蛇王龍、海賊になる。   作:初音MkIII

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久しぶりに書くのでリハビリがてら特別編。
蛇王海賊団の拠点であるドンドルマを、赤髪海賊団が訪れた時のお話。要するに過去編です。

※赤髪海賊団の航海日誌は、シャンクス含む主要幹部たちで順番に回して書く交換日記方式、という独自設定になっております。


赤髪航海日誌:絶対禁域ドンドルマ

 

 

 〇月✕日、天候「晴れ時々雷」

 執筆者:船長

 

 

 今日はきっと特別な一日になるだろう。

 何故ならば、あのはちゃめちゃで色々とヤベー奴な、おれの世界一物騒な友人、マデュラが拠点としている島を訪れる事となったからだ。

 

 こんな日に限って航海日誌を担当するのが船長であるこのおれになったのは、運命と言う奴だろうか?

 

 

 うっかりマデュラを怒らせて死者が出たら、航海日誌ではなく後悔日誌になる事は間違いない。くれぐれも気を付けるように仲間たちに言い含めておかなければ。

 

 

 さて、元々後世に残す云々というより、後になってから皆で読んで酒の肴にでもしようと思って始めたのがこの航海日誌だ。

 おれが覚えているうちに、何故こうなったのかを振り返っておくとしよう。

 

 

 ──あれはたしか、一週間前の事だったか。

 いつものようにマデュラを宴会に招き、当然のようにあいつが引き連れてきた蛇王海賊団の面々と一緒に皆でどんちゃん騒ぎをした時。

 

 

 酒が入ってすっかり出来上がったヤソップの野郎が、余計な事を口走りやがったのが原因だった。

 あのバカ、ゆ る さ ん 。(字が荒れている)

 

 

 

 ……失礼、少々取り乱した。

 

 

 とにかく、ヤソップの大バカ野郎がこう言いやがったんだ。

 

 

 

「なぁマデュラ! おめー、拠点じゃ随分と慕われてんだって!? なっはっはっ!! 少し前まではこーんなちっちゃかったガキが、大物になりやがって! まったく想像できねえよ、おめーが民衆に胴上げされてる姿とか!!」

 

 

 たしか、こんな感じだったと思う。

 おれもヤソップ程じゃないにしろ、酒が入っていたからぶっちゃけ正確には覚えてねえ。

 まあ、細かい事はいいよな。

 

 

 で、それに対するマデュラの返事が問題だった。

 

 

「む。想像できないって言うなら直接見に来ればいいじゃん、ドンドルマまで」

「「は?」」

「おーおー、行ってやるともさァ!! この目でしっかりと確かめてやるよ、おめーがちゃんとやれてんのか!」

「おいヤソップ、ちょっと待て」

「なんだよ副船長、止めてくれるな!! あァ、アレだ! 冒険がおれを待っている!!」

 

「だってさフィロア。赤髪海賊団がうちに来たいっていうから準備よろしく」

『了解した。盛大に歓迎してやろう』

 

「なんか既に電伝虫で連絡しとるゥ!? ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待ってくれマデュラ!! おいヤソップ!! バカお前酔いすぎだぞ!!」

「うるへー!! 船長てめーこのやろー!! なぁにビビってんだァ!!」

「ビビるわアホ!! 政府ですら“絶対禁域”なんて呼んで立ち入らない魔境だぞ!?」

 

 

 

 

 ……こんな感じ、だったかなぁ。

 あんのアホめ……。

 

 

 ヤソップが酔いから覚めたあと?

 顔面蒼白にして「貝になりたい」とかブツブツ言ってたよ。あのヤソップが。

 勇敢なる海の戦士が聞いて呆れる。

 

 

 蛇王海賊団が新世界において拠点としている島、“絶対禁域”ドンドルマ。

 その名が示す通り、あの世界政府が「足を踏み入れたが最後、絶対に生きては戻れない」として調査を諦め、匙を投げた地獄だ。

 

 

 マデュラ曰く、「私を悪く言わない限りは大丈夫だよ、きっと」との事だが、おれには分かる。

 

 

 

 たぶん、冗談の類、通じないやつだ。

 というか「きっと」ってなんだよ!?

 なんでお前がちょっと不安そうなんだよ!!

 

 

 

 正直色々とテキトーなマデュラじゃ不安だから、あいつがよく頼ってる「クック先生」に聞いてみた限り、案の定だった。

 何でも、ドンドルマの住民たちは揃いも揃ってワケありの奴ばかりで、マデュラに拾われた事でようやくまともな人生を歩めるようになった奴らがほとんどらしい。

 

 だから、まあ。

 

 

 

 ちょっとでもマデュラを悪く言うとヤバい。

 マデュラが大嫌いだと公言している世界政府の諜報員が潜り込んだ時は、住民ほぼ総出で武器を持って追い回した挙句、哀れにもとっ捕まった諜報員を縛り付けて海に容赦なく放り捨てたらしい。

 

 

 いやこえーよ!?

