シャボンディ諸島編は、前話より時間を戻し、何がどうなってああなったのかを見ていく流れになります。
観客気分でポップコーン片手に楽しむといいと思うよ。
何らかの原因で激怒したマデュラにより、物理的に真っ二つにされてしまったシャボンディ諸島。
これでも友人であるレイリーがいるのでかなり抑えてはいるのだが、何故こうなってしまったのかを見ていくとしよう。
とりあえず、蛇王海賊団が未だ海の上を漂っていた時間にまで遡る──。
「お、おおォォォ……!! そうですか、彼はまだ元気に……!」
「…………」
のっけから、大号泣する人骨。
その名はブルック。
彼は、自分とかつての仲間たちが五十年も前に偉大なる航路の入口に置いてきた、アイランドクジラのラブーンが未だ健気に自分たちを待ち続けているという事実をゾロから聞き、こうなった次第である。
ラブーンを置いてきた理由と、とうの昔に全滅してしまった“ルンバー海賊団”のエピソードもばっちり聞いていた蛇王海賊団のクルーたち……特に、元天竜人のくせに情が厚いラヴィも一緒になってボロ泣きしている。
かける言葉もなく、黙るゾロ。
号泣する人骨。
もらい泣きするラヴィ。
そして、全く興味が湧かなかったため、ブルックが「かつて私が所属していた海賊団は全滅した」という話を始めた辺りから見事に爆睡していたマデュラ。
「って、オイ!! 空気読めよてめェ!!」
「……んぅ? はー、よく寝た。話は終わった?」
「お前な……!」
「ぐすん……やめなさいゾロ……。マデュラは人の心が分からないの。かわいそうに……」
「あれ? なんか貶されてる?」
あまりにもあんまりなマデュラに、思わず鋭いツッコミを入れるゾロ。
戦いにしか興味が無い無愛想なマリモに見える彼だが、これでいて一応人並みに良心というものも持ち合わせているのだ。
ついでにサラッと便乗するラヴィ。
まぁそれはさておき。
「で、ブルック。お前どうするの? ウチに入りたいっていうなら一応歓迎するし、鍛えてもあげるけど。アフロな骸骨って面白いし」
「それは……ええ。正直に申しますとすぐにラブーンの元へ飛んでいきたいという気持ちもありますが、このままではあまりにも情けない……!! もっと強くなって、冒険をして、改めて伝えたいです!」
ゾロとラヴィの抗議を無視し、退屈そうに聞いてくるマデュラを目にし、思わず涙が引っ込んだブルック。
しかし、再び心を燃やし、空に叫ぶ。
遠い遠い、しかし同じ空の下にいる友に。
ラブーンに、届くように。
「──私はここにいる、と!!」
一人の男の決意。
ガヤガヤ騒いでいたゾロも、それを見て静まり。
ラヴィもまた、頼もしい仲間が増えた事に微笑む。
「そっか。じゃあこれからよろしくね、ブルック」
「あ、はい。よろしくお願いします……」
が、熱い決意を聞いても尚退屈そうにしているマデュラに、思わずモンスターズ以外のクルーたちがずっこけた。
つまり、ゾロとラヴィも含める。
「──取り込み中失礼。マデュラちゃん、そろそろシャボンディ諸島が見えてくるんじゃないかい?」
「あっ!! そうだね!! うーん、楽しみだなぁ! レイリーとシャッキーに会うのっていつぶりだっけ」
「ほら、皆もボーッとしていないで持ち場に戻りなさい。上陸の準備をするんだ」
「「う、ウッス!!」」
妙な空気をぶった切るクックの言葉にパァッと顔を明るくし、ルンルン気分で海を眺めに行くマデュラ。
その後をトコトコとついて行きながら、指示を下すクック。
それを見て、残されたゾロとブルックは顔を見合わせて共に苦笑いし、作業を手伝うため移動していった。
「さて、と。そんじゃあアタシも……」
「待て、ラヴィ。ゾラとガロアもだ」
「ん?」
「どうしたんだい、副船長。眠ィんだけど」
「何か問題でも起きたのか?」
しかし、何やら副船長のフィロアが海賊団の最高幹部である四龍王を集め、懐からピラリと新聞を出し、樽をテーブル代わりにして広げた。
そこに書かれている記事はもちろん……。
「うわ、“火拳”のエースを処刑するって? というか捕まってたのね、いつの間に」
「なぁるほど。こいつァとんでもない爆弾だ」
「たしかにな。指示を出したのはセンゴク元帥か? となると、狙いがまるで読めんな……」
「ああ。間違いなく“白ひげ”が火拳奪還のために海軍本部を襲うだろう。そして、それを知って黙っているマデュラではない。海軍の連中、よほど自信があるのか、あるいは自殺願望にでも目覚めたのか……」
「考えられるとしたら、火拳そのものに海軍にとって決して放置していられない程の秘密がある、とかかしらね。恐らく、捕まえたのは海兵ではないと思うわ。センゴクもこの処刑は不本意なんじゃない?」
「ふむ……なるほど」
頂上戦争の引き金となる、火拳のエース処刑。
