『死に誘う程度の能力』。
非常に強力な能力であると共に、非常に危険な能力でもある。それがコントロールできないのなら、尚更だ。僕は幽々子さんから能力を告げられると同時に思考する。
『能力』が、『自分で制御』できない。これは元々誰にだってあることだと僕は思っているーーーだって僕自身だって最初は使いこなすことは難しかったし、上手く発動しないことは今だってある。諏訪大戦の時の腹痛とか、あまり例えにしたくはないんだけれど、……命蓮寺の皆が封印された時とか。
だけれど、自覚してから一年もあれば大抵は自由に使えるようになっている筈だ。それなのに、制御ができない。これは可笑しい。
最悪、『炎を操る程度の能力』とかだったらまだいい。自動発動しても対処方法はある。けど、『死に誘う程度の能力』。これは対処方法がほぼ無いと言っても過言ではないのだ。対象を問答無用に死に誘う能力。これほど恐ろしい能力は基本無い。
しかも、僕が先程から能力で【コントロールできない事実】を反対にしてみてはいるのだが、全く発動しない。くそ、思い出して来ちゃったじゃないか。僕は無力だ。
………駄目駄目!しゃっきりしなくちゃ。兎に角、幽々子さんの能力をどうするか考えなくちゃな。とりあえず、僕は会話をすることにした。
「とりあえず、もう夜ですね。ご飯作りますね。」
「えぇ!?ご飯!作れるの!?」
「え、はい。今日は寒いので、鍋にでもしましょうか。」
「お鍋!わぁー!ありがとう!」
……?喜びようが凄いな。何故に?ま、いいや。【ぬえと小傘ちゃんに幽々子さんの能力が効く事実】を反対にして、僕はキッチンの場所を聞いたのだった。
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「………食材が、無い…だと…」
前代未聞である。料理を作る前に食材が無いというのはどういうことだ。作る以前の問題だよ、バーロー。
いや、まぁ能力で食材を出せるけどさ………さぁ!食材も出したことだし!
「想也のっ!お料理教室ぅぅぅ!」
ハイテンションである。ここからは僕が延々と鍋を作る時の極意を語りながら料理するだけなのでばっさりカットですよ、あはは。
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「できました。どうぞ。」
「わぁ!お兄さんのご飯!」
「想也のご飯って美味しいのよね!」
「そうねぇ…食べれるか不安だけど…」
「「「え?どういう…」」」
僕らが疑問を浮かべて鍋を見ると、時既に遅し、ことは全て終了していた。
なんということでしょう、あれほどたっぷりあった鍋の具材が、全て消え去っているではありませんか!
そして満足そうな顔をしている、ピンクの悪魔。犯人は明らかにこの人、西行寺幽々子であろう。
なんでだよ。可笑しいだろ。一瞬であの量の鍋が消えるだと?いや、それこそあの人、ピンクの悪魔じゃねーか。もしくは某青狸の秘密道具でめっちゃ食べれるようになったのび太君。そしてその彼女が、僕に向かって更に一言。
「美味しいわ~♪もっとちょーだい?」
「「「はぁ!?」」」
………このあと、更に三回くらい鍋を作りましたよ。はい。
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白玉楼の庭を、僕は見ていた。正確には、一つの桜、いや、桜のように見えるナニカを見ていた。
……………あレはナンだ?僕ハソウ考エテ、能力デナイフをダス。ソのナイフヲお手ダマノよウニてノ上ニナゲル。ソノゴ、狂ったヨウなエミヲウかベなガラ、ナイフヲ自ブンジ身ニ向ケて…………
「冷静になりなさい。」
ゴンッ。と、僕の頭にそんな擬音が響く。紫の言葉通り、冷静になった僕は【僕と小傘ちゃん、ぬえがアレを見ても正気が保てない事実】を反対にする。一応はこれで安心だけれど。
「………アレは、何?」
「『西行妖』。幽々子の父親は有名な歌人だったのだけれど、死ぬ時にあの桜の元で死んだのよ。桜が好きだったから。そのあと、彼を慕っていた人達も、慕っていた彼と同じ場所で死のうとまたあの桜の元で死んだ。それが駄目だったのよ。アレは人の精気を吸いすぎた。アレは桜から妖怪と化して、咲いている時に人を死に誘うようになってしまったのよ。その影響かしらね……元々幽々子の能力は『死霊を操る程度の能力』を持っていたのだけれど、『死に誘う程度の能力』も持ってしまったわ。」
長々とアレについて解説する紫。簡潔にまとめると、アレは非常に危険ってことだな。………どうすれば。
「どうすればアレを止められる?」
「貴方には気が重いかもしれないけど、幽々子の身体を糧に封印するしか今のところ方法は無いわ。」
「………そう。」
確かに気が重い話だ。『封印』。その言葉を聞くと、あの時のことがより鮮明に思い出されてしまう。……しかも、幽々子自身を糧にして…だ。更に気が重くなる。だけれど、正直僕も現時点では何も思い付かない。
「他の方法、考えといて。僕はもう、知り合いを誰も、寿命以外で失いたくないから。」
「………ええ。勿論よ。」
そう言って、僕はゆっくりと借りた部屋へ向かう。今日は此処に泊まらせてもらえるらしいから、ゆっくりと考えることとしよう。