七海「今回も台本形式……に加えて注意がもう一つあるよ」
七海「今回やるのは謎解きゲームなんだけど、話の都合上ゲームのネタバレが少し含まれちゃってるから注意してね。一応過度なネタバレや、知らない人に向けても分かるようには注意するつもりだけど」
七海「それでは、それでもいいって人たちは、本編どうぞー」
~シェアハウス内~
七海「今日は春川さんの他に、百田くんと最原くんが来たよ! 最近いろんな人が遊びに来てくれて嬉しいな」
百田「おう! 赤松から、苗木の奴が風邪引いたって聞いてたからな! 先輩なら、後輩の面倒は見てやるもんだぜ!」
最原「まあ苗木くんは寝ちゃってるみたいだから僕たちは部屋から追い出されたけどね……春川さんから」
百田「ったくハルマキの奴……俺たちのどこがうるさいってんだ!」
七海「えーと……現在進行形でうるさいよね?」
最原「結構容赦ないね七海さん」
百田「苗木に買った風邪薬とかジュースとか、誰が金を出したと思ってんだ」
最原「僕だよね? 百田くんは、財布忘れたとかで出してないよね」
百田「ふむ、そんなことより……」
最原「(そんなこと!?)」
百田「ハルマキから、七海と遊んでやってくれって頼まれてんだよな」
最原「完全に保育士のお願い事だ……」
七海「そうだよ! 今日百田くんと最原くんは私とゲームして遊ぶんだ! この前は楓さんや春川さんと一緒にゲームしたよ」
最原「へえ……楽しそうだね」
百田「そんで、何のゲームで遊ぶんだよ? ゲームならそこそこ得意だぜ」
七海「そうだね。せっかく百田くんがいるんだし、宇宙に関係するゲームをやろうかと思ったんだけど……」
最原「(なんだろう。マリオギャラクシーとかかな)」
七海「アストロノーカとかね。宇宙で農家を目指すゲームだよ」
百田「おお!」
最原「(予想の斜め上過ぎる)」
七海「……とまあこんな感じで他にもいろいろ考えたんだけど、宇宙のゲームってどれもクリアに時間がかかるものばっかりなんだよね」
百田「宇宙だからな! 壮大なのはゲームでも変わらないってことだ」
七海「だから発想を変えて、最原くんに寄せて謎解きゲームをすることにしたよ」
最原「わ……そうなんだ。ちょっと楽しみ」
七海「ガチガチの推理ゲームで、読み進めていくだけのノベルゲーム……ってやつじゃないから、百田くんも楽しめるんじゃないかな」
百田「おう! 終一がうまくやれるか横から見ててやればいいわけだな」
七海「じゃ、準備するからちょっと待っててね」ガサゴソ
最原「あ……パソコンでやるゲームみたいだね。画面はテレビに映すのかな」
百田「コントローラーもパソコンに繋ぐのがあんだな。少なくともオレが知ってるゲームじゃなさそうだ」
七海「……よしっ、できた。今回やるのは『Ib』っていうフリーゲームだよ。美術館に訪れた女の子イヴに、不思議なことが起きるんだ」
百田「ふむ、聞く感じだとファンタジー系か? まあ女子がすすめるゲームだしな」
最原「Ibなのに、イブじゃなくてイヴなんだね」
七海「そうなんだよねー。……ところで二人は、クリスマスイヴには誰かと過ごしたのかな」
最原「……えーと、僕は残念ながら……」
百田「知ってるか七海……ロシアのクリスマスは1月7日なんだぜ」
最原「(それがなんなんだろう)」
七海「知らなかったよ。百田くんは物知りだね」キラキラ
百田「へへー、だろ!」
最原「(それでいいんだ……)」
百田「ほら終一、なにしてんだ。お前がやるんだから、お前がコントローラー持たなきゃ始まんないだろ」
最原「あ、ごめん。これでいいかな」
七海「……うん、キーコンフィグも設定したし、これでできると思う。じゃあ始めるよー」
テレビ『 ~Ib~ 』
最原「……え」
百田「……!?」
七海「あれ、二人ともどうかした?」
最原「……心なしかタイトル画面がおどろおどろしいような」
百田「な、なんで背景が真っ暗なんだよ……この子もなんか生気がねーし……」
七海「失礼な。イヴちゃんはちょっとぼーっとした女の子だよ。かわいいよ」プンプン
百田「そ、そうか……わりーな」
最原「……と、とりあえずニューゲームにするよ?」ポチッ
『昼下がりの灰色の空の下……イヴとその両親は美術館に向かっておりました……』
百田「……なんか音楽暗くねーか?」
最原「うん、僕もそう思うよ」
七海「えっ、そうかな」シレッ
最原「……あっ、場面が変わって美術館の中に入ったみたいだよ」
