苗木くんと七海さんと赤松さんと   作:佐藤秋

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七海「……えー、大事なお知らせだよ。今回からしばらく、台本形式の話が続きます。苦手な人は注意してね」

七海「それでも大丈夫だよって人はよろしくお願いします。それじゃあ、本編スタートだよ」




23 七海さんと風来のカエデ①

 

 

 ~シェアハウス内~

 

 

七海「……よーし、テストで赤点もなかったし、冬休みに突入だね」

 

七海「一日ずっと休み……これでゲームやり放題! ……なわけだけど、実はやりたいことがあったりして」

 

七海「それは……ズバリ、楓さんにゲームをプレイさせることだよ」

 

七海「対戦ゲームとか付き合ってくれるけど、一人用のゲームもやってほしいんだ」

 

七海「ゲームをプレイするのはもちろん楽しいけど……人のプレイを見たくなるときもたまにある……よね?」

 

七海「せっかく一緒に住んでるんだし、これを試さない手はないよ」

 

七海「というわけで、さっそく……」

 

 

 オーイ、カエデサーン!

 

 

赤松「来たよー、いえい。今日は私だけゲームするんだね」

 

七海「そうだよ。本日楓さんに挑戦してもらうゲームは……これだ! スーパーファミコン、『風来のシレン』」

 

赤松「あ、この前から千秋ちゃんがこたつでやってるやつだね」

 

七海「うん。スパチュンの名作、『1000回遊べるRPG』だよ」

 

赤松「スパチュン……? なんとなーく、遠くで聞き覚えがあるような……」

 

七海「……さてと、じゃあここで話してても仕方ないからさっさと始めちゃおう」

 

赤松「そうだね。……ふふ、いつも千秋ちゃんが座ってる、こたつのゲームの特等席ゲットだよ!」

 

七海「私は隣で楓さんのプレイを見てるよ。ウサ木くんと一緒にね」ギュー

 

赤松「誠くんの代わりだね。よーし、電源、オン!」

 

 

テレビ『~風来のシレン~』

 

 

赤松「始まったよ。えっと……」

 

七海「この『風来日誌を作る』が、いわゆる『はじめから』ってやつだね。途中からでも別にいいけど、せっかくだからそれにしようか」

 

赤松「はーい……おっ、名前入力。……風来の、カ、エ、デっと」

 

七海「ほうほう、楓さんは主人公に自分の名前をつけるタイプなんだね」

 

赤松「そう言う千秋ちゃんは……風来のクリハラ?」

 

七海「あ、私のは適当だよ。何周もやってたらだんだん名付けって適当になるよね。でも……私も初めてやったときは、風来のチアキにしてたかも」

 

赤松「ほら、やっぱり。それに私の名前、なんとなくゲームの時代にもマッチしてる気もするし」

 

七海「分かる。カエデとかチアキって、片仮名で書いたら女の人の忍者って感じするよね」

 

赤松「くノ一ってこと? まあ確かに言われてみれば……」

 

七海「……って、話してたらゲームが始まったね」

 

赤松「わ、早い。見てなかったよ」

 

七海「レトロゲーは、オープニングが一瞬だからね。ボタン押したらすぐスキップするし」

 

赤松「そうなんだ」

 

七海「一応説明しておくと、主人公は旅人。ダンジョンを進んで30階にいるボスを倒せばクリアだよ」

 

赤松「ふむふむ。……村の人にも話を聞いてみたかぎり、太陽の大地ってところに黄金のコンドルがいるみたいだね。そこが千秋ちゃんの言ってるところかな……むっ」

 

酔っ払い『グヘヘヘヘ……おめえさん、いい体してるじゃねえか』

 

赤松「……この人、なんかいやらしい気がするよ」

 

七海「確かにそんな感じだけど、カエデは男だから多分違うよ」

 

赤松「あっ、そっか。……矢の使い方を教えてくれる人だったね」

 

七海「昔のゲームだから、操作方法はこうして会話で教えてくれるんだ」

 

赤松「他の人も大体そんな感じだったよ。もう話す人もいないし、旅に出よう!」

 

 ~杉並の旧街道~

 

 テーテッテッテッテ テッテッテッテ テーテテテーテテテーテテテーテーテーー

 

赤松「おー、軽快ないい曲だね」

 

七海「そうなんだよ。このゲームは音楽もいいんだ」

 

赤松「ゲームにもいい曲はあるんだねー。……あっ、敵! よーし、ここは……」カチカチ

 

七海「うん、いい感じだね。ちゃんと先制攻撃できてるし、立ち回り方は間違ってないよ」

 

赤松「何度も千秋ちゃんのプレイを見てるからね。このくらいは分かるよ」

 

七海「敵に囲まれないよう通路で闘う……完璧だね」

 

赤松「でしょ。……おっ?」

 

 ヨォー チャチャチャッ チャチャチャッ チャチャチャッチャ ハッ!

