「提督になってもらいたい」
大本営の一言で僕は提督になるみたいです。
「君には素質があるのだと思う。曖昧な言い方だがこれからよろしく」
これが回想。僕の考える限り最も簡潔な回想だ。
そんな感じで僕は提督になったとさ・・・・・・。
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車に乗り、三時間とちょっと。だんだんと目的地に近づいてきたと思う。景色は開け、海が近くに見えるようになった。
今日から僕は提督になるらしい。
恐らく大本営の左遷であろう。使えるものは死ぬまで使う。
軍でそこそこの仕事をした僕がそう簡単に軍を辞められるとは思ってもいない。これから始まる事に比べれば、いっその事牢屋にぶち込まれる方がよかったのかもしれない。
「そろそろ着きます。身支度をお願いします」
僕の隣に座る巨体は恐らくその辺の軍人とは違うのであろう。淡々と仕事をこなす機械にも見えた。
「ご丁寧にありがとうございます」
一応礼をしておく。僕みたいな体を動かさない軍人ではあの巨躯にはかないそうにない。
これから向かう鎮守府の資料は手元にある。ブラック鎮守府と言われている場所だ。
ひたすらに私利私欲を満たし、艦娘を虐待していたと、元提督からの証言だ。僕が直接聞いた。
「それにしても酷いですね。国家の存亡に関わる大切な艦娘達に酷い事をするなんて。
隣の巨体に話しかけているつもりだが、返事はない。
「僕も実際に艦娘達を見た事はありませんが、年齢的には少女といって差し支えない女性なんでしょ。そんな少女を虐待するなんて趣味がいいのか悪いのやら」
やはり返事はない。僕の言葉が独り言になったあたりで、運転手が口を開いた。
「到着いたしました」
これから僕の提督ライフが始まるらしい。
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本日の一〇〇〇にこの鎮守府に新しく提督が着任すると情報が入ったのは一週間、それについての議論はいろいろとありました。
しかし、それでは私たち艦娘は解体されるかわからない。一応形式だけは見繕うことになり、私は鎮守府の入り口で提督を待っている。
「加賀さん。次に来る提督はどのような人なんでしょう」
「わからないわ。それでも、前の提督よりもまともで在る事を願うわ」
「そうね。そうだといいのですが……」
赤城さんが心配をしていますが無理もありません。それにいきなり新しく提督が着任するといっても誰も信用できません。私たちが受けた屈辱的な毎日は今さら元には戻りません。
「大本営がこの鎮守府を解体せずにいてくれただけありがたいと思いましょう」
赤城さんは前向きではありますけれど無理をしているのは明らかです。足も声も震えています。
「あの車ではないでしょうか?」
赤城さんがこちらに走ってくる軍用車を見つけました。このあたりで車が走ることは滅多にありません。新しい提督が乗っているでしょう。
「そうね……」
私は不安でいっぱいでした。名誉ある一航戦でもこれまでの事を考えれば仕方ないのかもしれません。それでも私は希望を持ってしまいました。艦娘である私の心はどうしても海で戦う事を望んだのかもしれません。
考えているうちに我が鎮守府の門の前に車が止まりました。
ドアが開く瞬間世界は少しだけゆっくりと時間が流れている気がしました。
「お待ちしておりました」
提督が私たちの前に出てきます。失礼のないよう今できる最大限の気力で私たちは挨拶をします。
「やあ」
すると気の抜けた返事が帰ってきました。
「君たちがここの艦娘ってヤツかな?はじめまして。これから新しく提督になるものです。どうぞよろしく。それとあんまり気を張らなくて大丈夫だよ。ここには憲兵なんていないんだしね」
新しい提督はざっくばらんに返事をして門を通り過ぎてしまいました。
「時間はあるようでないでしょ。これから1時間後にトラックが来ると思うから物資の搬入を手伝って。それととりあえず立ち話は終わりにして。どこか適当な部屋にでも案内してよ」
「わかりました・・・・・・」
赤城さんと私は何が起きているのかもわからず彼を執務室へと案内する事にしました。
このような軍人がいるのかと疑問に思いました。赤城さんも困惑しているようです。少しだけ顔が引き攣っています。
こうして私たちは提督と出会ったのです。