百田「音楽も戻ったな……なんだ気のせいか。おどかすなよな、ったく」
最原「ふむふむ……どうやらゲルテナって人の展覧会みたいだね」
百田「家族で美術館に行くってなかなか渋いな……。でもいい教育にはなりそうだぜ」
最原「あ、イヴちゃんが一人で美術館を見回るみたいだね。動かせるよ」
百田「一人で先に見たいってか。イヴって嬢ちゃんは将来有望だな!」
イヴ母『いい? 美術館の中では静かにしてなきゃダメよ?』
百田・最原「「はーい」」
七海「(素直)」
百田「母ちゃんにこう言われたし、静かに見て回るか」
最原「そうだね。絵以外にも彫刻とかもあるみたいだよ」カチカチ
百田「ほうほう……うわ、地面にでっけー絵があるぞ。深海魚か?」
最原「『本日はご???き誠にありがとうございます』……? あ、子どもだから漢字が読めないんだね。えーと、『ご来場頂き』、かな」
百田「名前カタカナなのに漢字文化なのか」
最原「はは、確かに。……えーと、作品の名前もところどころ読めないみたいだよ」
百田「なんで読めねーのに一人で先に行っちまったんだイヴ」
最原「興味が勝っちゃったのかな?」
七海「百田くん、ボケっぽいのに結構突っ込むね」
百田「おー? 年下のくせに言ってくれるじゃねーか七海」
七海「一緒にゲームしたら、年齢とか関係なく友達だからね」
百田「違いねえな。クリアしたらハグするか!?」
七海「クリアできたらね」
最原「するんだ……。あ、なんか首のないマネキンみたいなのがある。『無個性』だって」
百田「なになに、個性ってのはその人の表情だと思う……か。なるほどなー。人形が色んな服を着たところでそれは個性になりえないっつーことか」
最原「面白い解釈だね」
百田「まあ、美術館ってのは結構考えさせられる場所だしな」
最原「さて、こっちの部屋には……あ、なんかひときわ大きい絵があるよ」
百田「『???の世界』、か。なんだろーな。『無重力の世界』。おし、これだ!」
最原「完全に宇宙だねそれ……ん?」
百田「な、なんだ? 急に明かりが暗く……」
最原「BGMも消えた……?」
七海「……ふふふ」
百田「お、おいおい、さっきまでたくさんいた他の客もいなくなっちまったぞ!?」
最原「受付にいた人もいないよ……どういうことだろう?」
百田「……とりあえず美術館から出ようぜ。受付の横、確か出入り口だろ」
最原「……開かない」
百田「おいおいおい……どういうことだこれは」
最原「さっき大きい絵を見てから様子がおかしくなったんだよね……あの絵に何か秘密があるのかも」
百田「戻ってもう一回調べに行くか……ん? いま窓の外で、人影が通り過ぎていかなかったか?」
最原「そうだね、僕にも見えたよ。ここから脱出できたりとか……駄目だ、開かない」
百田「まあ見たところ、はめ殺しの窓っぽいしな……うおぁっ!!」
最原「!」ビクッ
百田「い、い、今の奴いきなり窓の外からバンバン叩いてきやがった! 驚いたぜ……」
最原「僕もびっくりしたけど、それ以上に百田くんの声に驚いたよ……」
百田「わ、わりー……」
七海「……」ニヨニヨ
最原「(七海さんの、悪戯めいたあの表情……。うすうす感じてはいたけど、もしかしてこのゲーム……)」カチカチ
百田「……さて、終一が操作して大きい絵のところに戻ってきたわけだが……絵からなんか絵の具が垂れてねーか? 不気味だぜ……」
最原「文字もなんか書いてない? なになに……」
『お』ベチャ 『イ』ベチャ
『い』ベチャ 『よ』ベチャ
『で』ベチャ 『ヴ』ベチャ
百田「うおおおおっ!?」ガバッ
七海「おっと、駄目だよ。ハグは最後」スッ
百田「お? おおお……」ギュー
最原「(ウサギのぬいぐるみを抱き締めている百田くん……シュールだ……)」カチカチ
百田「べ、別にビビったわけじゃねーからな。急激にこのウサギをモフりたくなっただけだ」
七海「はいはい」
最原「えーと……『したに おいでよ イヴ ひみつのばしょ おしえてあげる』」
七海「……行ってみたらどうかな?」
最原「そうするよ……」カチカチ
百田「……な、深海魚の絵の手前に足跡がついてやがる……」
最原「地下への入り口みたいだね……。下においでってこういうことか……」
百田「入りたくねえ……が、脱出する場所も見当たらない以上、入るしかねえか……」
最原「……じゃあ入るよ?」カチカチ
百田「おう……」
ヒューゥゥゥ デテデデデン……
