蛇王龍、海賊になる。   作:初音MkIII

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なんかこう、スリラーバークって話を広げにくいですね……(:3_ヽ)_
巻きでいきますかねえ。


スリラーバーク④

 

 

 墓場からゾンビが出てきたり、森に奇妙な生物が出没したりと、果てしなく不気味な島……というか船、スリラーバーク。

 そこにぽつんと存在する館に入った蛇王海賊団の先行偵察隊は……。

 

 

「……誰もいないわね」

「しかし生活感はあるぞ! 恐らく我らの存在を察知して慌てて逃亡したのであろうな!」

「蟹野郎にしては鋭いな。いや、野生の勘か」

「……壁に絵画のようなものが立て掛けてあるが……おれにはわかる。あれらは全部ゾンビだ……」

「まあたしかに、絵にしちゃ悪趣味すぎる。全部斬るか?」

「んー……どの道リフォームしなきゃいけないし、この機会に一斉掃除しちゃいましょうか。気味が悪いし」

「「了解」」

 

((なんか腐れヤベー奴ら来たんですけどーー!? 助けてご主人様ー!!))

 

 

 館の出入口である大きなドアを蹴破って侵入した挙句、絵画や剥製などに偽装したびっくりゾンビたちをシバキ倒して回るラヴィたち。

 どう見ても野蛮人だが、海賊船に居座る連中を相手にお行儀よくしても意味が無い、との事。

 

 尚、ラヴィだけはやっぱり戦わない。

 下手に彼女が暴れると、スリラーバークそのものが沈没しかねないので仕方ないのだが。

 

 

 ……一分後。

 

 

「腐れ痛ェ……心が痛ェ……」

「ふむ。ゾンビというだけあってなかなかタフな奴らじゃないか」

「と言っても、もう動けないようであるがな! どうにかして影を抜かない限りは、また復活しかねんぞ!」

「とりあえず……一箇所にまとめておこう……」

「能力によるものだってんなら、海に捨てりゃいいんじゃねェか?」

「そうかもしれないな。なかなか冴えてるじゃないか、ゾロくん」

「ふん。海は能力者全てに共通する弱点だろうが」

「違いない。さて、ラヴィ船長代理。これからどうする?」

「ん、皆お疲れ様。そうねえ……とにかくモリアを見つけないといけないし……」

 

 

 いきなりボコボコにされた上に海に捨てられるとか、腐れひでェ!! おれたちが何をしたと!? と、内心で叫ぶびっくりゾンビたちだが、相手が悪かったとしか言いようがない。

 強いて言うなら、こんな時に限ってのんきに寝ているモリアが悪いのだ。無能な主人を持った己の不幸を呪うがいい。

 マデュラも寝てるじゃん、というツッコミは無粋である。

 

 

 それはさておき、“見聞色の覇気”でスリラーバーク全体の“声”を探すラヴィ。

 すると、すぐにお目当ての存在が見つかった。

 

 

「いた」

「あん? 何がだ」

「モリア。上の方で寝てるみたい。そのすぐ近くにも三人いるわね。幹部かしら?」

「ふむ、見聞色の覇気であるな! 船長代理の覇気は相変わらず異常なのである!」

「へェ……戦闘時だけじゃなく、そういう使い方もできるのか。覇気ってのは」

「勉強になるだろう、ゾロくん。マデュラ様はもちろん、総隊長以外の四龍王は覇気の扱いも群を抜いて上手いからね」

 

 

 マデュラが色々と規格外なので霞んでしまうが、ラヴィは生まれつき覇気を扱えた程の天才であり、その練度はかなりのものなのだ。

 尚、ナチュラルにハブられているガロアも、決して覇気の扱いが下手なわけではない。ちょっと劣るだけなのである。

 

 