 

赤松「早い! もうレベルが上がったよ!」

 

七海「そうだね、最初は結構サクサク上がるよ」

 

赤松「このレベルが上がるときの音もおもしろいね。もう一回聴きたい」

 

七海「闘ってたらすぐだよ。あ、ほら」

 

 ヨォー チャチャチャッ チャチャチャッ チャチャチャッチャ

 

赤松・七海「「ハッ!」」

 

赤松「あはは、おもしろーい」

 

七海「音に合わせて『ハッ!』って言うのはみんなやるよね」

 

赤松「誰の声だろう。社員さんかな?」

 

七海「どうだろう? でも、開発時にこの声を録音してる様子を想像すると面白いね」

 

赤松「だね。……あ、葉っぱが落ちてる。薬草だ」

 

七海「回復アイテムだね。えっと、アイテムの解説とかはしたほうがいい?」

 

赤松「んー、たぶん大丈夫。千秋ちゃんのプレイ、結構がっつり見てるからさ。体力が25回復するし、無傷のときに飲んだら最大値が1増えるんだよね」

 

七海「おー、結構見てるね。まあ、実はもう少し使い道はあったりするけど、じゃあ初回プレイだしアドバイスは無しでいっか」

 

赤松「うん! よーし、レベルを上げつつアイテムも探すぞー」

 

七海「下手したら1階でも死ぬのがこのゲームだよ。楓さんは何階までいけるかな」

 

赤松「んー、10階くらいには行きたいなあ……。あ、おにぎり」

 

七海「食糧確保は大事だよ。……あ、これはアドバイスじゃなくて最低知識だからセーフね」

 

赤松「うん、分かるよ。……でも、落ちてるおにぎりを食べるって勇気がいるなあ」

 

七海「そこはほら、ゲームだから……」

 

赤松「くさったおにぎりだったよ。やっぱり放置されたおにぎりはそうなるよね」

 

七海「確かに……っていやいや、偶然だから。普通のおにぎりも落ちてるよ」

 

赤松「あ、剣と盾も落ちてる。……こんぼうと皮甲の盾だって。剣じゃなかったよ」

 

七海「あるある。でも、序盤に武器と防具がそろうのはラッキーだね。片方が無いまま10階までとか結構あるんだ」

 

赤松「へえー……うわっ、罠だ!」ジャー

 

七海「防具が弱くなる罠だね。皮甲の盾は錆びないからセーフ」

 

赤松「今の液体はどこから落ちてきたんだろう」

 

七海「そこもほら、ゲームだから。突っ込みだしたがキリが無いよ?」

 

 

 ~竹林の村~

 

 

赤松「森と渓流を抜けて、最初の村まで来たよ!」

 

七海「おー。お見事」

 

赤松「序盤だから、まだそんなに難しくないね」

 

七海「そうでもないよ。運が悪かったら死ぬのがこのゲームだし」

 

赤松「そうなの? でもあんまり死ぬ展開が予想できないんだけど」

 

七海「さっきまでのところだと、初心者が死ぬのは次の2パターンが多いかな。ボウヤーが進化してクロスボウヤーにやられるか、おばけ大根に毒草投げられてからタコ殴りにされるかだね。防具がないとハブーンに普通に倒されることもあるよ」

 

赤松「そうなんだ。よく分かんないや」

 

七海「何週かすると分かると思うよ。さて、最初の村だけど」

 

赤松「お店があるね。いっつも千秋ちゃんが泥棒してる店だ」

 

七海「その通りなんだけど、そう言われると私が極悪人みたいだね」

 

赤松「うーん。千秋ちゃんのを見ててなんとなくやり方は分かるけど、お金もあるし私はちゃんと買おうかな」

 

七海「うん、それがいいと思うよ」

 

赤松「うーんと、カタナがあるから買っちゃおう。あとはドラゴン草と、未識別の杖と壺……」

 

七海「慣れてたら値段で識別できるんだけどね」

 

赤松「へえ。私はそこまでは無理だけど、多分振ったり入れたりしたら分かると思う」

 

