蛇王龍、海賊になる。   作:初音MkIII

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テンポよく行くぜ。
次話から原作入ります。
読者の皆に一言……本作はプロットもクソもない、その場その場での思いつきで書いてるから、深く考えてはいけない。ノリで楽しめ。


序章②

 

 

 赤髪海賊団と出会い、かの船の副船長、ベン・ベックマンからの勧めで賞金稼ぎになった“蛇王龍”マデュラ。

 

 

 偉大なる航路の折り返し地点であるシャボンディ諸島を根城に、数多の億越え賞金首をも潰れたトマトのようにしてきた彼女の名声は、今や全世界に轟いていた。

 尚、シャボンディ諸島に拠点を置いている理由は、海軍本部に近くて引渡しが楽に済むからである。

 

 割とずぼらなマデュラは、仕留めた賞金首のストックを大量に溜め込んでから換金に行くので、支部だと金が足りなくなったりした、という事もある。

 

 ついでに、友人であるレイリーも居るし。

 

 

 

 そんなこんなで人生を謳歌していたマデュラだったが、いつものように身の程知らずな自称“大型ルーキー”を仕留めた帰りに、「シャッキーのぼったくりバー」に立ち寄り、酒を飲み交わしていたレイリーにふと質問された事で我に返る。

 

 

「マデュラ。君はいつまで賞金稼ぎをしているつもりなんだ?」

「うん? いつまでって?」

「いやいや、あくまで資金集めが目的のはずだ。もう軽く100億ベリーはたまっただろう? それだけあれば充分すぎると思うが。まあ、自ら進んでお尋ね者になる必要はないと言われたらそこまでなのだがね」

「……あ」

「…………なるほど、察したよ」

 

 

 すっと目を逸らすマデュラを見て、彼女は何のために賞金稼ぎになったのかを忘れていたらしい、と察したレイリー。

 カウンターの奥で静かにグラスを拭いていたシャッキーもまた、そんなマデュラを見て苦笑いする。

 

 それもそのはず、偉大なる航路の後半、“新世界”を支配する海の皇帝たち……“四皇”の一味を除くと世界最高クラスの懸賞金がかかっていた大物賞金首すらも仕留めた事があるマデュラは、今や世界最強の賞金稼ぎとまで呼ばれ、その美しい容姿から世界中にファンを持つ程の有名人なのだ。

 こいつは本当に海賊になる気があるのか? とレイリーやシャッキーが疑うのも無理はない。だと言うのに、なんと本人がその事を忘れていたのである。

 

 笑うしかないとはまさにこの事であろう。

 

 

 ちなみに。

 赤髪海賊団と出会ってから九年も経った事から、ちんちくりんの幼女だったマデュラは、誰もが目を奪われる程の美女に成長している。

 背は低めだが、この世界の美女の例に漏れずスタイル抜群で、腰のあたりまで伸びた長い銀髪と、本人が好んでドレスタイプの服を着る事から、まるでどこぞのお姫様のようだ、と評判である。

 

 

 

 ただ、そんな見た目とお淑やかな仕草に反して大食いで、尚且つずぼらというダメ人間だったりするのが実情なのだが。

 

 

「ふ、船はきちんと発注してあるから……」

「賞金稼ぎのための、だろう。その上一人じゃとても動かせないような超大型船と見た」

「うっ」

「マデュちゃんの事だから、適当に人を雇って船を動かして、空いた部屋に捕まえた賞金首を放り投げておこう、という魂胆ではないかしら」

「ううっ」

 

 

 レイリーとシャッキーから鋭い指摘を受け、思わずたじろぐマデュラ。

 完全に二人が言った通りであり、特に仲間集めなどもしていなかったマデュラ一人では、近いうちにできる超大型船は絶対に動かせない。

 

 

