提督になってまで   作:白紙白紙

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第七話 頑張る一航戦と説得

「「ご馳走様です」」

 

 時刻は一〇〇〇前、一航戦の出番は終わりですかね・・・・・・。

 

 提督が朝早くから起きる必要が御飯を作るためでした。しかし、予想以上に提督が起きなかった事はまた別の話です。

 

 最初、提督は赤城さんだけに手伝ってもらう予定だったらしいのですが、私や、陸奥さんが提督のところへ集合してしまい、結局は4人で朝ごはんを作る事になりました。

 

「指令官。今日の予定は何ですか?」

 

「いい質問だよ。吹雪君」

 

「はい!ありがとうございます!!」

 

「今日の予定を発表するね。まずは駆逐艦達、グラウンドの草毟りだ」

 

 草毟りですか。大変そうです。

 

「駆逐艦だけでは大変そうだからついでに加賀もよろしく」

 

 えっ!?

 

「かしこまりました!指令官」

 

「あらあら。大変そうね」

 

「提督。私が草毟りですか?」

 

「人数が多いほうが片付けるのも早いでしょ。期待してるよ」

 

 期待されているのは嬉しいですが草を毟るんですよ。一航戦が。今までの任務でこも、このような事はありませんでした。

 

「そんじゃ赤城は執務室で、僕の代わりに書類整理。僕の意見が必要なもの意外は独断で処理をしてもいいよ。勿論責任は僕が持つけど、それなりに真面目にやってね。

 

「私がやるのですか?大丈夫ですか?」

 

「なんとかなるさ。はいこれ。提督の帽子を被らせておけば、臨時提督の出来上がり。一応、仕事のメモは残しておくからそれに従えば大丈夫だよ」

 

 提督はそう言って被っていた帽子を赤城さんに被せます。本当にいいのでしょうか?それなりの地位にいなければ被る事も許されないものですけど・・・・・・。

 

「後は陸奥。ちょっとやりたい事があるから一緒に来て欲しい」

 

「わかったわ。提督」

 

「昼御飯は一二〇〇。また食堂に集合で」

 

 そう言って提督は陸奥さんと出て行きました。

 

「僕たちもグラウンドへ行こうか」

 

「そうですね」

 

 駆逐艦達も外へ行きます。

 

「加賀さん、私が書類整理をしてもいいのでしょうか」

 

「確実に私たちがやってはいけないものだと思いますが、しかし、やったところで咎める人間は此処にはいないでしょう。ばれなければ・・・・・・」

 

「はぁ・・・・・・、気が重いです」

 

 赤城さん臨時提督頑張ってください。

 

 

######

 

 

 

「私に手伝って欲しい事ってなに?」

 

 私を名指しで指名してるのならば、私にしか出来ない事なんだと思う。

 

「姉妹艦。長門だよ。いるんでしょこの鎮守府に」

 

 長門型戦艦のネームシップ、そして私の姉。世界のビッグ7。

 

「やめておいた方がいいわ。長門に会うのは・・・・・・」

 

 長門は前任の提督に手痛い仕打ちを受けている。筆舌に尽くし難い。どう考えても今彼女に会うのは得策ではない。

 

「わかってるよ。それでも彼女には会わなければいけないと思うんだよ。」

 

「それでも長門には今会わなければいけないんだ」

 

 提督は考えを変えない。

 

「そこまで言うなら行きましょう。それでいいわね」

 

 私は提督を連れて、私たちの部屋がある場所へと歩く。部屋と言ってもボロボロの木造建築。どう考えても、物置としか考えられない場所。

 

 屋根があるだけで十分、そう思っていたけれど改めてみると酷いものだわ。

 

 

======

 

 

「提督はそこで待っていて、長門を連れて来るから。」

 

 私は提督を寮の応接室に通す。応接室と言っても、今にも折れそうな足を生やした机に木箱を並べただけの、椅子と机と言うには余りにも粗末な物体。

 

「此処も改築しなきゃだね・・・・・・」

 

 提督が言葉を漏らすが私には聞こえない

 

 私は長門のいるはずの部屋へ行く。

 

 今、提督と長門を引き合わせても碌な結果にはならないでしょう。未来なんて見えないけれど今回ばかりは結果がわかるわ。

 

 

======

 

 

「君が長門だね?」

 

