ORB-DARK-CHRONICLE   作:とりっぷ

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お久しぶりの投稿になります。もっとペース上げてこうね!ということで本編にいきましょう!


新たな依頼

 報酬をもらったザイトとトルテはペンドラゴンの中でこのターミナルを出発する準備を始めていた。

 

「いやー、思わぬ収穫だったね。しばらく仕事しなくてもいいかも」

「まあだいぶ余裕はできたな」

「でもなんであいつらあんなに武装が整ってたんだろう」

「気にはなるが別にそう言うならず者がいないわけじゃない。この施設に何かしらあって奴らを雇った連中が装備を提供するなんてこともないわけじゃないからな」

 

 確かに妙ではあったが、この辺りは辺境だ。はっきり言ってしまえば治安が悪い。武器の流通なども盛んである。それなりに金を出せばそういうこともあるのだろう。荷物を整理しながらそんなことを話していた二人は船に手を振っている人物がいることに気づく。知っている人物だった。

 

「あれ? あの人ってカフェの」

 

 そう、ニュイと呼ばれていた女性だ。

 

「どうしたんだろ。ちょっと話してくるね」

「……」

 

 そう言って外に出ていくトルテを見送ったザイトはまた厄介ごとでも持ってきたのかと小さくため息をついた。

 そうしてしばらく話していたトルテが戻ってくる。どうやら予想は見事に的中してしまっていたらしい、まったくもって理不尽なのだがそうなってしまった以上話を聞くほかない。

 

「なんか、トートルターミナルまでの護衛を頼みたいんだって」

「トートルというとここから少し距離があるな」

「うん、確か惑星内のターミナルで結構大きなところなんだよね」

「なんだってそんなところに」

「元々お店はそこにあってここしばらく頼まれてここで営業してたんだって。で、こんなことがあったから一旦戻りたいそう」

「なるほどな……」

 

 筋は通っているように思える。詳しくは本人から直接訊くしかないだろう。できれば無視をしたいという気持ちを抑え彼はとりあえず話を聞くことにする。

 

「まぁトートルまで行きたいってのは本当なんだけどその前に本命の依頼があるわけで」

 

 場所を変えた先で、などと本人は宣った。大方予想していたことではあったがこの女は厄介事を持ってくるプロフェッショナルか。それとも一応話は聞いてやるかと思っている自分がお人よしなのか。

 

「メルスって惑星は知ってる?」

「確か、だいぶ前じゃ観光惑星として人気だった惑星だったな」

 

 そしてそんなことはどこ吹く風といった様子でニュイは話し始める。

 

「そ。私の故郷なんだけどさ、実は今観光どころじゃなくてヤバいんだよね」

「具体的に言え。何がヤバい?」

「……まあそれくらいはいいか。他言無用ね」

 

 そう言ってひと呼吸おいたニュイは、話を続けた。

 

「侵略用途に使われる植物が星に寄生して、それの対処で手を焼いてるの。すでに根付いてしまった場所をすぐに隔離してどうにかそれ以上の侵攻を防いでる状態」

「……そうか。だが何故俺に?」

「侵略とは言うけど誰が放ったものでもないの。あれは何かしらの事情で破棄されたものが運悪くそこに流れ着いて定着した」

 

 何という確率だろうか。事故にしたってあまりにもタチが悪い。しかしその言葉はザイトの質問の答えになっているわけではない。なので彼は改めて強く言葉を紡いだ。

 

「もう一度訊く。何故俺だ」

 

 ザイトの言葉にニュイは小さくため息をつくと話を続けた。

 

「この前の襲撃、君が一番の立役者でしょ。どうやったかは知らないけどあんな装備であの龍みたいなロボットを破壊した。私はその奥の手に期待してる。内容は詮索しないけどやれる?」

「やれるかは実物を見てみないと分からないな」

「まぁそうよね。諸々の詳しい話はメルスについてからでいい?勿論その後に断ってもらっても構わない」

「いいだろう。あの子はどうする?見たところ出身地が同じには見えないが」

 

 ザイトの言うあの子とはココアの事だ。ザイトやトルテと同じタイプのポピュラーな人型であるニュイと人の要素が強いとは言え獣人であるココアが同じ惑星出身でない可能性が高い。ならば今回の件とは関係ないのではないか。しかしその質問にニュイはあっけからんと答えた。

 

「あの子は大丈夫。確かにあなたの言う通りなんだけど、他に行くアテもないしね。大きな声じゃ言えないけど孤児なのよ、あの子。たまたま私が引き取ることになって今に至るってね。私も本当は腰を落ち着かせたいんだけどこの件が終わらないとそうも言ってられなくて」

 

 彼女らは彼女らで中々複雑な事情を抱えているようだ。この豪胆さはそういった経験からくるものなのだろうか。なんにしてもまずはメルスについて現状を確認してからだ。そしてもう一つ。

 

「お前の依頼を受ける際にお前の言う俺の奥の手を決して口外しないならメルスに行こう。それを承諾できないならこの話はこれで終わりだ」

「もちろん、他言無用ってことでそこは信頼してもらって構わないわ」

 

 ザイトの顔をまっすぐ見つめてニュイは宣言する。ならばそのことについては問題ないだろう。ウルトラマンの力を持つということはそれだけで余計なことに巻き込まれる可能性をずっと引き上げてくれる。そんな面倒ごとはご免被るのだ。

