蛇王龍、海賊になる。   作:初音MkIII

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チョッパーの腕力強化とか、あんな感じの部分変身というか部分強化、あるじゃないですか。

おクスリキメる必要があるとはいえ、二年前のたぬき程度ができるんだから、ゾオン系を極めた人がおクスリ無しで使えてもいいよねって思うんですよね。


シャボンディ諸島③

 

 マデュラによって釣り上げられた挙句、シャボンディ諸島のうっかり海兵による砲撃を食らうというとんでもなく不幸な海王類。

 

 彼は、更に不幸な事にマデュラによってぶん投げられ、その巨体で海軍の基地を押し潰してその生命を終わらせた。

 不幸すぎて涙が出そうである。

 

 

 まあ、上から“火拳”のエース処刑という無理難題を押し付けられ、白ひげ海賊団と戦う事が確定してしまったこの時期に、海軍本部から近いシャボンディ諸島に蛇王龍が出現したという報告を受けたセンゴク元帥程では無いかもしれないが。

 

 せっかく復帰したばかりだというのに、休む間もなく再びのストレス攻撃だ。

 そろそろハゲるのではないだろうか。

 

 

 

 まあ、それはさておき。

 

 

 

「ふぁ~あ……昼寝昼寝……っと言いてぇところだが。あんたは行かなくていいのかい、先生」

「うん? ああ、少し考え事をね。冥王と昔話に花を咲かせるのも悪くは無いんだけど、それよりマデュラちゃんの成長を促す方が大事だ」

「……ふぅん? どういう事だい?」

「それはね──」

 

 

 マデュラが海軍基地に向かって海王類をぶん投げたのを合図とばかりに、ガロア率いるモンスターズの面々がシャボンディ諸島に突撃。

 その後、残りのクルーたちも上陸……というか空から侵入し、最後に変身したフィロアに乗ってマデュラとラヴィが侵攻。

 

 尚、一応まだシャボンディ諸島が消滅すると決まった訳では無い。ちょっとイライラしながらも、船長が我慢しているからだ。

 マデュラはやればできる子なのである。

 

 

 船の上には必要最低限のクルーのみが残り、名がある者と言えば、いつものように留守を任されたゾラと、何故かいるクックぐらいとなっていた。

 

 そんなわけで、クックが珍しくマデュラに同行しなかった事が気になったゾラは、彼に理由を聞いてみた次第だ。

 

 

 そして、返ってきた答えは。

 

 

 

「十中八九起きるであろう、白ひげ海賊団と海軍による頂上戦争。マデュラちゃんなら間違いなく乱入しようって言うだろうけど、ただ暴れるだけじゃ芸がないだろう? どうせだから、あの子には戦争を通して“指揮”というものを学んでもらいたいと思うんだ」

「ほうほう。なるほど、悪くないんじゃないの」

「ありがとう。でも、そのまま言っても“え、やだ”とでも返されるのが関の山だ。どう説得したものかな」

「あー……」

 

 

 どうやらクックは、先を見据えてマデュラに指揮官としての経験を積ませたいらしい。

 なにせ、最終的には世界政府を支配するという“祖龍”と戦う事になるのだ。ただ力に任せて暴れるだけでは、いくらマデュラとて負けてしまう可能性がある。

 

 

 雑魚は部下に任せて力を温存し、敵のボスを全力で排除する、というやり方も覚えてもらわないと困る。

 

 

 

 それにしても。

 世界最強の海賊と海軍本部という二大勢力が激突する事になるだろう頂上戦争を、ただの練習台としか考えていないあたり、クックも大概ぶっ飛んでいる。

 

 

「まあ、先生が誠心誠意説得すればなんとかなるんじゃない。船長もそこまでわからず屋じゃあねえだろう」

「……そうかなあ」

「……悪い、結構怪しいかも」

「だよね」

「ああ」

 

「「……はぁ……」」

 

 

 

 深くため息を吐く二人。

 マデュラの教育は大変なのだ……。

 

 

 

 ──一方その頃──

 

 

 

 

 無事にシャボンディ諸島に上陸したマデュラは、無用な混乱を起こしてレイリーに迷惑をかけないため、猫耳フード付きの黒いローブを着込んで己の正体を隠し、ラヴィと共に諸島を歩いていた。

 巨体故に目立ちまくるフィロアは既に別行動しており、ラヴィもまたマデュラとお揃いのローブを着込んでいる。

 相変わらず仲のいい二人である。

 

 

 

 ちなみに、こいつらが正体を隠していても、モンスターズや他のクルーたちが普通に上陸している時点で、ばっちりと諸島中が大混乱に陥っていたりする。

 まあ、当たり前の話だが。

 

 

「ふんふん、“9人の超新星”ねえ」

「億超えのルーキーが9人も、か。確かに珍しいってのは分かるけど、アタシたちからみればそこらのザコと変わらないのよね」

「まあね。ところでラヴィ、お金いくら持ってる?」

「たかる気満々かコノヤロー。別にいいけど」

 

