入を望む“黒ひげ”が、自身がかつて所属していた白ひげ海賊団の二番隊隊長、ポートガス・D・エースを捕まえると断言したからだ。
仮にそれが実現してしまえば、海軍は世界最強の海賊と名高い四皇“白ひげ”と、世界最悪の海賊と名高い“蛇王龍”の二人を同時に相手にする羽目になりかねない。
老衰と病により激しく弱体化している白ひげ単体ならばまだ海軍にも勝機はある。
“不死鳥マルコ”や、“ダイヤモンド・ジョズ”を含む隊長格を大将二人で抑え、残った一人の大将を白ひげにぶつければ、策を講じれば十分に対処できるだろう。
しかし、蛇王海賊団はダメだ。
英雄ガープとセンゴク元帥……伝説の海兵二人が全盛期であったならば、何とかできたかもしれないが、老いによって力を落としている現在では勝ち目はほぼ無いと言ってもいい。
白ひげ海賊団と蛇王海賊団を同時に、となると尚更無理である。
実質三つ巴の戦いとなる可能性が高いが、それでも最終的に勝つのは十中八九、蛇王海賊団だろう。
ここで更に海軍を悩ませる出来事が。
「うおぉぉ!! おれァまだ死にたくねえェェ!!」
蛇王海賊団によるエニエス・ロビー襲撃という悪夢に見舞われたCP9司令長官スパンダムが錯乱し、青キジから借り受けたゴールデン電伝虫を連打したのである。
ビイィィ!! と鳴り響く、海軍本部のシルバー電伝虫。
頭と胃が痛むセンゴク元帥。
「……見つけたぜ、スパンダァ!!」
「ヒィッ!?」
ついでに。
事情を聞いた天彗龍ファルクによって司法の塔に送り届けられたフランキーが、狂ったようにゴールデン電伝虫を連打するスパンダムを捕捉した。
CP9の生き残りはどうしているのか?
それはもちろん、龍の軍団に追いかけられて半泣き状態である。
原作と微妙に異なる点。
黒ひげがルフィではなくエースを狙っている。
(原作ではルフィを仕留めに行こうとしたところをエースに見つかり、そのまま“バナロ島の決闘”が起きた)
仮にあのままエースに見つからずにルフィを仕留められていたら、黒ひげはどう動くつもりだったんですかね。
インペルダウンの囚人たちを連れて白ひげと戦争?