強さだけは白ひげの若い頃そっくりらしいですが。
地味に革命軍関連の話と同じぐらい気になっているので、本格的な登場が待ち遠しいです。
いつの間にか捕まり、インペルダウンに放り込まれていた海賊、“道化のバギー”。
能力者である事を隠し、見事に牢から脱走を果たした彼だが、幸か不幸か蛇王海賊団のインペルダウン襲撃と鉢合わせ、四龍王とバッタリ出会してしまった。
自身が海賊として下から数えた方が早いんじゃねーかという程に弱い事を自覚しているバギーは、どこぞの麦わら小僧とは違い情報の収集に余念が無い。
当然、目を疑うような大事件を次々と引き起こしている蛇王海賊団の事も、きっちりと調べてあるのでよく知っている。
よし、おれさま絶対にコイツらとは関わらない!
そう心に決めていたというのに、運命は残酷である。
「どうしたの、副船長って……誰こいつ?」
「知らん。だが、お前が言っていたブルゴリという獣に追いかけ回されていた事と、囚人服を着ている事から察するに、脱獄犯だろう」
「ふーん……?」
(ぎゃああああ!? 熾凍龍どころか大巌竜までいやがるゥ!!)
ばったり遭遇したフィロアの背後から、ひょこりと美女が顔を出した。
四龍王の紅一点にして比較的常識人、“大巌竜”ラヴィだ。
美しいその容姿に思わず目を奪われそうになるが、女だからと舐めてはいけない。
何せ、彼女はあの化け物集団、蛇王海賊団の最高幹部なのだ。
噂では、大地震や大噴火に大津波と、実に多彩な大災害を気軽に引き起こす程の力を持っているのだという。
というか、ラヴィを侮るような真似をすればキングオブバケモノ……いや、クイーンオブバケモノ? とも言えるあの大怪物、蛇王龍を怒らせる事になる。
故に、バギーは全力で媚びる!
「あの、そのですね。わたくし、“道化のバギー”と申しまして。一応、この首には1500万ベリーほど懸けられておりますです、はい」
「ほう」
「って事はこのLEVEL1からの脱走者か。なるほど、牢から脱出してまだそう時間は経ってないわね?」
「あっ、その通りでございますです、はい!」
「……うーん」
な、なんでわたくしの顔をまじまじとお眺めになられておられるので?
バギーは酷く混乱した。
どうやら、何故かは分からないが大巌竜の興味を引いてしまったらしい。
その代わり、熾凍龍の方は微塵も興味を示してはいないが。
「バギーだっけ? なんかどっかでその名前を聞いたような気がしないでもないけど……。アンタ、LEVEL6までアタシたちを案内しなさい」
「はい?」
えっ、何故?
わたくし、今ドハデに脱獄大作戦の真っ最中なんですが? つーかLEVEL“6”ってなに!?
インペルダウンって、LEVEL5までしか無いはずじゃなかったのかァ!?
あっ、地味に熔山龍と骸龍も来ていらっしゃる……。
バギーはますます混乱した。
しかし、残念ながらとてもじゃないが断れるような雰囲気ではない。
ほら、熾凍龍が虫でも見るような目で「断ったらどうなるか分かってるだろうな?」とでも言いたげに睨んでなさる。
「い、一応理由をお聞きしても……? わたくし、これでも脱獄の真っ最中ですので……」
「なんとなく、アンタの事知ってる気がするのよ。それに、モタモタしてるとたぶんマデュラに消されるわよ。このインペルダウンごとね」
「えぇ……」
まさかシャンクス関連か? とブツブツボヤきながらも素直に頷くバギー。
しつこいようだが、とてもじゃないが断れるような雰囲気ではないのだ。
それに、この化け物たちと一緒に居た方が、結果的には生存率が高くなるはずだ。
戯れに消されたりしなければ。
というか今更だが、バギーはそこまでこのインペルダウンの構造について詳しいわけではない。
何せ、投獄されたのは最近の事だし、職員などではなくただの囚人なので、内部事情など把握しているわけがないのだ。
ちなみに。