七海「最悪分からなかったら識別の巻物を読めばいいしね」

 

赤松「そうだね。えーと、あとは……この人の下にある商品が見たいんだけど、どいてくれないなあ……」カチャカチャ

 

店員『……! あのう……あんたの……あんたの名前、カエデじゃないですか?』

 

赤松「あ、話しかけちゃった。なんで私の名前知ってるんだろ。とりあえず、『はい』」ポチッ

 

七海「この人はペケジだね。私がいっつも無視してる人だよ。タイムアタックのルール上」

 

赤松「なになに……うわ、なんかカエデ(わたし)の弟とか言い出したよ。ほんとかな……全然似てないけど」

 

七海「酔いどれ亭で待っててだって。このお店から右に進んだところにあるよ」

 

赤松「じゃあ後で行こうかな。まずこの村を見て回りたいし」

 

七海「村人の話を聞くって新鮮だなあ。私、いっつも泥棒しかしてないから」

 

赤松「うん。だからいろんなところが見れて楽しいよ……っと、鍛冶屋とかもあるんだね。ならカタナ鍛えてもらおうっと」チャリン

 

七海「いいね。カタナは結構いい武器だから、鍛えておいたほうがいいよ」

 

赤松「……よし、村人の話もだいたい聞いたし、酔いどれ亭に行こう。……あ、向こうも来たね」

 

七海「なんでペケジがカエデの弟って言うのか説明の部分だね」

 

赤松「……ふむふむ、生き別れの兄弟ってことみたいだね。でもやっぱりいまいち信用できないなあ……」

 

ペケジ『……あんたとおれって、顔も似てるよな』

 

赤松「いや、似てないよ」

 

ペケジ『おれ、みんなにゾウリ頭って、呼ばれてんだ。あんたも、そう呼ばれているのかい?』

 

赤松「多分呼ばれてないんじゃないかな。『いいえ』っと」ポチッ

 

ペケジ『…………』

 

ペケジ『……ゾウリってさ、やっぱ片方だけじゃダメだから……』

 

赤松「無視して話を進めてきた-!」

 

七海「ゲーム名物、意味の無い選択肢ってやつだね。でもこのゲーム、結構選択肢大事だよ」

 

赤松「えっ。どうしよう、間違えちゃったかな」

 

七海「今のは大丈夫のはず。でもまあ、大丈夫じゃなくても、ペケジだし大丈夫だよ」

 

赤松「ドライだね千秋ちゃん……。次から気をつけよっと。……あ、仕事に戻っちゃった」

 

七海「ペケジイベントの続きは次回だね。もうこの村で見るのもないし、進もうか」

 

赤松「そうだね」

 

 

 ~天馬峠~

 

 

七海「来たよ、初見殺しゾーン。初心者は大体ここで、鬼面武者に驚かされる……はずなんだけど」

 

赤松「あ、また鬼面武者出たね。亡霊武者になったら敵のレベルが上がるから気をつけないと」

 

七海「……普通にやってるね。まあ武器も強いし、レベルもちゃんとあげてるから平気みたい」

 

赤松「へへー、千秋ちゃんがいっつもここでレベル上げてるの見てるから知ってるんだ。敵をわざとレベルアップさせて、それを倒してレベルアップってね」

 

七海「むう。慌てふためく楓さんが見たかった……」

 

赤松「残念でした。私は千秋ちゃんみたいにはできないから、敵がレベルアップしないように気をつけて進めるよ?」

 

七海「いいと思うよ。強敵を低レベルで倒すのは慣れてないと難しいし」

 

赤松「千秋ちゃんがいつも倒してるのってハブーンが進化したやつだっけ」

 

七海「大体そうだね。ハブーンが進化したらマムーン。マムーンが進化したらニシキーンになって、私はそれを倒してるよ」

 

赤松「二回レベルアップさせてるんだ。でも、マムーンなら私でも倒せてるし、ニシキーン?もやってみれば倒せたりして。やられそうになったらドラゴン草食べればなんとかなるでしょ?」

 

七海「そうなんだけど……その前にニシキーンに攻撃されたらマズいと思うなー」

 

赤松「体力も50超えてるよ! 弟切草もあるし、回復してればもしかしたら……」

 

七海「その盾だと、ニシキーンの攻撃で200くらい食らうよ」

 

赤松「桁がおかしい! え、それほんと?」

 

七海「ほんとだよ。シレンの敵は大体どれも、最後までレベルアップしたら攻撃力はそのくらいになる。30階のボスより強いよ」

 

