蛇王龍、海賊になる。   作:初音MkIII

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原作で大人気なローさん視点。
最近急に冬らしくなってきましたね……。


シャボンディ諸島④

 

 9人の超新星が一人、トラファルガー・ロー。

 2億ベリーもの懸賞金がその首にかけられている彼には、成さねばならない野望がある。

 

 それは、ローの大恩人であるコラソンの仇にして、コラソンの実兄である大海賊、ドンキホーテ・ドフラミンゴを打ち倒すこと。

 

 何よりも自由を求めるローだが、皮肉なことに大恩人のかたきを討つ事に執着するあまり、未だそれに縛られているのだ。

 

 まぁそれはさておき。

 

 

「…………」

「あれ、どうしたのキャプテン?」

「ようやく会えそうだ」

「……誰に??」

「直に分かる」

「えー」

 

 

 自身が率いる“ハートの海賊団”のクルーである喋る白熊、ベポからの質問に対し、答えになっていない答えを返すロー。

 見つめる先には、ヤルキマン・マングローブの太い幹に“蛇と龍が描かれた海賊旗”を塗りたくる巨漢の姿が。

 

 

 その正体は、蛇王海賊団の最高幹部“四龍王”の一角。

 精鋭部隊“モンスターズ”を率いる男、ガロアである。

 

 

 噂はよく聞いているが、本当にやりたい放題だな、と内心で呟くロー。

 シャボンディ諸島の住民たちも、遠巻きにではあるがガロアとモンスターズの面々の珍行動を眺めており、これから何が起きるんだ、と戦々恐々としているようだ。

 

 

「さて。それじゃあ予定通りオークションの会場に行くぞ。1番GRだ」

「「アイアイキャプテン!」」

 

 

 ガロアたちの奇妙な行動は一旦捨ておき、とある事を確認するために歩き出すローと、その部下たち。

 シャボンディ諸島では“人間オークション”という非道な取引が未だにまかり通っており、その会場に“商品”を卸す事を生業とする人攫いまで存在する。

 

 当然、海軍やその上の世界政府もその事は把握しているが、事もあろうにあの天竜人が人間オークションをよく利用しているため、見て見ぬふりをしているのだ。

 

 

 そして。

 その人間オークションを取り仕切る黒幕こそが、ローの怨敵であるドンキホーテ・ドフラミンゴ──。

 

 

 

「…………ねェな」

 

「人がいっぱいだ!! おれはクマだけど」

「これ全部が奴隷を買いに来てるのか」

「なんつーか、人間ってこえーなー」

「それ、海賊のおれらが言うことか?」

「たしかに」

 

 

 

 ──で、あった。

 過去形だ。

 

 今はもう、ドフラミンゴはこの商売から手を引いているのである。

 彼のシンボルマークがどこにも描かれていない事から、情報に間違いはない。

 

 では、何故ドフラミンゴは人間オークションから手を引いたのか?

 

 

(これで一つ、確認は終わったな。やはり、奴は蛇王龍を恐れている。となると、今のオーナーは誰だ?)

 

 

 ──答えは簡単。

 かつてドフラミンゴが経営していた人間オークションの店……ヒューマンショップは、全てが一度蛇王龍に潰されているからだ。物理的に。

 それをまた建て直しても、無駄に蛇王龍の怒りを買うだけだ。だからこそ彼は逃げたのだろう。

 

 

 その事を自分の目でしっかりと確認したローはひとまず満足し、「ところでまたこの店をおっ建てた大バカ野郎は誰なんだ?」と探り始めた。

 

 そして、その答えはすぐに明らかとなる。

 

 

「──さすがはかのロズワード聖が経営なさっている店だ、以前とは品物の質が違う!!」

「然り然り。何でも、直属の人攫いを雇っているとかで──」

 

 

(なるほどな、天竜人の生き残りか。馬鹿な野郎だ)

 

 

 蛇王海賊団結成後、間もなくして蛇王龍が起こした天竜人虐殺事件。

 たまたま当時、揃って聖地を離れていたがために生き延びたロズワード一家が、金に物を言わせてこのヒューマンショップを建て直した、という事らしい。

 そこまでして奴隷が欲しいのだろうか。

 

 

 天竜人はどいつもこいつも馬鹿でゲスな輩ばかりだとは聞いていたが、まさかあの蛇王龍に正面から喧嘩を売るような真似をする程だとは。

 

 さすがのローも、呆れて物が言えない。

 前オーナーであるドフラミンゴが何故店を手放したのか、ロズワード聖は理解できていないのだろう。

 

 

 そして──。

 

 