バギーがブルゴリに追われている最中はガヤガヤとヤジを飛ばしていた囚人たちは、圧倒的な威圧感を誇る四龍王……特に、“熾凍龍”フィロアの登場で嘘のように沈黙した。
このインペルダウンには蛇王海賊団が活動を始める前から収監されていた囚人も決して少なくないが、凶悪な罪人だからこそ「強者の存在感」に対しては敏感だ。
機会はそう多くないとはいえ、大将に準ずる程の実力者である監獄署長、マゼランを知っているという事も大きいだろう。
何せ、パッと見ただけでも、この四人組……四龍王という怪物たちは存在感がヤバい。
確実にあのマゼランよりも強い、そう感じてしまう。
そんな化け物を前にして、図太いままでいられるほどの大物は、LEVEL1なんぞに居やしないのだ。
どうしてこうなった……と内心でボヤきながら、とぼとぼ歩くバギー。
その背中には、哀愁が漂っている。
「あ、アネゴ。あそこの穴がLEVEL2に繋がってるはずだぜ」
「アネゴはやめい。ふーん、剣樹に針々草……。監獄なだけあって、随分と悪趣味ね」
「まぁこのフロアには弱いのしかいないみてーだし、あれでも十分な拷問になるってわけかい」
比較的穏やかな性格だと思われるラヴィとゾラの傍から付かず離れず、真面目に案内するバギー。
特に、熾凍龍の次に懸賞金が高いにも関わらずかなり真っ当な人間だと思われるラヴィの事は、親しみを込めてアネゴと呼んでみる事にしたらしい。
まあ、囚人の血で真っ赤に染まる剣樹と針々草を見ても眉一つ動かさない辺り、穏やかとは言ってもやはり海賊。
そこらの街で暮らす一般人とは感性が全く異なる事に変わりはないようだが。
──蛇王龍がインペルダウンに侵入するまで、あと十分──
まるで遠足のような軽やかな足取りでLEVEL1を踏破し、LEVEL2に侵入した四龍王プラスバギー。
尚、LEVEL1の囚人にとっては厄介極まりない存在である恐るべき牢番、ブルゴリたちはただ歩いているだけの四龍王にガタガタと怯え、それでもたまに襲撃してくる勇敢なブルゴリは、フィロアがギロリと睨んだだけで気を失っていた。
別に覇王色の覇気を使ったわけではなく、ただの殺気を送っただけである。
似たようなモン? 素人は黙っとれ。
「ほう。ここでは随分と面白い獣たちが飼われているようだな。マデュラ様に全て献上しなければ」
「あー、珍獣好きだものね、あの子」
「ちっ……そうなると人手が足りんな。このフロアの囚人たちを全て解放しておくか」
「あいあい。そんじゃ鍵でも探してくるわ」
(ここインペルダウンだよな……? ピクニック気分ってすげぇなこいつら。あ、やべ。笑顔笑顔っと)
LEVEL2“猛獣地獄”。
ここには世界中から集められた危険な珍獣たちが放し飼いにされており、確かにその手のマニアからすれば宝の山と言えるのかもしれない。
危険性を度外視すればの話だが。
ドヒュンと消え、ドシュンと鍵を握りしめて帰ってきたゾラを眺め、思わず死んだ目になるバギー。
ああ、あの一瞬で看守室襲って鍵奪って来たのね……と、夢でも見ている気分である。
それを遠目に見ていた囚人たちも、突然降って湧いた脱獄のチャンスに目を白黒させており、いまいち現実味が無い様子だ。
その中で、一周まわって冷静に思考する切れ者が一人。
「蛇王海賊団……! まさかとは思ったが、このインペルダウンを潰しに来たようだガネ。これは間違いなくまたとない脱獄のチャンス!! しかも絶対無敵の強者付きとは、この魚を逃す奴は相当なアホだガネ!」
かつてアラバスタ王国を陥落寸前まで混乱させた、あのサー・クロコダイルが長を務めていた秘密犯罪会社バロックワークス。
その集大成となる「ユートピア作戦」の直前になって、あの麦わらの一味に敗北し、クロコダイルを大いに失望させ、粛清された男。
コードネーム、「Mr.3」。
本名、ギャルディーノ。