「うう……助けてレイえもん……」

「レイえもん……? まったく、仕方のない子だ。まずは仲間集めから始めてはどうかね? 君ほどの名声があれば、ついて行きたがる者はすぐに見つかるだろう」

「いっそずっと賞金稼ぎとしてやっていくのもいいのではないかしら? 海賊になれば当然、海軍から追われるようになるわよ。マデュちゃんなら、初頭手配からいきなり10億ベリーとかついてもおかしくないし」

「まあ、そうだろうな。どうなんだ、そこのところは」

「うーん……まあ正直世界政府のお役人やら天竜人やらで嫌気が差してきた頃だし、やっぱり海賊になって自由に動き回る方が楽しそうかな」

「ふむ、そうか」

 

 

 ならばやはり仲間を集めねばな。

 ニッコリとレイリーからそう告げられたマデュラは、ぐう、と呻きながらもバーを出ていった。

 そして停泊していた海軍の軍艦をヒッチハイクし、賞金首を引き渡すから、という名目で海軍本部へ。

 

 辿り着いた海軍本部できちんと賞金首を引き渡した後は、賞金稼ぎをしているうちにできた伝手を辿って水夫を雇い、知人から大型船を半ば無理やりレンタルして新世界へ。

 

 

 そして──。

 

 

 

「私と海賊やりたい人、この指止まれ」

「「!?」」

 

 

 

 新世界の島々でそんな事を宣うマデュラに、激震する人々。

 当たり前だが新聞社の者にも聞かれていたりしたので、彼女の海賊宣言はあっという間に世界中に知れ渡った。

 

 

 それはさておき、レイリーが言った通り仲間はすぐに集まった。

 何せこの大海賊時代においては、腕に自信のある豪傑などはそこら中に居るのだ。

 世界的な有名人であるマデュラが募れば、海賊団を結成する程度の事は朝飯前なのである。

 

 

 そしてタイミング良く、発注していた超大型ガレオン船が完成し、業者から電伝虫で連絡が。

 マデュラは機嫌よく鼻歌を奏でながら新たな部下たちに命じて船を受け取りに行き、そこで「人質」という名目でこき使っていた水夫たち(新世界へ渡るために雇った人々である)とそれまで乗っていた船を解放。

 

 

 ピカピカの新品である超大型ガレオン船に乗り込み、ご機嫌なマデュラは……何を思ったか、凪の帯に侵入して偉大なる航路を逆走するという暴挙に出る。

 

 これには新しく仲間に加わった部下たちもびっくりである。

 

 

「ちょ、マデュラさん!? なんで逆走を!? そのまま新世界を航海していけばよかったじゃないすか!」

「だって、なんかズルいでしょ。ちゃんと偉大なる航路の外から活動を始めた海賊団に申し訳ない」

「ええ!? ていうか凪の帯はまずいですって! 海王類に狙われますよ!? そうなりゃいくらこのバカでかいガレオン船でも……」

「だいじょうぶ。私にビビって海王類は手を出してこないから。小船で確認済み」

「「えー……あ、ほんとに出てこない……」」

 

 

 マデュラ曰く、ズルはいけないとのこと。

 まあ、新たな仲間たちと苦難を共にして絆を深めたい、という思いが多分に含まれてはいるのだろうが。

 

 そんなこんなで凪の帯を突っ切り、偉大なる航路の前半へと戻ってきたマデュラ一味。

 ここから、彼女たちの物語が始まる。

 

 

「マデュラさん! 前方の島に海軍の船が大量に停泊してやすぜ! どうしやすか!?」

「お、全部潰して教えてあげよう。私が海賊になったんだって事を」

「「了解ッ!!」」

 

 

 

 尚、マデュラの摩訶不思議な動きを完全に見切っていたセンゴク元帥の采配により、海軍の艦隊との戦闘がいきなり勃発した模様。

 バスターコールもびっくりな、数多の中将を筆頭とした大艦隊ではあったが、島に上陸してしまったマデュラが変身し、あっという間に叩き潰された。

 

 

 軍艦も一つ残らず海の藻屑となり、被害額は相当なものとなった。

 これを聞いたセンゴク元帥は頭を抱え、すぐさま将校たちを招集して会議を開く。

 