最原・百田「「……」」
百田「なんじゃこりゃあ……」
最原「暗い……BGMも不穏だね……」
百田「おい七海……このゲームって本当にファンタジーか?」
七海「ごめん。驚かせたくてわざと勘違いするように言ったんだけど、実はこれホラーゲームだよ」
百田「なんだと!?」
最原「(知ってた)」
七海「今からが本番だね。ここから謎解き要素も出てくるし、きっと楽しくゲームできると思うよ」
最原「そうなんだね」
百田「……よし終一、探索はおめーに任せた。オレは謎解きに行き詰まったら呼んでくれ」クルリ
最原「させないよ。僕だって怖いんだから」ガシッ
百田「……やっぱり? いや別に俺は怖いってわけじゃねえ。終一の見せ場を取らねーようにだな……」
七海「あ、そうだ、雰囲気を出すために部屋の電気も消してやろうか」
百田「こえーから絶対やめてくれ」
最原「(即答だ……)」
~緑の間~
最原「さて、赤いバラ……七海さんいわく体力を手に入れて最初の部屋までやってきたわけだけど……」
百田「……うう……」コヒュー コヒュー
最原「大変だよ。早くも百田くんが息してない」
七海「いや息はしてるよね?」
百田「なんなんだよ……鍵を拾ったら目の前の絵の表情がいきなり変わってビビったし、入ってきた道はいつの間にか塞がれてんのはなぜなんだ……」
七海「どうどう」ポンポン
最原「……でも、確かにリアルで考えてみると、来た道がいつの間にか帰れなくなってるっていうのは怖いよね」
七海「謎解き探索ゲームでは結構ありがたい仕様なんだけどね。謎を解くためのヒントやアイテムは、もう前のところには無いっていう証拠だから」
最原「あ、そういう考え方もできるのか……結構ゲームも奥深いね」
七海「でしょ」フンス
百田「……」
最原「百田くん、ほんとにツラそうだ……。ここは僕が頑張らないと」
七海「(そう思うなら離脱させてあげればいいんじゃ……私は一緒に遊びたいから言わないけど)」
最原「この部屋だけど……虫の絵がいろいろ飾ってあるね。テントウムシ、ハチ、チョウチョ、クモ……」
百田「……仲間外れどれだってんなら、クモだぜ……他のは全部昆虫だからな……」
最原「もし4ケタの数字を入力する機械があるなら、足の数で6668かな……?」
七海「おっ、二人とも謎解きの頭になってるね。いいと思うよ」
最原「百田くん、大丈夫?」
百田「まあ……いろいろ考えてるほうが少し楽だってことに気づいたな……」
七海「いろいろ考えるのも大事だけど、まずはいろいろ調べていくことも大事だよ。最原くん頑張って」
最原「それもそうだね。えーと、右と上にも道があって……ん? 小さな黒い点が地面を動いてるような……あっ」
アリ『ぼく アリ』
最原「アリがいたよ。なになに……」カチカチ
百田「ふむ……アリの絵もどこかにあるらしいな。それにしても終一よく見つけたな、こんな小さい点」
七海「うん。さすが探偵の観察力だね」
最原「そ、そんな、たまたまだよ。僕が操作してるから一番見やすい位置にいるんだし」
百田「なんにせよ、終一に探索を任せたオレの判断は間違ってなかったっつーわけだ。この調子で頼んだぜ」
最原「あはは……まあ頑張るよ」
~赤の間~
七海「結構サクサク進んでるね。もうここかー」
最原「まだ序盤だからかな、そんなに謎解きは難しくないね。どちらかというと探索のほうが大事な感じだよ」
七海「アリといい、小さい文字といい、最原くんの観察眼はすごいね。調べるべきところを見逃してないって感じ」
最原「あはは……探索中に驚かし要素があるからおっかなびっくりだけどね。壁から手が出てきたときは驚いたなあ」
百田「オレは無個性が動き出したときがビビったぜ……なんだあいつ」
最原「ああ、あの首のないマネキンの」
百田「なにが無個性だ……あんな姿で動き出すとか個性の塊じゃねーかあんなの」
七海「確かに」
最原「さてこの部屋は……美術館みたいにまたいろいろな作品が置いてあるね。『あ』『うん』だって」
百田「阿吽のことだろーな。ひらがなで書いてあるからイヴの嬢ちゃんでも読めるみてーだ」
最原「逆にまだ読めない作品もあるね……後でわかるようになるのかな」
百田「お、終一。こっちにある絵、もともとの美術館であったやつじゃねーか?」
最原「女の人の絵だね、確かにあった気がするよ。えーと、『赤い服の女』ってタイトルみたいだね」
