蛇王龍、海賊になる。   作:初音MkIII

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ドラゴンの懸賞金って、実際いくらなんだろう。
四皇と同じくらいなんですかね?
でもなんか、革命軍ってあんまり強いイメージが無いというか……。


スリラーバーク⑦ 

 

 

 

 影をゲ……もとい頭文字“G”の如く吐き出すモリア。

 あまりにも巨大な怪物、ラヴィに対して必死の抵抗を見せていた彼も、とうとう限界を迎えたのだ。

 

 仲間のため、男らしく奮闘したモリアだが、肝心のペローナたちが既にくまによって消されていると知れば、どう思うのだろうか。

 

 

 そして、遂に──。

 

 

「これで、ラストッ!!」

「ぐぅ……ち、ちくしょう……!!」

 

 

 ぐいん、と頭を引き絞られた矢のように構え、トドメの一撃をお見舞いしようとするラヴィ。

 苦しみながらも、悔しげにそれを見ているしかできないモリア。

 

 

 ここに、そう長くはない決闘の幕が下りようとした、その瞬間。

 

 

 

 バリバリバリバリィ!! と、まるで雷が落ちたかのような轟音が響いた。

 

 

 

 無論、落雷ではない。

 

 

 

 落雷ではなく、“覇王色の覇気”が激突した証である。

 

 

 

 空を見上げれば、天が割れている様が目に入っただろうが、驚愕し目を見開くラヴィとモリアに、そんな余裕はない。

 

 

 ラヴィの強烈な一撃を防いだのは、他の誰でもない。

 蛇王海賊団船長、マデュラその人であった。

 しかも、彼女は人型のまま、何てことの無い表情でラヴィの攻撃を受け止めている。

 

 

「やっ、おつかれ」

「……あ、お、おつかれ? ってそうじゃないわよ! どうして止めたの、マデュラ!」

「やや、一応勧誘をね」

「はぁ!?」

「あァ……!? 何を……言って、やがんだ……てめェ……! 勝手に人様の船に上がり込んで暴れ回った挙句、勧誘だとォ……!?」

 

 

 抑えられた頭を懸命に動かそうとするラヴィだが、ビクともしない。

 なんという怪力。

 これには遠くで見守っていたゾロもビックリだ。

 

 

 やがて、観念したラヴィは大人しく変身を解き、美しい人型に戻ってため息を吐いた。

 船長がそう望むのであれば仕方がない。

 

「頭離しなさいよ、バカマデュラ」

「んぅ? やだ。自力で抜け出してみろー」

「なにおぅ!? ……ぐぎぎ……ま、マジで全っ然動かせないし……!! ちょ、痛い痛いイタタタ!? 頭が潰れるぅーーー!!」

「なはは」

「笑ってないで離してェ!! 潰れる!! タマゴみたいにパキャッといっちゃうー!!」

「ほい」

「……ふおぉ~……!! めっちゃ痛ぁい!!」

 

 

 何とか解放されたものの、あまりの激痛に頭を両手で抱えてのたうち回るラヴィ。

 冗談抜きで死ぬかと思った。

 

 

 そんなラヴィを放置し、下手人たるマデュラは改めてモリアに向き直る。

 影をすっかり吐き出したらっきょうはすっかり縮んで元のサイズに戻ってはいるが、それでもマデュラよりも遥かにデカいので、必然的にマデュラがモリアを見上げる形となる。

 

 

「…………蛇王龍、てめェ」

「さて、モリ……モリ……らっきょうさん」

「諦めんな! モリアだッ!!」

「そうそれ。らっきょうさん」

「……野郎ォ……!」

 

 

 どうやらマデュラはモリアの名前を忘れてしまったらしい。

 モリ、から先が出てこないようで、何度も可愛らしく小首を傾げていた。

 

 しかし、本人から名前を教えられても「らっきょう」呼ばわりなので、もしかしたら挑発しているのかもしれないし、ただの天然なのかもしれない。

 当然、頭にきたモリアは、ぜぇぜぇと息を切らしながらもプルプルと震える。

 

 

