(作者の願望5000兆%の)アイドル部のてぇてぇ短編集 作:趣スケベマン(毛玉)
少し気温も落ち着いて、過ごしやすくなってきた今日この頃。
私は近くの公園へと向かって歩いている。
「たしかこの辺で・・・」
「あっ、すーちゃん! こっちだよ!」
待ち合わせ場所にいるイオリさんが手を振っている。
和装ではない、白いワンピースと白い帽子を身に着けた姿が、絵画に描かれた少女が飛び出してきたかのような、浮世離れした可愛らしさを思わせる。
私が白シャツにノースリーブジャケット、スラックスなので、傍から見たら、ご令嬢とその御付きに見えそうだ。
「すみません、待たせてしまいましたか?」
「んーん、イオリもさっき来たところだよ」
「「・・・」」
「うふふ」
「えへへ」
マンガのデートみたいなやり取りになんだか可笑しくなって、お互いに顔を見合わせて思わず笑ってしまった。
それが治まってから、イオリさんは空いた手で私の手を取り、そのまま腕を組んで密着する。
「それじゃあ、しゅっぱーつ!」
「はい!」
イオリさんに誘われて、向かう先は近所の植物園。
他に誰か来るのかと思いきや、どうやら予定が空いていたのが私だけだったらしい。
これはもう実質デートなのでは・・・?
「なんだかこうやって歩いてると、デートみたいだね!」
「そ、そうですね!」
考えが読まれているのかと疑うほど、タイミング良く話しかけられた。
顔に出ていたのだろうか。
「えへへ、すーちゃんの考えてることなんて、イオリにはお見通しです」
「え!?」
思わずイオリさんの方を向く。
ふわりと揺れる前髪の隙間から、普段見えない右目が覗く。
「なーんて、冗談です」
「・・・で、ですよね、驚いたなぁ、もう」
前に向き直りながら平静を装おうとするも、上がった心拍数で身体が熱くなる。
空いている手で顔を扇ぎながら、チラと、イオリさんの顔を盗み見る。
「ふん、ふん、ふ~ん」
無意識なのか、鼻唄を口ずさみ、とても幸せそうな表情をしている。
それにつられて、私も一緒になって口ずさむ。
またお互いに顔を見合わせて笑顔になった。
・・・
ようやく目的の植物園に辿り着く。
入場料金等の無い、オープンタイプの施設だが、そこそこ人は多いように思える。
見覚えのあるものから、初めて見る珍しいものまで、想像以上に見応えのあるところだった。
イオリさんは、傍に立ててある説明書きを指差して読み、楽しそうに感想を話してくれる。
私もそれに答え、つられて笑顔がこぼれる。
「・・・すーちゃん、こっち」
しばらく歩いて、イオリさんが何かを見つけたのか、順路を逸れて、鬱蒼とした森を思わせるエリアに誘導される。
「どうかしましたか?」
「ん~、この辺なら良いかな?」
周囲を植物のカーテンに遮られ、他人の目が無い空間。
イオリさんは組んでいた腕を外し、ゴソゴソとバッグを漁ると、丁度大人が一人横になれそうなレジャーシートを取り出して敷いた。
サンダルを脱いで横座りしたイオリさんは、太腿をポンポンと叩いてこちらを見る。
「すーちゃん、ここに横になってください。イオリが膝枕をします」
「へ・・・って、あ・・・」
唐突に思い出すのは、先日あった『アイドル部で誰が一番バブみを感じるか』という話題。
私とちえりさんが、速攻でイオリさんの名前を挙げたのは記憶に新しい。
その時のイオリさんが、『え~、そうかな~』と嬉しそうにしていたのを見て、『是非いつか、膝枕をやってください』とこっそり個人でラインを送っていたのだ
送った後に『これは限界オタクしてしまった』と滅茶苦茶後悔して申し訳ない気持ちになったけれど、まさか本当にやってくれるなんて・・・
「はい、靴を脱いで、仰向けになってください」
「は、はい・・・」
ゆっくり頭を降ろすと、ワンピースの薄布一枚を隔てて、イオリさんの柔らかさと温もりが伝わってくる。
自然、見上げる視線の先には、前髪がハラリと垂れ、幽かに右目を覗かせるイオリさんの微笑んだ顔。
降り注ぐ陽の光がイオリさんを包み、聖母を思わせる雰囲気を醸し出す。
「どぉ、すーちゃん? イオリの膝枕」
「・・・天国、ですかね」
ほぅ、と漏れる溜息の後、働かない脳がかろうじて返事を返す。
もしバレたら、これを羨んだちえりさん辺りに、『ちえりだよ(隠語)』されるかもしれない。
・・・でも今は、この幸福を全力で、余すところなく享受しよう。
その日の夜、イオリさんがツイッターに、『すーちゃんとデートしてきたよ! 楽しかった!! あと膝枕してあげたの!! (写真)(写真)(写真)』と載せて案の定みんなに見つかり、翌日、学校全土で壮大な逃走劇が巻き起こるとは、今日の浮かれた私は知る由もなかった。
あ〜、イオリンに膝枕してもらいてぇな〜、ついでに耳掻きもしてもらえたら最高だな〜、そのまま頭撫でてもらってな〜(現実逃避)