「……登ってモリアを探すか?」

「そうね。モリアも部下に起こされるだろうし、準備万端で待ち受けてそうだけど」

「障害など叩き潰して進むだけなのである!」

「そうだな。恐らく、マデュラ様もそろそろ目覚める頃だろうし。今のうちに働いておかないと、すぐに終わってしまう」

「しかし、階段がありそうには見えねェぞ。隠し通路でもあるのか?」

「かもしれないわね。まずは怪しいところを適当に探してみましょうか。早くしないとマジでマデュラが起きてこっちに来ちゃうわ。その前にひと仕事終えないと、先生あたりに叱られちゃう」

 

 

 そんな感じで、びっくりゾンビたちを拘束した上で置き去りにし、館の捜索を始めたラヴィたち。

 一応中をぐるっと見て回るも、やはり階段はすぐに分かるような場所には無かった。

 

 ゾロが言った通り、どこかに隠し通路か何かがあり、重要なものはそちらにあるのだろう。

 

 

 瞬く間に一周して最初の広間へと戻り、首を傾げる一行。

 隠しというだけあって、なかなか見つからない。

 

 

 が、ハザクがある事に気が付く。

 

 

「……風が……こっちか?」

「ん、暖炉? まさかそんなベタな場所に隠し通路なんて……」

 

 

 

 ガコン、と動く暖炉の壁。

 ぬるりと壁の奥に消えるハザク。

 

 

「……あったわね」

「ベタな場所に、な」

「うるさいわねマリモ!! はっ倒すわよ!?」

「誰がマリモだコラァ!?」

「まあまあ二人とも落ち着くのである! そんな事よりさっさと進もうではないか!」

「その通りだよ。私は先に行くとしようかな」

 

 

 口喧嘩を始めようとするラヴィとゾロ。

 豪快に笑いながらも、それを宥めるガオレン。

 さっさと隠し通路へと消えるシャンロン。

 

 尚、ラヴィにはっ倒されたら、いかにタフなゾロと言えど普通に死ぬ。

 彼は綱渡りをして命のやり取りを楽しむ趣味でもあるのだろうか。

 ゾロ、ドM疑惑。

 

 

「うむ、ワガハイも先に行っているのである!! マデュラ様に怒られても知らぬからな! ガハハッ!」

「「サラッと恐ろしい事言っていくな!」」

 

 

 ギャーギャー騒いでいたラヴィとゾロだが、ガオレンが隠し通路に消えながらも言い放った言葉に我に返る。

 喧嘩に夢中でモリアを見つけられませんでした、と報告してみろ。温厚で仲間想い(笑)だと名高いマデュラちゃんもぷんぷんして怒りの鉄拳を繰り出す事は間違いない。

 

 そうなったらラヴィでも死ぬかもしれないし、ゾロに至っては粉々になりかねない。

 

 

 結果、二人も慌てて仲良く隠し通路に消えていった。

 

 

 

 それを最後まで見ていたびっくりゾンビたちは……。

 

 

「ご主人様たち、大丈夫かなあ」

「いやいや普通に腐れヤベーから。ああ、おれたち浄化されちまうのかなあ……」

「でもまだあいつらゾンビの弱点を……」

「海に捨てるとか言ってたじゃん。塩とかもう腐れ関係ねェじゃん」

「だよなぁ。とりあえず寝とくか」

「……そうだな」

 

 

 完全に人生……いや、ゾンビ生を諦め、殉教者のような面持ちで安らかに眠りについた。

 もしもモリアではなく善人がカゲカゲの能力者だったなら、表社会で懸命に奉仕するゾンビたち、という平和な光景も見られたのかもしれない──。

 

 

 

 ──そして、蛇王海賊艦隊、旗艦にて。

 

 

 

「んぁ? あー、よく寝た」

「……あ、マデュラちゃま。おきた?」

「うん、起きた。ちょっと退いてくれる?」

「はーい」

 

 

 

 遂に、マデュラが目覚めた。

 奇しくも全く同じタイミングで、スリラーバークでもモリアが目覚めていたりするが、それは置いておく。

 

 

 ガチャリと私室のドアが開き、ジーヴァに引っ付かれながらマデュラが起きてきた事に気が付くクルーたち。

 すぐさまほぼ全員が跪き、挨拶する。

 

 

「「おはようございます、マデュラ船長!!」」

「ん、おはよぉ。なんか暗いけど、どういう状況?」

「……起きたか、マデュラ。現在我が艦隊は“魔の三角地帯”にいる。で、ラヴィたちは先んじて──」

「ふむ、ふむふむ」

 

 

 フィロアの説明を受け、理解する。

 そしてマデュラは大きな欠伸を一つこぼし……。

 

 

「ところでそのイカした骸骨は何者?」

 

(いいな、ブルック! 何度も言った通り、死にたくなければマデュラ様には絶対にセクハラするな! この海域ごと吹き飛ばされるぞ!!)

