苗木くんと七海さんと赤松さんと   作:佐藤秋

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11 苗木くんたちとピクニック②

 

 突発、公園で行うポケG○で、誰が一番モンスターをゲットできるのか大会。その結果発表。

 優勝は、意外性も大番狂わせもない、妥当も妥当、七海さんだった。

 そして最下位は苗木くんだ。苗木くんはコイキングをゲットしていた。山の上なのに。

 

「……んー、ねみぃ……」

 

 お弁当を食べていたシートに腰を下ろし、結果を三人でワイワイ話していると、七海さんが目をこすり始める。

 食事をしたうえ、モンスター探しに適度に歩き回ったから、眠気が襲ってきたようだ。

 

「あらら。このねみぃは、いつもより数段上のねみぃだね」

「そのなの?」

「そうだよ、多分。いつもより数段眠そうじゃない? ねえ七海ちゃん」

 

 赤松さんの問いにコクコクと頷く七海さん。

 すぐにでもこっくりこっくり舟を漕ぐモードに入りそうで、苗木くんは焦った。七海さん、ここで寝ちゃだめだよ。

 対して、赤松さんは余裕の表情をしていた。

 

「別に、お昼寝してもいいんじゃないかな? 今日は太陽もポカポカで気持ちいいよ」

「それに賛成だよ。お昼寝する。苗木くん、その荷物の中に枕とか無い?」

「いやさすがに用意してないよ……」

「むう。まあそうなんだけど、苗木くんならもしかしたらって思ったんだけどな」

「そんな無茶な……」

 

 なんてやりとりを七海さんと苗木くんがしていたら、赤松さんが自らの膝をポンポンと叩き始める。

 

「ほら、七海ちゃん、おいでー」

「わー」

 

 なんの逡巡も遠慮もなく、赤松さんに膝枕をしてもらう七海さんだった。枕を求めていた七海さんにとって、赤松さんの膝枕は渡りに船だった。

 横になりながら七海さんは言う。

 

「苗木くんも……一緒に寝よ?」

「え? ええと、ボクは……」

「いいよ、苗木くんもどうぞー。ほら、狭いけどこっちの膝なら空いてるよ」

 

 大丈夫、顔に落書きなんてしないからとか言われて、そういう問題じゃないんだけどなあと苗木くんは考えながらも、結局は赤松さんに膝枕してもらった。

 

 赤松さんの提案に驚いた苗木くんであるが、膝枕をしてもらう苗木くんを見て、観察していた四人、霧切さんたちも驚いた。

 驚いた上にエキサイティングして、会話も盛り上がっていた。

 

「苗木くんも男の子ね……」

「赤松さんの、年上特有の包容力がすごいんじゃないですか?」

「苗木くんが赤松さんより背が低いおかげで驚くほど健全に見えるわ」

「七海さんとは同じくらいの身長ですし、普通に仲のいい兄弟みたいですよね」

 

 苗木くんと七海さんの身長は、ともに160で同じだった。

 ちなみに赤松さんは167で、二人よりも若干背が高い。これがお姉さん力の正体である。

 

「……」

「うらやましいって顔ですね、最原先輩」

「日向くん!? 僕はそんな……いや、ちょっと思ってしまったのは事実だけど」

「大丈夫ですよ、俺も思ってますから。もっとも俺がいいなあって思うのは、七海と並んでの昼寝のほうですけど」

「け、結構ぶっちゃけるね日向くん。女の子たちもいるのに」

「苗木のあんな姿を覗いているわけですからね。だから俺も取り繕うのはやめようと思いまして」

 

 女性陣二人が盛り上がっている横で、男性陣二人も盛り上がっている。

 

「うらやましがっているところ悪いのだけど、あなたたち二人のどちらかが今の苗木くんの立場だったらと考えたら、少し絵面がキツいわね」

「二人とも170……日向さんに至っては180近くありそうですもんね。どちらかというと膝枕してあげる立場でしょう」

「あ、なるほど確かにそれもそうだな。眠そうな七海に膝を貸してやるってのもいいかもしれない」

「……最原くんはどうなのかしら。見る限り、赤松さんに膝枕してあげるのは大変そうよ?」

「僕はそういうのじゃなくて、二人で手を繋いで歩いたり……って、僕が赤松さんに対してそう思ってるとかじゃないからね!? 思わず答えちゃったけど!」

 

 そして最終的には、四人で盛り上がるのだった。

 日向くんなど三人とはほとんど面識が無かったのに、すっかり打ち解けている四人である。

 