赤松「ええ……? 大人しく地道に戦おう……」

 

 

 ~ナブリ山廃坑~

 

 

赤松「山頂の町を抜けて8階まで来たよ! 山頂の町にはお店も無いし、特に何もなかったね」

 

七海「アイテムが増えるどころかむしろ減ったよね。ガイバラに割られて」

 

赤松「うう……まさかあんなイベントがあるなんて……。私の背中の壺が割られちゃったよ……」

 

七海「回復アイテムが無くなったのは痛いね。ここまで来ると、低い体力のまま歩いてたらすぐ死ぬよ」

 

赤松「そうだよねえ、敵の攻撃も強くなってきてるし……。ところで、回復アイテムの名前が『背中の壺』って面白いよね」

 

七海「壺とツボがかかってるんだよね。単純だけど、どうしたらそんな発想出るんだろ」

 

赤松「私としては序盤で歩いてる大根を見た時点ですごい発想だなあって思ったけど」

 

七海「序盤の敵と言えば、ボウヤーもすごいネーミングだよね。ボウ(弓)とヤ(矢)でボウヤーって」

 

赤松「あ、そういう由来だったんだ。言われるまで気づかなかったよ。単に『坊や』と『矢』をかけてたのかと」

 

七海「トリプルミーニングだね。こういう名づけ方、結構好きだよ」

 

赤松「ボウヤーと言えば……ここに出てくるボウヤーみたいな敵、厄介なんだけど! コドモ戦車!」

 

七海「ボウヤーの進化形の一種だね。倍速移動だから確かに面倒かも」

 

赤松「近づけないから、こっちも矢で応戦だよ! えいっ、えいっ!」カチカチ

 

七海「そうなるよね。わかるわかる」

 

七海「(コドモ戦車は通路に逃げるのが正解なんだけど……通路では矢を打ってこないからね。でもまあ、アドバイスは次回以降にしようかな)」

 

赤松「うう……回復が無いから心もとないよ……階段があるしさっさと進もうっと」

 

七海「おお、なんとか10階まで来た……! 初プレイでここまで来るのはすごいと思うよ」

 

赤松「えへへ、そうかな……。でもまだ死にたくないよー! ……むっ、新しい敵だ!」ザシュッ

 

『いやしウサギをやっつけた』

 

赤松「って『いやしウサギ』? あれもしかして、倒しちゃいけない敵だったり……」

 

七海「大丈夫、そいつはモンスターを回復させる害獣だから。ウサギは見つけ次第やっつけちゃえ」ボスン

 

赤松「(ウサ木くんが千秋ちゃんに殴られている……)」

 

赤松「……ってまた新しい敵だ! 火炎入道だって。うわ、強い!」

 

七海「強敵だね。火炎入道は攻撃力が高いんだ。今の盾じゃ正直厳しいかも……」

 

赤松「うう……なんとか勝ったけど体力が削られちゃったよ……ってまた出てきた!」

 

七海「強い上に、出現率も低くないんだよねえ火炎入道。召喚スイッチを踏んで囲まれたときの絶望感はヤバいよ」

 

赤松「待って、今の私の状況も結構絶望的だよー。回復もないし、壁に追い詰められちゃった」

 

七海「ありゃりゃ。でもまだ、アイテムを上手く使えばどうとでもなる配置ではあるよ」

 

赤松「アイテムアイテム……あっ、保存の壺にドラゴン草が残ってたよ! よーしこれで……」カチカチ

 

七海「えっ。あっ、ちょっ、それは……!」

 

赤松「くらえ!」ホノオ ボォー

 

 ヨォー ドドドンドン ハッ!

 

『火炎入道はレベルが上がって火炎入道2になった』

 

赤松「えっ」

 

七海「あー……やっちゃった」

 

赤松「ちょっ、まっ……死んじゃったー! カエデー!」

 

七海「……火炎入道が強敵と呼ばれる所以は、ドラゴン草とかが効かないことなんだよね」

 

赤松「うう……悔しいよー! もう一回挑戦して……ってもうこんな時間!?」

 

七海「一時間以上連続でプレイしてるね」

 

赤松「いつの間にかそんなに集中してたんだ……。じゃあちょっと休憩しないとね」

 

七海「だね。一時間プレイしたら十五分の休憩は必須だよ。私はあんまりしないけど」

 

赤松「そこはしようよ……。よーし、休憩したらもう一回チャレンジだよ!」

 

七海「おー!」

 

 

 ~つづく~

 

 

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