百田「ふむ……つーか鍵がどこにもねえな。てっきりこっちにあると思ってたが……うおうっ!!?」ビクン
最原「わあっ!?」ビクッ
百田「に、逃げろ終一!」
最原「も、もちろん!」カチャカチャ
七海「おお。流れるように」
最原「……はー、びっくりしたー……」バタン
百田「赤い服の女が絵から飛び出してきやがった……」
最原「移動方法も怖いよこれ……てけてけみたいに腕で這って向かってくるんだもん」
百田「てけてけ……真宮寺みたいな例えだな終一……ってお前、いつの間に鍵を手に入れたんだ? そこ確か開かなかった部屋じゃ……」
七海「逃げながらどさくさにまぎれて拾ってたよ」
百田「マジか。そんな余裕があったのか……」
最原「偶然目に入ったから……それより、ドアを通ればもうアイツは追ってこれないみたいだね」
百田「……みてーだな。あんな格好だからノブまで手が届かねーんだろ」
最原「できればもう戻りたくないよね……先に進めそうだからこっちに向かうよ?」カチャカチャ
百田「ああ……ってかお前またさらっと謎解いてなかったか?」
最原「調べてたら次の扉が開いただけだよ……っと、なんか男の人が倒れてる」
男『うう……』
百田「……なんだこいつ。襲ってくるわけでもねーみたいだし……苦しそうだが、怪我してんのか?」
最原「とりあえずこの人、手に鍵を握ってたみたいだからゲットしたよ。あと他に探索するところは……」
百田「意外と容赦ねーな終一お前」
最原「こっちにも部屋が……。壁に何も掛かってないのに、『青い服の女』ってタイトルだけが書いてある」
百田「うわ……完全に動き回ってるやつじゃねーか。あんまり探索したくねー……」
最原「……あ、近くの部屋の中にいたね、青い服の女」
百田「っておい! あっさり見つけてくれてんじゃねーよ! もうちょっと心の準備をさせろよ!」
最原「ご、ごめん。でも身構えてるほうが怖くなるからさ、こういうのはさっさとしたほうがいいんだよ」カチャカチャ
百田「そりゃあそうかもしれねーが……」
最原「あ、調べようとしたら青い服の女が追ってきた」
百田「だから早えって! うおおお機敏に追ってきやがる! 絶対そんなうまく動けねーだろその体で!」
七海「そこはまあゲームだから……ね?」
最原「……よし、アイテム『青いバラ』ゲットだよ。あとはこの部屋から出れば……」ガチャッ
百田「……ふう、これで一安心だぜ。あいつらは扉を開けれねーみたいだから……なぁぁああっ!?」
最原「窓から!? くそっ、それは予想してなかった!」カチャカチャ
百田「痛えっ! 攻撃少しくらっちまったぞ!」
最原「だ、大丈夫! こっちに何回でも使える花瓶があったから……」
百田「……今さらだが、花瓶にバラ挿すと回復するって謎だよな」
最原「この空間ではバラと自身がリンクしてるみたいだから、バラが傷つけば自分も弱るし、バラが元気になれば自分も元気になるんだよね……あれ?」
百田「どうした?」
最原「青いバラも花瓶に挿せる……あ、そういうことか!」
百田「なんだよ? 一人で納得しやがって。青いバラがどうしたってんだ?」
最原「おそらくこの青いバラが、さっきの男の人の体力なんだよ。だからこれを花瓶に挿して元気にした後、男の人に話しかければ……」カチャカチャ
男『……うーん…………』ムクッ
百田「おお、なるほどな!」
男『……あら? 苦しくなくなった……』
百田「おっ、顔アイコンが出たぞ。前髪とかがなんとなく東条に似てるな」
最原「この人は男だから性別から違うけど……あ、でも喋り方は女の人だね」
百田「ニュータイプか。まあそこらへんにオレは偏見は無えな」
最原「ふむふむ、ギャリーって名前なんだって。同じく美術館に来ていた人で……一緒に行動してくれるみたい」
ギャリー『子ども一人じゃ危ないからね……アタシも一緒に付いて行ってあげるわ!』
百田「仲間か! 喋り方はアレだが、大人の男と一緒ってのは頼もしいぜ」
最原「だね。……あ」
ギャリー『ぎゃー!』シリモチッ
ギャリー『い……今のはちょっと驚いただけよ! 本当よ!』
百田・最原「「……」」
百田「……た、頼りねえ……」
最原「(言い訳の仕方が百田くんみたいだ……)」
七海「言い訳の仕方が百田くんみたいだね」ポケー
最原「ちょ、七海さんそれ言っちゃ駄目だから!」シー
百田「ん、どうしたお前ら」
最原「なんでもないよ! それより、仲間ができたことだし先に進もうよ!」
百田「お、おう……」
~つづく~