 さて、一方苗木くんたちはというと。

 赤松さんに膝枕され死ぬほど照れていた苗木くんだったが、目を閉じているうちに意外にもすぐに眠りに落ちてしまっていた。なお、七海さんはとっくに爆睡中だ。

 

 赤松さんは以前クラスメイトである超高校級の保育士・春川魔姫が育った孤児院で、彼女とともに子どものお世話をしたことがある。

 そのため子どもの相手は慣れているところではあったが、苗木くんがすぐに寝たのはそれだけが原因では無さそうだ。

 

「……あれ、苗木くんももう寝ちゃってる。疲れてたのかなあ」

 

 そう言って、赤松さんは苗木くんの頭を優しく撫でて、微笑んだ。お姉さん力がいよいよとどまるところを知ららない赤松さんだった。

 

 その様子を見ていた四人がまた騒ぎ始める。

 

「……もしかして苗木くん、眠ってる? え、赤松さんにあんなことされてる状況で、そんなに早く眠れるものなの? 今日の学校でそんなに疲れることがあったのかな」

「まあ、苗木くんはいつも学校では何かしら忙しそうにしてますけど……」

「朝日奈さんと大神さんのランニングに朝から付き合ったり、昼休みには桑田くんや葉隠くんとキャッチボールしている姿をよく見るわ。他にも、授業の合間には先生から資料運びを手伝わされたりしてるし……基本的に人の頼みを断らないのよね」

「見たところ、弁当は苗木が用意したんだろ? なら当然そのぶん早く起きてるわけで、睡眠が足りてなかったのかもな」

 

 この四人は全員基本的に頭がいいほうなので、的外れなことを言う人はいないのだった。

 赤松さんの持つ癒しオーラに苗木くんが勝てなかったとか、冗談として思い浮かんでも、口に出すことはしないのである。

 

 観察を続けていると、いつの間にか赤松さんも膝枕した状態のまま眠っていた。観察対象の動きが無くなり、退屈でこちらも眠くなる。

 日向くんが、動きがあったら起こすから寝てていいぞと頼もしいことを言うので、みんな寝た。

 

 霧切さんや最原くんなど、探偵が観察中に寝るなんてと思うかもしれないが、眠れるときに眠るのも立派な探偵の役目なのだ。

 というかそもそも、これは尾行や張り込みなんかではなくて野次馬なので、寝てしまっても全然問題ないのだった。

 

 やがて苗木くんたち三人と、日向くんを除く霧切さんたち三人が目覚めるころには、あたりはすっかり暗くなってしまっていた。

 この場のほとんどの人物が学園内の寄宿舎を利用していて、それの門限はすでに過ぎている。日向くんは唯一寄宿舎住まいではなかったため、門限のことは知らなかったのだった。

 まあ、本校舎の生徒は寄宿舎を無料で使えるが、予備学科の生徒はそうでないので、元予備学科の日向くんが知らないのも無理はない。

 

 ということでどうするかというと、霧切さんの学園長の娘という権限を利用して、舞園さんも最原くんも寄宿舎に戻れたのであった。友達のためにはコネの利用も辞さない霧切さんである。一見クールのようで、霧切さんは情に篤い人だった。

 

 三人が望むなら苗木くんたちも寄宿舎に戻れるよう手配しようと考える霧切さんだったが、あちらはあちらで当てがあるようだった。

 苗木くんの実家が駅から数駅のところにあるので、赤松さんと七海さんはそちらに泊まることにしたのだ。

 

「赤松さん七海さんいらっしゃい! 待ってたよー!」

「おいっす、こまるちゃん。久しぶりだね」

「お邪魔します。苗木くんが泊めてくれるって言うから来ちゃったよ」

「うんうん。お兄ちゃんもたまにはいいこと言うね」

 

 苗木家に行った赤松さんたちは、こまるちゃんに大歓迎されていた。

 頻繁に帰ってくるとはいえ、久々の帰宅なのに兄を蔑ろにする妹に苗木くんは憤慨している。とはいえ根が優しいために特に怖くなかった。

 

「こまる! 玄関先で騒いだら近所迷惑になるだろ!」

「はいはい。もー、ちょっと後回しにしただけで怒らないでよお兄ちゃん」

「怒ってない。そんなこと言ってると、次からこまるへのお土産は無いからな」

「ってことは今回はあるんだね、ありがとう!」

「もー……」

 

 普段とは違う苗木くんの態度と、妹との仲の良さを見せつけられて、ほっこりとする赤松さんと七海さんだった。

 

 このあと特に問題もなく、普通にお泊りした二人だった。

 

 

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