提督になってまで   作:白紙白紙

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第三話 あなただけのもの

「荷物は適当に置いて。冷蔵庫に仕舞うものは勝手に入れておいて、大まかな整理は後でやるから」

 

 提督は私たちにそう言って片づけをします。

 

「後君たちは食堂の片付けをお願い。これだけ酷いと掃除しないと使い物にならない。まずは食堂からだね」

 

 私たちに掃除を任せ、提督は厨房へと消えていきます。

 

「もしかして料理を作るのでしょうか?」

 

 不思議に思い加賀さんに聞いてみます。

 

「私たちが食べられるとは思わないわ」

 

 それもそうです。前の提督がいた時は食堂なんて使った記憶もありません。

 そもそも艦娘に食糧補給という概念はありません。海に出て適切な運用をするだけであれば我々は資材だけで生きていくことができます。だとしてもお腹は減りますし、おいしい食べ物を食べると活力が沸いてきます。

 

「提督が個人的にご飯を食べるのでしょう。そう考えるのが妥当だわ」

 

 加賀さんがもっともらしい事を言います。それもそうですね。期待するだけ絶望が大きくなります。これは今までの教訓です。

 

「それよりも掃除をしましょう。もし片付けができていなかったら彼になにをやらされるかわからないわ」

 

 加賀さんの言っていることはもっともです。今はおとなしくしている提督も本性を見せていないだけかもしれません。

 

 

 

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「提督食堂の掃除なんですが言われたことは終わりました。時間がなかったため中途半端になっているかもしれませんが……」

 

 加賀さんが提督に報告をしている。

 私たちが言われてのは机と椅子を並べここで食事ができるようにだ。そのため食堂の隅にはガラクタが鎮座し邪魔になっている。

 

「いいよこれくらいで。十分だよ。机と椅子さえあればなんとかなる。その後のことはまた後で考えればいいんだよ」

 

 彼はそう言うとまた厨房のほうへと消えていきます。

 厨房からはいい匂いが漂ってきます。

 

「そろそろ時間だね。みんな集まってるかな?」

 

 提督が指示した一三〇〇に総員集合。私はそこに全員が集まっているとは思えない。何名かはいると思うがそれでも提督という人種に嫌悪感を持っている者しかいないこの鎮守府では総員集合など出来る筈がない。

 

「こっちの準備も出来たしそれじゃ行きますか」

 

 

 

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 かつてグラウンドであった場所は雑草が茂り青々としている。誰も使わなくなり、自然に帰ろうとするグラウンドに朝礼台だけが置かれ、そこに提督は立っている。

 赤城の言ったように全員は集まっていまい。前もってい手に入れていた情報と艦娘の人数が違いすぎる。

 

「皆さんこんにちは。今日付けで提督になりました。よろしく」

 

 彼は皆さんの純度100%の憎悪を孕んだ視線を受けてもなお飄々とした態度で挨拶をします。

 

「堅苦しいのはやめだ」

 

 提督そう言うと胸から見たことのない回転式拳銃を取り出し、空に向けて5発撃ちました。

 

「これは僕が提督になるときに渡されたものだ。あそこの鎮守府は提督であろうと容赦なく殺意を向けてくるだろう。もしそのときはこれで艦娘を撃て。例外の鎮守府だいくらでも揉み消す。そう言って渡された。弾薬は特別製。艦娘であろうとぶっ殺せるらしい」

 

 提督はそう言っていますが誰も聞いていません。皆さんの目は淀みきっています。

 

「残り一発、これをどうするか」

 

 回転式拳銃であればほとんどのものが6発装填なので確かに残弾は一発になります。

 

「赤城、ちょっと来てくれ」

 

「・・・・・・はい」

 

 提督は私を呼びます。決意しました。

 

「ごめんね」

 

 そう言って提督は私に銃を向けました。後ろで加賀さんが叫んでいます。しかし呼ばれたのは私です。覚悟は出来ています。せめて海の上で散りたかったのですが贅沢でしょうか?

 

「じゃあ赤城。君の本心を教えてくれ」

 

 提督は銃をおろし私に渡してきました。

 

「僕は軍を辞めようとしたら無理やり提督にされたんだよ。生きていても意味がないから死んでもよかったんだけどね。偉い人が許してくれなかった。提督の素質なんてあるわけないのに。左遷という形でここに来た。軍は僕を死ぬまで使うつもりだ。君に撃ってもらえるなら潔く死ねると思うからやるときは気前よく引き金を引いてね」

 

「私は・・・・・」

 

 

######

 

 

「やめてください、赤城さん!!それは違います」

 

 私は叫ぶ。ここで引き金を引いたら駄目なんです。それはやってはいけないことです。

 

「御免なさい加賀さん。私はいけない娘なんです。今こうして銃を持っていると、体の底からふつふつと殺意が沸いてくるんです。仕方ないじゃないですか。私、提督をぶっ殺したいとしか思えないんです。殺せば今までの事が全部忘れられる気がしてるんです。おかしいですよね」

 

「違いますそんな事をしても意味がないんです!!」

 

「違いませんよ。私たちがされた事を考えれば今殺されようとしている提督は前任の代弁者として死ぬわけです。私たちの総意で死ぬ。皆さんもぶっ殺したいと思っていますよ」

 

 「「撃て。赤城」」

 

 外野が五月蝿い。

 

「加賀さん。私は駄目なんです。潰れそうなんです。今まで耐えてきたのに、今さら殺意を止めようとしても遅いんです。大嫌いな提督を殺せる機会が廻ってきたと考えれば願ったり叶ったりじゃあないですか?」

 

「赤城撃つなら撃ってくれ」

 

 提督も五月蝿い・

 

「加賀さんもしここで撃たないと後悔するかもしれません。彼も前任のように酷い提督だとしたらどうしますか?また懲罰房に行きますか?私は行きたくありません」

 

「それでも違います。撃ってしまったら終わりなんです。恐らく解体でしょう。人間を撃つ兵器なんて欠陥品です!!」

 

 

「それでも私は・・・・・・」

 

 

 

######

 

 

 

 結局のところあの集会に意味があったかと言われると私にはわかりません。しかし提督は生きています。

 

 

 

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 集会は私がへたり込み泣き崩れて有耶無耶になりました。提督が私を見て「白けた。今日は解散」と言って皆さんは寮へと帰って行きました。

 

「ちょっと遅いけど昼御飯があるから食べたい人は食堂まで来てね」

 

 皆さんの去り際に提督が一言添えました。

 

 

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「それじゃあ御飯でも食べようか」

 

 誰もいなくなったグラウンドには加賀さんと提督、そして私しかいません。

 

「はい。いただきます」

 

 私は結局撃てませんでした。

 

「撃てなかったね赤城。死ねると思ったんだけどな」

 

「はい私は撃てませんでいた・・・・・・」

 

「しかたない。それは君に預けてるよ。ぶっ殺したいときはいつでも撃っていいからね」

 

「提督は優しいのですね」

 

「そんなことはない。極悪非道って軍じゃあ有名だったんだよ」

 

 そんな筈がありません。私の目の前にいる提督はとても優しい方です。

 

「それよりも加賀。突っ立ってないで赤城を起こして。御飯食べに行くよ」

 

「え?あ、はい・・・・・・」

 

 加賀さんは困っているようです。表情が顔に出ないだけであの人は感受自体は豊かです。

 

「今日のメニューは白米、味噌汁、鯵の干物、卵焼き。簡単なものしかないけど怒らないでね」

 

 提督はそう言うと歩き始めます。

 

「二人とも早くして」

 

 昼御飯を食べられるなんて本当に久しぶりです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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