東方事反録   作:静乱

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平安時代の反対は無い
第27話 変化


 都に近い山にある小屋。草木も眠る丑三つ時、大抵の者が床についているであろうこの時間帯に彼はこの場にいた。

 彼は現在、都で噂の陰陽師だ。依頼をほぼ無償で受けるうえ、その腕は大妖怪ですら軽く捻るほど。都の者は彼のことを最強の陰陽師と呼んでいる。

 

 又、彼は妖怪に対しても評判がいい。退治しに来てもこてんぱんにされるだけで命を取らず、反省を促すのみ。それどころか人間を襲わないと誓えば他の陰陽師から守ってくれる。妖怪達は彼のことを強いけど優しい陰陽師と呼んでいる。

 

「ーーーだからさ。もう、都の子供を拐わないでよ。君の安全を保証するから。食料も人間以外無償提供するよ。」

「…へっ。わかったよ。止めればいいんだろ。その代わり提供頼むぜ。」

 

 だからこんな妖怪との会話も、彼にとっては日常のような会話なのだ。だからこんな心優しい彼を好きにならない者は人間であろうと妖怪であろうと、そうそういないだろう。

 

「ん!承ったよ。いやー最近は物分かりのいい妖怪が多くて嬉しいや。殺さなくて済むからね。」

「はっ!噂は聞いてたがここまで可笑しな奴とはなーーー」

 

 そんな、可笑しな陰陽師の彼の名は。

 

「最強の陰陽師、黒橋想也さんよ。」

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

「娘を助けて頂いて、本当にありがとうございます!」

 

 都から若干離れている僕の家。そこで僕は依頼成功のお礼を言われていた。この僕、黒橋想也は数百年前から陰陽師をやっている。

 僕が月の民を殺し、兵士と求婚者を救えなかったあの時から僕は、人の命の重さを改めて考え直した。結論として僕は自分の力をできる限り人や妖怪を救うために使うことに決めた。ただ戦うためだけに使うんじゃない。僕ができる僕のこの世界での生き方。それが人や妖怪を救うこと。そう考えた。

 僕が数百年も生きてる理由は仙人だからという理由で通した。

 

 後、これから先に起こることの知識を消した。僕には必要の無いことだと思ったからだ。だからこそ今の僕がいるんだと思う。

 

「いえいえ!娘さんが無事で良かったですよ!」

「ありがとうございます!それで報酬の方何ですが…」

「あ、大丈夫ですよお金なんて。娘さんのために使ってあげて下さいな。」

 

 僕は基本、報酬を受け取っていない。お金なんか貰うより依頼者さんの幸せそうな顔を見れる方がよっぽど嬉しい。お金とか無くても暮らせるし。

 だからこそ、僕のところには依頼が沢山くる。他の陰陽師さん達に依頼がいかないのは心苦しいので能力で食材とかを提供しているから文句はこない。皆ハッピー(の筈)だ。帝さんは僕が妖怪を殺さないのをよく思ってないらしいけど、妖怪だって生きているんだ。殺すなんてできない。今じゃ昔、襲いかかってきた奴を容赦無く殺す僕がどれだけ最低だったか、軽く後悔しているくらいだ。

 

「宜しいのですか?危険を犯して娘を助けて下さったのに…」

「んー。じゃあ、これは命令です!そのお金は娘さんのために使いなさい!」

「………はいっ!ありがとうございました!」

「どうも。今後も困ったらどうぞお越し下さいな。」

 

 そう言って娘さんと部屋を出ていく依頼人さん。すると娘さんが、僕に振り返って言った。

 

「おにいちゃん。ありがとー!」

 

 何気無い一言に思わず頬が緩む僕。やっぱり感謝っていうのはいつ誰に言われても嬉しいものだ。

 僕はこの数百年で感謝への耐性がなくなっている。どんな小さな感謝でも自分に向けられたら気を抜いてると簡単に頬が緩んでしまう。

 面白い人間になったもんだ。僕は。

 因みに依頼人さんに言われた時は痩せ我慢だ。真面目に話しているときに頬が緩んでたら変な奴だからね。

 

「さってと。そろそろ食料提供の時間だ。行くかな。」

 

 呟いた僕は食料を能力で大量に出し、風呂敷に積めてからそれを背負って家を出る。誰に言うわけでもなく「行ってきます」と呟きながら。

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

「聖!聖~~!」

 

 ……この声は、村紗ですか。ここでは静かにと毎回言っているのに…しっかりと言わなければいけませんね。

 

「はぁ。何ですか村紗。いつもここでは静かにと言っているでしょう?」

「ごめんなさい!でも聖が気になりそうな話を聞いたんだよ!」

 

 ? それは何なのでしょう。私の興味を引く話とは…

 

「その話とは?」

「それがさ。最近、都に最強の陰陽師っていうのがいるんだって。」

 

 陰陽師――妖怪を退治する者が、何だと言うのでしょう。

 

「陰陽師が、どうしたのですか?」

「焦らないで焦らないで!実はね…」

 

 焦らす村紗。早く言ってほしいものです。村紗の焦らしに少し苛ついてしまう心を抑え待つ。そして村紗は、焦らしに焦らした後言った。

 

「その陰陽師はさ!妖怪を退治しないことで有名なんだって!」

「……………は?」

「妖怪の友達から聞いたんだけどー。どうやらその彼は大妖怪を軽く捻る力を持ちながら軽くボコってから反省を促すだけで殺さないんで、人間を襲わないって誓ったら食料とか提供してくれるんだって!しかも美形君らしいよ!」

「は、はぁ…」

 

 村紗のテンションに引きながらもその陰陽師のことを考える。私と同じで妖怪を守っている人。

 

「……一度会ってみたいですね。」

「だよねだよねー!」

 

 

 

そう、彼女ーー聖白蓮は願った。

彼女の願いが叶う日は、きっと(それなりに)近い(…筈)。

 

 

 

 

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