「まったく、チャルロスめ。ノロマな奴隷なんぞ使っているからはぐれてしまうのだえ。乗るなら魚人に限る」

「お、お父上様。チャルロス兄様は無事アマス? ここにはあの蛇王龍が来ていると……」

「何を怯えておるえ、シャルリア。ここまで何のためにコソコソと来たと思っておる?」

「でも……」

 

 

 件の大バカ野郎こと、ロズワード聖が、娘であるシャルリア宮と共にこのヒューマンショップへとやってきた。

 どうやら蛇王龍を恐れて慎重に隠れながらここまで来たらしい。

 心なしかお付きの役人もピリピリしており、絶えず周囲を警戒している。

 

 それに触発されたか、シャルリア宮の方は傍若無人なあの天竜人とは思えない程に不安そうな顔をしていた。

 何故にシャボンディ諸島まで来たのか。そこまでしてでも新しい奴隷が欲しいのか。

 

 天竜人とは、なかなか理解に苦しむ人種である。

 

 

 

 そんな事を考えながら、先程ヒューマンショップにやってきたばかりの、とある超新星に中指を立てて挨拶をする、ロー。

 

 

「……行儀も悪ィな」

 

 

 キッド海賊団船長

 ユースタス・“キャプテン”キッド

 懸賞金3億1500万ベリー。

 

 

「こんな所で喧嘩はやめろよ、キッド。やるなら新世界でだ」

「わかってるよ」

 

 

 キッド海賊団戦闘員

 “殺戮武人”キラー

 懸賞金1億6200万ベリー。

 

 

 そんなこんなで、いよいよオークションが始まろうとした、その時──。

 

 

 

「「!?」」

 

 

 

 何かが……いや、“誰か”が。

 ヒューマンショップの壁を突き破りながら飛んできた。

 

 

「な、何事だえ!?」

「いけません!! ロズワード聖、シャルリア宮! 私どもから離れないでくださいませ!!」

「…………あ、ああ……」

「シャルリア? どうしたえ!?」

 

 

 

「始まったか」

「なるほど、世界最悪の名は伊達では無いらしい」

 

「来たみてェだな。お前ら、逃げる準備をしろ」

「えっ? あっ、アイアイキャプテン!!」

 

 

 即座に戦闘態勢をとっていたキッド海賊団、およびハートの海賊団。

 それぞれの船長(とついでにキラーも)が、いち早く飛んできたモノの正体に気付き、これから起こる“蹂躙”を察知する。

 

 

 たまたまソレを目にしたシャルリア宮も気付き、彼女の視線を追ったロズワード聖も、遅れて気付く。

 

 そして、その他の客たちも気付き──。

 

 

 

 

 キッドやローたちを含めた全員が、降臨した凄まじい殺気に身動き一つ取れなくなった。

 

 

 

 

「……なあ。なんで私が潰した“奴隷屋”がまたできてんの? なんで天竜人とかいう害虫がこのシャボンディ諸島を歩いているんだ? ここは私のナワバリだぞ」

 

 

(……なん、だ、こりゃあ……!? あの女、本当に人間か!? このおれがたかが殺気ごときで指一本動かせなくなるなんて、狂ってやがる!!)

(なる、ほど……これが“世界最悪の海賊”……! とても人間が敵う相手じゃねェぞ!!)

 

 

 キッドとキラーが、脂汗をだらだらと流しながら戦慄し。

 

 

(は、ははは……!! これが“蛇王龍”! これが“世界最悪の海賊”!! なるほど、ドフラミンゴの野郎が恐れるわけだ……!)

(た、食べられるぅ!? おれ、クマだしおいしくないよー!?)

 

 

 ローが歓喜し、ベポは死の予感に涙を流す。

 

 

 

 現れた蛇王龍。

 先程ヒューマンショップに飛んできたモノは、何を隠そう運悪く彼女と街中で遭遇してしまった哀れな男、チャルロス聖……の死体である。

 

 

 父親であるロズワード聖と妹であるシャルリア宮の二人とはぐれたチャルロス聖は、猫耳フード付きローブの不審者……即ちラヴィと仲良く歩く“蛇王龍”マデュラに、正体を知らないまま自ら絡みに行ってしまい、このシャボンディ諸島を天竜人が歩いているという事に激おこプンプン丸と化したマデュラに洗いざらい吐かされ、殺されたのだ。

 

 ちなみに死因は、マデュラから指銃・黄蓮を受けて体中に穴が空いてしまったため。強いて言うなら失血死だろうか。あるいはショック死かもしれない。

 

 

「そ、そんな……チャルロス……げぽっ!?」

「口を開くな気持ち悪い。お前はジョーの餌だ」

 

 

 

 金縛りにあったように動けないながらも、涙を流すロズワード聖。

 しかし、無表情なマデュラにビンタされ、吹き飛んだ。

 

 

 

 そして──。

 

 

 