 普通に海賊並みにタチ悪いぞ、ただの住民!!

 

 

 

 

 正直言って生きて帰れるのか不安で仕方ないが、今更やっぱやめたなんて言ったら今度はマデュラがキレる。そしたらもっとやばい。下手したら世界終わる。

 

 だから嫌とは言えない。

 ちくしょう!! こういう損な役回りはバギーの持ちネタだろぉ!?

 

 

 

 

 ……まあ、おれたち赤髪海賊団はそんなこんなでドンドルマまで行ったわけだ。

 

 

 感想?

 

 

 ああ、最初から目が飛び出たわ。

 

 

 

 

 なんで島の海岸にクソでかい大砲が並んでんだよ!!

 

 しかも、おれの船にさらっと同乗してきたマデュラが言うに、アレらは全部普通の大砲じゃないらしい。

 いや見たら分かるわ。でかいもん。

 

 

「えっとね、アレは“巨龍砲”って言って、ちょっけー1.5メートル? の弾をびゅーんって打ち出すの。威力はたぶん一発で街が消し飛ぶぐらいかな?」

「お前はいったい何を目指してんの??」

「知らないよ。ドンドルマの職人たちがテンション上げて勝手に作っちゃったんだもん」

「なにそれこわい」

 

 

 古代兵器でも量産するつもりでいらっしゃる??

 おれたちは思わず全員でそう突っ込んだ。

 しかも何門あるんだよその物騒な大砲。

 

 もうあれだけで海軍本部と戦争できるよ。

 むしろ蹂躙できるよ。赤髪ウソツカナイ。

 

 

 

 そんな超物騒な巨龍砲とやらに若干ビクつきながらも無事上陸したおれたち。

 既にやり遂げた感がハンパなかった。

 でもまだ入口だよちくしょう!!

 

 

 

「なんかすげー観察されてるんだが??」

「私の敵じゃないか見てるんじゃない? 殺されなければいいね!」

「笑顔で言うことじゃねえ!! 馬鹿野郎お前おれたちは全力で抵抗する所存だからなお前ェ!!」

「ちなみに街の住民たちは団員の予備も兼ねててね? 暇な時にフィロアとかが鍛えてあげてるから、皆結構つよいよ!」

「そんな情報聞きとうなかった!!」

 

 

 他人事だと思って楽しそうに笑いやがってあの野郎!

 今度会ったらヤソップ開発の必殺タバスコ入りジュースを振舞ってやるからな!!

 

 

 

 あ、ダメだ。

 こいつ味音痴だった。

 

 つーか住民たち普通に強くね??

 気配がもう既に強くね??

 懸賞金で言えば億単位でかけられる奴とか割とポロポロ居るよね??

 

 なんなのここ無限に強くなるナニかでも吹き出てるの?

 

 

 

 そして街に入って。

 なんだかんだでおれたちはテンションが上がった。

 

 

 何故ならば。

 

 

「おお、めっちゃいろんな種族がいるな!」

「むふー。そうでしょ。ほら、あそこにいるアイルーたちとか……あ、猫のミンク族ね。独自に進化したらしいからただのミンク族とはまた少し違うんだけど」

「ミンク族まで居るのか!! こりゃまた珍しい」

「あとあそこの竜人族とか、ここぐらいにしかいないんじゃない? 絶滅した扱いされてるらしいし」

「なんだありゃ!? たしかに、見た事ないな!」

 

 

 ビッグ・マムが見ればいろんな意味でテンションを上げるだろう、実に様々な種族が和気あいあいと過ごす姿があったからだ。

 

 

 尚、なんかおれに対してはやたらと視線がトゲトゲしかった模様。

 

 

 

「あの赤い髪の野郎、姫様とあんなに仲良さそうに……パルパルパルパル……」

「しねばいいのに……」

「でも姫様楽しそうだし……」

「無礼な真似しやがったら即刻このレイトウマグロで首はねてやる。釣りたてだぞ、凍ってるけど」

「いや、この大砲モロコシで吹っ飛ばしてやる」

「それは建物に被害が出るからやめとけ……姫様に殺されるぞ」

「チクショーメー!!」

 

 

 

「なんか寒気が……?」

「どしたの? あっ、シャンクス。ニャンコックのお店でチーズ料理食べよー!」

「は、ニャンコック? ……えっ、何あのデブ猫」

 

 

 

 そんな感じのやり取りを経てマデュラが走っていった先には、何やらチーズを一心不乱にかきまぜる、なんだ。

 

 なんというか、猫……猫……?

 

 

 

 すっげぇデブな、猫のミンク族……なのかなぁ?

 とりあえず、ニャンコックなるデブ猫がいた。

 

 

 猫とはいったい……うごご……。

 

 

 

 あっ、やたらと殺気立った目と共に差し出されたチーズフォンデュはめっちゃ美味かったです。

 つーかミューズって誰?

 

 は? マデュラの事?