 

 のんびりと歩く二人の不審者。

 素顔ならまだしも、今の彼女らは猫耳フード付きの黒いローブを着込んだ怪しさ満点コンビだ。

 嘘かまことか、蛇王海賊団が現れたという大ニュースもあって、不安気に瞳を揺らす人々からの視線を集めながらも、今更なので特に気にすることもなく。

 

 道行く人から盗み聞きした億超えルーキーたち、通称“9人の超新星”についての話もさらりと流れていった。

 

 

 尚、本来ならばあの麦わらのルフィと、蛇王海賊団の捕虜兼戦闘員であるロロノア・ゾロも加えた“11人の超新星”と呼ばれるはずであったのだが、この世界線では彼らは外れている。

 

 麦わらのルフィは一応ギリギリで億の大台に乗ってはいるが、最近はパッタリと話題が途絶えており、ゾロも同様だからだ。

 大方、“麦わらの一味”は何らかの災害にでもあって壊滅したのだろうと、世間では言われている。

 

 割とだいたいあってるから困る。

 一応、壊滅したわけではないけれど。

 

 今頃、麦わらの一味は何をしているのだろうか。

 シャボンディ諸島には未だ到着していないところを見るに、ウォーターセブンで足踏みしているのだろうか。

 

 

 

 そんなこんなで二人仲良く会話しながら、目についた適当なレストランに入ると──。

 

 

 

「下品な女だ……メシがまずくなる! おい、あの女を黙らせてこい!!」

「それはまずいです、頭目。ここはもう海軍本部の目と鼻の先──」

「……!」

 

 

 ──ぎゃあああ……!!

 

 

 

 マデュラとラヴィが入店したと同時に響く悲鳴。

 どよめく一般客。

 

 

 

「なんだよいきなり、うるさいな」

「マデュラ、あれ」

「ん??」

 

 

 

 悲鳴の原因は、それまで上品に食事をしていた男が、いきなりお供の男性の手をフォークで突き刺したからであった。

 

 

 

 ファイアタンク海賊団船長

 カポネ・“ギャング”ベッジ

 懸賞金1億3800万ベリー。

 

 

 ──参考までに、「おー」とのんきにベッジを眺める不審者、マデュラの懸賞金は35億5000万ベリーである。

 

 化け物と比べてはいけない? たしかに。

 

 

 そして、そんなベッジの視線を辿ると。

 

 

 

「おかわりまだか!? なくなりそうだ!」

「今全力で作ってるそうで、船長」

「遅ェ!! もうなくなるっつってんだろ!!」

 

 

 ボニー海賊団船長

 “大喰らい”ジュエリー・ボニー

 懸賞金1億4000万ベリー。

 

 

 スタイルも良いし普通に美人なのだが、マナーがまるでなっていない事で印象がマイナスに振り切っている女がいた。

 

 

「おお、すごい食べっぷり」

「あいつら、二人とも例の“超新星”よ」

「ほへー、あれが。あ、ウェイターさーん! メニューに書いてる奴全部持ってきてー!!」

「やめてあげなさいよシェフを過労死させる気か」

 

「「なんだあの不審者!?」」

 

 

 ボニーのせいでただでさえ大忙しな厨房を殺しにかかるマデュラ。

 注文を受けたウェイターも、思わず「は?」と呟いてしまったぐらいだ。

 

 

 

「なんだあの変なローブの二人組は……ますますメシがまずくなるだろうが」

 

 

 ボニー二号が現れた事で機嫌を悪くするベッジ。

 ラヴィまで一緒に扱わないでください。

 

 

「メニュー全部ぅ!? はは! よっしゃ!! 大食い勝負といくかァ!!」

 

 

 マデュラの大声に反応して目を剥き、負けてられないとばかりに食べるペースを上げるボニー。

 もしかしたら彼女はマデュラと仲良くなれるかもしれない。

 

 

 

 

 その後、案の定調理がまるで間に合わず、注文した料理がなかなか来ない事にマデュラが腹を立て、ラヴィが必死にそれを宥めたとか。

 

 

 ベッジもベッジで「こんなところにいられるか!!」と叫んで出ていってしまい、ボニーは相変わらず食い続けた。

 

 

 

 そして、食後。

 

 

 

「……ん? おい、あいつらの顔見たか?」

「はい? どうしたんですか船長」

「…………ヤベェな。急いでこの島出た方がいいかもしれねェ。見間違いじゃなければ、蛇王龍だったぞアレ」

「「!?」」

 

 

 ボニーが偶然マデュラの正体に気付いた模様。




※ベッジが死亡フラグのお手本みたいなセリフを口走っていますが、たぶん無事です。


マデュラおこゲージ:50%

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