蛇王龍、海賊になる。   作:初音MkIII

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待 た せ た な ッ !!
少し早いクリスマスだ!
ポケモンやったりしててすごく遅れました。

年末年始も休み無しなんで、書けるうちに書いとかないと更新がどんどん遠のいちゃうんですよね……。
年中通して連休も存在しないし、なかなか辛い。
クリスマス? 当然仕事です。


スリラーバーク⑧ 完

 

 

 今は亡き大海賊、ゲッコー・モリアが誇った世界一巨大な海賊船、スリラーバーク。

 そこで何故か巻き起こった怪獣大戦争は、しかしあまりにも突然に終わりを迎えた。

 

 

 革命軍最高司令官、ドラゴンが龍の能力者だった事が判明し、その力を確かめる為に暴れ始めた“蛇王龍”が、自らの右腕であるフィロアまでもが自身を止めに来たのを見て、あっさりと動きを止めたのである。

 

 

「止ま……った……?」

「みたい、ね……ふぅぅぅ……死ぬかと思ったぁ」

「それはこちらのセリフだ……。ドラゴン、よくもこんな任務に駆り出してくれたな」

「すまん、くま。おれも予想外だった」

「うちのバカ船長が迷惑をかけたな。代わりに謝罪させて欲しい」

「……ああ」

 

 しゅるるる、と縮んでいく蛇王龍。

 それを確認し、人型に戻って深くため息を吐くドラゴンたち。

 

 と見せかけて奇襲!!

 

 

 

 なんて事をする程、マデュラもアホではないだろう。

 たぶん、きっと。

 

 

 

 その場に座り込むドラゴンたちの元に、腹が立つ程ゴキゲンに笑うマデュラが近付いてくる。

 無論、彼女も既に能力を完全に解いており、いつもの可愛らしい人間形態だ。

 

 

 

「やー、まさかこんなところで同胞に出会えるなんて思ってもみなかった! えっと、バラガン?」

「ドラゴンだ。誰だその老人臭い名前は」

「そうそう、ドラゴン!! ねえ、あの龍のことなんて呼んでるの?」

「……アマツマガツチ。大昔にそう名付けた者が居たらしい。かつての能力者あたりだろうがな」

「ふーん、カッコイイ名前だね! お前、うちに入らない?」

「すまんが断る。おれにはやるべき事があるんだ」

「えー」

「えーじゃない。早速、それに関連する話をしたいんだが、いいか?」

「わかったー! んふふ、今の私はとっても機嫌がいいんだ! 何でも話してみるがいいよ!」

 

 

 疲労のあまりすっかり老け込んだドラゴンに対して、散々暴れ回ったはずのマデュラはやけに元気であり、心做しか肌もツヤツヤしているように見える。

 龍の能力者を見つけた事がそんなに嬉しいのだろうか。

 

 

 何はともあれ、これでようやく本題に入れる。

 

 

 

 ……なんでちょっと話し合いするだけなのにこんなに苦労しているんだろう? と、ドラゴンやくまが思ってしまうのも無理はない。

 

 

 

「単刀直入に言う。おれたち革命軍の準備が整い、然るべき舞台である“世界会議(レヴェリー)”が開催される二年後まで、世界政府を滅ぼさないでくれ」

 

 

 ズバッと簡潔に。

 とんでもない気分屋であるマデュラの機嫌を損ねない内に、ドラゴンは言い放った。

 

 その言葉を聞き、咀嚼し、首を傾げるマデュラ。

 地べたに座り、だらーんと足を投げ出していたラヴィや、マデュラがまた暴れてもすぐに対応できるように目を光らせていたフィロアも、同じように首を傾げている。

 

 

「……なんで?」

「確かに世界政府はいずれ倒さなくてはならない。だが、それは今ではないんだ。我々が世界中の国々に撒いた“種”が芽吹き、民衆が立ち上がったその時になってからじゃないとな」

「ふーん。断る。私、そういう何かに縛られるのって大嫌いなんだよね。それだけ?」

「……いや。話はまだ終わりではない」

「ふーん?」

 

 

 言葉を尽くして説得するドラゴンだったが、マデュラから返ってきたのはあまりにも無慈悲なお断りの一言。しかし、そう来るのは予想通りである。

 

 

 ここからが、本番だ。

 全てはここで決まる。

 

 

 

 深呼吸し、気持ちを落ち着かせるドラゴン。

 そして、彼は語り始める。

 

 

 マデュラならば絶対に興味を示すであろう、とっておきの切り札を。

 

 

「蛇王龍。世界政府の頂点が誰か、知っているか?」

「ん? えーと、確か昔海軍の元帥をやってた人が今は世界政府の全軍総帥とかいうのをやってて、更にその上に“五老星”ってのがいる……だっけ。ねえ、ラヴィ?」

「ええ、そうね。実は不老不死だっていう噂もあるぐらい、得体の知れない老人たちよ」

「……だが、五老星すらも従える真の支配者と言える存在が居る。そいつが世界政府の頂点だ」

「……へえ?」

 

