アイスボーンを昨日クリアしたので更新です。
今回は麦わらサイドを書いてみようかと思います。
あ。そういえば私はアニメや映画はほとんど見てないので、そちらのオリジナルキャラはたぶん出ません。
ただ、シキの映画は見たし、原作世界にも名前が出ているので、登場するかも。
世界的な大海賊、蛇王海賊団にまさかの遭遇を果たし、最高幹部の一人である“モンスターズ総隊長”ガロアに対して喧嘩を売ってしまった麦わらのルフィ。
その結果、手も足も出ずに敗北した彼は瀕死の重傷を負い、船医であるチョッパーが必死の治療を続け、なんとか会話ぐらいはできるまでに回復。
ルフィは自らのやらかしで大幅に時間をロスしてしまった事をビビに詫び、遅れを取り戻そうと歩こうとした。
しかし、未だダメージが残る身体では満足に歩く事すらままならず、すぐに倒れてドクターストップを食らってしまう。
それでも尚、這ってでも進もうとするルフィを見かねてか、ゾロが彼を背負って歩く事を提案。船員たちやビビもそれを承諾し、現在砂漠を進んでいる。
裏切り者の“黒ひげ”を追うエースもまた、そんな弟を放って行く事などできず、ルフィが回復するまでは旅に同行する事となり、共に砂漠を歩いている最中である。
「なぁ、ルフィの兄貴」
「どうしたコックさん? あと、おれの事はエースでいい。いつまでもそれだと呼びづらいだろ?」
「ん、そうか。それもそうだな。じゃあ、エース。あいつらはいったいなんだったんだ?」
「……蛇王海賊団の事か」
「ああ」
律儀に“ルフィの兄”呼びを続けている麦わらの一味に軽く笑みを零しつつ、呼び捨てで構わないと親しげにお願いするエース。
そんな彼に質問を投げかけたのは、麦わらの一味が誇る“海のコック”、サンジであった。
他の船員たちやビビも気になるのか、エースの事をちらりと眺めている。
ちょうどいい機会なので、説明する事にした。
「あいつら……蛇王海賊団は、一年前に船長の“蛇王龍”が突然旗揚げし、当時この偉大なる航路を大きく騒がせた」
「たしか、あの銀髪の美女が“蛇王龍”って奴なんだよな? 見た目は弱そうだが、威圧感が半端じゃなかった。あいつは何者なんだ」
「元々あの女は賞金稼ぎをやっててな。稼いだ額が尋常じゃなくて、“世界最強の賞金稼ぎ”なんて呼ばれてたほどだ。そんなのが海賊になったっつー大ニュースが飛び込んできたら、大騒ぎになるのも無理はねえ」
「賞金稼ぎ……!? それがなんで海賊なんかになったのよ?」
「さあ。そこまでは知らねえよ。おれも直接会うのは初めてだったしな」
自身も海賊なのに、心底わからない、といった顔をするナミ。まあ、金が絡まなければ常識人である彼女らしい反応ではある。
「じゃ、じゃあよ。つまりあの女はたった一年であんなドラゴン軍団を作り上げたって事か!?」
「まぁ、そうなるんじゃないか? 懸賞金が馬鹿みたいに高ェのは、“天竜人”っていう世界最高峰の権力者たちを虐殺したからだが、蛇王龍の実力は本物だ。海軍大将すらも恐れないあの女は、“世界最悪の海賊”として有名でな。正直、あいつの部下と敵対してよく生き残れたと思うぞ、ルフィ」
「ヒェッ……ぎゃ、虐殺なんてしたのかァ!? やっぱりコエー!!」
「……うん」
麦わら海賊団の狙撃手、ウソップからの問いに答え、自分がどれだけ凄まじい相手に喧嘩を売ったのかをルフィに言い聞かせるエース。
しかし、当のルフィ本人はどこか元気がない。
ダメージが残っている事を差し引いても、戦いが終わって起きればすぐ騒ぐ彼らしくもない姿に、エースやビビを含めた全員が不思議なものを見る目になった。
「どうしたルフィ。お前らしくもねェ」
「……ゾロ。お前も、“鷹の目”に負けた後はこんな気持ちだったのか?」
「……ああ、そういうことか」
「? どういう事だ」
そんな視線を受けるルフィは、しかしそれらを意に介さず自分を背負って歩くゾロに問いかける。
東の海に居た頃、サンジを仲間にした“海上レストラン”バラティエにて、ドン・クリークという海賊を追って現れた“世界最強の剣士”鷹の目のミホークと戦い、手も足も出ずに敗北したゾロ。
つまり、彼は今回のルフィに先んじて、世界の広さというものを思い知らされているのだ。
それを知らないエースはチンプンカンプンだが、まあ何かあったんだろうなと勝手に納得した。
「世界は広い。そんなモン分かりきっていた事だ。が、まあ直接思い知らされりゃ、これほど屈辱的な事はねえ。だが、お前は船長だろ。きちんと前を向け」
