退屈を嫌った神々が創ったシステム。
普通の生物とは違う、主人公という立場に置きやすい生物を創りだし(※1)、それを適当な年齢で死亡させて、神自ら死亡させた者の前に現れ、適当な理由を付けて「君を転生させてあげるよ」という話に持っていく(※2)。
転生させた後は(※3)、その者が転生した世界でやっていることをしっかりとレポートに纏め、それを“転生システム”を管理する神々に提出する。そのレポートは、転生した者のやったことを映像化するために使ったり、他の神が“転生システム”を行う時の参考資料になるため、なるべく細かくレポートすることが望まれる。
前述した通り、提出されたレポートを元に、その者の転生人生は映像化され、暇を持て余している神々の娯楽となる。
その映像を見た神は、その映像の元となったレポートを書いた神に一定の料金を支払うこと。支払われた神は、その内の三割を“転生システム”に納めること。
※1 その際、転生後に行かせる世界が決まっていれば、転生者の近くに転生後の世界に居るキャラクターを置いておいてもよい。後々の伏線として回収させれば、面白くなる場合もある。あくまでも、場合もある、だが。
※2 転生するように創られた生物は頭が可笑しい奴が多いため、基本は転生させてやると言っておけば「やったぁ!」と喜ぶが、極稀にそうでない者も居る。そういう場合は、無理やり思考を操って、転生させる時に記憶を操作してしまえばよい。
※3 転生者の物語が終了するように、転生先の世界にラスボスを創っておくなどして、適当でもいいので終着点を作っておくこと。
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「ふぅ。やぁっと終わったー」
長い間握り続けていたペンを投げ出して、私は椅子の背もたれにぐでーっ、と体重をかける。小さく椅子の軋む音が響いた。この椅子は使っている時期が長く、それなりに愛着もあるけれど、そろそろ新しい椅子に変えるべきかもしれない。
閑話休題。
私は背もたれに寄っ掛かりながら、自分が書き終えた何十枚にもなって重なっているレポートをぺらぺらと流し読みする。当然、書かれている字は全て私のもの。友神からよく「貴女の字は丸っこいわよね」と言われたり、嫌みな神からは「お前は姿も字も子供っぽいな」と馬鹿にされる字である――しかーし、私は気にしない。
私はこの姿もこの字体もすごい気に入っている。馬鹿にされたところで痛くも痒くもないのだ!
……まぁ、今度胸の辺りは変えようかなーと思っているが。
べ、別に、他の神の胸がやたら大きいから、とか、そういう理由じゃないもん。貧乳には貧乳の魅力があるって、友神も言ってくれるもん。……ぐすん。
と、再び閑話休題。
「ふーむ」
今回は、少し危なかった場面が幾つかあった。
特に最後、あの少年が舌を噛み切ったことで呼吸が出来なくなり、それまでのことを思い出していた場面。もう取り返しがつかない場面だったからよかったけれど、あの時に気付くのがもう少しだけ早かったら、舌を噛み切る前に気付いていたら――危なかったかもしれない。
“システム”の真相に、気付いていたかもしれない。
……まぁ、彼はかなり発想力に乏しい人間だったし、その可能性は非常に少なかったと思うけれど。でも、それは裏を返せば、非常に少ない確率で真相に気付くことが出来る、ということだ――今回は、失敗だったか。
“システム”とは、何も知らない生物が別世界に転生したことで起きたことを映像化し、娯楽として提供する物なのだ。
だからこそ、『転生者』――今回の場合は黒橋 想也――は、世界の真実を知ってはいけない。何も知らずに、自分の意思で、人間らしく、行動してもらわなければならない。
「……と。ま、いいか。この辺りもレポートに纏めたし、後は上の方が何とかしてくれるでしょ」
私は面倒臭がりだ。考えるのなんか大っ嫌い。
だから、この辺りは上に任せよう。私はただ、生物が無様に生きる様をけらけらと笑いながらレポート書いたり、たまに死んだ人間を気まぐれで転生させることにした神様を演じていればいい。
さて、レポートも提出して、今日の仕事は終わった。
確か今日は、友神に飲みに行こうと誘われていたっけ。
私はお酒とかビールとかあまり好きではないけれど、あの居酒屋『神酒』のサイドメニューにあるリンゴは好きだ。それを食べるためだけに、今日はあの店に行くとするかな。
「今回のしょーねんは惜しかったなー……しんそーに気付きかけていた、って点はひょーか出来るけど、やってることはそこらの奴とあまり変わらなーい。レミリア・スカーレットへの説教とかー、あはは、あれ面白かったなー! 何、えらそーにしてるんだってかーんじ!」
「……貴女、お酒もビールも苦手だー、って言うけど、案外がぶがぶいくわよね」
「へー? そーお? それよりリンゴちょーだい」
「はいはい」
「はむっ♪」
――――――――そして。
「あれっ? ここ、何処だ!?」
――――――――繰り返す。
「ここは神様ワールド。ゴメンね、君を間違えて殺しちゃった」
――――――――創られた少年少女たちは、神々の玩具として。
「だからお詫びに、特典を付けて君を転生させてあげるよ!」
――――――――転生を、繰り返し続ける。
終わりです。
ここまで読んでくださって本当にありがとうございました。質問等ありましたらメッセージなどにお願いします。