 

「ならいい。それで、いつ出発する?」

「んー準備ができ次第だから早くて今日、遅くとも明日かな」

「なら明日だ。大事なら俺達にも準備がある」

「りょーかい。じゃあ今日はこれで」

 

 そう言って彼らはその場を離れることにした。

 ペンドラゴンに戻ったザイトにトルテは少し心配そうに声をかける。

 

「ねえザイト、あの依頼本当に受けて平気だったの?」

「なんだ?お前は乗り気だったように見えたが、気でも変わったのか?」

「だってザイトこういう内容が不透明なやつ渋るかなって」

「確かに。だが今回はそうも言っていられなくてな」

「というと?」

 

 トルテの質問に少し間をおいてザイトは答えた。

 

「…少し予感があってな」

「予感?」

「杞憂ならそれでいい」

 

 それだけ話すとザイトはこれ以上このことについて口を閉ざす。そうして二人はペンドラゴンに戻り明日のために準備を始める。

 この胸のざわめきは何か。ハッキリと言える心当たりはない。しかし思えば一つ、あるかもしれない。オーブリングNEO。この神秘を模した力が何かを自分に訴えかけようとしているのか。

 などと思ってはみたものの、結局は自分の勝手な憶測でしかないのでそれをトルテに言うつもりはない。

 

「ふーん、変なの」

 

 そんなザイトの態度が気になったトルテであったがとりあえずこれ以上追及するのはやめておく。お互いわずかな疑問を残しながら出発の準備を進めていった。

 

 

◆◆◆

 

 

 次の日。一隻の宇宙船がターミナルを後にする。ザイトたちのペンドラゴンだ。店の設備は向こうの借り物だったらしく彼女らが持ち込んだのは私服などの最低限の私物のみで後は手ぶらだった。なのでもともと貨物船でもあるペンドラゴンなら搭乗員が2人増えた程度十分に賄えるのだった。

 旅路に関しては大きな危険はない。一応彼女らの護衛として役割も兼ねているがはっきり言って表向き用の依頼でそんなものは飾りでしかない。

 搭乗員が増えたため人員に余裕が増えたトルテはココアとなにやら話始める。実際目的地は設定してあるので自力で操縦しなければならない部分はあまりないので問題はない。それに見張りはザイトとニュイの二人でやっているので人では足りている。

 

「ねえ、ココアちゃんはニュイさんとどうやって出会ったの?」

 

 不意にトルテがココアに質問を投げかける。ココアはト現在トルテの部屋にいる。部屋といっても激しく飛行することもあるペンドラゴンだ。小物などはほぼ無いといっていい。ベッドに腰かけて話している状態だ。

 

「それは……。ニュイさんは、ある人に紹介されたんです」

 

 トルテの持ち前の明るさがそうさせるのか、ココアはすでにある程度トルテに気を許しているようだった。特に嫌がる様子を見せることもなく自然に話を始めた。

 

「ある人って?」

「わたしの命の恩人です。もともとわたしは宇宙を旅してる旅団の中で暮らしてたんです。でも、宇宙海賊に襲われてしまって……」

 

 そこまで言ってココアの顔が曇る。トルテはすぐに自らの過ちに気づいた。デリケートな問題に非常に軽率に首を突っ込んでしまったのだ。トルテはすぐに隣の少女の頭を撫で、落ち着かせてやる。

 

「ごめんね。ボクが無神経だったよ」

「いえ、いいんです。自分の中じゃもう整理をつけてるつもりだったので…」

 

 うつむきながらされるがままのココアを見ながらトルテは思う。ああ、彼女はなんて強いのだろうと。ここまで聞けばわかる。彼女の仲間は、両親はすでにもうこの世界にはいない。そうして最終的に預けられた先がニュイの下だったのだろう。それまでにどれだけ暮らす場所を変えてきたかわからないが、この幼い少女はそれを整理をつけているつもりだと言ったのだ。それが強いと言わずしてなんだというのか。

 

「キミは、強いね」

 

 そのことをトルテは改めて口に出す。その言葉が少しでもこの小さな少女にのしかかるものを軽くできると信じて。

 

「そんなこと、ないです…」

「辛気臭いのはおしまい!!」

 

そこまで話した瞬間、トルテはずっと気になっていた少女の何とも触り心地が良さそうな尻尾に飛びつく。

 

「ひゃう!?」

「うーん! やっぱりモフモフ!」

 

 ココアの尻尾を軽く抱きしめながらトルテは表情を緩ませ何とも幸せモードになってしまった。

 

「これはザイトには一生かかっても味わえない感覚!」

 

 ココア自体尻尾に触られること自体は慣れているのか最初こそ驚いたものの、それ以降は特に嫌がるそぶりも見せず少し恥ずかしそうにトルテの行為を受け入れていた。

 そしてトルテの言葉を聞いてココアふと疑問を口にする。

 

「失礼だったらごめんなさい。トルテさんは、あの人とどうやって出会ったんですか?」

「ザイトと? うーんそうだなあ」

 

 先ほどと同じことをしていることに若干うしろめたさを感じつつもココアは質問を投げかける。その質問に特に気にする様子もなくトルテは普段と変わらぬ様子でかつての出来事を話し始める。

 それはまさにザイトがこの少女を助け出した直後の話だった。




というわけで次回二人の出会いのお話になります。

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