 

 

 

 ミューズ(爆笑)。

 

 

 

 おっと口に出してないからセーフだぞ。

 耐えるのが大変だったけどな!

 

 

「なぁマデュラ。あの武装してる奴らが蛇王海賊団の予備団員ってヤツなのか?」

「ん、まぁそだね。チーズうまし」

「ふぅむ……勧誘したらダメか?」

「いいよ? あ、でも斬られる覚悟はしておいてね」

「やめておきます」

 

 

 

 視線を彷徨わせて見つけた、武装集団。

 マデュラの船でも似たような格好の奴らが下っ端をやってるからもしやと思ったが、案の定だった。

 

 

 何でも、マデュラたちが変身した時にポロッと落ちる鱗や脱皮した時の抜け殻なんかを素材にして装備を作っている工房が、この島にはあるらしい。

 アイツらもそれを利用してるってわけだな。

 

 

「じゃああの装備を作らせてもらうってのは?」

「いいよ? 門外不出の代物だから、一つにつき100億ベリーぐらいは貰うけど」

「お前はおれを破産させる気なの?? いっそ素直に断ってくれよ」

「なはは、ごめんねー。職人たちの機嫌を損ねると後が面倒だからさー」

「あー……なるほどな」

 

 

 あの傍若無人なマデュラが他人の機嫌を気にするなんて……!! と、おれは不思議な感動を覚えた。

 同時に、ここの職人たちはどんだけヤバい奴らなんだ、とも。

 

 例の巨龍砲といい、あまり近寄りたくない。

 

 

 

「お、酒場もあるのか。利益出てるのか?」

「もちろん。この島だけで使える通貨を広めてるから、それでやり取りしてるんだよ。クック先生の仕業だね」

「ああ、なるほど。完全にこの島で自己完結してるんだな。ある意味自給自足ってわけだ」

「まあそうなるかな? 一応、他の島とか国とかとも仲良くやった方がいいかなとは思ってるんだけど」

「無理でしょうね……」

「だよねー」

 

 

 ※革命軍との取引で、世界政府非加盟国がこの島と交流するようになるらしいぞ。

 色々と、大丈夫なのか……?

(しばらく後に追記:ベン・ベックマン)

 

 

 

「ありゃなんだ? 城??」

「ああ、アレ? シュレイド城。私の家だよー」

「なんなのお前王様なの? 女王陛下なの? あ、だから“姫様”って呼ばれてるのか」

「たぶん?」

「なんで首傾げてんだよ。お前の事だろ……」

 

 

 なんか存在感を放ちまくってる“蛇王龍の金の像”を見上げた、その先。

 魔王でも住んでいそうな禍々しい城があった。

 

 どうやら、アレがマデュラの家らしい。

 例の特殊なミンク族、アイルーとやらが何人……何匹? もメイド猫として生活しているようで、禍々しい外見に反して中はめちゃくちゃ綺麗だった。

 ちなみにマデュラは城に帰るなりアイルーたちを一心不乱にモフモフしていた。

 ……哀れな猫様は捕食される寸前の獲物のように硬直していたけど、明らかに怖がられてない? おれの気のせいか? あ、気のせいですかそうですか。

 

 

 ……アレに泊まる?? そんなわけあるか。

 住民たちに武器持って追いかけ回されるだろ笑える冗談も大概にしろ!!

 

 

 まあ、見学はしたけどな。

 マデュラの奴、マジで王族ばりにいい暮らししてやがる。

 これで本人は頻繁に海に出てて留守が多いってんだから、世話役のアイルーたちは大変だろうなあ。

 

 

 

 それからも各所を回った感想としては、なんだ。

 ただ歩くだけでも言動に注意する必要があるだけに、主に精神がめちゃくちゃすり減った気がするが、何だかんだ言って結構楽しかった。

 

 治安も良いし、住民にとっては暮らしやすい島ではあるんだろうと思う。

 海賊なんかもまず立ち寄らないしな。

 

 

 

「──え? ここを襲いに来た海賊団がいた……?」

「うん。ムカついたからそいつらの拠点を突き止めて私のブレスで海ごと消してやった。ほら、結構前の話だけど、“起こるはずが無い場所で起きた極太突き上げる海流”とかって勘違いされた奴あったでしょ? あの時」

「ああ、あれやっぱりお前だったのか……」

 

 

 

 いやいや、勇者すぎるだろ。

 たぶんビッグ・マムやカイドウでもビビるぞこんな島。

 ……た、たぶん。

 

 

 

 ちなみに後日、その今は亡き海賊団が拠点としていた島があったという跡地まで、ジャヤに生息するサウスバードを利用して冒険してみたが、本当に「海ごと」消えていた。

 

 

 分かりやすく言うと、エニエス・ロビーの穴ぼこみたいになってた。

 マジで何も無い分アレよりひでぇな、うん。

 

 

 だって海すらねえんだもん……。






インペルダウン編もそのうち書くから気長に待っとってください。
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