フィロアはこれに関して、事が事なだけにマデュラに知らせる前に四龍王で話し合っておく必要がある、と判断したのだろう。
「クック先生にも聞いておきたいわね……」
「いやァ、無理でしょーよ。先生はあーして船長にベッタリだからな。剥がそうとしたらガルルガになっちまうし」
「そうなのよねえ……」
「シャンロンとジエンでも呼ぶか? あの老人どもなら先生の次ぐらいには頭が回るはずだ」
「……そうだな……ん?」
なんと。
ふと顔を上げると、ラヴィたちの背後に奴がいるではないか。
「──呼んだかい?」
「ひゃあぁッ!?」
つい先程までマデュラと一緒に海を眺め、楽しげに会話していたはずの怪鳥、クックである。
「先生」
「珍しいねえ。船長はどうしたんだ?」
「釣りを始めたよ。それより、君たちが何やら深刻な顔をして集まっているのが見えたからね」
「い、いきなり後ろに立たないでよ!! ビックリするじゃない!」
「ははは、ごめんごめん」
クックが指差す……否、翼指す方を見ると、確かに。
マデュラが何やらドデカい釣竿を構え、鼻息を荒くしている。
地味に「お土産持っていかないとね!!」という声も聞こえる。
どうやらレイリーのために新鮮な魚を調達するつもりらしい。
「アレは……私がマデュラ様のために作った“スペシャル釣れる君Z”!! 早速使っていただけるなんて……このガロア、最早人生に悔い無し……ッ!!」
「アンタ何やってんの!? 無駄にデカい釣竿なんて作ってる暇あったら鍛えなさいよ、四龍王最弱!!」
「ぐふっ!?」
痛いところを突かれ、膝をつくガロア。
全くもっておっしゃる通りなのだが、違うのだ。きちんと理由があるのだ。
普通の釣竿ではマデュラの馬鹿力に耐えきれず、ポキーンと折れてしまうため、特別なブツを用意する必要があったのである。
「……まあガロア君は放っておいて。何を話していたんだい?」
「これだ、先生」
「ん……? ほほう、“火拳”のエースを処刑ね……」
「海軍の狙いが読めんのだ。まさか白ひげに釣られてマデュラが来るとは限らない、などと思い込んでいるわけでもあるまいし」
「上の指示じゃないかな? 奴らに関してはラヴィ君の方が詳しいだろう」
「……! そうか、天竜人の指示か! しかし、理由はなんだ……?」
「うーん……」
フィロアがクックに意見を求めると、返ってきたのはなんと「センゴクではなく天竜人が処刑を指示したのではないか」というものだった。
「ラヴィ君、ガロア君をいじめているところ悪いけど、ちょっといいかい?」
「人聞きの悪い事言わないで!! 何?」
「これ。指示したのはセンゴクではなくもっと上だと思うんだけど、有り得るかな?」
「……あ、あー……そうねえ……」
クックに問われ、天竜人時代の記憶を辿るラヴィ。
すると、すぐに思い当たった。
「無理を押してでも処刑を強行するとなると……一番に考えられるのは、“海賊王”関連じゃないかしら。もしかしたら、“火拳”はゴール・D・ロジャーの子供なのかもね」
「「!!」」
「天竜人の奴ら、異様に海賊王を恐れているのよ。アタシが子供だった頃も、“悪い子は海賊王にさらわれてしまうえ~?”なんて脅されたもの。まったく、どの口が言うんだか」
「なるほどな……そういう事か。当然、白ひげもその事を知っていると見ていいだろうな。何せ海賊王本人と競い合っていた張本人なのだし」
「ライバルの子と知っていながら自分の船に……ね。相変わらず面白い事をする男だよ」
なるほどなるほど、と頷き合うフィロアたち。
と、そんな時。
「フィーッシュ!! やー、釣れた釣れた」
マデュラが超大型海王類を釣り上げた。
釣竿が折れないあたりにガロアの頑張りが窺える。
さりげなく黒く染まっているあたり、マデュラ自身が武装色の覇気で補強してはいるようだが。
「「ちょっ!?」」
「バカ、マデュラ!! 船が沈むぅ!! 早く離しなさ~い!!」
暴れる海王類。
軋む船。
いくら巨大ガレオン船といっても限度がある。
しかし──。
「ふんッ!!」
「ホギャァ!?」
パンチ一発。
悲鳴をあげて沈む海王類。
いや、海に沈んではいないが。
そして。
「獲ったd──」
ボカァン、と一発。
地味に見えていたシャボンディ諸島から砲弾が飛来し、マデュラが高々と掲げた海王類に命中した。
恐らく、「こんな近くに海王類が出たァ!?」と勘違いした、シャボンディ諸島に駐留する海兵が慌てて砲撃したのであろう。
「…………」
「「…………」」
沈黙、圧倒的沈黙ッ……!!
「……こ、こんな事もあるよね。うん、怒ってない、まだ怒ってないよ……」
ピクピクと頬を引き攣らせるマデュラ。
レイリーに迷惑をかけないように、という健気すぎる配慮だろう。
いつもそうならいいのだが。
マデュラちゃんおこゲージ:30%