苗木くんと七海さんと赤松さんと   作:佐藤秋

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七海「今回も台本形式だよ。一応念のため、台本形式の話が終わるまでは毎回こうして一言断っておこうかな」

七海「それでもいいって人だけ本編へどうぞ。よろしくおねがいします」




24 七海さんと風来のカエデ②

 

 

 

七海「……さて、前回までのあらすじだよ」

 

赤松「……」カチカチ

 

七海「風来のシレンを楓さんにやってもらったところ、なんと10階まで到達したんだ」

 

赤松「……ふふん」フンス

 

七海「でもそこで、ドラゴン草の仕様を知らなかった楓さんは、それを火炎入道に使ってしまい、圧倒的な()()にやられてしまう……火炎入道なだけに」

 

赤松「……ちょっと面白い」クスッ

 

七海「そして少しの休憩をはさんで、再挑戦することすでに5回……」

 

赤松「……」カチカチ

 

七海「最初の丁寧なプレイはどこへやら、低階層で何度も死んでしまう楓さんなのであった」

 

赤松「……ぬあー! また死んだよ! 回復してくれるおじさんだと思ったのに、ダマされた!」

 

七海(裏声)「あー、今のは座頭ケチだね。彼のツボ押しは背中の壺と同じ効果をもたらすけど、確率で失敗してしまうんだ」ワサワサ

 

七海「へー、そうなんだね解説のウサ木くん」

 

七海(裏声)「そうなんだよ実況の千秋ちゃん」ワサワサ

 

七海「さすが、ウサ木くんは博識だねー」

 

七海(裏声)「それは違うよ! ゲーマーである千秋ちゃんのほうが知識があるに決まってるじゃないか!」ロンパッ

 

赤松「……さっきから、千秋ちゃん一人で何してるの?」

 

七海「ウサ木くんもいるし、せっかくだから実況と解説をしてみたよ。楽しい!」

 

赤松「……まあ、楽しいんだったらなによりだよ。それより、竹林の村にすらたどり着かなくなっちゃったんだけど」

 

七海「みたいだねー。開始早々囲まれて死んでたし」

 

赤松「あれは運が悪かったね。さすがに逃げられないや」

 

七海「あと、地雷の罠からの毒矢の罠のコンボ」

 

赤松「まさか罠がすぐそこに連続であるとは……」

 

七海「ハブーン相手に連続で攻撃ミス」

 

赤松「一回でも当たってれば勝てたんだけどなー」

 

七海「クロスボウヤーとおばけ大根にもそれぞれやられてたね」

 

赤松「千秋ちゃんの言ってた意味が分かったよ……大根は強敵」

 

七海「まあこんな感じだったけど……でも、二回目以降死にやすくなるのはシレンじゃよくあることなんだ」

 

赤松「えっ。なんでなんで?」

 

七海「一回目は何も知らない旅だからどうしても慎重にプレイするでしょ。でも次からは二回目だから、プレイが雑になっちゃうんだよね」

 

赤松「あ……」

 

七海「あとはビギナーズラックってやつ? 不思議なことなんだけど、初回プレイって何故かみんな運がいいんだよね。いいアイテムも結構出るし、敵が特殊な行動もあんまりしなかったり」

 

赤松「確かに……一回目は剣も盾もあったし、大根も毒草を投げてこなかったよ」

 

七海「シレンは、常に最悪の行動を考えつつプレイするのが基本だね。攻撃を外す。敵は特殊攻撃をしてくる。歩いたら罠がある」

 

赤松「それは確かに最悪だね」

 

七海「だから、低階層でも油断はしない。ダンジョンを進んだらそれ以上に警戒する。幸い、動かなければ敵も動かないシステムだからね。マズイと思ったら時間をかけて考えるといいよ」

 

赤松「……はーい、気をつけまーす」

 