「…………ああ、そうだな。おれは、負けねえ。誰にも負けねえぐらい強くなって、そしてあのガロアって奴もぶっ飛ばしてやる!」
「……いいコンビだ。あいつ、いい仲間と会えたんだな。これで安心したよ」
「へへ、そうかい」
同じ痛みを知るゾロに諭され、決意を新たにするルフィ。
そんな弟を見て微笑むエース。
いい仲間と評されて気を良くするサンジ。
しかし、ガロアはルフィとの戦いで能力をほとんど使ってはいない。
素の身体能力のみであしらい、いつまで経っても倒れないルフィに業を煮やして最後の一発だけ使ったぐらいなのである。
が。
「な、なぁ。蛇王海賊団……だっけ? あいつら、やっぱり普段は偉大なる航路の後半に居るんだろ?」
「ああ、そうだな。奴らの拠点は当然ここから遠く離れた先にある。それがどうした、狙撃手さん?」
「……どうやって赤い土の大陸を超えてきたんだ? あのでっかいタコみたいな奴で船ごと飛んでか?」
「あー……。あいつらな、噂だと凪の帯を横断して移動してるんだと。だから、偉大なる航路の前半だろうが後半だろうが、外だろうが中だろうが、どこにでも現れるぞ。蛇王龍が面白半分で北の海や他の海に現れて、ルーキー海賊団や海軍支部を潰して帰って行った、なんて話もよく聞く」
「「エェェエェ~~ッ!?」」
蛇王海賊団のとんでもない厄介さを聞き、全員が目を剥く。
特に、偉大なる航路に入る以前、うっかり凪の帯に侵入してしまいえらい目にあったメンバーの驚きは尋常ではない。
「う、嘘でしょう!? どうやって海王類の群れから逃れて横断を!?」
「それがな。どうも蛇王龍は海王類にさえも本能レベルで恐れられているのか、襲われないらしい。さすがに小舟に乗っていたら襲われた、なんて話をとある伝手から聞いた事もあるが、それも本当なのか怪しいもんだ」
「……ルフィ、諦めた方がいいんじゃねえかな。相手が悪すぎて勝つとか無理だぞ人間には」
「う、うるせえ! おれは勝つぞバカヤローお前!」
話を聞けば聞くほど、同じ人間なのか疑わしくなってくる。
蛇王龍のあまりの理不尽さに、ウソップは早々に白旗を上げ、腕を磨いてリベンジしたいらしいルフィを必死に説得する。
さすがのルフィも相手のでたらめ具合にビビっているが、完全に眼中に無し、といった感じだった蛇王龍の視線を思い出し、ムカーっと闘志を燃やしていく。
ただ、できれば再会するのはしばらく先でお願いしたい、とは思っているが。
まあそんなこんなで。
「い、今はとにかくクロコダイルよ!」
「そ、そうだな! この国の反乱を止めて、そしてクロコダイルもどうにかする! だろ、ビビ!」
「……ええ、そうね。どうにかして蛇王海賊団の力も借りられたらいいのだけど……」
「何言ってんだお前!?」
「だって、あれだけ凄まじい海賊団が味方になってくれたら、クロコダイルだって裸足で逃げ出すと思わない? そうしたらこの国は平和になるわ」
「無理無理無理、無理だ無理!! アレは触れちゃいけないヤツだって! ほら見ろ、おれの“なにかがヤベーセンサー”がバシバシ反応してやがる!」
とりあえず蛇王海賊団の話題から逸らそうとするナミとウソップだが、この国の王女であるビビがよりにもよって話を戻してしまった。
たしかに仰る通りだとは思うが、相手が悪すぎる。ウソップは必死にビビを説得する。
「クロコダイル……王下七武海の一人だったか。たしかに逃げ出すかもしれねえが、蛇王海賊団の危険性を舐めてるぞ、あんた。国ごと潰すぐらい平気でやらかすからな、あの女。それがカンタンにできる力もある」
「そう、でしょうか。エースさん」
「ああ。しかも今回は最高幹部がガロア一人しか来ていないみたいだったからな。蛇王龍のストッパーが不在となると、暴走して何をやらかすか分かったもんじゃねえ。飽きて国を出ていく事を祈った方がいい」
「なるほど……」
人を人とも思っていなそうなのが蛇王龍という海賊だ。
反乱が起きている真っ最中のこの国だろうが、万が一彼女の機嫌を損ねるような事があれば間違いなく国ごと消滅する。
盲信者の群れであるモンスターズばかりがついてきていた様子の今回ならば尚更である。
そう考えると、むしろ天竜人よりもタチが悪いかもしれない。
まあ、実際は意外と蛇王龍ことマデュラは温厚なので、天竜人のようにポンポン悪行を重ねたりはしないのだが。
カジノの入口を破壊した? あの程度ならば挨拶のようなものなのでノーカンである。
マデュラに対するエースの印象:
いつ爆発するか分からない危なすぎる爆弾な上、一度爆発してしまうと国の一つや二つは軽く消える危険人物
わりとだいたいあってる。