 

 そして──。

 

 

 

「来た来た! 来ましたよマデュラさん! 新しい手配書の束っす!」

「お頭と呼べばかやろー。どれどれ……あった」

 

 

 世界最強の賞金稼ぎと名高かったマデュラが、突然まさかの海賊へ転身。

 堂々とニュースの一面を飾るその記事と共に、配られた手配書に書いてあったのは……。

 

 

 

 “蛇王龍”マデュラ、懸賞金8億ベリー。

 

 

 初頭手配とあって、マデュラの名声と実力に反してかなり低い金額だが、それでも世界的に異例な超高額の懸賞金である。

 センゴクとしては、最低でも10億はかけたかったのだが、海賊になったばかりのマデュラが仕出かした悪行と言えば、海軍の大艦隊を一瞬で海の藻屑にしたぐらいである。

 それ故に、この金額にまで抑えられる事となったのだ。

 

 

「おおおおお!! すげー! いきなり8億!」

「……むう、低い。たった8億ぽっちか」

 

 

 部下たちはいきなりの偉業……偉業? に騒いでいるが、当のマデュラ本人はものすごく不満げな顔である。

 賞金稼ぎとして100億ベリー以上も稼いできたマデュラは、少し金銭感覚が浮世離れしているのだ。

 

 

 そして、レイリーも頭を抱える問題児マデュラは、自らの懸賞金を引き上げるために、とんでもない大事件を起こす。

 

 

 

 この世の癌が蔓延る、聖地マリージョア。

 そこに巣食う寄生虫、天竜人を片っ端から捕らえて磔にし、見世物として世間にお出ししたのだ。

 尚、後日。見世物にされた天竜人は全員が首を切られて世界政府のトップである五老星の元に送り付けられた。

 

 まさに、天をも恐れぬ悪行。

 これには世界政府も重い腰を上げ、直属の諜報機関であるサイファーポール……通称“CP”を派遣し、海軍本部にも命じて海軍大将や王下七武海、および無数の将校たちを出させる。

 

 

 しかし。

 それこそがマデュラの本当の狙いであり、彼女率いる「蛇王海賊団」と「世界政府軍」が激突した大戦争……とは名ばかりの蹂躙は、後に“世界最後の日”とまで恐れられ、“蛇王龍”マデュラとその一味である「蛇王海賊団」の悪名は全世界に轟く。

 

 

 

 何故ならば。

 圧倒的な大軍勢を誇る世界政府軍が、実質マデュラたった一人に敗北したからだ。

 もっとも、天竜人を嫌う海軍大将たちや王下七武海の面々がまともに戦わなかったせいでもあるのだが。

 

 

 

 この一件の結果、マデュラの懸賞金はすぐさま大幅に引き上げられた。

 

 

 

 “蛇王龍”マデュラ、懸賞金──

 

 

 

 

 ──28億ベリー。

 

 

 

 かの海の皇帝、四皇に匹敵する程の超高額である。

 

 

 

「やったぜ。シャンクスに追いつけたかなあ?」

 

「お頭って可愛い顔してとんでもない事しますね」

「倫理観ってもんがぶっ飛んでらぁ」

「根っからの海賊なんだな」

 

 

 部下たちは地味に顔を引き攣らせているが、そもそも超存在である蛇王龍の化身たるマデュラは、人並みの倫理観なんてものはハナから持ち合わせていない。

 

 彼女からすると、他者は餌か友人かの二択しか存在しないのである。

 天竜人だろうが世界政府だろうが等しくただの餌であり、彼女の糧となるべきもの、としか思っていないというわけだ。

 

 

 

 そして、一年後。

 Dの名を持つ一人の青年が海に出た所から、時代は大きく動き出す。

 ついでに、マデュラも動き出す。世界逃げて。

 

 




懸賞金が馬鹿みたいに上がった理由:無数の天竜人を殺したので、天竜人の生き残りが「金ならいくらでも払うからどうにかするんだえ!」と泣き叫んだから。

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