「ま、待て!! た、たしゅ、たしゅけ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 バクン。

 

 

 

 

 

 と、ロズワード聖は地面から生えてきた、ゴーヤのような竜……“恐暴竜”ジョーに食われて死んだ。

 

 

 蛇王海賊団“始末屋”

 “恐暴竜”ジョー

 懸賞金5億6000万ベリー。

 

 

 彼が食べた悪魔の実は少々特殊で制御が難しく、高い戦闘能力を誇る代わりに人間に戻れず、喋る事もできなくなったという不幸な少年である。おまけに常に空腹だ。踏んだり蹴ったりだよ。

 尚、ジョーは非常にマデュラに懐いているのだが、当のマデュラ本人からは「息が臭いからあまり近付かないで」と拒絶された不幸な過去を持つ。ひでえや。

 

 

 

 

「あ、ああ……お父上様……兄様……!!」

「シャルリア宮を守れェェ!!」

「くそ、体が動かねェ!!」

 

 

「グルゥ……」

「待て、ジョー。その女はその辺に捨てとけ。天竜人に恨みを持ってる奴なんていくらでもいるからな。そいつらにやらせるのも一興でしょ」

「グルォ? グルゥゥゥ!!」

 

 

 

 吠えるジョー。

 何故か腕をぐるぐる回すマデュラ。

 

 

 突然家族を失い、絶望するシャルリア宮。

 彼女のお付きは瞬く間にジョーに蹴散らされ、そしてマデュラからの命令に従い、腹ぺこなジョーは食べたい欲求を我慢しながらシャルリア宮を咥え、ペッ、とヒューマンショップの外に吐き出した。

 

 当然、護衛がいない天竜人なんぞ何の脅威もない。

 彼女にたとえ何が起きても、それを政府に報告する人間すらもいないのだから……。

 

 

 

 因果応報。

 やりたい放題してきたツケを体で払うのだ。

 

 

 ……まだぐるぐる腕を回すマデュラ。

 彼女は何をしているのだろうか。

 

 

 

「待たせたわね、マデュラ!! 外の連中にはあの天竜人を好きにするように伝えておいたわよ」

「そっか。で、ちゃんと持ってきた?」

「ええ。はい、これ。相変わらず重いわねえ」

「ありがと、ラヴィ」

 

 

 

 ひたすらぐるぐる腕を回すマデュラと、未だに体が動かないキッドやローたち。

 動けない上に目の前で悪夢が繰り広げられ、涙を流して事の成行きを見守るしかできないヒューマンショップの客たち。

 

 

 そんなカオスな空間に、どうやら別行動していたらしいラヴィが現れた。

 それも、何やらバカでかい斧のような物を背負っている。

 

 

 そしてそれをマデュラに手渡し、ラヴィは手持ち無沙汰なジョーに乗ってどこかへと去っていった。

 

 

 

 この赤黒い斧のような物。

 実はこれ、“蛇帝剣レヴリマデュラ”という名の逸品であり。マデュラ自身が素材(変身時の鱗とかだ)を提供し、蛇王海賊団が拠点としている新世界の島、“ドンドルマ”に住む武器職人たち総出で作らせた、マデュラのための武器なのだ。

 大きさも重さも凄まじいが、マデュラはこれを小枝のように振り回す。

 

 刀でもなんでもない上に何の歴史もない新しい武器なので“業物”のような位列は無いが、素材が素材なだけに余裕で最上大業物に匹敵する程の物である。

 

 

 

 そして、そのレヴリマデュラを振りかぶり──。

 

 

 

「もうこんなヒューマンショップなんてぶっ壊してやるもん。せー……のっ!! “千剣”ッ!!」

 

 

 

 ──シャボンディ諸島が、真っ二つに割れた。

 加減しろ莫迦。

 ……いや、まだまだ全力には程遠いし、諸島が消滅していないあたり、十分すぎるほど加減はできているのだが……。

 

 

 

 

「……あー、イライラするッ!! さっさとレイリーに会いに行こっと!」

 

 

 

 こうして話はレイリーとシャッキーが怒れるマデュラ様を店で迎えた所へと繋がっていく。

 ヤルキマン・マングローブを消し飛ばした犯人?

 それはマデュラではなく、ジョーの咆哮を“マデュラからの攻撃指令”だと認識したフィロアである。

 

 

 

 間違っては、いないのだが……。

 

 




マデュラちゃんおこゲージ:100%
原因:チャルロスにナンパされたから


ちょっと長引きそうな気配を感じたので巻きで。
シャボンディ諸島編ってちょっとした筆休めというか、そんな感じのヤツだし……。

あ、マデュラたち蛇王海賊団が新世界で拠点としている島はドンドルマにしました。
モンハンだと島じゃなくて街なんですが、まぁいいでしょう。
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