提督になってまで   作:白紙白紙

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第四話 お姉さん。信じてみようかしら

「それじゃあいただきますか」

 

 私と赤城さん、そして提督は手を合わせる。

 

 先ほどのごたごたが嘘みたいです。

 

「加賀さん、私たち御飯が食べられるんですよ。夢みたいです」

 

 そう言って赤城さんは目をキラキラと輝かせている。

 

「ほら早く食べようよ」

 

 提督も急かさなくてもいいのに。

 

 

=======

 

 

 提督が作った御飯は大変おいしいものでした。簡単なものでしたが、今の私たちにとっては大変なご馳走です。

 赤城さんは御飯を食べながら、また涙を流しています。泣いたり食べたり忙しい人です。

 

「なんだ、赤城、泣くほどじゃないだろう」

 

 提督は赤城さんを笑います。

 

「加賀さん。貴方だって泣いてるじゃないですか・・・・・・」

 

 私が?

 そんなはずありません。しかし、頬に手を当てるとしっかりとした水分が手に残ります。

 

「どうして・・・・・・」

 

 不思議なものです。私は涙を流しているつもりはありません。

 

「加賀まで泣いてるのか」

 

「違います!!これは・・・・・・その・・・・・・」

 

 私は提督に反論しましたが、提督は面白そうにこちらを見て笑います。

 どうにも彼は苦手です。掴み所のない性格は私と反対のように感じられます。

 

「いいから、いいから」

 

 そうして私たち三人は御飯を食べます。この瞬間は私の人生で一番美味しく御飯が食べられた日だと思います。そして私たちの始まりの日だと思います。

 

 

======

 

 

「提督。ご馳走様でした」

 

 私と赤城さんは御飯を食べ提督に礼を言います。

 

「それにしても君たち二人はよく食べるね」

 

「提督の作る御飯が美味しいからです。しょうがないじゃないですか」

 

「まさか、赤城が御飯を4杯もお代わりするなんて思っていなかったけどね」

 

「やめて下さいよ。提督」

 

 赤城さんは照れているみたいです。

 

「加賀さんだって同じくらい食べてたじゃないですか。私だけ言われるのはちょっと不公平ですよ」

 

「っ・・・・・・」

 

 赤城さんの一言で私にまで飛び火してきました。

 

「よく食べる事はいい事だよ。気にせず食べなさい」

 

 提督は私たちをからかった

 

 

=======

 

 

「提督、洗った食器はここでよろしいでしょうか」

 

 私たちはい昼御飯を食べ終わると荒いものをしました。

 提督は僕がするから大丈夫だよと言っていましたが私たちは何か恩返しがしたっかたのかもしれません。ここは譲れません・・・・・・。そう言って、私と赤城さんは洗物を済ませます。

 

「他の艦娘たちは来ないね。仕方ないといったら仕方ないか・・・・・・」

 

 提督は呟きます。

 

「そうですね。あれだけの事をしたのですから、来る人はいないでしょう」

 

「それもそうだよなあ。結構派手にやっちゃったしねえ・・・・・・」

 

 提督は自覚しているらしい。これで自覚していないのでいたら恐らく馬鹿です。現在進行形で馬鹿ですけども・・・・・・。

 

「結構がんばって作ったのになあ。もったいないなあ」

 

「大丈夫ですよ提督。余ったら私が頂きます」

 

「そうだね。そのときは頼むよ」

 

 赤城さんだけに任せるわけにはいきません。私はご相伴に預からせていただきます。

 

「でもその必要はなさそうだね」

 

 提督がそう言うと食堂の入り口を向きます。

 

「入ってきなよ。なにもしないよ。拳銃なら赤城が持ってるしね」

 

「失礼しますね・・・・・・」

 

 すると何名かが食堂に入ってきた。

 

「それじゃあ御飯だ。君たち並んで。順番に持っていって」

 

 提督は食堂に入ってきた者を受け入れたみたいです。

 

 

======

 

 

「私は陸奥、長門型戦艦の2番艦の陸奥よ。よろしくね。提督」

 

「時雨だよ」「私は吹雪です」「不知火です」

 

 食堂で昼御飯を食べながら一人ずつ提督に自己紹介をしていきます。

 

「一度に覚えられないと思うからゆっくり覚えていくよ。ごめんね。人の名前を覚えるのは苦手なんだ」

 

 提督は困り顔です。

 

「それにしてもこれ美味しいわね。初めてよ、こんなに美味しい御飯を食べたの・・・・・・」

 

 陸奥さんが感心しています。

 

「ちょっと病院にいる期間があってね。そこで色々と研究してたんですよ。料理くらいしかやる事もなかったしね」

 

「司令官は軍医だったのですか!?」

 

「すごいわね」

 

 吹雪さんと陸奥さんが驚いています。

 

「そんなじゃないんだけどなあ。僕、仕事は得意じゃないし」

 

 軍医からの提督へ。なかなか異例の移動である。しかし当の本人は左遷と言っているため、何かをやってここに来たというのは間違いではなさそうです。

 

「それより君たちは僕のことが怖くないのかい?前任の提督には色々と酷い事をされていたみたいだけど?」

 

「怖いですけど、私たち駆逐艦はあまり処罰の対象になりませんでした。前の提督は戦艦や空母、重巡洋艦といった比較的、女性らしい艦娘をよく罰していました。なので、私たちは直接何かをされたことはありません・・・・・・」

