ここは、どこだろう。
真っ黒だーーいや、真っ白?真っ黒と視認すると真っ白に、真っ白と視認すると真っ黒に。広い世界と視認すると狭い世界に、狭い世界と視認すると広い世界に。
僕の思考を反対にして映しているかのように、この世界はめまぐるしくカタチを変えてゆく。
おや、あれはなんだろう。人型をしているあれはーー僕?
僕だ、文句無く、僕。完全に僕のカタチをしている。だけれど、中身が違う。
辺りを見渡すと、他にも僕がいた。小さい僕、大きな僕、女の子みたいな(というより、女の子)僕、僕よりも男らしい僕、色んなカタチを持った僕がいた。いた。
僕がいると視認した瞬間、全て消えていった。否、僕と僕のカタチをした何かを除いて、全て消えた。僕のカタチをした何かはゆっくりと僕に近づいて、「キヒッ」と笑った。
僕はその行動にとてつもない恐怖を覚えた。背筋に走る悪寒、生理的嫌悪。こいつの近くにいるだけで、全ての生命が腐敗するのではないかという錯覚。
西行妖など比べ物にならない恐怖、それを感じた僕は本能的にこの場から逃げ出しくなるが、足が動かない。何かはその笑みは維持したまま僕に近づいて、そのまま僕に抱きついた。
人に抱きつかれたとは思えない不快感、気持ち悪さ。それらが僕を襲う。何かはそのまま僕を強く抱き締めると、僕は何かの中にずぶずぶと沈んでゆく。
僕は沈みまいともがくが、底無し沼のようにもがけばもがくほど沈む。僕の身体が完全に取り込まれた後、何かはもう一度「キヒッ」と笑った。
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「……!」
窓から日射しが差し込み、白い壁に反射する。少々眩しく感じるこの部屋で、僕は目覚めた。汗をかいていたようで気持ちが悪い。夢が夢だから仕方がないかもしれないが……あれはなんだったんだ。僕はあれについて考えながら横を見ると。
「すぅ……すぅ……」
四季さんの寝顔が目の前に映った。びっくり。部屋のかんじからするになるほど、ここは医務室か。じゃあ、四季さんはここで睡眠を取るくらい僕を心配してくれたってことなのかな?ありがとう四季さん。
それにしても、四季さんっていつもはキリッとしてるけど寝顔は小傘ちゃんとかぬえとかと同じで見た目相応の顔してるなぁ。可愛い。と、僕が至近距離で普段見ない四季さんの顔を見ていると、急にパチリ……と、目を開いて、顔を紅潮させてシュバッと離れた。
「な、なな、なぁ!?」
「あ、四季さん。おはようございます。心配かけました」
「そっ、それはまぁいいですけど!何故あんな至近距離にいたんですかっ」
いつもクールな四季さんが可笑しいくらい動揺している。どうしてだろうと疑問に思いながら、僕は四季さんの問いに答えた。
「いや、四季さんっていつもキリッてかんじの顔しているじゃないですか。でも寝ている時は見た目相応の顔してるから、可愛いなーって」
「か、可愛いっ!?何を言っているんですか!というか、いつ起きたんです!?」
「ついさっきです。あ、今何日ですか?致命傷負いましたし、一週間くらいたってます?」
僕が聞いてみると、少々暗い顔になる四季さん。どうしたんだと理由を考えていると、四季さんが口を開いた。
「……とても言いにくいのですが、既にあれから数百年です。何があったか簡潔に述べますと八雲紫が『幻想卿』なるものを作り、現在進行形で紅い霧がこの辺りと幻想卿を覆っています」
「……うぇぇ!?」
信じがたいけれど、予想以上に時は過ぎていた。
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「えっと……四季さん、小町。僕、幻想卿行ってもいいかな?」
「「えぇ!?」」
冷静に状況整理をして数十分。小町とも合流した僕は、二人にこう申し出ていた。
「何を言ってるんですか!貴方は一度死んでいるのですよ、もう現世に行くことは……」
「これも罪になるでしょうが、能力を使えば簡単に復活できます。次に死んだらもうやりませんから」
「ぐぬぬ……!」
僕の返答に唸る四季さん。迷っているのだろう、僕は言い始めたらあまり変えないから。少しの間四季さんが唸っていると、小町が言った。
「行かせてやりましょう四季様。想也は言い出したら基本止まりませんから。また死んだら戻ってきますし」
「小町に付け足すと、死ぬ前にもたまにここに来ますよ。だからお願いします」
「ぐぐぐぐぐ……わかりました。行ってきなさい」
「はい!行って来ます!」
四季さんの了承をもらった僕は、【僕が絶命した事実】を反対にして瞬間移動で幻想卿に飛……
「うわっ!?」
べなかった。結界らしきものに弾かれたらしい。なんて面倒臭い。僕は想刃(略称)を取り出して切り裂いた。空間が割れて入る場所ができる。僕は素早くそこに入り、修復してから前進していった。
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私は紫様に命じられて大結界の管理をしていた。今日も平和で、いいことだと思っていると。
「……!何者だ!?」
突如として大結界の一部が切り裂かれ、すぐに修復された。明らかに何者かが侵入している。
私は紫様に知らせに向かった。