「らっきょうさん。私の仲間にならない?」

「ふざけた事抜かすんじゃねェよ!! 断るッ!!」

「なんで? 断るなら殺しちゃうよ?」

「ハッ……! 真の海賊にゃ“死”でさえも脅しにゃならねえ!! よーく覚えとけ、小娘ェ!!」

「ふーん……じゃあいいや。別に君自体はそんなに欲しいわけじゃないし」

「チッ、どこまでもふざけた野郎だ……」

 

 

 悪態をつきながらも、観念し、それでもマデュラを睨みつける事だけはやめない。

 そんなモリアをろくに見もせず、その辺に転がっていた小さな石ころを拾い出すマデュラ。

 

 そして、ジャラジャラと音を立てる小石たちを、軽く……軽~く、モリアに向かって投げた。

 

 

「がっは……!?」

「果物果物っと。ラヴィ、いつまでものたうち回ってないでこっちおいでよ」

「誰のせいだと思ってんのよ!? あいたた……」

 

 

 

 小石が、散弾銃もびっくりの超スピードでモリアの全身を貫き、彼の身体中に穴を開けた。

 

 マデュラにとっての「石ころ遊び」が、常人にとっては凶悪極まりない兵器となる。

 要は、海軍の英雄ガープ中将が生身で砲弾を撃つようなものだ。

 

 

 

 王下七武海の一人にして、かつては四皇の一人“カイドウ”と競い合った事もあるという大海賊ゲッコー・モリアは、こうして呆気なくこの世から去ったのだった。

 

 

 

 そして、モリアが死んだ事により、彼の身に宿っていた“悪魔”が抜け出し、マデュラがどこからともなく取り出した果物に取り憑く。

 

 新たな“カゲカゲの実”の誕生である。

 

 

「うーん……何度見ても不思議よねえ、悪魔の実って」

「だねえ。いつから存在して、どこから来たんだろう。ねえ、お前は知ってる?」

 

 

 

 マデュラが言葉を投げかけた先で、影が動く。

 尚、影と言ってもカゲカゲ的な意味ではない。

 

 

 暗い闇からぬっと姿を現したのは──。

 

 

「やはり、バレていたか」

「うん」

「そりゃね。えっと、王下七武海の……バーソロミュー・くま、よね?」

「そうだ。蛇王龍に、大巌竜。初めに言っておくが、おれはお前たちと戦いに来たわけではない。そもそも、王下七武海というのはおれにとって仮の身分に過ぎないからな」

「ふーん」

「……仮? というと、本命は別って事よね。一番怪しいのは、革命軍が送り込んだスパイって所かしら」

「……よく分かったな。その通りだ」

「なんだ。何の面白みも無いわね」

「ねー。実は白ひげんとこの隊長でしたー! って方が面白かったのに」

「そ、そうか」

 

 

 

 王下七武海という仮初の地位に座る、革命軍幹部。

 バーソロミュー・くまであった。

 

 おまけにあっさりとラヴィに正体がバレた。

 

 

 王下七武海の一角が実は革命軍の幹部だった! というのは結構驚くべき事実のはずだが、蛇王龍と大巌竜は全く驚いた様子がない。

 それどころか、あからさまにガッカリしている。

 

 

 しかし、一応話を聞いてくれるようなので、一安心である。

 この二人に問答無用で襲いかかって来られたら、いくらくまでも死ぬしかない。

 

 内心で、とんでもない役目を押し付けてきたドラゴンに恨み言を呟く、くま。

 自由奔放な蛇王海賊団を数分とはいえ足止めしておけとか、明日の天気を告げるような態度で命令するべきではないだろう。

 

 

「で、革命軍のくまさんが何の用?」

「まぁ待て。こちらにおれたちのトップ、革命軍総司令官ドラゴンが向かっている。もうじき着くはずだ。話は彼から聞いてほしい」

「ドラゴン……世界政府ですら大した情報を掴めていないという“謎の男”ね」

「わかった。三分間待ってやる。それまでに来なかったら、くまさん罰ゲームね」

 

「!?」

 

 

 

 早く来いドラゴン!!

 間に合わなくなってもしらんぞーーッ!!