七海「……なんていろいろ言ったけど、これはゲームだからね。堅苦しくやるよりも好きなようにやったほうが楽しいよ。楓さんも、私がうるさかったら言ってね」

 

赤松「そんなことないよ! 挑戦した以上はクリアを目指したいしね。千秋ちゃんのアドバイスは助かってるよ!」

 

七海「……そう? じゃあ今からは、邪魔にならない程度にアドバイスするね」

 

赤松「うん、お願いね!」

 

七海「……カエデに、チアキが仲間に加わった!」テテレテテテテテン

 

赤松「おー、心強い! あ、仲間と言えば、このゲームに仲間はできないのかな」

 

七海「……んー、できないことはないけども……」

 

赤松「……? まあいいや、そのときはそのときだよ。もう一回旅に出かけよう!」

 

七海「わー、がんばれー」

 

 

 ~杉並の旧街道~

 

 

 テーテッテッテッテ テッテッテッテ テーテテテーテテテーテテテーテーテーー

 

 

赤松「んー、いい曲。今度ピアノで弾いてみようかな」

 

七海「えっ、楓さん弾けるの?」

 

赤松「弾けるっていうか、音階がわかるから似たようなのが弾けるかもってレベルかな」

 

七海「聴きたい聴きたい! ピアニストってすごいんだねえ……!」キラキラ

 

赤松「(今までにないくらい千秋ちゃんに尊敬されてる……)」

 

 

 ヨォー チャチャチャッ チャチャチャッ チャチャチャッチャ

 

 

赤松・七海「「ハッ!」」

 

赤松「毎回やってるねこれ」

 

七海「楽しいからね」

 

赤松「レベルも上がったし少し楽になったね。……あれっ、あのフラフラしてるおじさんは……」 

 

七海「あ、ケチだね。座頭ケチ」

 

赤松「指圧で私を殺したおじさんだ! こいつめー、許せん」

 

七海「ドラゴン草があるなら焼き殺せるよ。復讐しようか」

 

赤松「こわっ! そこまでするつもりはないんだけど」

 

七海「冗談だよ。焼き殺せるのは本当だけどね」

 

赤松「冗談だったんだ……。でも、ゲームなのにそこまでできるってすごいね」

 

七海「そうだよね。泥棒とかもできるし、そういうところは自由度が高いよ」

 

赤松「悪いことばっかりできるゲームだね……」カチカチ

 

座頭ケチ『200ギタンで、あんたの体を直してみせますが、どうですかねぇ?』

 

赤松「む。このおじさん、私を殺しておきながら何にも言わないよ」

 

七海「まあまあ。あれは体力が低かったのが不運だっただけで、たまには成功することもあるんだよ」

 

赤松「ほんとにー? じゃあ、次こそ成功させてもらおうかな。『指圧してもらう』っと」ポチッ

 

座頭ケチ『じゃ、ちょいとすいませんが、ダンナの背中をアッシのほうに向けてくれないですかねえ。なんせ目が見えないもんで……へっへっ』

 

赤松「むう……目が見えてないなら失敗しても仕方ないね」

 

七海「優しいね楓さん」

 

座頭ケチ『なあに心配いらねえよ。それに世の中にゃ、目明きよりよく見えるってものもありやしてね……』

 

赤松「前回失敗したけどね」

 

七海「あ、でも今回は成功したみたいだよ。よかったね」

 

赤松「よーし、今回は幸先いいぞー!」

 

 

 ~竹林の村~

 

 

赤松「村まで到着! ここまで来るのは久しぶりだよー。最初の村なのに」

 

七海「いえー。買い物しよう買い物。泥棒の仕方教えようか」

 

赤松「んー、鍛冶屋に行ってもお金が余りそうだし今回はいいかな」

 

七海「そっか。まあ、前回ペケジに話しかけちゃったから、泥棒するのは難しくなってるよ」

 

赤松「良心的な意味で?」

 

七海「システム的な意味で」

 