姑息な大犯罪をモットーに掲げる知能犯は、何故か無表情で死んだ目をしているバギーによって解放されるや否や、最も知性的と思われるラヴィに近寄り、胡散臭い笑みを浮かべた。
「ンフフフ……お初にお目にかかる、蛇王海賊団の皆々様。どうやら人手を欲している様子……この私を雇ってみる気はありませんカネ?」
「……変な髪型……」
「おっふ」
Mr.3はいきなり躓いた。
顔を合わせたラヴィは思いきり顔を顰めており、妙に馴れ馴れしい様子の「3」頭に警戒心バリバリである。
そして、奇しくもその瞬間──。
──蛇王龍、インペルダウンに侵攻を開始──
──地表部でクックとハンコックを連れてぐだぐだ駄弁っていたマデュラが、突如として地面をぶん殴り、LEVEL1からLEVEL5まで続く大穴があいた。
「やっほーい」
「ちょちょ、待ってよマデュラちゃん! まだドラゴンから合図が来てないよ!!」
「クック、マデュラが行ってしまったぞ!! このままでは例の“イワンコフ”とやらと鉢合わせかねん!」
「分かってる! 追うよ、ハンコックちゃん!!」
昔から非常に変態的な格好をしていた、革命軍の幹部であるオカマ王、エンポリオ・イワンコフ。
インペルダウンに収監されているという彼……いや、彼女? とマデュラが遭遇する可能性に気付いたドラゴンが、インペルダウンに潜入しているスパイを通してイワンコフと連絡を取るまで待っていて欲しいと予めマデュラに伝えていたのだが、残念ながらマデュラは待つ事に飽きたらしい。
ぶん殴ってあけた大穴に意気揚々と飛び込み、インペルダウンを探検する気満々なマデュラを、時間稼ぎの為に同行していたクックとハンコックが慌てて追う。
格好が変態である事を差し引いても、革命軍幹部であるイワンコフにはマデュラが盟友である事を知らせておく必要がある。
不幸な事故で機嫌を損ねて、せっかく奇跡的に結べた同盟が破綻してはたまらないのだ。
そして、LEVEL2にも当然その振動は伝わってきており、四龍王が状況を把握するには十分すぎた。
「やばっ!? マデュラの奴、とんでもないショートカットかましてきたわ!! えっと、Mr.3だっけ? アンタ、鍵作れるんでしょ!? この先も使えるかもしれないからついてきなさい!!」
「えっ、あっ、はいだガネ」
「えっ、おれも行くの? この大監獄にあんな大穴ぶちあけてショートカットするような化け物と、マゼランが対峙するようなシーンに居合わせたらおれさまの死亡率200%なんだけ……ぐぇっ!! 首がァ!!」
突如としてあいた大穴を落ちていく、見覚えのありすぎる白い美女。
マデュラが侵攻を開始した事を察知したラヴィたちは、必死に有能アピールをしていたMr.3と、何故か解放した囚人たちと仲良くなっていたバギーも連れて、大急ぎでLEVEL3へと急行する。
ついでに、残された解放囚人たちは“猛獣地獄”を闊歩する珍獣たちを捕獲するという無茶振りを課された。
普通に死刑宣告である。
尚、ラヴィたちがショートカットを使わず正規ルートで進行する理由は、もしも面白い囚人がいたら解放して勧誘するという任務があるからである。
しかし、マデュラが侵攻を開始した以上、なにかの拍子でインペルダウンそのものが破壊されないとも限らない。
故に急いで進み、急いで脱出しなければならないのだ。
でないとキケンがアブない。
クロコダイルには一度の失敗で見限られたMr.3ですが、ドルドルの能力は普通に有能ですよね。
頂上戦争でマルコがかけられた海楼石の手錠もドルドルの鍵で解錠したみたいですし。
本人はザコなイメージがありますが、作戦次第ではあの巨人のドリーをも封殺できるわけで、意外と強いっちゃ強いし。
まあドリーは胃袋を爆破されて尚も普通に生きてましたが。それでもダメージはかなり負ってましたしね。
あ、インペルダウンに革命軍のスパイが潜入しているってのは当然独自設定です。
まあ、幹部であるイワンコフとの緊急連絡手段ぐらいは確保しているだろうと言うことで。