「そうだ。長門型戦艦一番艦、長門だ」

 

 思ったよりも長門を此処へ連れて来るのは簡単だった。提督が呼んでいると言ったら、特に拒否する事も無くすぐに腰を上げてくれた。

 

「単刀直入にわかりやすく言うけれど、僕の指揮の下で鎮守府で動いて欲しい」

 

「用件はそれだけか?」

 

「それだけ」

 

「ならば無理だな。私はお前を信用できない。昨日来たばかりの正体不明な人間に従えといわれてもな・・・・・・」

 

「それもそうだよね」

 

 提督と長門、このままでは平行線だ。

 

「僕から提供できるものなら出来る限りの事はやるつもりだけど?」

 

「なら今すぐに此処から出て行ってもらいたい」

 

「それはちょっとね・・・・・・。偉い人に怒られちゃうよ」

 

「それなら無理だな。私を説得するのは時間の無駄だ。お前も自分の職務に戻ったほうが有意義だぞ」

 

「説得も無駄か」

 

 長門の考えもわかる。それでもこの提督ならば変えてくれると思っていた。

 

「今日のところは帰るよ。それとこれ」

 

「なんだ?」

 

 提督は胸ポケットから封筒を取り出し、長門に渡す。

 

「今日の二一〇〇くらいに中身を見て欲しい。そこに理由は書いてある。君はこの手紙を見て必ず行動を起こす」

 

「よくわからんがこれは受け取る。しかし行動を決定するのは私だ。それでは失礼する」

 

 長門は立ち上がり、自室へと帰っていく。私は提督が渡した封筒の中身を知らない。

 

「いいの、提督?」

 

「今回が駄目でも次がる。気長にやろう」

 

 提督も立ち上がり、部屋を出る。

 

「草毟り戦隊の様子でも見に行こうか?」

 

 私に笑いながら声を掛ける。5月の風が心地よかった。

 

 

######

 

 

「やってるかー」

 

 提督の気の抜けた声が聞こえてきます。

 

「指令官、意外と雑草を抜くのは難しいですね」

 

「そうかー。ちゃんと根っこまで引き抜くんだぞ。そうしないとまた生えてくるんだよ」

 

「こうでしょうか、指令?」

 

「不知火はセンスがいいな。よく出来てる」

 

「ありがとうございます。指令」

 

 提督が不知火さんを褒めています。

 

「加賀、似合ってるわよ。そのジャージ」

 

「ジャージ一航戦。様になってるよ」

 

 私だってジャージが似合う一航戦にはなりたくありません。

 

「今週中に終わればいいかな。それまでは第一農耕戦隊として頑張ってくれ」

 

 農耕戦隊って・・・・・・・。私たちはもともと海で戦う艦娘です。それが陸で雑草の処理など・・・・・・。

 

「引き続き頼むよ」

 

 提督は、また何処かへ歩き始めました。

 

 

######

 

 

「提督助けてください。書類仕事が終わらないんです」

 

「ゆっくりでいいからな。確実にやれば大丈夫だよ」

 

 提督に泣き付いたものの返事は私の想像していたものではありませんでした。

 

 私は執務室で、本来提督のやるべき仕事である、大本営からの資料整理をやっています。まさか司令部も、艦娘が提督の代わりに仕事をしているとは思わないでしょう。

 

「赤城、これとこれ以外の資料は僕の印鑑を押していいよ」

 

 提督は私が分類していた、提督のサインが必要なものに目を通し、また私に仕事を押し付けてきます。本当にこれで大丈夫なのでしょうか?

 

「責任は持つよだから赤城が頑張ってくれればいいんだよ」

 

「そういわれましても・・・・・・」

 

「赤城、頑張ってね。提督っぽい貴女も素敵よ」

 

「陸奥さんもからかわないで下さいよ」

 

「そうだ。ついでにこの上着も着てみなよ。提督らしくていいんじゃないかな?」

 

 提督が私に上着を羽織らせます。提督までふざけないでください。私が着るべきものではありませんし、サイズが大きすぎます。

 

「最近暑くなってきたから丁度いいや。階級章を含めて僕には重すぎるし、暑苦しいと思ってたんだよ」

 

「提督は真面目ではありませんね」

 

「真面目にするべき事以外は適当でいいかなと思っている性分で」

 

 陸奥さんが隣でくすくすと笑っています。他人事だと思っていますね。

 