赤松「そうなんだ。でも、私はまだあの人がカエデの弟ってこと信じてないよ」

 

七海「なんと。それが楓さんの本性なんだね。人の言うことを基本的に信じてない」

 

赤松「いやいやいや! だって全然似てないじゃん!」

 

七海「カエデかっこいいもんね。わかるよ」

 

赤松「もー……。さて、買い物も終わったし後は……」

 

七海「あ、下のほうに行ったらイベントがあるかも」

 

赤松「ほんと? えーと、下下……あ、目の見えないおじさんがいるよ。何か絡まれてるみたいだね」

 

4人組『ケチィィーーッ、かくごーーっ!!』

 

赤松「尋常じゃなく怒ってる……。これはきっとあれだね、指圧で殺されちゃった復讐に違いないよ」

 

七海「根に持ってるね楓さん」

 

4人組『ぐえっ!』

 

赤松「あー、やられちゃってる。このおじさん、目が見えないのに強かったんだ」

 

座頭ケチ『……おおっ、その声は! カエデのダンナじゃありませんかい!』

 

座頭ケチ『ごらんのとおり、追われる身でやんす。こんな世の中は、右も左も闇夜だあね。まあ、目の見えない人間にとっちゃ、あまりかわらんがねえ……』

 

赤松「なんか渋いこと言ってるよ……。あれ、これだけ?」

 

七海「イベントの続きはまた別のところだね。よし、そろそろ次に行っちゃおうか」

 

赤松「次は鬼面武者が出てくるフロアかな。気をつけよっと」

 

 

 ~山頂の町~

 

 

赤松「無事に切り抜け町まで到着! レベルも結構上がったよー」

 

七海「いい感じだね。ここでレベル14は結構高いよ」

 

赤松「死の使いが地獄の使者に進化したときは焦ったよ。でも、薬草投げたらダメージが入るんだ。千秋ちゃんが教えてくれたおかげだね、ありがとう」

 

七海「いえいえ」

 

赤松「さて、この町はお店も無いし、鍛冶屋くらいしか寄るところないかなー……ん?」

 

七海「あ、またケチがいるね」

 

赤松「また大勢に囲まれてるよ。どれだけ人を殺したんだろ」

 

七海「殺しまではしてないと思うよ。殺されたのはカエデ(楓さん)だけだよ」

 

店主『あんたに指圧してもらってから、よけい肩はこるわ、力は抜けるわ、最低だよ。どうしてくれるんだい!』

 

赤松「でも指圧関係のトラブルみたいだよ。やっぱり他のところでも失敗してたんだ」

 

男『あんた、目が見えないフリして実は見えてんだろ! 証拠はあるんだぜ!』

 

子ども『ぼく、見たよ! 友達のオヤツを、うす目明けて盗んでくとこ!』

 

赤松「って目も見えてるんかーい! 子どものおやつにまで手を出しちゃだめだよ!」

 

七海「どうでもいいけど、『うす目明けて』って誤字じゃない?」

 

女『わたしがお風呂入ってる時、あんたがのぞいて『あっしは、盲目で……』なんて言ってたけど、あれウソでしょ! ヨダレたらしてたもん!』

 

赤松「女の敵だ! 覗くのは駄目だよ! 擁護できないよ!」

 

男『それ、みんな! やっちまえーっ!』

 

赤松「あー、ほら、覗きなんかするから……」

 

七海「覗きはやっぱり駄目?」

 

赤松「うん。不可抗力で見ちゃうなら仕方ないけど、自分からしちゃあ駄目だよ」

 

七海「うーむ、分からないでもない」

 

座頭ケチ『も、もう二度と悪さしねえ! だからお願いだ! ゆるしてくれ!』

 

赤松「あ、謝りだしたよ。ちゃんと謝れるのはいいことだね」

 

七海「まあこの状態で開き直るのも難しいよね」

 