 

 

 それが、くまの嘘偽りない本音である。

 蛇王龍からの罰ゲームとか命が危ない気しかしないので、かなり切実なお願いだ。

 ドラゴン、早くきて。

 

 

 

 その後、くまの手に“肉球”がある事に気付いたマデュラが大変興味を示したおかげで、何とか地獄の三分間を乗り切ることができた。

 

 

 瞳を輝かせたマデュラに、ひたすら肉球をぷにぷにされるという、くまの身を切った時間稼ぎが功を奏したのだ。

 

 

 あまりにも馬鹿力すぎて、普通に痛かった──。

 

 

「ふぇへへ、肉球……ぷにぷにだぁ……!」

 

「…………」

「やめて、困り果てた顔でこっち見ないで。それよりなんか、“嵐”が近付いてきてるみたいなんだけど……?」

「む、来たか。それは恐らく、ドラゴンが能力を使って移動しているせいだ」

「……へえ。嵐を操る男って噂、マジだったのね」

 

 

 ひたすらぷにるマデュラ。

 ひたすらぷにられるくま。

 目を逸らすラヴィ。

 

 

 

 そんな三人の元に、“嵐”が舞い降りる……。

 

 

 

 ちなみに、カゲカゲの実と化した果物は、マデュラが夢中でぷにっている間に現れたクックが回収し、艦隊の旗艦へと既に運ばれている。

 ついでに、ラヴィの指示によってスリラーバーク全体を多くのクルーたちが改めて調査しており、蛇王海賊団はマデュラとラヴィ以外割と大忙しである。

 

 

 

「──龍の気配がする」

「! 分かるのか……!?」

「ラヴィ」

「ん。なかなか面白い事になってきたわね」

 

 

 夢中でぷにっていたマデュラが突如として顔を上げ、真剣な表情で空を見上げる。

 くまはそれに驚愕し、ラヴィも同様に空を見上げている。

 

 

 

「カッコイイ……! あの龍、欲しい!!」

「!? いや、それは困る!!」

「ふーん……これは驚いたわね。革命軍の総司令官殿が、まさか龍の能力者だったなんて」

 

 

 

 マデュラちゃん、おおはしゃぎ。

 彼女が口走った事に驚き、思わず二度見するくま。

 

 ……“蛇王龍”マデュラは、それはもうキラッキラの笑顔を貼り付けており、とてつもなくウキウキしていると、くっきりはっきり分かる。

 

 

 そして。

 

 

「なっ……待て!!」

「あ、行っちゃった」

 

 

 

 

 空へ、ぴょーん!!

 と叫びながら。

 

 

 マデュラは、嵐を司る龍こと、革命軍総司令官モンキー・D・ドラゴン(アマツマガツチ形態)の元へと飛び上がっていった。

 

 

 

 慌てるくま。

 おー、と呑気に腕を組んでいるラヴィ。

 

 

 

 ちょっ、いきなり蛇王龍が飛んでくるとか聞いてないんですけど!? とばかりに仰け反るドラゴン。

 

 

 

「ふぉー!! カッコイイ、カッコイイ!! ねえねえ、あなたはどんな事ができるの!? ちょっと私に見せてよ!!」

「待て! おれは革命軍総司令官、モンキー・D・ドラゴン! お前と少し話をしに来ただけだ! 戦闘の意思はない!!」

「まずは力を見せてくれないとー!! ダメなの!」

 

 

 マデュラちゃん、テンションがキマりすぎて蛇王龍へと変身。

 マジかよお前、と慌てるくま&ドラゴン。

 ドラゴンに至っては「くまが何かやらかしたんじゃないだろうな!?」と疑い始めた。

 

 

 蛇王龍の巨体が「ごっすぅんッ!!」と着地。

 揺れるスリラーバーク。

 船の各地で目を丸くする蛇王海賊団クルー。

 

 

 

 一瞬にして場がカオスと化した。

 

 

 

 

「げっ、あのバカ!! この船を海域ごと消し飛ばすつもりじゃないでしょうね!?」

「まずいことになった……! まさか、ドラゴンが蛇王龍と戦闘になるとは……!! 大巌竜、彼女をなんとか止められないのか?」

「言われなくても止めるわよ!! この船はもうアタシたちの物だってのに、あの子に沈められちゃたまらないわ!!」

 

 

 そんな感じで、マデュラを止めるためラヴィも変身。

 その巨体を旗艦から確認したフィロアもまた、マデュラの暴走が始まった事を察し、変身。大急ぎで現場に急行中だ。

 