「色々と大変そうだけど、ここで朗報。昼飯の時間だ」

 

 時計を見ると、時刻は一二〇〇前、知らないうちに時間は過ぎていくみたいです。

 

「いったん休憩。食堂へ行こう」

 

 私たちは食堂へ向かう事にします。

 

 提督の帽子を被り、上着を羽織った私をみて、加賀さんが見た事もない顔をしていました。ちょっと面白かったです。

 

 

######

 

 

 昼御飯を食べ終わると、提督は私たちに指示を出す。

 

「陸奥、次は川内型に会いたいんだけど・・・・・・」

 

「川内達に?」

 

「彼女達は恐らくだけど、僕に協力的だと思うんだよね」

 

「どうして?」

 

「勘だよ。赤城が僕を撃たなかったみたいなものだよ。信じてる」

 

 提督の根拠の無い自信はどこから来るのか。私にはわからない。

 

「案内よろしくね」

 

「わかったわ提督」

 

 

======

 

 

 川内姉妹が暮らしているのは、長門がいたような寮ではなくテントだ。鎮守府の敷地の隅。巨大なテントを張り、そこで暮らしている。理由を聞いてみたら前の提督が触ったものに触れたくない。あの人が用意したものを使いたくない、そんな理由だったと思う。

 

「提督ですか」

 

 私たちはブルーシートの上に通された。座布団を敷き、小さな卓袱台をおいただけ異質な空間だ。

 

「何も無いですけど」

 

 そう言うと神通は提督と私に湯飲みを運んできた。中身は水だった。

 

「ありがとう神通・・・・・・でいいのかな?」

 

「そうです。川内型の神通です」

 

「今、君一人だけ?」

 

「川内姉さんは寝ています。那珂ちゃんは哨戒任務に出ています」

 

「君たちが近くの海域を哨戒してくれているお陰で今のところは、深海棲艦の目立った動きは無い。感謝しているよ」

 

「私たちはやるべき事をしているまでです」

 

「それで、相談なんだけどね、僕の指揮の下で動いてくれないか?」

 

「私は別にそれでも構いません。しかし、川内姉さんや、那珂ちゃんの意見も聞かなければなりません」

 

「なるほど。それならば那珂は何時帰ってくるんだ?」

 

「もう少しで帰ってくると思います。そろそろ交代の時間なので」

 

「それまで待っていてもいいかな?」

 

「構いません。ゆっくりしてください」

 

 提督は那珂が帰ってくるまで此処で待つつもりらしい。青いパッケージの煙草を取り出し火をつける。

 

 

======

 

 

「那珂ちゃんが帰ってきたよ」

 

 元気な声が聞こえてくる。

 

「お帰りなさい、那珂ちゃん」

 

「あれ?提督どうしたの?」

 

「ちょっと君たちに話があってね」

 

「それで此処まで?」

 

「神通にはもう話した。そうしたら、三人に意見を聞いてくれと言われたんで待っていたんだ」

 

「なるほどー。それでお話は何ですか?」

 

 提督は先ほどの話を繰り返す。

 

 

======

 

 

「私は別に構いません」

 

「ありがとう」

 

 思った以上に簡単にいきそうだわ。

 

「ただし条件があります。私たちが続けている哨戒任務はこれかもやらせて下さい。それと、艦娘達の言う事に耳を傾けてください。決して話半分ではなく真面目に、真摯に受けてとめて下さい」

 

 神通がしっかりとした口調で提督と交渉する。

 

「願ったり叶ったりだよ。このまま哨戒を続けてもらいたかったんだよ。二つ目の事、君たちの人権についても保証するよ。ちゃんと同じ目線で話しをしよう」

 

 どうやら提督と川内姉妹の次女と三女は私たちと一緒に動いてくれるらしい。ありがたいわ。

 

「後は川内だけか」

 

「川内姉さんはこの時間は動きません。夜の哨戒のために寝ていますし・・・・・・。」

 

「わかったよ川内とは今度、それと君たちが少しだけ話してね」

 

「わっかりました、提督」

 

「それと食堂に夕食を用意しているから何時でも顔を出していいよ。君たちの分も勿論用意してある」

 

 提督はそう言うと席を立つ。神通たちは首を傾げていたが、礼をして、提督を見送る。

 今日から食堂に人が増えると思うわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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