赤松「でもこっちは一回死んでるんだよなあ……」

 

七海「考えてみたら、盲目って嘘をついたことは反省してるけど、ツボ押しの失敗は反省してないねケチ」

 

赤松「……このおじさん、カエデ(わたし)に一緒についてきたいとか言い出したよ。これは回復してくれる仲間をゲットしたってことでいいのかな」

 

七海「話しかけたらツボを押してくれるよ。3割くらいの確率で失敗するけど」

 

赤松「微妙だなあ……。でもま、仲間ができたんだしいいか! よーし、次行くよー!」

 

 

 ~断崖の岩屋~

 

 

 デレレレレレレーン!

 

赤松「わあっ!? なにこれ、モンスターハウス!?」

 

七海「開幕大部屋モンハウだね。うまく立ち回らないと死んじゃうよ」

 

赤松「敵を示す赤い点が画面いっぱいに……。これは、大きい一つの部屋ってこと?」

 

七海「そういうことだね。今回はやみふくろうがいるからモンスターは寝てるみたい」

 

赤松「一つの部屋ってことは……真空切りの巻物が使えるんじゃない? 部屋全体に攻撃でしょ」

 

七海「おっ、いい判断だね。一番いい真空切りの使い道だよ」

 

赤松「パワーアップの巻物もあるし……全部の敵を一掃できるかも! くらえっ!」トゥルルルトゥルルル

 

七海「いいねー。通常だったらがいこつまどうとかコドモ戦車が遠くから攻撃してくるから面倒なところだったよ」

 

赤松「いたねえ、コドモ戦車。ふー! 敵がどんどん倒せて気持ちがいい……えっ」

 

七海「あっ。ケチ死んだ」

 

赤松「え……これって仲間にも攻撃が当たるの?」

 

七海「そりゃあもう。乱数次第では生き残る可能性もあったけど、見事に高乱数を引いたね」

 

赤松「お、おじさぁーん! そんなつもりはー!」

 

 

 ~山霊の洞窟~

 

 

赤松「おっ、なんだこの敵……オヤジ戦車だって! あはは、コドモがオヤジになっちゃってるよー!」

 

七海「気持ちの切り替えに定評があるね楓さんは」

 

赤松「まあ、これでおあいこってことで。それよりも新しいエリアだよ! モンスターハウスでアイテムもたくさんあるし、いい調子なんじゃないかなこれは」

 

七海「だね。正直もう階段見つけたらすぐ下りちゃってもいいくらい。十分クリアできるアイテムだよ」

 

赤松「本当に? でもここから先どういう敵が出るか知らないし……」

 

七海「まあ、私がアドバイスしていいならだけどね。山場はまだまだあるよ」

 

赤松「緊張してきたなあ……ここでセーブとかできないの? 死んでもここからやり直したいな」

 

七海「中断はできるけどセーブはできないね。スーパーファミコンだし、死んだら最初からやり直しだよ」

 

赤松「やっぱりかー。じゃあ千秋ちゃん、またアドバイスよろしくね」

 

七海「うん。初めて見る敵とかの注意点とか、楓さんが即死行動しそうになったらやめるとかはするね。楽しみを奪いすぎないように」

 

赤松「ありがとね。千秋ちゃんは優しいなあ」

 

七海「……正直、ここまで楓さんが付き合ってくれるとは思わなかったからさ。もう十分私は楽しんだんだ。だからあとは、楓さんができるだけ楽しめたらいいなって」

 

赤松「……まあ、かれこれ数時間ゲームしちゃってるね。我ながらよく続いたなあ。止めどきを見失ったっていうのもあるけど」

 

七海「このフロア抜けたら火炎入道も出なくなるから、階段見つけたら一回休憩しよっか」

 

赤松「そうしよっか。よーし、休憩終わったらクリアするぞー!」

 

七海「おー!」

 

 

 ~つづく~

 

 

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