 

 

 やはり、食いついた。

 

 

 

 マデュラの目の色が変わった事を察し、ニヤリと口角を上げるドラゴン。

 しかし、本当の“とっておき”はここからである。

 

 

 

「だが、そいつがどこに居るのかは五老星しか知らない。そして、五老星の連中は、たとえ拷問されても決して口を割らないだろう」

「…………続けて」

「だからこそ、世界中の民衆を導いて“革命”を起こし、そいつを表舞台に引っ張り出す必要があるんだ」

「…………」

 

 

 まだ、まだ弱い。

 この程度ではまだ足りない。

 

 

「そいつを無視して世界政府をぶっ壊しちゃえばいいじゃん」

「……黒龍」

 

 

 

「!?」

 

「「?」」

 

 

 

 ここで、初めてマデュラが目に見えて驚愕した。

 大胆不敵にして傍若無人な、あのマデュラがだ。

 

 

 

 黒龍という、その言葉。

 

 

「やはり、お前は知っているんだな。黒龍伝説を」

「……数多の飛竜を駆逐せし時、伝説は蘇らん。

数多の肉を裂き、骨を砕き、血を啜った時。

彼の者はあらわれん──。

……私が育った島に、石碑があった」

「その続きはどうだ?」

「知ってる」

「それが龍の始祖だという事は?」

「……知ってる」

「龍の始祖!?」

「そんな存在が……!!」

 

 

 二人の邪魔にならないように黙っていたラヴィとフィロアが、驚きのあまり声を出した。

 あのマデュラが、これまでに見たこともないような表情をしている事もまた、驚きを強くする。

 

 

「今その話をしたって事は……」

「──ああ」

 

 

 

 

 マデュラは、ラヴィですらも思わず悲鳴を上げてしまう程に、恐ろしい笑みを浮かべていた。

 

 

 

 それ即ち、この上ない歓喜。

 伝説への挑戦という、最高の大冒険。

 

 

 

 

 

 

「──世界政府の頂点は、黒龍伝説で謳われている存在の中でも最上級の龍。“祖龍”ミラボレアスだ」

「……!!」

 

 

 

数多の飛竜を駆逐せし時

伝説は蘇らん

数多の肉を裂き 骨を砕き 血を啜った時

彼の者はあらわれん

土を焼く者

鉄を溶かす者

水を煮立たす者

風を起こす者

木を薙ぐ者

炎を生み出す者

その者の名は ミラボレアス

その者の名は 宿命の戦い

その者の名は 避けられぬ死

喉あらば叫べ

耳あらば聞け

心あらば祈れ

ミラボレアス

天と地とを覆い尽くす

彼の者の名を

天と地とを覆い尽くす

彼の者の名を

彼の者の名を

 

 

 

  御伽噺 『黒龍伝説』より

 

 

 

 

 ──そして、蛇王龍マデュラは二年後の来るべき時まで世界政府そのものを滅ぼす事だけはしない、と確約するに至った。

 

 ……世界政府の3大機関を破壊しないとは言っていないが。

 

 

 それだけでなく──。

 

 

 

「気に入った。ドラゴン、お前ら革命軍と同盟を組んでやろー。力が必要な時はいつでも呼べ」

「それは助かるが……くれぐれも暴走はしないでくれよ。こちらにも段取りというものがあるのでな」

「わかった。その代わり、絶対、ぜぇーったい! ミラボレアスと戦わせろよ? 実は世界政府のトップが普通の人間でした! なんて事があれば、許さないぞ」

「あ、ああ。もちろんだ……」

 

 

「……おい、ドラゴン。大丈夫なのか……?」

「…………たぶん」

「おい」

 

 

「あははははッ!! 二年後、二年後かぁー! 楽しみだなぁ! 伝説の龍……どれぐらい強いんだろう!?」

「そうだな……最低でも世界を滅ぼす程度の力は持っていてもらわないと、張り合いがない」

「ええ、そうね! これはますます、アイスバーグ氏とフランキーには船作り頑張ってもらわないと!!」

「そうだね! 私たちが本気で暴れてもビクともしないような、そんな夢の船を注文しちゃうぞー!!」

 

 

 

 めちゃくちゃはしゃぐマデュラたち。

 それを見て、ちょっと顔を青くするドラゴン。

 万が一自分の言葉が間違っていた場合、何が起こってしまうのか、わかったものではない。

 

 

 

 

 ついでに。

 後日スリラーバークに乗ってウォーターセブンに現れたマデュラたちからの無茶苦茶すぎる注文に、アイスバーグたちガレーラカンパニーや、フランキーたちが顔を真っ青にしてぶっ倒れそうになったとか。

 

 

 果たして彼らは、二年という納期に間に合わせる事ができるのだろうか……。




そういうわけで、グダらないように巻きでスリラーバーク編完結。

ラスボスはミラルーツ(イム様)となりました。
世界大丈夫? ぶっ壊れない?

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