(わ、わかりましたぁ!!)

 

 

 凄まじい存在感を放つノッポのアフロ骸骨、ブルックに目を遣った。

 

 

 セクハラしないように釘を刺すガロアと、まだ死にたくないので激しく頷くブルック。

 どうでもいいけど早く返事しないと機嫌損ねるぞ。

 

 

「ヨホホホホ!! 申し遅れました、私死んで骨だけブルックと申します! あ、この姿は“ヨミヨミの実”で死んで白骨化した後に蘇ったからでして」

「ふーん。で、なんで私の船に上がり込んでるの?」

「あ、そ、それはですね……えーと……」

 

 

 

 ヒィィィ!!

 なんかこの人、すごい可愛いけど威圧感もすごくてコワイィィ!! と怯えるブルック。

 それはマデュラが寝起きだからである。

 普段はもう少し愛想がいいのだ。

 

 

「なんで言い淀むのかな? ねえ」

「ま、待てマデュラ。ブルックが怯えている」

「黙ってろフィロア。本人の口から聞きたい」

「ぐぬ……そうか……」

 

 

 慌ててフィロアが割って入るも、秒殺された。

 役に立たない奴だ。

 

 

 あわあわ言いながらも。

 男ブルック、腹を括る。

 

 

 

「ラヴィさんとジーヴァちゃんに気に入られまして。モリアに奪われた私の影を取り戻してくれる、と約束して下さったのです。当然私も共に行きたかったのですが、あなたが気に入りそうだからお前留守な、と言い渡された次第で……」

「……ふーん。ジーヴァ、本当?」

「あい。ラヴィちゃまはこわがってたけど、おはなししてるうちにがいこつしゃんをきにいったみたい」

「ふーん」

 

 

 

 あれ、なんか反応薄い。

 ブルック自身を含め、クルーたちの背中に冷たい汗が流れる。

 もっとこう、「動く骸骨!? 面白ーい!」と食いつくのでは、と思っていたのだが。

 

 

「……ねえ」

「は、はい?」

「なんで、アフロなの?」

 

「…………はい??」

((ん??))

 

 

 

 マデュラちゃん、真顔でどうでもいい質問を放つ。

 

 

 思わず固まるブルックたち。

 幼女のジーヴァまで首を傾げて停止している。

 

 

 

 しかしまあ、その問いに対する答えは一つである。

 

 

「毛根強かったんです」

 

 

 

 キッパリと。

 ブルックは、そう断言した。

 

 

 

「…………」

「…………」

 

 

 

 真顔のまま黙るマデュラ。

 なんとか言葉を探すブルック。

 固唾を呑んで見守るクルーたち。ジーヴァも含む。

 

 

 

 

 

 しばらく沈黙が続き……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぷっ……あはははっ!! そう、毛根が強かったからアフロなんだ!? あはは、面白ーい! うん! 気に入った! このままウチにいていいよー」

「……あ、ありがとうございます……」

 

 

 

 打って変わって大笑いするマデュラ。

 力が抜けてしまい、床にへばりつくブルック。

 

 周囲を見れば、クルーたちもホッと息を吐いている。

 

 

 

 一時はどうなる事かと思われたが、なんとかブルックは無事マデュラに気に入られたのであった。

 

 

 後にブルックは語る。

 

 

 あの圧迫面接は二度としたくない。本気で殺されてしまうんじゃないかと思いました、と。




次回か次々回ぐらいでスリラーバーク編終わるかもしれません。
オーズ出せないかも……。

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