 

 

「うがーー!! 邪魔するな、ラヴィ!!」

「お黙りなさいバカキング!! せっかく奪った船が消えてなくなっちゃうでしょ!!」

「でもあの龍の力見たいんだもん!!」

「ぬぐぐ……相変わらずの馬鹿力めぇ……!! ちょっと、ドラゴンとやら! 死にたくなければアンタも手伝いなさい!!」

「わ、わかった!」

 

 

 激突する蛇王龍と大巌竜。

 人間の中ではかなりの巨体であるくまが豆粒に見える程の巨体が、凄まじい轟音を立ててぶつかり、力負けしたラヴィがものすごい勢いで押されていく。

 

 ついでにスリラーバーク中が大地震に見舞われる。

 

 

 空高く飛び上がった嵐龍……革命軍の方のドラゴンもまた、死にたくないので必死にラヴィを援護する。

 蛇王龍がこれほどまでの暴走列車だったのは、ドラゴンにとっても誤算である。

 

 というかまさか自分の龍形態を見て我を失う程ハイテンションになるとは思わなかった。

 

 

 

「なるほど、なるほど!! 嵐を司る龍の力で、超高圧の水流をまるで刃物みたいに自在に操る!! 面白い、とても面白いね!! もっと、もっと見せてよ!!」

「うぐぐぐぅ……!! アタシだけじゃ、きっつ!」

「なんなのだ、この硬さは!? ブレスが全く効いている感じがしないぞ!」

「そういう、奴なのよっ!! ガァッ!!」

 

 

 

 ゴリゴリゴリッと、地面を削りながら押されていくラヴィは、起死回生のブレスを放つ。

 まるで太陽を思わせる超高温の巨大な球体が飛び、ハイテンションに空を見上げるマデュラに近付いて行く。

 

 くまも地味にさっきからずっと、地震の揺れに耐えながらも“つっぱり圧力砲”という技でマデュラを攻撃しているが、焼け石に水である。

 

 

 

「あはは、ラヴィもやっぱり強いよねー! カッ!」

「うおぉ、あぶねええええ!?」

 

 

 

 が。

 

 

 

 マデュラが放った青く巨大なブレスによって球体はかき消され、必殺の一撃がそのままラヴィに向かって飛んでくる。

 慌てて変身を解除し、ブレスを回避。

 ブレスはそのままどこかへ消え去り、たまたま同じ方角に存在した不運な島をすぱーんと消し飛ばし、その島周辺の海水が「じゅっ!」と蒸発した。

 きっと世界全体の水位も少し下がった事だろう。

 

 

 食らっていれば、いくらラヴィでも普通に即死である。

 

 

 文句を言おうとマデュラを見上げるラヴィ。

 そして、彼女はそのまま停止した。

 だらだらと、冷や汗を滝のように流しながら。

 

 

 何故ならば──。

 

 

 

「降りてきなさいドラゴン!! 死ぬわよッ!!」

「!? なっ──」

 

 

 

 凄まじい数の隕石……正しくは、マデュラが操る“凶星”の大群が、空から降ってきていたからである。

 

 

 

 

 やべぇ、これ死んだかも。

 

 思わず笑顔になるラヴィ。

 慌てて地面に降りてきたドラゴン。

 

 

 

「……“魂鎖の氷獄”」

 

 

 

 

 

 パキン、と。

 

 

 

 全ての凶星が凍り、続いて空を覆った煉獄の炎により、それらの凶星全てが消滅した。

 

 

 

 

「……まったく、マデュラの奴め……悪い癖だな」

「ふ……ふくせんちょぉぉ!!」

「……アレが、蛇王海賊団の……」

 

 

 

 蛇王海賊団副船長、フィロア(龍形態)。

 “蛇王龍”マデュラの暴走を止めるため、ようやく参戦。

 ──おせーよ、とちょっと文句を言いたくなったラヴィなのだった。





おかしいな……ドラゴンとの大事なお話に突入する前に、マデュラが暴走しちゃったぞ……。

くまとドラゴンはとんだとばっちり。

……今こそ、巨大船スリラーバークの耐久力が試される時……!!
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