 

 それは事実です。見た目が中学生、小学生のような娘に対してはあまり手を出しませんでした。彼はクズといわれて仕方がない人間でしたが、駆逐艦に手を出さなかったことは唯一と言っていい彼の人間性のあり方でしょう。

 

「それでも僕たちは提督のことは怖かったよ。あれは独裁者だ。恐怖政治だ。死んだ方が世界の為になるような人間だった。いなくなって心の底から嬉しかったよ」

 

 時雨さんが先任の提督を口悪く罵る。このような言葉を使う娘ではなかったと思いますが・・・・・・。

 

「不知火は前任の提督からはつまらないと言われ、それ以降、艦隊に配属される事も、お話をする事もありませんでした」

 

 不知火さんのような子は、提督からすれば鬱陶しいだけの存在だったのだと思います。泣き喚くことも無く、ただ指示を待つ、忠実な部下のような性格は。彼の加虐心を揺さぶらなかったのでしょう。

 

「この話はもうやめない?。私だって色々な思いで食堂まで来たんだから。前の提督の話は終わりにしましょう。御飯が不味くなるわ」

 

 陸奥さんは話を無理やり終わらせます。彼女もまた被害者だ。

 

「今日はこの辺で終わりにするか。悪かったね。皿は適当に置いておいてくれれば洗っとくよ」

 

 提督は言いますが、彼が洗うことにはなりませんでした。理由は簡単で、皆さん恩返しのように食器を片付けたからです。

 

#######

 

 

 私は陸奥、長門型戦艦2番艦。名誉ある艦娘だと多少なりと理解しているつもり。

 

 先ほど新たに着任した提督の挨拶があった。それはもう酷いものだったわ。

 

 適当な言葉を並べただけの気の抜けた挨拶は今でも思い出せる。あそこまで適当な言葉を並べる軍人がいたのかと思うと少しだけ面白くなってしまった。

 

 それにいきなり拳銃を取り出して発砲。堅苦しいのはやめってどの口が言ってるのよ。挙句の果てに殺して下さいといって赤城に拳銃を渡すんですから。あれにはお姉さんも驚いちゃったわ。

 

 あそこまで火遊びが過ぎる人間は生まれて初めて見たわ。どう考えても頭の螺子が足りてないもの。それも大量に。

 

 それでも私は前の提督のような人間ではないと思ったわ。なにがどうであれ、人間の所業ではない事を前の提督はやっていたけれど、今回の提督はそのような事はしないと感じたわ。

 

 だって撃てないと思って赤城に拳銃を渡しているんですもの。ただの自殺志願者かと思ったけれど彼は違うわ。何かを考えて赤城さんに拳銃を渡した。その考えがまったく読めていない事は問題だけれど、この鎮守府に来て、艦娘に拳銃を渡すような人間よ。先を読もうにも読めないわ。

 

 それでも考えるとするならば、恐らく彼は信じたのでしょうね。赤城を。出会って間もない赤城を信じ、見事に生還。彼はこの短時間で艦娘の何を見たのか、私にはわからない。

 

 自暴自棄でやった事かもしれないけれど、私は信じることにするわ。彼が新しい提督よ。私たちの・・・・・・。

 

 

======

 

 

 泣き崩れる一航戦を見たのは初めてだったわ。

 

 面白いものが見れた。

 

 それに彼はお昼御飯があると言い残した。まさかとは思ったけれど、私は信じることにしたのだ。提督についていこう。

 

 

 同じ戦艦であり、私の姉である長門を誘ってみたけれど駄目だった。いきなり新しい提督を信じる馬鹿なんている筈が無い。色々とあたってみたが誰一人お昼御飯の誘いには乗ってくれなかった。

 

「馬鹿者は私だけか・・・・・・」

 

 仕方が無い。一人で向かおう。

 

「あの・・・・・・。ちょっといいですか」

 

 寮から出ようとすると吹雪に呼び止められた。

 

「あらあら、どうしたの?」

 

「これから司令官のところへ・・・・・・、向かうんですよね・・・・・・。出来れば私たちも連れて行ってくださいっ!!」

 

 馬鹿者が4人に増えたわ。

 

「・・・・・・いいけれど、貴方達は怖くないのかしら」

 

「怖くないないわけじゃないよ。僕は前の提督事は殺してやりたいと何度も思ったし、今も思ってる。けれどあの人は違う。新しい提督を殺したいわけじゃない。本質が違うんだよ」

 

 時雨が怖い事を言っている。

 

「不知火もそうです。それに、前任の提督と比べるのは失礼が過ぎると思います」

 

「怖いですけど、会って、実際にお話をしてみないとわかりません。それでも私は信じたいんです。馬鹿みたいと思われるかもしれませんが。信じてみたいんです!」

 

 やけに熱のある駆逐艦たちね。

 

「もし気に入らない提督だったら僕が引き金を引いて提督の脳をぶちまけるよ。誰かがやらないといけないなら僕がやる」

 

 時雨が怖い娘になってしまったわ・・・・・・。

 

「じゃあ一緒に行きましょうか」

 

 こうして私たちは提督が待つ、食堂へと足を運んだ。

 

 食堂には今まで食べた事の無いような美味しい料理があり、ここへ来て正解だと感じた。いいじゃない。今日くらいお姉さんにだって食い意地を張らせなさい。

 

 

 心に暖かさがある。気づくにはまだ早いみたい。

 

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